悪役令嬢のせいで婚約破棄してくれてありがとう。私は本当に好きな人と幸せに暮らします。

朱之ユク

文字の大きさ
1 / 1

婚約破棄は大歓迎です

しおりを挟む
「みんな聞いてくれ! 俺は今日この場所でスカーレットとの婚約を正式に破棄する!」

 舞踏会の会場に響き渡る声でそれを言ったのはこの国の第二王子であるグレイだ。スカーレットと相対しながら彼は全員に聞こえる声でそれを言った。
 当然公衆の面前で婚約破棄をされたスカーレットは非常にショックをうけている……。

(ふふ。これですべて上手くいったわ)

 と言うわけではなかった。

「スカーレット! 貴様はマナーは守れないわ、真面目に授業を受けないわでまったく俺の好みではない。そんな女と結婚なんて御免だ。これは全て貴様が悪い! これを理解すべきだな」

(まんまとひっかかってくれたわね)

 みながスカーレットの方を見ている中でスカーレットはこれまでの作戦を思い返す。
 大勢での食事会の時、わざとみんなの前で食べ綺麗なほどの多くの料理を注文して、予想通りに食べきらないことでみんながスカーレットのことをマナーが悪い存在だと思わせたり、王子に対してわざと嫌味なことを言ったり、友達に頼んでわざとスカーレットが王子の悪口をいったいしているという嘘を流してもらったりしたことで、王子はきっと私スカーレットのことを嫌いになってしまったのだろう。
 だけど、それはすべてスカーレットの作戦だ。

(よくやった私。これで婚約破棄をされることでしっかりと本当に好きな人と結婚することができる)

 大衆の中に一人だけ目立った服装をしている人を見る。彼と目が合う。
 彼の名前はスカイ。私の幼馴染であり、幼いころに結婚を約束したくらい仲の良かった二人だった。

(よくやくスカイと幸せになれる)

 これまで王子に嫌われようとしてきたのは王子が私のことを性的な目で見させないためだ。そうすることに寄手t王子の御手付きにならないように気を付けたのだ。
 結婚するのに処女じゃないなんてスカイに顔向けができない。
 
「スカーレット。お前の悪行はさんざん聞いている。俺はお前とは結婚できん。代わりに新たな婚約者を立てる。それはこのアンジェリカだ」

 グレイ王子がそう言うと明らかに周囲の生徒がドン引きしたような声をあげた。
 そして、それはスカーレットも同じ気持ちだ。

(女の子なんてたくさんいるのにどうしてアンジェリカなんて選んだの? だって、みんなの中で有名な悪役令嬢じゃない)

 アンジェリカは年下の気に入らない子や、自分よりかわいい子をこぞっていじめる最低な人間だ。それなのにどうしてそんな相手をわざわざ婚約者に選んだのだろうか? と言う疑問がスカーレットの中に生まれてくる。わざわざ率先して付き合おうと思うような相手ではないと思うのだが。

(まあ、やっぱり体で選んだんでしょうね? アンジェリカはスタイル良いから。そして、キモイ)

「この変態め」
「お前なんかに言われる筋合いはない。いいからお前とは婚約破棄だ!」

(ふん、ありがとう! 婚約破棄してくれてうれしいわ!)

 舞踏会が終わる頃にはみんなグレイバカだなという雰囲気に包まれていた。ほとんどのものは悪役令嬢のアンジェリカと婚約したグレイをバカにしたものだったが、その中にはすべての真相をしっているスカーレットのすごいと思うものもいた。

 その一方でスカーレットは本当にすきだったスカイと会場を離れて二人だけの世界を作っている。

「なあ、スカーレット。あんなことがあったばかりだけど、僕と結婚してくれないか?」
「もちろん。ずっと好きだったよ」
「僕もだ。一緒に幸せになろう」


 その後、十年でグレイ王子とスカーレットは対極的な人生を送っていた。グレイは妻のアンジェリカが財を浪費したり、使用人を適当に扱ったりで問題行動を起こしているのと、スカーレットは子供が二人出来てどちらも健康に育てることができている幸せな人生を送っていた。

 どちらがより幸せな人生だったかは言うまでもなかった。
しおりを挟む
感想 0

この作品の感想を投稿する

あなたにおすすめの小説

『二流』と言われて婚約破棄されたので、ざまぁしてやります!

志熊みゅう
恋愛
「どうして君は何をやらせても『二流』なんだ!」  皇太子レイモン殿下に、公衆の面前で婚約破棄された侯爵令嬢ソフィ。皇妃の命で地味な装いに徹し、妃教育にすべてを捧げた五年間は、あっさり否定された。それでも、ソフィはくじけない。婚約破棄をきっかけに、学生生活を楽しむと決めた彼女は、一気にイメチェン、大好きだったヴァイオリンを再開し、成績も急上昇!気づけばファンクラブまでできて、学生たちの注目の的に。  そして、音楽を通して親しくなった隣国の留学生・ジョルジュの正体は、なんと……?  『二流』と蔑まれた令嬢が、“恋”と“努力”で見返す爽快逆転ストーリー!

婚約破棄を伝えられて居るのは帝国の皇女様ですが…国は大丈夫でしょうか【完結】

恋愛
卒業式の最中、王子が隣国皇帝陛下の娘で有る皇女に婚約破棄を突き付けると言う、前代未聞の所業が行われ阿鼻叫喚の事態に陥り、卒業式どころでは無くなる事から物語は始まる。 果たして王子の国は無事に国を維持できるのか?

後悔などありません。あなたのことは愛していないので。

あかぎ
恋愛
「お前とは婚約破棄する」 婚約者の突然の宣言に、レイラは言葉を失った。 理由は見知らぬ女ジェシカへのいじめ。 証拠と称される手紙も差し出されたが、筆跡は明らかに自分のものではない。 初対面の相手に嫉妬して傷つけただなど、理不尽にもほどがある。 だが、トールは疑いを信じ込み、ジェシカと共にレイラを糾弾する。 静かに溜息をついたレイラは、彼の目を見据えて言った。 「私、あなたのことなんて全然好きじゃないの」

冤罪で婚約破棄したくせに……今さらもう遅いです。

水垣するめ
恋愛
主人公サラ・ゴーマン公爵令嬢は第一王子のマイケル・フェネルと婚約していた。 しかしある日突然、サラはマイケルから婚約破棄される。 マイケルの隣には男爵家のララがくっついていて、「サラに脅された!」とマイケルに訴えていた。 当然冤罪だった。 以前ララに対して「あまり婚約しているマイケルに近づくのはやめたほうがいい」と忠告したのを、ララは「脅された!」と改変していた。 証拠は無い。 しかしマイケルはララの言葉を信じた。 マイケルは学園でサラを罪人として晒しあげる。 そしてサラの言い分を聞かずに一方的に婚約破棄を宣言した。 もちろん、ララの言い分は全て嘘だったため、後に冤罪が発覚することになりマイケルは周囲から非難される……。

そちらがその気なら、こちらもそれなりに。

直野 紀伊路
恋愛
公爵令嬢アレクシアの婚約者・第一王子のヘイリーは、ある日、「子爵令嬢との真実の愛を見つけた!」としてアレクシアに婚約破棄を突き付ける。 それだけならまだ良かったのだが、よりにもよって二人はアレクシアに冤罪をふっかけてきた。 真摯に謝罪するなら潔く身を引こうと思っていたアレクシアだったが、「自分達の愛の為に人を貶めることを厭わないような人達に、遠慮することはないよね♪」と二人を返り討ちにすることにした。 ※小説家になろう様で掲載していたお話のリメイクになります。 リメイクですが土台だけ残したフルリメイクなので、もはや別のお話になっております。 ※カクヨム様、エブリスタ様でも掲載中。 …ºo。✵…𖧷''☛Thank you ☚″𖧷…✵。oº… ☻2021.04.23 183,747pt/24h☻ ★HOTランキング2位 ★人気ランキング7位 たくさんの方にお読みいただけてほんと嬉しいです(*^^*) ありがとうございます!

「婚約破棄だ」と叫ぶ殿下、国の実務は私ですが大丈夫ですか?〜私は冷徹宰相補佐と幸せになります〜

万里戸千波
恋愛
公爵令嬢リリエンは卒業パーティーの最中、突然婚約者のジェラルド王子から婚約破棄を申し渡された

「そうだ、結婚しよう!」悪役令嬢は断罪を回避した。

ミズメ
恋愛
ブラック企業で過労死(?)して目覚めると、そこはかつて熱中した乙女ゲームの世界だった。 しかも、自分は断罪エンドまっしぐらの悪役令嬢ロズニーヌ。そしてゲームもややこしい。 こんな謎運命、回避するしかない! 「そうだ、結婚しよう」 断罪回避のために動き出す悪役令嬢ロズニーヌと兄の友人である幼なじみの筋肉騎士のあれやこれや

飽きたと捨てられましたので

編端みどり
恋愛
飽きたから義理の妹と婚約者をチェンジしようと結婚式の前日に言われた。 計画通りだと、ルリィは内心ほくそ笑んだ。 横暴な婚約者と、居候なのに我が物顔で振る舞う父の愛人と、わがままな妹、仕事のフリをして遊び回る父。ルリィは偽物の家族を捨てることにした。 ※7000文字前後、全5話のショートショートです。 ※2024.8.29誤字報告頂きました。訂正しました。報告不要との事ですので承認はしていませんが、本当に助かりました。ありがとうございます。

処理中です...