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【4】真夜中の秘密

【4】真夜中の秘密……➃

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「すごくふかふかですね」
「なんなら変化しようか」

「い、いえ、それには及びません」

 そんなことをされたら洞窟でのことを思い出し、あの時のように身体がおかしくなってしまいそうだった。それにすでになんだか、股間のあたりが妙にムズムズしている。

「ミア、そんな格好で風邪ひくよ。尻尾に触りたいのなら、僕がベッドへ上がるから」
「やめ……」

 シャノンに抱き上げられたミアは、咄嗟に股間を両手で隠した。

(な、な、何なんだ……、これは)

 シャノンが片膝をベッドへ乗せ、改めてミアをベッドへ寝かせた。あわててシャノンに背中を向けた行動は、ひどく不自然だった。

「ミア、今日はありがとうございました。いつも地震のたびに、不安がる皆をあんなに笑顔にしてくれて、僕からのお礼代わりに尻尾をどうぞ」

 ファサッと大きな尻尾で背中を撫でられる。背筋のあたりに触れた毛にゾクゾクしたミアの肌は粟立っていた。

「ミア、寒い?」
「だ、だ、大丈夫です」

 デュベイに手を伸ばすが、はるか彼方だ。

「――辺境伯」
「ん?」

「お聞きしたいことがあります」

「なんでしょう」

「あの」

 ベッドへ腰かけたシャノンは変わらず、ミアの背中を尻尾で撫でている。くすぐったさと、あの洞窟で感じた――、ただ気持ちよくなりたいと言う今まで知りえなかった、ぬかるみに足を突っ込んだ時のようなドロドロとした感情に支配されぬよう、ミアは唇を噛んでいた。

 あの時まで、こんな感覚は知らなかった。

 人口統制の為、地下では動物の交尾に類似した人間同士の行為は禁止されている。
 他者との関わりを極度に減らし、接したとしても性別や顔など好意を抱く要素をひとつでも失くすようアバヤやヒジャブで全身を覆っている。だから自分以外の人間を、物やアンドロイドのように感じることもままあった。

 だから、派遣研修で共同生活を始めたときは戸惑うことも多く、驚きの連続だった。

 今まで一人だったはずが、ちょっとしたことで会話が生まれる仲間ができた。
 そんな中、ミアよりはるかに年上の男たちが、目をギラつかせて話していたことがある。帰還後の事だ。ほとんどの人間が一人で生き、一人で死んでいく地下で、帰還後は特権階級としてパートナーだとか奴隷があてがわれるとか、なんとか――。

 共同生活を送った施設のシャワー室で聞こえてきた同僚のアルファ同士の下世話な話だから、本当かどうかは分からなかった。

「ミア」

「あの、股間が爆発しそうなほど熱いのです」
「そっか」
「熱くて、カッチカチなのです!少し体温も上がっているような気がしますし、動悸や息切れも。このような病気、……な、な、なんですか」

 意を決して、どもり気味に打ち明けたミアの背中は強く抱き締められる。


「僕が気づいていないとでも思った……?」


 ふざけていないシャノンの声に、ミアは黙り込む。静寂に包まれた室内で、いつもよりかなり早いミアの鼓動がシャノンに聞こえてしまいそうだった。

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