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【11】極夜
【11】極夜……④
しおりを挟む「ミアは、どれがいいかな」
ナイトテーブルにトレイを置いたシャノンが再びトランクを開け、自身のマントを持ってくる。
「これ、貸してあげる」
ミアはわけが分からないまま受け取って、その匂いも嗅いでいた。
「……もっとください」
「ふふ」
「なんで、笑うのですか」
「ミア、ヒート来そうでしょ。自覚ある?」
「え?」
鼻に当てていた布を持つ手を取られ、シャノンが顔を近づけて来る。
「なんで目の前に僕がいるのに、布の匂い嗅いでるの?」
「だって、シャナが貸してくれるから」
「遠慮しないで僕の匂い、嗅いでいいよ」
ミアは抱き締められ、全身から力が抜けてしまった。
「リオートが近づいてきたら、ミアからフェロモンの匂いがしてきてね。皆にミアと会わないよう、お願いしたんだ。ミアのフェロモンの香りが嫌いな獣人も獣もいないからね」
首筋に鼻を寄せるとシャノンから石鹸の匂いに交じって、いつもの針葉樹の香りがした。
「ミアが連れ去られたとき、巣作りしていたあとを見つけて愛おしくて仕方なかったんだ。おそらくあの時、ヒートを起こしかけていたんだろうって。ミアの身体がまだ未熟だった事と精神的に不安定なことが続いて、身体が活動を止めてしまっているかもしれないってアルマが言ってた。だからもう少し、時間が必要だと思っていたんだけどね」
「シャナ……」
「うん?」
「シャナの香りも……、強い気がします」
「そうだね、僕も発情期に入ったみたい。ミアと一緒」
シャノンの視線が、いつもより熱を帯びた黄金色に輝いているように見える。
「ミア」
「はい」
「ーー極夜は僕らホッキョクギツネにとって、番を愛でるための時間なんだよ」
ドクンと腹の奥で愛液が溢れる感覚は、何度経験しても慣れそうになかった。ただ最初の頃に感じた不快感よりも、これから与えられる歓びに肌が粟立ち、期待してしまっている自分がいる。
「ミア、僕の番になってくれませんか」
恥ずかしそうに瞳を伏せたシャノンが囁く。丁寧な言葉にミアは「今さら?」なんて笑い飛ばすことができず、片方しか出ていないホッキョクギツネの耳や真っ白な髪、普段より少し体温の高い頬に触れると、ガウンの中へ納まっていた大きな尻尾をシャノンは嬉しそうにパタパタと振っていた。
額を合わせ、息が触れ合うほどの距離でミアは頷く。
「私を辺境伯の番にしてください」
相手に伝えるにはあまりにも小さな声だったが、シャノンの獣の耳がピクリと反応していた。
小さなミアの手がシャノンの両頬を包み込み、そっと唇を寄せる。
「大切にします、あなたのこと」
「ミア、それは僕が言おうと思って……」
シャノンが良くするように、ミアが彼の下唇を唇で食む。と、ふたりの間にある空気が揺れ、どちらからともなく唇を重ね合っていた。
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