追放王子は辺境の番犬によしよしされて愛を知る。

まめ

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15 王城 オズウェル


 ほとんどの政務から兄の存在が消え、兄を慕う者の訪問も途絶え、ついに世間と兄を切り離すことに成功した。
 追放してから数ヶ月になる、そろそろ壊れてもいい頃だろう。
 
 昔贈ったピアスには、居場所を知らせる魔法陣を込めてある。
 対になる記録板は、青い光で兄の生存と位置を示していた。
 誰もいないはずの辺境で、未だに兄は生きているのだ。
 孤独と飢えに苦しむ兄を救えるのは、この世界で俺だけだ。
 生命反応が弱まるまで放置し、ぎりぎりのところで迎えにいけば、きっと兄は泣いてよろこぶだろう。
 出来たら壊れていてほしい。
 尊厳やプライドなど全て失くして、獣のように俺にすがりついてほしい。
 それを真綿にくるむように、やさしくやさしく可愛がるのだ。
 もう俺しか見えないくらいに、ぐずぐずに堕としてやるのだ。

◇◇◇

「兄さんの光が……消えた……?

 ある夜、記録板は突然、その機能を失った。
 今までに追跡した軌跡も、位置も、兄に関する情報の全てが消失していた。

「はあっ? なぜだ……何が起きた。兄さん。兄さん。兄さん。俺の兄さん。俺だけの兄さん。どこに消えたんだーーー!」

 俺は絶叫し、記録板を床に叩きつけた。
 しかし、木枠が飛び散っても、基盤が二つに割れても、色を無くしたただの石板から、光の欠片さえ飛び出すことはなかった。
 
「殿下、いったい何事ですか⁈」 
「あっ!何をなさっておられるのですか⁈ 誰かー!誰かー!」
 
 後ろから何者かが俺を羽交い絞めにした。
 
「王太子殿下、お気を確かに!」  
「早く鎮静剤を投与しろ!医師はまだか!」 
「あああああああっ!兄さんがぁ、俺の大事な兄さんがぁっ!」 
「殿下、リンフォード様はもうおられません」 
「気が昂ぶっておられる。きっと執務で根を詰めておられたのでは……」 
「……オズウェル殿下、……今しばらくお体を休めましょうね」

 首にチクリと痛みが走る。 
 プツリと、俺の意識は落ちた。
 
 そこには暗闇だけがあった――

 ◇◇◇

「オズウェル様ぁ、早く元気になってくださいね。結婚式まであと半年でしたのに」 
「……ああ」 
「陛下も王妃様も、オズウェル様の快癒を願っておりますわ」 
「……ああ」 
「このところ政務にかかりきりでしたもの、もっと私を頼ってくださいませ」
「……ああ」 
「今日はもうお暇しますわ。ゆっくりお休みくださいね」 
「……ああ、……クレ、マン……ティーヌ」
 
 
 

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