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【9】花火と金平糖
【9】花火と金平糖……⑪
しおりを挟む「ミア?」
「……」
「なぜ、黙ってしまうの。そういうのは、良くないぞ」
「だって」
「ミア、愛してるよ」
指先ですくった流れるような髪にシャノンが唇を寄せる。絞り出すような声に、堪えきれずミアはシーツを涙で濡らしていた。
「そんな事、言わないでください。地下へ帰れなくなる」
「何度でも言うよ、だってそうさせてるんだもの」
「え……」
「あいにく僕は諦めが悪いんだ。ミアが任務を離任するまで、二週間近くある。僕にとっては十分すぎるくらいだ」
「ずいぶんな自信家なのですね」
「ミア、ほどじゃないよ。野生の狼に独演会ひらくくらいだからね」
「見ていたのですか!」
ミアがシャノンを打とうと振り上げた右手を掴まれ、簡単に身体を返されてしまった。
「すぐそうやって暴力ふるう。だんまりと暴力はミアの代名詞だな」
「あなたと違って、弱いからですよ」
「僕はミアのこと、弱いなんて思ったことないよ。自分のことを強いなんて、思ったこともない。ミアが好きでいてくれないと、僕はーー」
視線を逸らそうとすれば顎を掴まれ、息が触れ合う距離にシャノンがいる。気持ちは止めどなく溢れ、ミアの心の中は彼でいっぱいだった。が、ここまで言われてもまだ、ミアは言葉にできない。そんな中途半端に気持ちを残して行くなんて、『好き』と言うより残酷なのではないだろうか。
「黙っていれば、事が済むと思っているだろう。僕がどんなに真剣か、ミアには伝わらない?またいつものようにふざけてるとでも思っているのか」
「そんなことは」
「仕方ないな。ミアが口を割らないなら身体に聞いてみるか」
「身体に……」
「そう。ミアの身体は素直だからね。今までは様子を見てたけど、本気だすよ」
「本気って」
緩んだ手元から握りしめていたはずのブラウスが取られ、脱がされてしまった。
「それとも、獣の僕がいい?あの洞窟の時のように。ミアは獣の僕には心を開いてくれているからね。同じ僕なのに、なぜこうも態度が違うんだ」
ミアは口をゆがめ、逃げ場のないこの状況に困り果てていた。
腹の奥底がグチグチと濡れる様な感覚がする。シャノンに見つめられれば全身に力が入らず、ボトムに掛けられた手を止めることができなかった。
「ミア、君を愛させて。愛してるから、僕にその資格を与えて欲しい」
ミアはスルスルと剥かれ、シャノンの前で全裸を晒していた。
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