18 / 22
18 リンフォード ※R18
伴侶になったのに、ロキは私に手を出そうとしなかった。
「オレ、大きいから……」
なんのことはないと、ロキに愛撫を施し、屹立したペニスと向かい合って見れば、それは私の腕より長くて太かった。
「……ほんとに大きいな」
「うん、リンが壊れちゃう」
王城で性技を学んだ私でも、このペニスを体に挿れるのは命の危険を感じた。
まあ、いい。
ロキとの触れ合いにおいて、挿入ばかりにこだわる必要はないのだ。私たちは私たちなのだから。
◇◇◇
冬に入り、冷え込む夜はロキと同じ毛布にくるまって眠る。
体温の高いロキの体でほかほかに温まった私は、つい手が出てしまう。
毎日のように初心なロキの体を愛撫し開拓していく。彼の喘ぎ声を堪能していたはずが、いつのまにか私が啼かされていた。
「ひぃ、……あっ、ロキぃ。ダメだ。そんなとこぉ、舐めちゃぁぁぁっ」
「リン、気持ちいい?」
「んぅ、気持ちい……気持ちいいからぁ。ロキ、やめぇ……あぁん、ロキ……好きぃ」
ロキの浅黒い肌と私の白い肌が重なる。
熱い吐息が尻にかかると、たとえようもない快楽がやってくるのだ。ぬぷにゅぷ……ぴちゃ……私の最奥を、ロキの太くて熱い舌が暴いていく。鳥肌がたつくらい気持ちいい。もうなにも考えられない。
私は身も心もロキに溶けていく――
寒いはずの冬の夜は、なんとも熱く濃厚な愛の時間だった。
毎晩のように、私はロキの胸の中で、幸せな夢にまどろんでいた。
◇◇◇
ガリガリッ――
雪が降り積もる深夜、私たちの小屋に大きな異音が響いた。何者かが外から壁を引っ掻いている。
むくりと起き上がったロキは抑えた声で、急いで服を身につけるように言った。
「リン、魔物かもしれない。冬は腹を空かせた魔物がうろつくことがあるんだ……声を出さないで」
ロキは、毛布でくるんだ私をキッチンの収納棚に押し込めた。
静かに家具を運ぶ音。私のいる場所に蓋をしたのがわかった。
「絶対に出てこないで。オレが守るから」
私の視界は閉ざされた。
ロキが斧を手にするガチャリという音。
ガリガリと外からの音は続いている――ミシミシッ、そのとき家が大きく揺れた。
「おっらぁ!」
ロキの叫びと、玄関のドアが跳ね上がる音。
部屋の中に冷たい風が吹き込んでくるのがわかった。
魔物と戦うため、ロキは外に出ていったのだ。
私を残して死ぬつもりか。許さん。許さん。
ぎりぎりと奥歯を噛みしめる。
聞こえるのは、魔物の唸り声、ロキの威嚇。なにかとなにかがぶつかり合う重い音。
ロキの叫び声。今までに聞いたことのない悲痛なロキの声。
出せ、出せ、私を置いていくな。
私は棚の戸を叩くが、ぴくりとも動かない。
伴侶を、愛するロキを失うかもしれないのに、私にはなにもできないのか――
今怖いのは、命を失うことではない。
ロキを失うことだ。
ダンダン、バンバン――
私は懸命に戸を叩き続けた。引っ掻いて、蹴って、押し続けて、戸が少し緩みはじめたとき、大気を震わせるような咆哮が聞こえた。
ビリビリとガラス窓が振動し、地面が揺れた。
そして、世界は静まりかえった――
「……ロキ?いるのか?」
「……リン、もう大丈夫だ……今、開ける……ね」
パタン――玄関のドアが閉まる。
ずるずるとなにかを引きずるような音が近づいてくる。
私を遮っていた家具がどけられた。収納棚の戸が開けられる。
視界がだんだん戻ってくる。
「リン、手が血だらけじゃないか。……痛かったろ」
そう言うロキは、全身をどす黒い魔物の血で染め、床に這いつくばっていた。
首すじから胸元にかけて大きな傷が目に入る。そこからは、どくどくと赤い血が溢れ続けていた。
ロキの口から、ひゅーひゅーと風のような息が漏れる。
「……もう、やっつけたよ。安心……して」
「おまえは、おまえは、おまえはぁぁぁー!
なにが大丈夫だ!
なにが安心してだ!
私は、私はなあ、おまえが一番大事なんだぞ!
許さん!許さんぞ!
今治してやる。治すからぁ、ロキぃ、死なないでぇー」
私は聖魔法を唱えた。
たとえ少ない魔力であっても、全てを使い切っても、ロキを治したかった。
「……いいよ、リン。魔力が無くなると、リンが、死んじゃう……」
「このバカ犬がぁ!おまえが死んだら私も死ぬんだ。生きろ!私のために生きろぉ!」
私の指先から白い光がこぼれだすが、ロキの皮膚の表面を治癒するのみで、中からあふれる血ですぐ破れてしまう。
私はロキの頭を膝の上に抱え込んで、泣きながら魔法を使い続けた。
意識を失ったロキの体温は、急激に低くなっていく。
そして、魔力の欠乏で私の体も冷えていった。
「かはっ……」
ロキが咳とともに大量の血を吐いた。
私の指先からはもう光は生まれなかった。
魔物のはびこる辺境に追放されたというのに、こんな夢みたいに幸せな日々をすごせたことを感謝するべきなのだろうか。
これを運命と受け入れるべきなのだろうか。
「はぁっ⁈ そんなん許せるかぁ!」
無性に腹が立った。
私の視界が真っ赤に染まった。これが怒りというものか。
私はまだ足掻く、足掻いて足掻いてなんとしてもふたりで生き延びる。初めて――生きたいと思ったのだ。なんにだって縋ってやる。理不尽に私の世界を奪われてたまるか。
怒りでクリアになった頭に、自分の胸の奥、暗く深い深いところにある赤い糸――縁が見えた。それをぐっと掴んで引きずり出す。
「伴侶の縁、なんにも役に立ってねぇー!なんとかしろぉー!」
叫びとともに、私の髪が逆立ち炎のように揺らめいた。
掴みあげた糸は、それに呼応するようにびりびりと波打ち、大きな赤い光となって私たちを照らした。
「ロキを助けろ!私の血でも、肉でも、なけなしの魔力でも。全てをくれてやる。お願いだ!」
光はその言葉に答えるように、ロキの体をぶわりと包み込んだ。
血の赤に炎のような光が重なる。ロキはめらめらと焼き尽くされているようにも見えた。
赤いきらめきの中、しゅうしゅうとロキの体が萎んでいく。
「おいっ!もしかして、ロキの体を使ってるのか?やめろっ!」
私がそれに気がついたとき、もう光は消え去っていた。
私の膝の上には、傷が癒えて一回り小さくなったロキがいた。血で汚れてはいるが、すやすやと寝息を立てている。
私の体の倦怠感も消え、魔力が戻ってきたのがわかった。
なんだこれは。
対価というやつか。
この対価は、ロキの巨大な体?
私が髪に魔力を宿すように、あの大きすぎる体にもなにか力が宿っていたのだろうか。
私はクロのしたり顔を思い出した。
ロキの口元がむにゃむにゃと動いた。
頭を撫でてやると、えへへと言わんばかりに鼻の下が長くなった。
意識はないが、もう苦しくはないようだった。
小さくなったといっても、私よりはまだ大きい。こうして見ると、普通の青年みたいだった。
「かわいいかわいいロキ、おまえが助かってよかった……」
あなたにおすすめの小説
ボクが追放されたら飢餓に陥るけど良いですか?
音爽(ネソウ)
ファンタジー
美味しい果実より食えない石ころが欲しいなんて、人間て変わってますね。
役に立たないから出ていけ?
わかりました、緑の加護はゴッソリ持っていきます!
さようなら!
5月4日、ファンタジー1位!HOTランキング1位獲得!!ありがとうございました!
婚約破棄させた愛し合う2人にザマァされた俺。とその後
結人
BL
王太子妃になるために頑張ってた公爵家の三男アランが愛する2人の愛でザマァされ…溺愛される話。
※男しかいない世界で男同士でも結婚できます。子供はなんかしたら作ることができます。きっと…。
全5話完結。予約更新します。
長年仮番として務めてきましたが、王子は正式な番を娶るそうです
けふ
BL
王都を守る巨大結界は、王族の魔力によって維持されている。
第二王子アデルの傍らには、常に一人の騎士がいた。
近衛騎士レオン。
彼は長年、王子の「仮番」として特別な任務を担っている。
しかし王子は、他国の王女との正式な番契約が決まってしまった。
仮番の役目は、そこで終わるはずだった。
だが結界塔で行われる儀式の中で、
二人の関係は次第に変わり始める。
王族と騎士。
主と臣下。
越えてはならない境界を前にしても、
王子は騎士の手を取る。
「共に立て」
※オメガバースではありません
※ふんわり読んでください
※なんでも許せる方向け
※イラストはChatGPTさん
運命の番は僕に振り向かない
ゆうに
BL
大好きだったアルファの恋人が旅先で運命の番と出会ってしまい、泣く泣く別れた経験があるオメガの千遥。
それ以来、ずっと自分の前にも運命の番があらわれることを切に願っていた。
オメガひとりの生活は苦しく、千遥は仕方なく身体を売って稼ぐことを決心する。
ネットで知り合った相手と待ち合わせ、雑踏の中を歩いている時、千遥は自分の運命の番を見つけた。
ところが視線が確かに合ったのに運命の番は千遥を避けるように去っていく。彼の隣には美しいオメガがいた。
ベータのような平凡な見た目のオメガが主人公です。
ふんわり現代、ふんわりオメガバース、設定がふんわりしてます。
完結しました!ありがとうございました。
神子の余分
朝山みどり
BL
ずっと自分をいじめていた男と一緒に異世界に召喚されたオオヤナギは、なんとか逃げ出した。
おまけながらも、それなりのチートがあるようで、冒険者として暮らしていく。
途中、長く中断致しましたが、完結できました。最後の部分を修正しております。よければ読み直してみて下さい。
有能すぎる親友の隣が辛いので、平凡男爵令息の僕は消えたいと思います
緑虫
BL
第三王子の十歳の生誕パーティーで、王子に気に入られないようお城の花園に避難した、貧乏男爵令息のルカ・グリューベル。
知り合った宮廷庭師から、『ネムリバナ』という水に浮かべるとよく寝られる香りを放つ花びらをもらう。
花園からの帰り道、噴水で泣いている少年に遭遇。目の下に酷いクマのある少年を慰めたルカは、もらったばかりの花びらを男の子に渡して立ち去った。
十二歳になり、ルカは寄宿学校に入学する。
寮の同室になった子は、まさかのその時の男の子、アルフレート(アリ)・ユーネル侯爵令息だった。
見目麗しく文武両道のアリ。だが二年前と変わらず睡眠障害を抱えていて、目の下のクマは健在。
宮廷庭師と親交を続けていたルカには、『ネムリバナ』を第三王子の為に学校の温室で育てる役割を与えられていた。アリは花びらを王子の元まで運ぶ役目を負っている。育てる見返りに少量の花びらを入手できるようになったルカは、早速アリに使ってみることに。
やがて問題なく眠れるようになったアリはめきめきと頭角を表し、しがない男爵令息にすぎない平凡なルカには手の届かない存在になっていく。
次第にアリに対する恋心に気づくルカ。だが、男の自分はアリとは不釣り合いだと、卒業を機に離れることを決意する。
アリを見ない為に地方に移ったルカ。実はここは、アリの叔父が経営する領地。そこでたった半年の間に朗らかで輝いていたアリの変わり果てた姿を見てしまい――。
ハイスペ不眠攻めxお人好し平凡受けのファンタジーBLです。ハピエン。
「出来損ない」オメガと幼馴染の王弟アルファの、発情初夜
鳥羽ミワ
BL
ウィリアムは王族の傍系に当たる貴族の長男で、オメガ。発情期が二十歳を過ぎても来ないことから、家族からは「欠陥品」の烙印を押されている。
そんなウィリアムは、政略結婚の駒として国内の有力貴族へ嫁ぐことが決まっていた。しかしその予定が一転し、幼馴染で王弟であるセドリックとの結婚が決まる。
あれよあれよと結婚式当日になり、戸惑いながらも結婚を誓うウィリアムに、セドリックは優しいキスをして……。
そして迎えた初夜。わけもわからず悲しくなって泣くウィリアムを、セドリックはたくましい力で抱きしめる。
「お前がずっと、好きだ」
甘い言葉に、これまで熱を知らなかったウィリアムの身体が潤み、火照りはじめる。
※ムーンライトノベルズ、アルファポリス、pixivへ掲載しています