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告白⑮

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「『ゆるしの秘跡』はしたの?」
「何も悪いことはしてないから必要ないって言ったよ。全部、洗いざらい子供の頃からの話をしたけど、神父様は否定はしなかったけどショックだったみたい」

 一週間ほど教会で過ごした彼女は、東京のこのマンションに連れて来られたそうです。そして、男性として矯正される生活が始まったわけです。

「病院へ行って、まず性同一性障害の診断書をもらったの。僕のことを認めてくれたのかと思ったら、それは女子大附属高校へ編入するための口実。女の子の中で過ごせば、一人くらい僕でも大丈夫な子がいるんじゃないかって目論んだんだろうね」
「どうだったの?」

「全然ダメ。女の子の興味のあることとか、化粧の仕方とか、アンテナ張り巡らしちゃって女の子の仲間入りした気分だった。でもそれはそれで満足だった。まったく僕を理解しようとしない母親が送り迎えして、男性と話す隙も与えられなかった。きわめつけはアダルトビデオを見せられて、これが普通だって言って聞かされたの」

「普通って、なんだろうね」
「ビデオの中で確かにそれは当たり前のことだった。でもね、僕は女の子なのに性欲が高まると勃つんだよ。心と身がバラバラで気が狂いそうだった。デリヘルを呼ばれた事もあったよ」
「デリヘル……」

「琴里に会う少し前の失敗したテストね」

「テストって何?」
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