獣人辺境伯と白い花嫁~転化オメガは地上の楽園で愛でられる~

佐藤紗良

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【6】起爆

【6】起爆……⑱

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 何が起こったのか、分からない。

 右目に激痛が走ったのだ。後頭部まで貫通するような経験したことのない鋭い痛みに、ミアは吐き気をもよおしてしまった。口元を押さえ、うずくまったミアの視界の端に、ランタンとは違う地上では見ることのなかった光を見た気がした。

「な、なんだ……」

 這いつくばって、黒いドーム状の石を覗き込む。そこには電子表示された数字があった。

「これは」

 数字は、目まぐるしく減っている。まるでそれは何かの起爆装置のようで、辺りはシンと静まり返っているのに、そこだけ地下に通じているような__。


「え……」


 ミアはゴクリと唾を飲み込んだ。目の前で、その数字はすべて0になったのだ。

 次の瞬間、突き上げられる様な激しい揺れを感じ、『死の扉』へついた膝が熱くなるように感じた。

「……ッ」

 気のせいではない。

 上部から瓦礫が崩れ落ちてくる中、『死の扉』が熱を帯びながら膨張している。ミアは焦って立ち上がり、階段まで走ろうとしたがブーツのソールがすでに熱で溶け始めていた。


「水門を開けろ!!すぐにだ!!」


 シャノンの怒声が、確かに上方から聞こえた。普段の穏やかな声ではなく、それは叫び声に近かった。

「助け……ッ、キャァァァァ」
「ミア!そこにいるのかッ!」

「シャナ……、シャナ!!助けてッ!!

 『死の扉』に赤い亀裂が入るのをミアは確かに見た。足の裏に灼熱を感じる。上部からおびただしい量の冷たい水がゴーッと耳をつんざくような爆音を轟かせながら流れ落ちて来て、ミアは思わず口と鼻を覆った。

(肺が熱い……ッ)

 『死の扉』で熱にぶつかった冷水は一瞬で蒸発し、あたり水蒸気が立ち込める。肌が肺が、熱くて痛かった。

「ミア、助ける!絶対にだ!!」

 声は聞こえるが、シャノンの姿は見えない。が次の瞬間、巨獣のホッキョクギツネが走って来て、恐怖で身動きが取れなくなったミアを大きな口で咥え、『死の扉』の上から連れ去った。

「怖い、助けて……シャナ」

 震える両手でブローチを握りしめ、うわごとのようにそう呟く。そしてミアの意識は、そこでブツリと途絶えた。




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