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第一章 宮廷魔術師の算段
宮廷魔術師の算段②
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イルミナが去ったあと、レオニーは、ソファーに仰向けに寝そべり、さらに思考に耽った。
ロザリンド嬢に会ったことはないが、容姿端麗で男心をそそる女性であることは容易に想像がつく。対するユリアナ嬢は?舞踏会で何度か見かけたことがあるが、どこか物足りない美人、という感じだった。気づけばそこにいる、といった感じで存在感も今ひとつ。でも、それらは身につけるものや化粧でカバーできるし、立ち振る舞いに育ちの良さが見え隠れする――。
二人の内どちらがいいかと問われたら、ほとんどの男は、ユリアナ嬢を選ぶだろう。それなりに美人だし、大人しそうでいい。ただし、家格が高いので、釣り合う男は一握り。次の縁談は、あるだろうか?王子に、全校生徒の前で婚約破棄宣言されて、病んでしまったと聞くけれど……。
王子は、このままロザリンド嬢とゴールインするのかな?律儀なことに、ユリアナ嬢と婚約破棄宣言したあとにロザリンド嬢と深い仲になっている。それは、本気で彼女に惚れているということだ。
だが、婚約破棄といっても宣言しただけで、正式な手続きは、されていない。家同士が決めた結婚の約束を、そしてユリアナ嬢を王家に迎え入れるために何年にも渡って行われてきた王子妃教育を、今更なかったことにするのは至難の業。王子も、「それは無理」と心のどこかで思っていないか?婚約破棄宣言は、ロザリンド嬢と火遊びするための目くらましで、本音は、「結婚はユリアナ嬢と」ではないのか?
そうだとしたら、腹が立つ!!!
私がユリアナ嬢の親族で――ロザリンド嬢の親族でもいいが――その場にいたなら――。
「王子の顔面に、超粘着性ガムをお見舞いしたのに!」
思わず口に出たところへ、「うあ?」と妙な声を上げて反応する者がいた。
奇妙な声と共にソファーの影から、ひょっこり顔をのぞかせたのは、アナイス・ボーン。レオニーの愛弟子だ。彼女は、日がな一日、床に寝転がって、紙に魔法陣を描き散らかしている。
ところどころ濃い色が混じるほわほわのミルクティーベージュの髪に、薄茶色の瞳。年は14だが、成長が遅く10歳位にしか見えない。いつも同じ服を着ていて髪も寝癖でぐちゃぐちゃ。ここぞというときにはレオニーが魔法で変身させるせいか、自分では何もせず、レオニーが色々な服を用意して遊び半分に着せ替えたりしても、全て受け入れる。従順かつ無頓着な人物である。
そのアナイスの瞳は、期待に満ちて、きらきら輝いていた。
「どうした?ガムが欲しいのか?」
レオニーの問い掛けに、コクコクとうなずく。
パチン!
レオニーが指を鳴らす。と、かごに入った色とりどりのキャンディーが出現した。部屋の片隅にあったものだ。
「これしかないけど、いい?」
アナイスが、うなずく。
レオニーが人差し指を立てて動かす。と、キャンディーが次々と宙に浮き、連なってアナイスの周りをぐるぐると回り始めた。アナイスは、じっと目を懲らして狙いをすますと、パクッとその一つに食いつく。
「何味?」
「ぴゃいん」
パイナップル味のキャンディーをゲットしたようだ。
「まだいる?」
アナイスは、答えない。目を閉じて、口の中のキャンディーを味わっている。
レオニーが、また指を鳴らす。と、残りのキャンディーもかごも、その場から消えた。
パチン!
レオニーが、また指を鳴らした。ソファーに寝転がったレオニーの腹の上に、数枚の紙がバサッと音を立てて現れた。どれも、円の中に、緻密な模様が描かれている。アナイスが、部屋の隅っこで描いていた魔法陣だ。
レオニーは、それらを手に取り、一枚ずつ目を通す。それに気づいたアナイスが、きゅっと唇を結び、息を詰めてレオニーの表情をうかがう。
魔法陣とは、魔法を発動させる円形文様のことだ。魔法を発動させるには、魔術師が呪文を長々と唱えるのが常であるが、忘れることもあるし、詠唱している隙を狙って攻撃されることもある。そこで、魔法陣をあらかじめ準備しておき、短い言葉でそれを出現させて魔法を発動させる手法が、広く使われている。アナイスは、幼い頃より魔法陣に興味があり、自分でもあれこれ工夫して描く。その集中ぶりは、すさまじい。レオニーも、いつも感心している。
ただ、魔法陣を作っても彼女には使えず――魔力はあるのだが、精神的に未熟で人と関わるのが下手なため、暴走しないようレオニーが封じている――実際に発動させて検証するのはレオニーの役目である。
円の中に、あしらわれているのは、魔法を発動させる呪文だったり絵文字だったりするが、使われるものにはセオリーがあり、国に認められた魔術師ならば初見で簡単に読み解けるもの。だが、基本を知らないアナイスが描くものは、どの魔術師でも頭に疑問符の花が咲き乱れる。しかし、本人に聞き取りしながら修正して完成させてみれば、斬新かつ実用性に富んだ魔法が発動されるものもあるので、レオニーは、彼女の作品を見るのを楽しみにしている。
「アナイス」
床に座り込み、レオニーの顔色を窺いながらも口内に広がるパイナップル味を楽しんでいたアナイスは、レオニーの呼びかけにピクッと身を震わせた。
パチン!
レオニーの指が鳴る。アナイスの様相が変わった。
アナイスは、立ち上がり、窓ガラスに映る自分を見た。そこにいたのは、くたびれた洋服を着たボサボサ頭の自分ではない。ゆるふわおだんご頭に小花柄のワンピースドレスを着た女の子――。
(わあ、かわいい)
窓ガラスに映る自分に見とれていると、目の前に鏡が現れる。その前で、あれこれポーズを変えて、チェックする。柔らかなドレスの生地が、アナイスが動く度にふんわりと風をはらむ。
「どう?気に入った?」
「うん!」
「じゃ、来て」
アナイスは、素直にレオニーのところまで行き、ソファーの背に手をかけて、寝転がったままの彼の手元をのぞき込む。レオニーが手にしているのは、森に生えている葉っぱの模様をあしらった魔法陣の絵だ。少し厚めの立体図。
師匠は、これの説明を聞きたいのだ。そう理解したアナイスは、無言で一つうなずくと、レオニーの頭側に回り、レオニーのおでこと自分のおでこをくっつけた。そして、自分がイメージした魔法を頭の中に浮かべる。それらをレオニーが読み取って、あれこれ質問した上で修正し、完成させるのがいつものパターン。
だが、うまく伝わらないようだ。レオニーが、考えこんでいるのが分かる。レオニーは、アナイスを避けて起き上がるとソファーに座り直した。そのまま、アナイスの手を引いて自分の足の間に座らせ、腰に手を回して抱き込むと再びおでこ同士をくっつける。アナイスも、邪念を払って静かに待つ。レオニーが読み取ってくれるのを。
と、突然、部屋のドアが開いて何者かが入ってきた。騎士服を着ている。
「お取り込み中すいません。ポーションが欲しいんですけど――」
その声を聞いた途端、アナイスがレオニーの腕の中でもがき、立ち上がろうとする拍子におでこをどこかしらにぶつけ、それでも無理に立ち上がってレオニーの肩を踏み台にしてソファーの背を乗り越えようとしたところ足が滑って引っかかり、反動で顔をソファーの背板に打ち付けそのまま頭から床にずり落ちそうになるところを間一髪でレオニーが押さえた。そして恐る恐るアナイスの体を引き、ソファーに座らせて、顔をのぞき込むと―――。悲惨なことになっていた。
ロザリンド嬢に会ったことはないが、容姿端麗で男心をそそる女性であることは容易に想像がつく。対するユリアナ嬢は?舞踏会で何度か見かけたことがあるが、どこか物足りない美人、という感じだった。気づけばそこにいる、といった感じで存在感も今ひとつ。でも、それらは身につけるものや化粧でカバーできるし、立ち振る舞いに育ちの良さが見え隠れする――。
二人の内どちらがいいかと問われたら、ほとんどの男は、ユリアナ嬢を選ぶだろう。それなりに美人だし、大人しそうでいい。ただし、家格が高いので、釣り合う男は一握り。次の縁談は、あるだろうか?王子に、全校生徒の前で婚約破棄宣言されて、病んでしまったと聞くけれど……。
王子は、このままロザリンド嬢とゴールインするのかな?律儀なことに、ユリアナ嬢と婚約破棄宣言したあとにロザリンド嬢と深い仲になっている。それは、本気で彼女に惚れているということだ。
だが、婚約破棄といっても宣言しただけで、正式な手続きは、されていない。家同士が決めた結婚の約束を、そしてユリアナ嬢を王家に迎え入れるために何年にも渡って行われてきた王子妃教育を、今更なかったことにするのは至難の業。王子も、「それは無理」と心のどこかで思っていないか?婚約破棄宣言は、ロザリンド嬢と火遊びするための目くらましで、本音は、「結婚はユリアナ嬢と」ではないのか?
そうだとしたら、腹が立つ!!!
私がユリアナ嬢の親族で――ロザリンド嬢の親族でもいいが――その場にいたなら――。
「王子の顔面に、超粘着性ガムをお見舞いしたのに!」
思わず口に出たところへ、「うあ?」と妙な声を上げて反応する者がいた。
奇妙な声と共にソファーの影から、ひょっこり顔をのぞかせたのは、アナイス・ボーン。レオニーの愛弟子だ。彼女は、日がな一日、床に寝転がって、紙に魔法陣を描き散らかしている。
ところどころ濃い色が混じるほわほわのミルクティーベージュの髪に、薄茶色の瞳。年は14だが、成長が遅く10歳位にしか見えない。いつも同じ服を着ていて髪も寝癖でぐちゃぐちゃ。ここぞというときにはレオニーが魔法で変身させるせいか、自分では何もせず、レオニーが色々な服を用意して遊び半分に着せ替えたりしても、全て受け入れる。従順かつ無頓着な人物である。
そのアナイスの瞳は、期待に満ちて、きらきら輝いていた。
「どうした?ガムが欲しいのか?」
レオニーの問い掛けに、コクコクとうなずく。
パチン!
レオニーが指を鳴らす。と、かごに入った色とりどりのキャンディーが出現した。部屋の片隅にあったものだ。
「これしかないけど、いい?」
アナイスが、うなずく。
レオニーが人差し指を立てて動かす。と、キャンディーが次々と宙に浮き、連なってアナイスの周りをぐるぐると回り始めた。アナイスは、じっと目を懲らして狙いをすますと、パクッとその一つに食いつく。
「何味?」
「ぴゃいん」
パイナップル味のキャンディーをゲットしたようだ。
「まだいる?」
アナイスは、答えない。目を閉じて、口の中のキャンディーを味わっている。
レオニーが、また指を鳴らす。と、残りのキャンディーもかごも、その場から消えた。
パチン!
レオニーが、また指を鳴らした。ソファーに寝転がったレオニーの腹の上に、数枚の紙がバサッと音を立てて現れた。どれも、円の中に、緻密な模様が描かれている。アナイスが、部屋の隅っこで描いていた魔法陣だ。
レオニーは、それらを手に取り、一枚ずつ目を通す。それに気づいたアナイスが、きゅっと唇を結び、息を詰めてレオニーの表情をうかがう。
魔法陣とは、魔法を発動させる円形文様のことだ。魔法を発動させるには、魔術師が呪文を長々と唱えるのが常であるが、忘れることもあるし、詠唱している隙を狙って攻撃されることもある。そこで、魔法陣をあらかじめ準備しておき、短い言葉でそれを出現させて魔法を発動させる手法が、広く使われている。アナイスは、幼い頃より魔法陣に興味があり、自分でもあれこれ工夫して描く。その集中ぶりは、すさまじい。レオニーも、いつも感心している。
ただ、魔法陣を作っても彼女には使えず――魔力はあるのだが、精神的に未熟で人と関わるのが下手なため、暴走しないようレオニーが封じている――実際に発動させて検証するのはレオニーの役目である。
円の中に、あしらわれているのは、魔法を発動させる呪文だったり絵文字だったりするが、使われるものにはセオリーがあり、国に認められた魔術師ならば初見で簡単に読み解けるもの。だが、基本を知らないアナイスが描くものは、どの魔術師でも頭に疑問符の花が咲き乱れる。しかし、本人に聞き取りしながら修正して完成させてみれば、斬新かつ実用性に富んだ魔法が発動されるものもあるので、レオニーは、彼女の作品を見るのを楽しみにしている。
「アナイス」
床に座り込み、レオニーの顔色を窺いながらも口内に広がるパイナップル味を楽しんでいたアナイスは、レオニーの呼びかけにピクッと身を震わせた。
パチン!
レオニーの指が鳴る。アナイスの様相が変わった。
アナイスは、立ち上がり、窓ガラスに映る自分を見た。そこにいたのは、くたびれた洋服を着たボサボサ頭の自分ではない。ゆるふわおだんご頭に小花柄のワンピースドレスを着た女の子――。
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「どう?気に入った?」
「うん!」
「じゃ、来て」
アナイスは、素直にレオニーのところまで行き、ソファーの背に手をかけて、寝転がったままの彼の手元をのぞき込む。レオニーが手にしているのは、森に生えている葉っぱの模様をあしらった魔法陣の絵だ。少し厚めの立体図。
師匠は、これの説明を聞きたいのだ。そう理解したアナイスは、無言で一つうなずくと、レオニーの頭側に回り、レオニーのおでこと自分のおでこをくっつけた。そして、自分がイメージした魔法を頭の中に浮かべる。それらをレオニーが読み取って、あれこれ質問した上で修正し、完成させるのがいつものパターン。
だが、うまく伝わらないようだ。レオニーが、考えこんでいるのが分かる。レオニーは、アナイスを避けて起き上がるとソファーに座り直した。そのまま、アナイスの手を引いて自分の足の間に座らせ、腰に手を回して抱き込むと再びおでこ同士をくっつける。アナイスも、邪念を払って静かに待つ。レオニーが読み取ってくれるのを。
と、突然、部屋のドアが開いて何者かが入ってきた。騎士服を着ている。
「お取り込み中すいません。ポーションが欲しいんですけど――」
その声を聞いた途端、アナイスがレオニーの腕の中でもがき、立ち上がろうとする拍子におでこをどこかしらにぶつけ、それでも無理に立ち上がってレオニーの肩を踏み台にしてソファーの背を乗り越えようとしたところ足が滑って引っかかり、反動で顔をソファーの背板に打ち付けそのまま頭から床にずり落ちそうになるところを間一髪でレオニーが押さえた。そして恐る恐るアナイスの体を引き、ソファーに座らせて、顔をのぞき込むと―――。悲惨なことになっていた。
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