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番──つがい
32 最終話(前半周視点・後半ネロ視点)
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それから、ぼくとネロのふつうの毎日が始まった。
主食はりんご、たまに卵を食べて、たまに会うオギューさんやミノンからお菓子をもらうこともある。都でいろいろあったせいで、質素な食生活で満足してしまっている。しかし、りんご――幻の果実を食べ、聖水を飲むぼくたちは、人から見ればとても贅沢ではあるのだ。
そして、少しずつ年は過ぎて、ミノンは大きなヤギ獣人に成長していたし、いつのまにかお嫁さんや子供まで出来ていた。
ぼくとネロだけを置いて、時間はどんどん過ぎていく。膨大な時間を、ぼくはネロとともに森を歩き、移り変わる季節を楽しみ、時に読書をしながら過ごした。神様のくれた本棚は、どれだけ本を読んでも、不思議と尽きることがなかった。オギューさんや周りの獣人たちから、相談されることもあり、ぼくは本で得た知識を使って彼らの力になった。
いつしか長い時がたち、昔からの知り合いはみんな命の流れに還ってしまった。けれど彼らのつないだ新しい縁が、今もぼくを頼ってくれる。それにこころよく応えているうちに、獣人たちの間で、ぼくは「緑の賢者」と呼ばれるようになっていた。
そんなぼくのとなりにはずっとネロがいた。
かわいいかわいいぼくの黒猫、愛しい獣人、ネロ。
どれだけいっしょにいても飽きることのない、ぼくの大事な番。
ぼくの首の後ろには、ネロの歯型がついている。これは番の証なのだそうだ。
精霊ライとレフが、その傷跡を消したがっているのをぼくは知っている。
ぼくたちには、結婚という枠組みはなく、指輪もなにもない。けれど、精霊にはただの傷跡にしか見えない歯の跡が、大事な番の証というのは、控えめだけど、ぼくたちらしい愛のしるしだと思った。
ぼくはネロと愛し合うのが好きになった。たまに長く伸びた髪を結び、ネロにうなじをちらりと見せてお誘いをする。ネロがこの跡を見るのがとても好きで興奮してしまうのを、知っているから。
いつも彼は、もう好きで好きでたまんないってデレた顔で近づいてきては、
「あまねは、ずーっとオレのものだからねっ!」と、ぼくをぎゅうぎゅうに抱きしめる。ぼくは照れながらネロにぎゅっと巻き付いて、ベッドまで運ばれるのだ。このお誘いに毎回飽きずにのってくれるネロってやさしい。だって、言葉にするのはやっぱり恥ずかしいからね。
どれだけ抱き合っても、体を重ねても、うれしいという気持ちが尽きることはない。ネロはぼくのうれしいの源だ。
ぼくたちは……ぼくとネロは、いつまでも幸せに暮らしましたとさ。なんてね。
――だけど、きっとこれが終わりじゃない。
風が木々を揺らしてまわるように。
水が天と地を循環するように。
いつか、ぼくたちも命の流れに還っていくのだろう。
そのときも、ネロと――またどこかで出会えるといい。
***
神の高台に帰ってきてから、長い月日がたった。昔の世界で言うと100年は経ってる。
最初の頃に知り合った獣人たちは、みな孫の代になってるみたいだけど、顔をよく覚えていないので自信がない。ちなみに名前も覚えていない。
周は本で読んだ知識を生かして、獣人たちの相談役みたいなことをしている。あいつは、お人好しで面倒見がいいから。
あとから仲間に入った、炎の精霊バァルは、オレの加護となった。オレの戦闘力が高まったことにより、周の平和はずっと守られている。とはいえ、もう高台の神子に手を出す者はいない。人間たちが軽はずみに周に手を出したあげく、隷属の首輪が無くなり、社会の根幹からひっくり返されることになったのは、長い年月がたった今でも語り継がれている。ほんと、ざまあみろだ。
どれだけ時が経っても、あまねは色褪せない。いつもにこにこして、睦み合うときはとんでもなくエロくて、最高にかわいい。
慎ましく真っすぐなあまね、オレだけの愛しいあまね。オレの大事な番。
オレたちは年をとらないようだけど、ずっとこのままとは限らない。いつか離れるときが来ることがあったとしても、この生が終わってしまったとしても、姿形が変わってしまったとしても、絶対に、絶対にまたあまねを探しだしてみせる。世界を越えたオレの執着をなめんなよ。
そして、オレたちはまた最初から始めるんだ。
オレはきっと照れながら言うんだろう。手を差し出したりなんかして――
「オレの番になってください」ってね。
――オレの番になって──異世界で愛猫の番にされる話――終わり――
ついに完結しました。
ここまでお付き合いくださり、ありがとうございました。
最後まで書けたのは、読んでくださったみなさまのおかげです。感謝いたします。
主食はりんご、たまに卵を食べて、たまに会うオギューさんやミノンからお菓子をもらうこともある。都でいろいろあったせいで、質素な食生活で満足してしまっている。しかし、りんご――幻の果実を食べ、聖水を飲むぼくたちは、人から見ればとても贅沢ではあるのだ。
そして、少しずつ年は過ぎて、ミノンは大きなヤギ獣人に成長していたし、いつのまにかお嫁さんや子供まで出来ていた。
ぼくとネロだけを置いて、時間はどんどん過ぎていく。膨大な時間を、ぼくはネロとともに森を歩き、移り変わる季節を楽しみ、時に読書をしながら過ごした。神様のくれた本棚は、どれだけ本を読んでも、不思議と尽きることがなかった。オギューさんや周りの獣人たちから、相談されることもあり、ぼくは本で得た知識を使って彼らの力になった。
いつしか長い時がたち、昔からの知り合いはみんな命の流れに還ってしまった。けれど彼らのつないだ新しい縁が、今もぼくを頼ってくれる。それにこころよく応えているうちに、獣人たちの間で、ぼくは「緑の賢者」と呼ばれるようになっていた。
そんなぼくのとなりにはずっとネロがいた。
かわいいかわいいぼくの黒猫、愛しい獣人、ネロ。
どれだけいっしょにいても飽きることのない、ぼくの大事な番。
ぼくの首の後ろには、ネロの歯型がついている。これは番の証なのだそうだ。
精霊ライとレフが、その傷跡を消したがっているのをぼくは知っている。
ぼくたちには、結婚という枠組みはなく、指輪もなにもない。けれど、精霊にはただの傷跡にしか見えない歯の跡が、大事な番の証というのは、控えめだけど、ぼくたちらしい愛のしるしだと思った。
ぼくはネロと愛し合うのが好きになった。たまに長く伸びた髪を結び、ネロにうなじをちらりと見せてお誘いをする。ネロがこの跡を見るのがとても好きで興奮してしまうのを、知っているから。
いつも彼は、もう好きで好きでたまんないってデレた顔で近づいてきては、
「あまねは、ずーっとオレのものだからねっ!」と、ぼくをぎゅうぎゅうに抱きしめる。ぼくは照れながらネロにぎゅっと巻き付いて、ベッドまで運ばれるのだ。このお誘いに毎回飽きずにのってくれるネロってやさしい。だって、言葉にするのはやっぱり恥ずかしいからね。
どれだけ抱き合っても、体を重ねても、うれしいという気持ちが尽きることはない。ネロはぼくのうれしいの源だ。
ぼくたちは……ぼくとネロは、いつまでも幸せに暮らしましたとさ。なんてね。
――だけど、きっとこれが終わりじゃない。
風が木々を揺らしてまわるように。
水が天と地を循環するように。
いつか、ぼくたちも命の流れに還っていくのだろう。
そのときも、ネロと――またどこかで出会えるといい。
***
神の高台に帰ってきてから、長い月日がたった。昔の世界で言うと100年は経ってる。
最初の頃に知り合った獣人たちは、みな孫の代になってるみたいだけど、顔をよく覚えていないので自信がない。ちなみに名前も覚えていない。
周は本で読んだ知識を生かして、獣人たちの相談役みたいなことをしている。あいつは、お人好しで面倒見がいいから。
あとから仲間に入った、炎の精霊バァルは、オレの加護となった。オレの戦闘力が高まったことにより、周の平和はずっと守られている。とはいえ、もう高台の神子に手を出す者はいない。人間たちが軽はずみに周に手を出したあげく、隷属の首輪が無くなり、社会の根幹からひっくり返されることになったのは、長い年月がたった今でも語り継がれている。ほんと、ざまあみろだ。
どれだけ時が経っても、あまねは色褪せない。いつもにこにこして、睦み合うときはとんでもなくエロくて、最高にかわいい。
慎ましく真っすぐなあまね、オレだけの愛しいあまね。オレの大事な番。
オレたちは年をとらないようだけど、ずっとこのままとは限らない。いつか離れるときが来ることがあったとしても、この生が終わってしまったとしても、姿形が変わってしまったとしても、絶対に、絶対にまたあまねを探しだしてみせる。世界を越えたオレの執着をなめんなよ。
そして、オレたちはまた最初から始めるんだ。
オレはきっと照れながら言うんだろう。手を差し出したりなんかして――
「オレの番になってください」ってね。
――オレの番になって──異世界で愛猫の番にされる話――終わり――
ついに完結しました。
ここまでお付き合いくださり、ありがとうございました。
最後まで書けたのは、読んでくださったみなさまのおかげです。感謝いたします。
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ありがとうございます!
いらっしゃいまし!
今、キモくて怖いお話を書いてます。
嫌すぎてみんな泣いちゃうかもしれません。ふふ。
読んでて何回も何回も泣きました( ; ; )感動しました!( ˊ•̥ ̯ •̥`)!!
家を燃やすシーンら辺は本当に悲しかったし、周とネロが会えないのもすごく悲しかったけど、首輪を外してから優しい世界に戻っていって、2人の愛も育まれて、本当に良かったです、、!
本当の愛ってこんなに深いものなんだな、と心が暖かくなりました( ´꒳` )!
また書いて下さい!ありがとうございました!!
感想ありがとうございます!
最後まで読んでいただけて、とてもうれしいです。
周もネロも幸せになりました。
でも、それまでの道程は、読むのも辛かったかもしれません。ごめんなさいね。
私のお話を受け取ってくださり、ありがとうございました。
書いてよかったなあと思いました。