この世を恨んで焼身自殺した俺が転生、ダークフォースで八つ当たり無双!

最果ての気球

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王都の街を縦横無尽に逃げ回っていると、鎧の騎士が現れた

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「ソーマ、こっち!」
「了解!」
 王都の街をいきなり逃避行する羽目になった俺達は、大通りから狭い路地へと入り、入り組んだ場所をぐるぐる回って追ってくる兵士達を撒こうと必死に走った。
 その間、結構な距離を走っているのだが、俺の息は全く切れる事はなく、改めて新しい体のスペックの高さに驚いた程だ。疲れ知らずで、一日歩いても疲れはほとんどなく、野宿しても寝ればすっきり回復する体とか、見た目の細マッチョな体型からは考えられないぐらい頑丈で健康な体だ。
 ただ、そんな事に酔いしれている余裕はなく、今はとりあえず追ってくる兵士達から逃げる事が先決だ。
 俺は先導してくれるミリの指示通りに通りを駆け巡り、時に壁をよじ登って抜けたりしながら、逃げまわった。
 だが、兵士達も執拗に俺達を追ってくる。その姿は次第に増えていき、今では両手の指じゃとても数えられないくらいに増えている。
 なぜこうも執拗に追いかけてくるのだろうか? まぁ、こっちも必死で逃げていればこそかもしれないが、あまりにも相手が必死過ぎる。
「ったく。いい加減諦めてくれればいいものを。煩わしいぜ」
 思わず本音が口を吐く。とは言っても誰にとがめられるわけでもないが。
 が、そんな俺の言葉を重く受け止める相手がいた。
「あの……申し訳ありません」
 消えてしまいそうな声で、ティーカが謝罪する。その声にしまったと思ったが、時は既に遅く、彼女はそのまま続けた。
「私が殺した騎士団長は、王国の中でも随一の剣の腕を持ち頭も切れる方でした。彼はいち早く魔族の侵入を察知し、彼らを討とうとしたのです。彼は王国が持つ神から与えられた聖剣の使い手でもあり、魔族とてその力の前には無力でした。だから、彼らは邪魔な彼を私に始末させたんです」
「あ~、なるほど。自分達を害する可能性のある奴をいち早く始末させたわけか。分からんでもないか。つくづく魔族ってのはずる賢くて質の悪いクソ野郎だぜ。自分が手を汚さないで、脅していう事を聞かせてたティーカに手を出させるなんて」
「いいえ。責任は私にあります。私には、彼に助力を求める道もあったかもしれません。でも、それではユーゴの命は助からない。私は弟を守る為にあの方に色仕掛けで近づきその首を掻ききりました。だから、これは当然の報いです」
「何言ってんだ。問答無用で丸腰相手に剣を向けるなんざ、いくら何でも有り得ねぇ。もっとやり方ってモノがあるだろ。ああいう態度は気に入らねぇよ、俺は」
 虚空をにらみ、俺ははっきりと告げる。何の弁明も聞かないまま、従わないなら殺すなんてやり方、いくら何でも居丈高だろ。年末ばっかり張り切って普段から同じように働かない日本の警察だってそんなバカな真似はしねぇよ。
 彼女が罰を受ける事を望んでいるのは昨夜の時点で分かってた事だ。けど、これは違うだろ。
「気に入らねぇ。だからまだ従えない。せめてもっと穏便に済ませられるようになるまでは。こっちの返答聞く前に剣抜いて襲い掛かってくるような奴らにティーカを引き渡せるかよ」
「ソウマさん」
 切なげに、ティーカは俺を見つめる。そうしていると、俺が片腕で抱いてるユーゴがきゃっきゃと笑いだす。
 なんだよ、いきなり。子供ってのはよくわからねぇな。
 などと思っていたら、前方の路地から突然数名の兵士が飛び出してきた。
「クソッ!」
 俺達は慌てて方向転換、別の路地に入って隣の通りへと抜ける。
 しかし、そこには既に数名の兵士達が槍を構えて待ち構えていた。
 俺達は慌てて足を止め、逃げ道を探す。しかしそこは完全に包囲されており、逃げ道は無かった。
「コイツラ、俺達に追いつけないとみて待ち伏せを……ってか、さっきより数増えてるじゃねぇか!」
 油断なく兵士たちを睨み、背後から迫る兵士達を避けて円の中心へ追いやられる。俺はユーゴを下に下ろして周囲を観察する。
 待ち伏せしていた兵士達は最初から追いかけてきている連中とは違い、装備もちゃんとして見える。鎧は新品同然に磨かれ、肩にはこの国のものであろう紋章があり、兜にも飾りがついていて、全面金属製の槍と細かい意匠を凝らした剣を腰に携えている。鎧の下の服もパリッとした制服感のあるものだ。
 どうやら増援みたいだ。しかも、普通の兵士よりも厄介な連中っぽい。まったく面倒な事になったぜ。
「ここまでだ。観念するんだな。神妙にお縄につけ!」
「武器構えて今にも襲い掛かろうとしてる連中に従えるわけねぇだろ! まずは武器をしまえよ! そうじゃなきゃ従えねぇよ!」
「貴様らが抵抗するからだ! 現に逃げ出したというではないか!」
「バカ野郎! さきに剣抜いて襲い掛かってきたのはそこの守衛のおっさんだろ! いい加減にしろ」
 待ち伏せしていた兵士達の言葉に、俺は怒りのまま怒鳴りつける。同時に、いつ襲い掛かられても対処できるよう構えを取る。修行を散々したお陰で、能力を発生させるのには慣れている。今の状況に似た腹の立つ記憶を引用すれば、すぐにでも能力は発揮できるだろう。ムカつく記憶なんて、幾らでも頭の中に眠っている。
「最初から従わねぇとは言ってねぇ。ただ、今のアンタらのやり方には従えねぇよ! 問答無用で俺の仲間に剣を向けてくる奴らなんかにはな! もっと穏便に話を聞くところから始めろ! んなモノ、常識だろ」
「己! 従わぬというならば、貴様らともども成敗してくれるわ!」
「だから話聞けって言ってんだろうが! 居丈高が過ぎる。まずはもっと普通に話をしてくれよ、頼むから」
 湧き上がる苛立ちをどうにか抑え、兵士達に訴える。しかし、彼らのボルテージもいい感じに高まっている。
 というか、最初から最高潮に達している状態だから、かなりおかしなことをしている。ついでにこの状態だと、この先の展開も端から見えている。
「黙れ、暗殺者を庇う小童に小娘め。邪魔するなら貴様から始末してくれるわ!」
 案の定、兵士達の内、リーダー各が指示して兵士達が囲みを狭めてきた。
 あ~、やっぱりこうなるか。仕方ない。
 俺は脳内からこの状況に似た理不尽を思い出した。それは会社員だったころ、必死でやっていても何故か自分だけが袋叩きにされた記憶だ。減俸喰らうまでの流れだって、その過程だった。
「ざけんな! 俺にばっかり仕事押し付けて、てめぇらは楽してた分際で、俺には手伝わせて自分らは手伝わない挙句人をつるし上げとか、人間性が腐ってるんだよ。数の暴力で人にいやがらせしてんじゃねぇよ!!!」
 瞬間、俺の中の怒りが爆発、漆黒の光が全身覆いつくす。激しい光の奔流は天へと上り、凶悪な暴力の気配をこれでもかというぐらいにまき散らした。
「な、なんだ、これは?」
「貴様、その光は一体? 貴様、悪魔の使いか?」
 そんな俺の姿に狼狽した兵士達は、畏怖と驚きの入り混じった顔で叫んだ。
「ざっけんな、ド阿呆! これはな、俺が神様から貰った力だよ! こうなりゃお前らなんざものの数じゃねぇんだよ! 怪我したくなかったら、さっさと白旗上げてちゃんと人の話を聞け!」
 俺は兵士達に向けて叫び返す。正直、このまま引き下がってくれるのが一番手っ取り早い。少なくとも武器を収めて話をまともに聞いてくれるようになってくれさえしたら、いいだけだ。
 それはともかく、言うに事欠いて悪魔の使いってなんだ、こら! ちょっとムカついたぞ。
「舐めるな! この程度で逃げ出したとあっては王国近衛兵の名折れ! 貴様如き、すぐにでも叩きのめしてくれるわ!」
 叫び、囲んでいた兵士達が一斉に俺達の方へ飛び込んでくる。
「ミリ、ティーカ、ユーゴ、三人とも伏せてろ!」
 俺が鋭く指示すると、三人は地面に横たわる。同時に、俺目掛けて迫る銀光沢の槍。それを、俺は避ける事もなくその場にただ立っていた。
 そうして、槍が俺の体から溢れる光に触れた瞬間、音もなくバラバラと砕けていった。
「なにぃぃ~~!」
 突然穂先が粉々に砕け、兵士たちは戦慄する。槍はそのまま根本までバキバキと音を立てて塵へと変える。
 兵士達は何とか踏みとどまり、俺から少し距離を取った。
「貴様、何をした?」
「何も。俺の纏ってる光は、物質だろうが生き物だろうが、触れたモノを問答無用で破壊する力がある。俺は何もしなくても、お前らに俺をどうにかする術はねぇ!」
 戦慄の表情で問う兵士達に、俺は大声で言い返した。そして、彼らを見回しながら更に続ける。
「どうする? お前らのへなちょこ装備じゃ、俺には通用しねぇ! どうする? 降参するか?」
「くッ……」
 兵士達は先ほどより更にあからさまに焦りを浮かべる。だが、すぐに気を取り直し、腰の剣を抜く。
「そんな事で我らは屈しはせんぞ! 喰らえ、罪人ども!」
 そうして、彼らは鋭い剣劇を俺に浴びせようとする。しかし、その攻撃も俺の体に届くことはなく、光に触れた瞬間、剣は塵に返って消えてしまった。
 得物を失い、たたらを踏む兵士達。それを冷めた目で見つめ、俺は足に意識を集中させると地面を蹴りつけた。
 途端、兵士達が立っていた地面が盛り上がり、彼らはバランスを崩して大きく後ろへ吹き飛ばされる。
 これが修行の成果。自身の纏う漆黒の光を自在に操り、様々な現象を引き起こす。今のは足の裏を通じて地面に能力を流し、それらを爆発させる事によって衝撃波を発生させたのだ。ティーカに襲われた時に偶然起きた現象で、彼女が何故漆黒の光の爆発で死ななかったかの答えでもある。この能力は爆発すると、周囲の範囲に衝撃波を発生させる力を持つのが分かった。ソレの応用で、無駄に人を傷つけずに戦う事が出来るようになった。
 問題は威力が基本的に高い為、結局のところ割と大きなダメージを相手に負わせてしまう事。現に吹っ飛ばされた兵士達は地面に強かに叩きつけられ、起き上がれない程の怪我を負わせてしまっている。能力を敢えて使い切る為に纏った光を全部叩きつけたから、思いのほか威力が上がったようだ。
「どうだ? もう動けないだろ。もう諦めろ。お前らじゃ、俺にはどう逆立ちしても勝てないって、今の事で分かったろ。分かったなら、まずは俺達の話を聞いてくれ」
 そう叫び、背後に控えていたもともと追跡してきた兵士達にも目を向ける。
「お前らもだ。俺にはどう逆立ちしても勝てないぞ? もっと穏便に、武器を構えて脅すんじゃなくて、ちゃんと話を聞けってんだ。ティーカには、已むにやまれぬ事情があったんだよ。俺は別に事を構える気なんかねぇ。襲われたから抵抗してるだけだ。これ以上やるってんなら、命は無ぇぞ」
「ほぉ。罪人がいっちょ前の事を言うではないか」
 と、俺が兵士達を威嚇して、どうにか場を収めようという時、突然そんな声が聞こえた。
 それは苦悶の様子で倒れる兵士達ややじうまの列の後ろから聞こえてきた。
 なんだ?とそちらを振り向けば、人込みの雑踏を優雅に歩く何者かの姿があった。
「罪人は所詮、罪人。そこにはどんな理由があろうと変わらぬ。いかなる場合においても、罪人を裁く事は優先せねばならない!」
 そうして、人込みを抜けて俺達の目の前に現れたのは、全身甲冑、露出一切なしの西洋の騎士が着ていそうな鎧だ。その鎧には、先ほど倒した兵士達の肩の紋章と同じものと、また別の印があった。
 彼、なのか彼女なのか分からない自分は、身構える。
 それは全身甲冑を来た西洋の騎士だった。フルフェイスマスクに全身隙間なく覆われた銀色の鎧と、質素だが一目で業物だと分かる剣。只者ではない気配が漂う。
 コイツは今まで相手にしてた兵士達とは格が違う。そう俺の第六感が告げている。
「罪人とそれを庇いだてする者よ。貴様らな我らが王国に害をなした。故に償わせねばならんのだ!」
「なんだ、お前。親玉か?」
 思いがけない強敵の出現に、地面に伏せている三人を守るように対峙する。
 対して、全身武装の騎士は兵士達に道を開けさせ、俺達の方へと歩み出た。
「わらわの事を知らぬか、小童。わらわはアンゼリカ。ヴァルトベルグの王女にして、将軍を任された者だ。騎士団長殺しの下手人が現れたと聞き、我が兵を率いて城下に降りてきたが、よもや貴様のような男がいるとはな」
 立ち止まり、鎧の騎士は名乗りを上げる。王女って姫様? 待て。すげぇ強そうだけど、本当にお姫様なのか?
「姫将軍アンゼリカ。聞いた事があります。ヴァルトベルグ王は男児を授からなかったが、代わりに第一王女が戦士として前線に立っていると。その力は無双。現ヴァルトベルグにおける戦士たちの象徴」
「ちッ。やっぱとんでもない相手みたいだな」
 ティーカの解説を聞き、俺は頬から冷や汗が垂れていくのを感じる。兵士達を無力化すれば終わりだと思っていたが、まさかこんな相手が出てくるとは。
 一目で只者じゃないと分かるような相手と一戦交えるのは勘弁だし、今から雇ってもらおうっていう国のお姫様と戦う事は避けて通りたい。ここはどうにか穏便に済ます方法は無いか。まぁ、襲われたとは言え、俺達ももろに反撃して逃げた手前、あまり偉そうには言えないかもしれないけど、ともかくここは穏便に、だ。
「おい、姫様よ~。ここにいるお歴々は俺達が怪しいと見るや、話もまともに聞かずに剣抜いて襲い掛かってきたんだぜ。従う従わない以前に攻撃されちゃ、俺達だってたまらねぇ。どう考えてもこの状況、アンタたちの方に非があると思うんだが?」
 その考えに従って、俺はまずは説得を試みる。これでどうにか彼女を説得出来たら、ひとまずこの騒ぎは収められる。国のお偉いさんだし、兵士達よりはまともに話が出来ると信じたい。
「なるほど。そうか。いくら罪人と言えど、いきなり斬りかかられれば逃げもするか」
 その願いが通じたか、アンゼリカ姫はその意見を理解してくれた。なんか話通じそうだな。良かった。
「最初にこの者達を追っていたのはその方だな? 問答無用で斬りかかったのは誠か?」
 そうして、彼女は俺達の包囲に加わっていた兵士達に向けて問う。その言葉に、兵士達は色めき立つ。
「いえ。その者達が抵抗しようとしたので止むを得ず……」
「嘘つけ、おっさん。アンタ、いきなり剣抜いて是非も聞かずに飛び込んできたじゃねぇか。だから俺達も逃げるしかなくなったんだよ。それに、元々ティーカは用事が済んだら裁きを受けるつもりでもあったんだ。それをいきなり絡んできたのはそっちだろうが!」
 言い淀む兵士の一人に、俺はびしっと指を指してツッコミを入れた。実際、彼はこっちの返答など聞く間もなくいきなり襲ってきた。あれで、要求に従えは流石にアホ過ぎる。
「その男が嘘をついているようには思えぬな。お主も心にやましいものを感じるぞ。どうやら、正しいのはお前のようだな、小童」
 そうアンゼリカ姫が口にすると、俺はひそかにガッツポーズした。どうやらこのふざけた状況は解決できそうだ。
「お前達、今回の件、緊急の事ゆえ罰は与えぬ。ただし、そのような事は二度と起こすな。罪人と言えど人の子。問答無用で斬りかかられれば逃げ出すのが必定。我が国は法を重んじる。罪人と言えど、裁きも受けぬまま殺す事は許されん。そなたらはすぐに持ち場に戻れ。この件、わらわに任せてもらう」
「はッ。かしこまりました、姫様!」
 素早く跪き、兵士たちは慌ててその場を後にした。残ったのは待ち伏せしていた兵士達とアンゼリカ姫のみ。
 ここまでくれば、後はまともに事態が解決するだろう。俺はそう思った。
「さて、小童。そなたらの事だが……」
 すると、アンゼリカ姫から声がかかる。俺は内心ほっとしつつ、顔だけは真剣なまま次の言葉を待つ。
「問答無用で斬りかかられた故に逃げ出した。それは理解した。しかし、そこの娘に暗殺の嫌疑がかかっている事は事実。大人しくついてきてもらおうか。ただ、我が国の勇猛なる騎士団長を手にかけたとあらば、裁きの場に出ようとも死罪は確実だがな」
 とか思ったら、いきなり不穏な事を言い出され、俺は戦慄する。人殺したのは事実だけど、いきなり死罪だとか言われて黙っていられるわけもない。
「待てって! ティーカは確かに暗殺を実行したけど、それにはちゃんとした理由があるんだよ。彼女は魔族に捕まってて、ここのユーゴを人質に取られ仕方なく命令に従わされただけだ! 悪いのは魔族の方で、彼女は悪事の片棒を担がされただけだ」
「なるほど。魔族か……そのような絵空事、わらわに通じると思うなよ。ならば何故、その娘は無事にこのヴァルトベルグ城下にいるのだ。その魔族とやらはどうした? よもやお主らが魔族の仲間だというか?」
「んなわけあるか。俺とミリは彼女の事情を聞いて、ユーゴを助け出して、それから魔族の連中も俺達が片付けた。だから俺達は一緒に王都まで来たんだよ」
「魔族を片付けただと? 貴様、妄想も大概にしておけ。貴様のような小童に魔族の相手など出来る筈がない」
「そっちこそ舐めるんじゃねぇよ。俺はアンタの自慢の部下たちを指一本触れずに無力化したんだ。魔族の相手ぐらい余裕だ、余裕」
 俺の弁明から始まった問答は、徐々にエスカレートしていく。アンゼリカ姫の物言いに、俺の口からは普段なら絶対出ないような言葉が飛び出した。売り言葉に買い言葉とはこのことか。穏便に済むかと思いきや、またも物騒な事になりかけ、内心焦りでいっぱいだったから余計な言葉が飛び出した。
「アンタらが束になろうが、俺には勝てない。それはさっき証明したぞ。どうしてもティーカを殺そうってんなら、相手になってやるぜ! この子は今までひどい目に遭ってきたんだ。みすみす殺させてなんかたまるかよ!」
 そうして、溜まった怒りが口から飛び出ていた。同時に、全身から漆黒の光が迸る。
「ほぉ、言ったな。ならばわらわに勝って見せるがいい。その大口に見合う実力を示したならば、そなたの言う事、聞いてやろうではないか」
 俺の言葉に対応して、アンゼリカ姫も手にした剣をこちらへ突きつける。
「では貴様に決闘を申し込む。ただし、その過程で死のうとも恨むな。わらわも手加減はせんからな!」
「ああ。どっからでもかかってこいよ、姫様!」
 そうして、俺はアンゼリカ姫の方へと足を向ける。すると、誰かが服の裾を掴んだ。振り向けば、ティーカが不安そうな顔で俺を見つめていた。
「ソウマさん。危険です。姫将軍と決闘なんて。この状況は私のせいなのに」
「安心しろ。負けたりはしねぇよ。絶対に守ってやるからな」
 それを落ち着かせるためにわざとらしく笑う。彼女はそれでも不安そうな目でこちらを見つめていたが、袖を掴む腕は力をなくしてすとんと落ちた。
 俺はもう一度彼女に笑いかけ、そのまま踵を返して再びアンゼリカの方へと踏み出す。
「行け~、ソーマ。わからずやなんかやっつけちゃえ!」
 その背中に、ミリの声援が届く。それには振り向かず、腕を上げて答え、俺はアンゼリカと真正面から対峙する。
「覚悟は良いか?」
「ああ。いつでも来いよ!」
 そうして、俺とアンゼリカ姫との戦いが始まった。
 あ~、怒りに任せたとは言え、どうしてこうなるんだか。ほんと、こっちに来てからの俺、結構喧嘩っ早くなってる気がする。でも、こうなったらやるしかねぇ。やってやるよ!
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