150 / 153
【13】千夜一夜
【13】千夜一夜……②
しおりを挟む「例の取り引きに、シャナと行くようにとアメリが」
「だから僕が言ったじゃないか。前みたいなことが起こったら困る、一緒に行くよ」
靴を脱がせ、子供たちをベッドへ寝かせようとした。が、揃えて置かれていない靴がルカは気になるようでジッと見つめている。好きにさせてみると三人の靴を円に並べ、ルカが「みんなであそんだ」と嬉しそうに笑っていた。
「ルカはご飯、食べましたか」
「果物ばっかり食べてたよ。子供三人連れてどこかに入るのもと思って、ピクニックしてきたんだ。ソフィとレフは肉しか食べないし、ミアがいつもどうやってバランス良く食べさせてるのか、不思議で仕方ない」
「特別なことは何もしていませんよ」
「それにね、ソフィとレフは芝そりに夢中なのに、ルカだけ雲を眺めてるんだ」
「ふふ。だからみんな、お日様の匂いがするのですね。シャナ、知ってますか?」
「何?」
「ソフィは大きくなったらアルマ様の研究室に入りたいんですって」
ミアがベッドへ入ると、シャノンも子供たちを挟んで向かい側へ入ってソフィの背中をトントンと優しく打っていた。
「ソフィは女の子だから、一人で首都に住まわせるのは心配だ」
「まだ、ずっと先の話ですよ」
しばらくすると、いつも寝つきの悪いルカが外でたっぷり雲を眺めたせいか静かに寝息をたてはじめる。シャノンとミアはベッドをそっと抜け出し、戻って来たアメリとプカルルに子守りをお願いした。
「子供たちが寝ている間に戻れると思います」
「夕飯までゆっくりしてきたら?私たちは時間あるから」
「でも」
「三つ子のお世話で二人きりになる時間がないんだから、デートしてらっしゃいよ。あの玉は持った?」
アメリに耳打ちされ、ミアは慌ててポシェットを取りに行く。その中には結婚式以来、大切に取ってあったプカルル夫妻から貰った変化の玉が入っていた。
「ミア、行こう」
「はい」
おやつにレフの好きなクッキーを焼いてあることを伝え、ミアはシャノンに手を握られて部屋を出た。子供が産まれるまでは当たり前だったのに、こんな風に手を繋ぐのは久しぶりだった。
「ミアのそのシュッとした顔、懐かしい」
「な、な、何を言ってるのです」
取り引き場所は、シャノンを通して前回の会議のときに決めていた。何ブロックか先まで歩き、路地へ入る。あの鉱物屋があるエリアで、ミアが主人に直接交渉して、その建物の一部を貸してもらったのだ。
「こんなところ、良く見つけたね」
「ええ。さすがに先方もこちら側と取引していることがバレると立場的にまずいと思うので、接触はしません。長く役に立ってもらいたいので」
ミアは扉の外から鉱物屋を覗き込むと片眼鏡をつけた孔雀獣人の主人がこちらを見て、小さく頷いていた。それは人間が来たことのサインだった。
鉱物屋と隣の建物のあいだの小さな袋小路。
「1、2、3……」
鉱物屋の壁の石を軽く打ちながら数をかぞえ、十八個目で音が変わった。しゃがみ込んで、左右にずらしながらその石を抜き取る。
「昔のスパイ映画みたい」
「そういう訓練をされているのです、私達は」
そこには小さく折り畳まれた何枚もの手書きのリストがあった。地下ではすべてをAIが管理していてデータにアクセスすれば当然、記録が残ってしまう。だから情報を持ち出すとなるとアナログになってしまうのだ。空中ディスプレイを開けば簡単に得られるであろうこの情報だって、自分の足で収集したに違いない。
「すごい数だ」
「不明者リストは、こちら側にあるのですか」
「家族から届けがあった者は記録してある。ただ、身寄りのない者に関しては特定が難しい」
「そうですか。帰って照合してみましょう」
そのリスト以外に小さな紙切れもあった。昨日の晩、ミアが入れた紙かと思い手に取るとそこには「ありがとう」と書かれていた。
0
あなたにおすすめの小説
伝説のS級おじさん、俺の「匂い」がないと発狂して国を滅ぼすらしいい
マンスーン
BL
ギルドの事務職員・三上薫は、ある日、ギルドロビーで発作を起こしかけていた英雄ガルド・ベルンシュタインから抱きしめられ、首筋を猛烈に吸引。「見つけた……俺の酸素……!」と叫び、離れなくなってしまう。
最強おじさん(変態)×ギルドの事務職員(平凡)
世界観が現代日本、異世界ごちゃ混ぜ設定になっております。
【完結】家族に虐げられた高雅な銀狼Ωと慈愛に満ちた美形αが出会い愛を知る *挿絵入れました*
亜沙美多郎
BL
銀狼アシェルは、一週間続いた高熱で突然変異を起こしオメガとなった。代々アルファしか産まれたことのない銀狼の家系で唯一の……。
それでも医者の家に長男として生まれ、父の病院を受け継ぐためにアルファと偽りアルファ専門の学校へ通っている。
そんなある日、定期的にやってくる発情期に備え、家から離れた別宅に移動していると突然ヒートが始まってしまう。
予定外のヒートにいつもよりも症状が酷い。足がガクガクと震え、蹲ったまま倒れてしまった。
そこに現れたのが雪豹のフォーリア。フォーリアは母とお茶屋さんを営んでいる。でもそれは表向きで、本当は様々なハーブを調合して質の良いオメガ専用抑制剤を作っているのだった。
発情したアシェルを見つけ、介抱したことから二人の秘密の時間が始まった。
アルファに戻りたいオメガのアシェル。オメガになりたかったアルファのフォーリア。真実を知るたびに惹かれ合う2人の運命は……。
*フォーリア8歳、アシェル18歳スタート。
*オメガバースの独自設定があります。
*性描写のあるストーリーには★マークを付けます。
見捨てられ勇者はオーガに溺愛されて新妻になりました
おく
BL
目を覚ましたアーネストがいたのは自分たちパーティを壊滅に追い込んだ恐ろしいオーガの家だった。アーネストはなぜか白いエプロンに身を包んだオーガに朝食をふるまわれる。
異世界で8歳児になった僕は半獣さん達と仲良くスローライフを目ざします
み馬下諒
BL
志望校に合格した春、桜の樹の下で意識を失った主人公・斗馬 亮介(とうま りょうすけ)は、気がついたとき、異世界で8歳児の姿にもどっていた。
わけもわからず放心していると、いきなり巨大な黒蛇に襲われるが、水の精霊〈ミュオン・リヒテル・リノアース〉と、半獣属の大熊〈ハイロ〉があらわれて……!?
これは、異世界へ転移した8歳児が、しゃべる動物たちとスローライフ?を目ざす、ファンタジーBLです。
おとなサイド(半獣×精霊)のカプありにつき、R15にしておきました。
※ 造語、出産描写あり。前置き長め。第21話に登場人物紹介を載せました。
★お試し読みは第1部(第22〜27話あたり)がオススメです。物語の傾向がわかりやすいかと思います★
★第11回BL小説大賞エントリー作品★最終結果2773作品中/414位★応援ありがとうございました★
王太子専属閨係の見る夢は
riiko
BL
男爵家のシンは、親に売られて王都に来た。
売られた先はこの国最大の相手!? 王子の閨係というお仕事に就いたのだった。
自分は王子が婚約者と結婚するまでの繋ぎの体だけの相手……だったはずなのに、閨係なのに一向に抱いてもらえない。そして王子にどんどん惹かれる自分に戸惑う。夢を見てはいけない。相手はこの国の王太子、自分はただの男娼。
それなのに、夢を見てしまった。
王太子アルファ×閨担当オメガ
性描写が入るシーンは
※マークをタイトルにつけます。
物語、お楽しみいただけたら幸いです!
冷酷無慈悲なラスボス王子はモブの従者を逃がさない
北川晶
BL
冷徹王子に殺されるモブ従者の子供時代に転生したので、死亡回避に奔走するけど、なんでか婚約者になって執着溺愛王子から逃げられない話。
ノワールは四歳のときに乙女ゲーム『花びらを恋の数だけ抱きしめて』の世界に転生したと気づいた。自分の役どころは冷酷無慈悲なラスボス王子ネロディアスの従者。従者になってしまうと十八歳でラスボス王子に殺される運命だ。
四歳である今はまだ従者ではない。
死亡回避のためネロディアスにみつからぬようにしていたが、なぜかうまくいかないし、その上婚約することにもなってしまった??
十八歳で死にたくないので、婚約も従者もごめんです。だけど家の事情で断れない。
こうなったら婚約も従者契約も撤回するよう王子を説得しよう!
そう思ったノワールはなんとか策を練るのだが、ネロディアスは撤回どころかもっと執着してきてーー!?
クールで理論派、ラスボスからなんとか逃げたいモブ従者のノワールと、そんな従者を絶対逃がさない冷酷無慈悲?なラスボス王子ネロディアスの恋愛頭脳戦。
竜の生贄になった僕だけど、甘やかされて幸せすぎっ!【完結】
ぬこまる
BL
竜の獣人はスパダリの超絶イケメン!主人公は女の子と間違うほどの美少年。この物語は勘違いから始まるBLです。2人の視点が交互に読めてハラハラドキドキ!面白いと思います。ぜひご覧くださいませ。感想お待ちしております。
【Amazonベストセラー入りしました】僕の処刑はいつですか?欲しがり義弟に王位を追われ身代わりの花嫁になったら溺愛王が待っていました。
美咲アリス
BL
「国王陛下!僕は偽者の花嫁です!どうぞ、どうぞ僕を、処刑してください!!」「とりあえず、落ち着こうか?(笑)」意地悪な義母の策略で義弟の代わりに辺境国へ嫁いだオメガ王子のフウル。正直な性格のせいで嘘をつくことができずに命を捨てる覚悟で夫となる国王に真実を告げる。だが美貌の国王リオ・ナバはなぜかにっこりと微笑んだ。そしてフウルを甘々にもてなしてくれる。「きっとこれは処刑前の罠?」不幸生活が身についたフウルはビクビクしながら城で暮らすが、実は国王にはある考えがあって⋯⋯?(Amazonベストセラー入りしました。1位。1/24,2024)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる