オレの番になって──異世界に行って愛猫の番にされる話

まめ

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首都

25 黒髪の獣人

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徐々に体が回復するにつれ、男性に対する恐怖も、ほんの少しずつではあるが克服しつつあった。
体は相変わらず震えてしまうけれど、目を伏せていれば男性からの治療や手当てもなんとか耐えることができた。
顔を見たり、目を合わせるのはまだ怖かったが、距離さえ取っていれば同じ部屋にいるのも平気になってきた。

今、ぼくは教会の中の一室にいる。
とはいえ、教会の大部分の人間はぼくを疎ましく思っているようで――まるで「早く出ていけ」と言わんばかりの態度だった。しかし、まだ立つことすらできない。
そんな中で、この部屋を守るようにして、外で見張りについてくれているのが、何人かの獣人たちだった。
遠くから、そっと彼らの姿を眺めていると、その中に、あの日ぼくを暴力をふるう司祭から救ってくれた獣人の姿があった。
金色の目。黒い髪、黒い耳、黒いしっぽ。
その色合いは、ネロを思い出させた。
彼はいつも、ぼくが怯えないように、少し距離を取って見守ってくれている。目を合わさず、話しかけて来ることもない。
その一歩おいた心遣いが、何よりありがたかった。

ネロに会いたくてたまらなかった。
ライとレフが帰ってきたら、探してくれるだろうか…… 
猫は気まぐれと言うが、ネロもどこかに行ってしまったのだろうか。恋人に捨てられたような気分だ。
「ネロに会いたいな」と独り言を漏らしたら、スミが「それはどなたですか?」と聞いてきた。
「ぼくの恋人」と返しておいた。……嘘つきです。  
   
***

――ネロの夢を見ていた。
ふかふかの毛並みを撫でながら、あたたかい胸に抱かれ、いつもみたいにざりざりの舌で頭や顔をいっぱいなめられて、ぼくはうれしくていっぱい泣いた。
もうどこにも行かないでって、離さないでって、体にぎゅっと巻き付いて、ようやく会えた幸せでいっぱいになった。
それなのに――目覚めたら、ぼくを抱きしめていたのは黒髪の獣人だった。

「ひぃっ、いやぁぁぁぁぁ!」

驚いたぼくは、必死で彼から離れようとしたのに、怖くて体が動かなくなってしまった。ひゅーひゅーと息が漏れるだけだった。
彼は傷ついた表情でぼくから体を離すと、ぽつりと「ごめん……」と言った。

――そのとき、部屋のドアを蹴破る勢いで男が乱入してきた。
あの時、ぼくに乱暴した司祭だった。

「神子ぉ!おまえのせいでこの国はめちゃくちゃだ!死んで責任をとれ!」
 
司祭は、勢いよく短剣を振りかざし、ぼくを刺そうとした。

「周!危ないっ!」

黒髪の彼が、ぼくを守るように前に飛び出す。そして、司祭の持つ短剣で腹を刺された。
それでも、彼はひるむことなく応戦し、司祭を殴り倒した。
床には気を失った司祭と、腹から血を流す黒髪の獣人――彼の体が一回り小さくなり、黒く艶やかな毛並みに覆われ……
 
そこに倒れていたのは、ネロだった――

「っ、ネロ!ネロ!なんで?なんで獣人に?
ネロ、ねぇ、ネロ、死なないで!ネローーー!」 

泣き叫ぶぼくの声で、部屋にかけつけた警備の獣人たちが、司祭を縛り上げた。そして、ネロの腹を布で止血し、応急処置をしてくれた。
ネロは、ぼくの愛しい黒猫は、笑うように顔を歪めて

「がう……」

って言った。       
         
    
         

    
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