上 下
103 / 153
【9】花火と金平糖

【9】花火と金平糖……⑪

しおりを挟む



「ミア?」

「……」

「なぜ、黙ってしまうの。そういうのは、良くないぞ」
「だって」


「ミア、愛してるよ」


 指先ですくった流れるような髪にシャノンが唇を寄せる。絞り出すような声に、堪えきれずミアはシーツを涙で濡らしていた。


「そんな事、言わないでください。地下へ帰れなくなる」

「何度でも言うよ、だってそうさせてるんだもの」
「え……」
「あいにく僕は諦めが悪いんだ。ミアが任務を離任するまで、二週間近くある。僕にとっては十分すぎるくらいだ」

「ずいぶんな自信家なのですね」


「ミア、ほどじゃないよ。野生の狼に独演会ひらくくらいだからね」


「見ていたのですか!」


 ミアがシャノンを打とうと振り上げた右手を掴まれ、簡単に身体を返されてしまった。

「すぐそうやって暴力ふるう。だんまりと暴力はミアの代名詞だな」
「あなたと違って、弱いからですよ」
「僕はミアのこと、弱いなんて思ったことないよ。自分のことを強いなんて、思ったこともない。ミアが好きでいてくれないと、僕はーー」

 視線を逸らそうとすれば顎を掴まれ、息が触れ合う距離にシャノンがいる。気持ちは止めどなく溢れ、ミアの心の中は彼でいっぱいだった。が、ここまで言われてもまだ、ミアは言葉にできない。そんな中途半端に気持ちを残して行くなんて、『好き』と言うより残酷なのではないだろうか。

「黙っていれば、事が済むと思っているだろう。僕がどんなに真剣か、ミアには伝わらない?またいつものようにふざけてるとでも思っているのか」 
「そんなことは」

「仕方ないな。ミアが口を割らないなら身体に聞いてみるか」

「身体に……」

「そう。ミアの身体は素直だからね。今までは様子を見てたけど、本気だすよ」
「本気って」

 緩んだ手元から握りしめていたはずのブラウスが取られ、脱がされてしまった。

「それとも、獣の僕がいい?あの洞窟の時のように。ミアは獣の僕には心を開いてくれているからね。同じ僕なのに、なぜこうも態度が違うんだ」

 ミアは口をゆがめ、逃げ場のないこの状況に困り果てていた。

 腹の奥底がグチグチと濡れる様な感覚がする。シャノンに見つめられれば全身に力が入らず、ボトムに掛けられた手を止めることができなかった。


「ミア、君を愛させて。愛してるから、僕にその資格を与えて欲しい」


 ミアはスルスルと剥かれ、シャノンの前で全裸を晒していた。


しおりを挟む
1 / 5

この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!

逃がす気は更々ない

恋愛 / 連載中 24h.ポイント:284pt お気に入り:1,627

花街の隅の花屋にはワンコ騎士に好かれるヒツジがいる

BL / 完結 24h.ポイント:7pt お気に入り:46

White cat in Wonderland~その白い猫はイケメンに溺愛される~

BL / 連載中 24h.ポイント:35pt お気に入り:54

強い祝福が原因だった

恋愛 / 完結 24h.ポイント:184pt お気に入り:3,453

子悪党令息の息子として生まれました

BL / 連載中 24h.ポイント:9,930pt お気に入り:197

ずっと、君しか好きじゃない

BL / 連載中 24h.ポイント:19,036pt お気に入り:577

聖女はそっちなんだから俺に構うな!

BL / 連載中 24h.ポイント:85pt お気に入り:1,973

処理中です...