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4.新たなる伝説

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試験に合格したアセナが、キルアと共に喜んでいると、その一頭と一人に近づく人影が二つある。

もちろん、セルスとリラ、アセナの友人であった。

ちなみに、ロイの姿はない。

「アセナ!!凄いわ、アセナ!!あの伝説の白竜を相棒にするなんて!」リラは、キャッキャッと騒ぎながら、アセナを称えた。

「アセナ。」

セルスが、アセナの名を呼んだ。

アセナがセルスの言葉に反応して、セルスのいる方へ顔を向けた。

アセナの瞳は隠されることのない、キラキラとした輝きが存在した気がする。

『アセナ、彼のこと、好きなのですか?』コテン、と首を傾げてキルアは聞いたあと、しまった、という顔をした。

『すみません、変なことを聞きました。このようなところで聞くことではありませんでした。』キルアはそう言って謝ったが、若干、否、かなりニヤニヤと不躾な視線を向けてくる。

面白がっているようであった。

「もう、キルア!?」アセナはプクリ、と頬を膨らませ、私は拗ねてますよ、というアピールをする。

『ふふ、すみません。微笑ましかったもので。』美しい微笑みで、キルアは言った。

「よく頑張ったな。」セルスは、そうアセナに言うとわしゃわしゃと頭を撫でる。

嬉しそうに撫でられるアセナを一同は微笑ましい気持ちで眺めていてのだった。




伝説ハ再ビ始マッタ。

厄災モ再ビ訪レル。

ドラグーンヲ生ンダ古ノ大戦。

造リ替ワッタ世界ヲ生キテ、コノ世界ヲ愛ス。

死ンダ人々ヲ想イ、救エナカッタ命の数ダケ涙スル。

今。

新タナ伝説ガ。

始マリ。

古キ伝説ガ。

動キ出ス。




ああ。

体が重い。

此処は何処?

私はなんで此処にいるの?

ああ。

そうだった。

彼奴らだ。

ドラグーン。

私を封印した。

青二才だと思ってたのに。

いつの間にか。

私が時間をかけて、造り替えた世界をもとに戻した。

彼奴らはドラグーン。

竜種と同じ時を生きる者。

何年たった?

千年?

二千年?

分からない。

けど。

もうすぐ。

あと少しで、封印が解ける。

現に。

私の封印された土地は、不浄の地と化している。

もしかしたら。

彼奴らが浄化してるかも。

けど。

大丈夫。

彼奴らは。

子供から青年へ。

青年から大人へ。

平和な時代を生きて。

きっと。

きっと。

あの頃の過激な大戦を忘れてる。

体も。

戦いについていけない。

頭も。

柔軟に対応できなくなって。

私の時代が訪れる。

私を封印した。

彼奴ら。

全員。

殺してやる。

待っていろ。

!!

お前も。

巫女も。

弟も。

仲間も。

全て殺してやる。

そして。

壊れて。

世界を滅ぼせ。

お前が。

大切に守って。

巫女と。

出会った。

想い出の土地を。

なくせばいい。

私は。

それを見て。

お前を。

笑ってやる。

お前では。

私に勝てない。

精々足掻け。

ロギアス。




伝説。

それは。

俺たちを表す言葉。

二千年以上昔。

彼奴は地上の全ての生命を巻き込む大戦を引き起こした。

俺たちが。

やっとの思いで彼奴を封印した。

が。

近頃。

彼奴の気配を。

感じる。

封印が解けかけている?

まずい。

まだ。

俺たちの後を継ぐ。

子供たちは、育っていない。

どうして今なのだろう。

あと少し後であれば。

子供たちも育っていたのに。

子供たちの時代の戦いは。

言わずもがな二千年前よりも。

激戦になるだろう。

彼奴は今度こそ。

油断してはくれない。

ああ。

ウィツネル。

お前は。

何をしたい?

争いで。

何を望む?

戦わないという選択肢は。

ないのか?

まだ。

まだ。

彼奴との。

争いは。

戦いは。

物語は。

終わらない。


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