不器用な推しサマとスパダリの親友クンの性欲処理を?

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1 「…まさかとは思いますが、愛しているだなんて言いませんよね?」

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ぱちゅぱちゅという水音と肉のぶつかる音。
男は、あと十数分もすれば終わる行為がもどかしかった。

このまま、その身体を抱いて寝たらきっと気分はいいのだろうが、劣位に立つ者からせめて提案して来ない事には実現をし得ない。

男は焦れた。
劣位の者がしていい提案ではない反面、自分はそれを望んでいるのだから。

彼の口からこのまま一緒に居たいと言われない限り実現しない事は、彼が口に出してはならない言葉。


我慢しても我慢しても、一生続く行為ではない、呆気なく篭絡し……白濁液でナカを汚すと、間髪も入れずに彼は起き上がる。


「……麻都(あさと)さま、ありがとうございました」

この全寮制の学園の絶対的な権力を持つ者。

首相が叔父に当たるその男は教師でも口出しする事が出来ず、麗しい顏とその権力から彼を誰もが麻都の身体も心も熱望した。

そして、数いる性欲処理の中でも彼は従順だった。
いつでも呼び出せば駆けつけ、身体を差し出し奉仕をする。全寮制の男子校では、性欲処理も相手は男。

最初こそ男色の気は無かった麻都だが、首相の甥とはいえ男子高校生、その行為に抵抗が無くなるのも早かった。

いそいそと帰り支度をする男を麻都が呼び止める。

「紗貴さき、テストの点数が悪かったと聞いた。今でも美しさの足りないお前を呼び付ける事を親衛隊長は止めている。私はお前の従順さを買っているが、これ以上相応しくなくなるのならばもうお前を呼ぶ事は無い」

紗貴と呼ばれた男は、悲しげに振り返ると麻都を潤んだ目で見つめた。

「……もうこれが最後ですか?」

「…だから、そうは言っていない。せめて頑張っている素振りを見せれば…もしくは美しさを磨くとか…まぁそれは無理だろうから、今回はお前の従順さに免じて、私がお前に……」

麻都は勉強道具を机に広げようとすると、紗貴は焦ったように踵を返す。

「っ、べ……勉強?!こんな夜に?!っあ……もう天辺を過ぎてしまいます、長居すると親衛隊長に叱られます!申し訳ございませんが、僕はお暇しますね……!」

紗貴が焦ったように扉から去っていくのを、麻都は眉間に皺を寄せながら見つめた。

「はぁ、今日も引き留められなかった」


生徒会長である麻都の性欲処理…所謂ハーレムには、ルックスや成績、家柄から順に相応しいものが宛てがわれていく。

麻都は規律に厳しい男で…その秩序を守る為に自分の欲のまま動く事はなく、ハーレムの選り好みをする事もない。

そして……紗貴は、会長付きのハーレムの中でも最下層の、いつ会長付きから落とされてもおかしくない立ち位置にいた。


「……紗貴」

紗貴は、華奢で可愛げがあるものの、そこまで整った容姿ではないという評価らしい。成績もそこそこで、家柄に至っては将来官僚になる麻都の進路とは大きく違い、富豪ではあるが俳優の母とスポーツ選手の父の元で自由に育てられてきた。

麻都が、従順だからという理由で親衛隊長に進言しなければすぐに副会長付きハーレムに落ちるくらいには、会長付きには相応しくないのである。

だが…規律と秩序が口癖の麻都が、紗貴の副会長のハーレムに堕ちる事だけは避けなければいけない唯一でもあったのだ。

部屋を出る紗貴は、静かな廊下を歩く。
生徒会専用の寮フロアの為、風呂もトイレも部屋に備え付けのため、静まり返っていた。

だが、本の少しの帰路に偶然か必然か、男が声を掛ける。

「紗貴」

「副会長様っ」

親衛隊員から声を掛ける事は許されない……生徒会副会長を名乗る男。こうして、一人きりでかつ生徒会フロアに居る時だけ話す事を許される会長付きの親衛隊員。

「副会長様、よく会いますね。麻都さまのお部屋から、エレベーターまでの短い時間に、もう四度も」

「紗貴、務めの帰りかい」

ほんの少し潤んだ瞳を副会長の人差し指が擦る。高揚した頬と、どこか色気の纏った雰囲気は、会長への務め……性欲処理の後だと想起させる。

「…副会長様、いじわる」

たった数メートルだ、麻都の部屋からエレベーターまでの時間。

「はは、ごめん…紗貴には恥ずかしいか。紗貴、大丈夫?少し…寂しそう」

「副会長様は……いつも優しいですね、本当に」

先程、戦力外通告を受けかけた紗貴に副会長の優しさが身に染みる。副会長がエレベーターのボタンを押し、たった数秒のその間が妙に浮足立ってしまう。

たった数メートルと数秒、その時間が副会長と紗貴に許された時間。

「紗貴、おやすみ」

「おやすみなさい、副会長も…風邪引きやすいんですから、お部屋からこんなに出てたらダメですよ」

エレベーターが閉まっていく。
副会長は、顔に貼り付けた笑顔のまま紗貴を見送る。

紗貴は、副会長に言った小言のような言葉を少し後悔しつつ、ほんの僅かな時間を嬉しく思っていた。





翌日、麻都は眠そうに目を擦ると親衛隊長を呼び付けコーヒーを入れさせた。

親衛隊長とは名ばかりで、実際は将来の官僚秘書…彼は親衛隊長を名乗りながらも、ハーレムの一員では無い。

「……随分お疲れのようで」

嫌味を含んだ彼の言い草は、後ろめたい麻都の背中にぐさりと刺さる。

「………、勉強していた」

「大学範囲まで手をつけている麻都様が?麻都様……失礼を承知で言いますが、他の者には口での奉仕しかさせないのに、紗貴だけは……最後まで致していますね。申し訳ありませんが、侍従に調査を」

実際、麻都が眠りにつけなかったのは昨夜の紗貴とのやり取りのせいであった。

唯一の努力でカバーが出来る勉学の成績が乏しく、努力では変える事の出来ない部分は上の下…。
麻都自身からは話しかける事すら出来ないこの学園で…勉強を教えてやる事も、ましてや贔屓する事も出来ない。

「………別に私が誰と何処までしようと勝手だ」

「………、あなたらしくない。私だって麻都様が誰を気に入られようが構いませんが、紗貴は副会長付きに堕ちます。副会長は……もちろんあなたよりも厳格さはありませんから、紗貴が堕ちたら簡単には手放さないでしょうね」

「……」

その言葉は、麻都にとって重くのしかかった。

簡単な事だ、規律や学園の風紀の事など考えず、麻都が紗貴に連絡し部屋に呼びつけたらいい。

だが、そんな簡単な事が…時期官僚を排出する特殊な全寮制学園では到底難しい事だった。

「先程も言いましたが、誰を気に入っても構いません……ですが、規律には従って頂きます。今でも、紗貴のランクには目を瞑って来ました、もう…私も流石に擁護しきれませんから、紗貴は次の務めが最後です」

そろそろ……会長付きにしてはランクが低いという不満が飛び交う頃だと麻都も気付いていた。

副会長付きに……という親衛隊長の言葉を思い出し、麻都の脳内には隠微な想像が再生される。

副会長の唇を食み、舌を絡ませ嬌声をあげる。副会長の性器は根元まで紗貴のナカに入り込んでおり、亀頭まで抜かれると一気にナカに挿入され、心太のように紗貴も性器から精液を吐き出す。

いつも、麻都がしている蹂躙だ。

何度も好きだと言わせて、射精を強請らせる。
肌に赤い痕を散らせると、麻都の支配欲が満たされていく。

自分が存分に弄んだ身体を…今度は副会長に捧げる……その事を想像し、麻都は拳を握りこんだ。

「…まさかとは思いますが、愛しているだなんて言いませんよね?」

親衛隊長は、訝しげに麻都を覗く。

「……愛だの恋だのはくだらない。だが私にだって愛着くらいある。お気に入りの文房具、服…靴、お前だって愛着くらいはあるだろう」

その言葉に親衛隊長は安堵したように笑った。

「そうですよね、麻都様は小さい頃から愛したたくさんの物を将来の為に捨ててこられたお方……一人の性欲処理くらい、いくら気に入ってようが捨てたとなれば見向きもしないでしょう、次回の務めまで待とうかとも思いましたが、麻都様に捨てられた紗貴が何かしないとも限らない……次の務めを待たず、会長付きは解任にしましょう」


麻都の眉がぴくりと上下する。

「……まぁ最後くらい華を持たせてやってもいいだろう。あいつの功労は確かに認めてもいい物だ」

仰せのままに……と親衛隊長が一礼し部屋から出ていった。麻都の握り込まれた拳は血が滲んだ。





「紗貴、学園を辞めろ」

紗貴が部屋に入るなりぶつけられたのはその言葉だ。

大体週に一度の務めの日で、麻都の部屋へ向かう紗貴。いつものように寒くないか…と招き入れるものとばかり思っていたがその日は違う。

紗貴にとって学園は、父の母校。
何の志もなく生きてきた紗貴にとってもその事だけは誉だ。

「…え?麻都さま?」

「だから、なるべく早く学園を辞めろ。お前には学歴など必要ないだろう。仕事などするつもりもないだろうし…。学園さえ辞めるのなら私が直々に部屋の飾りにでも雇ってやってもいいし…」

紗貴はぽかんと開いた口が塞がらない。

「麻都さま…お話の意味が、僕にはちょっと……」

麻都は、想像以上に察する能力の低い紗貴をため息混じりに哀れんだ。その細い腕を思い切り引っ張りベッドに座り込むと、紗貴の背中を抱き締める。

麻都以外の者は知る由もないが、こんな風に甘い愛撫や抱擁、キスを送るのは正真正銘紗貴だけだった。

流石に親衛隊長も二人きりの部屋の中の様子までは知らず、紗貴にだけこうして特別扱いをする理由は、麻都の中でも考えないようにしていた事である。

紗貴本人も、ハーレムの全員に送られた甘い時間なのだと思い、その時間を思い切り享受する。

膝の上に乗せられ、身体を捻るとその唇に優しく唇が重ねられた。
紗貴が麻都の首に腕を回し、部屋着中に手を入れ込む光景は、今にも情事が始まる前といった感じだ。

「…紗貴、今日はしない」

麻都の舌の柔らかい感覚で、早くも紗貴の下腹部は反応しており、その発言にみるみる紗貴の顔が、残念そうに歪んでいく。

「紗貴、学園を辞めろ。このままだと来週にはお前は副会長付きのハーレムに入る事になる」

「…え?」

「副会長の物になる、日頃から副会長はお前を気に入っているのは分かっている、私の物だから手を出さないだけで…副会長は私のような厳格なハーレムは作っていない。平等でもなく、規律も薄い。どうせ……お前ばかりに負担を強いて、毎日弄び、その身体に精液を植え付ける」

そう言葉にするだけでも麻都にとってはおぞましく、話し終えた途端に紗貴の唇に吸い付いた。息も絶え絶えになる紗貴の首元に、薄ら残った自らのマーキングを再度色濃くする。

「っはぁ、ふ」

この、身体が副会長に弄ばれるなど…麻都には耐えられなかった。

耐えられない事などいくつもあったはずなのに、どうも麻都にも制御の出来ない黒い感情がまとわりついては彼を苦しめる。

だが、麻都とは裏腹に紗貴は穏やかに微笑んだ。

「……そうですよね」

「………それだけか?」

紗貴にとって、この学園で暮らした二年間で得た物は、絶対的な王の麻都の言葉に反論をしない事だった。

そうじゃなくてもサドスティックの気質を持った麻都の威圧は、紗貴を黙らせる程の脅威がある。

「え、えと……」

「副会長に抱かれるんだぞ?俺ではなく……あの優男に、身体を許すんだ。挿入も…中出しも…そして……お前は快楽に毎日喘ぐ事になる」

その言葉に彩貴は困惑した。
何と返せばいいのやら……期待に胸を膨らませるせればいいのか、精一杯の奉仕を誓えばいいのか迷ったまま笑う。

「…えと、光栄です……?」

その愛くるしい笑顔が余計に麻都の心を憤させた。普段冷血そのものの麻都が乱暴に紗貴を組み敷く。

痛い程に握られた手首には指の痕が付いているだろう。麻都は分からせたかった……こうなるのだと。副会長のハーレムなど嫌だと言ってくれという願いのままに唇を重ねた。

「っ、ふ…麻、都さま?」

「随分嬉しそうだな」

麻都は、自分でも制御出来ない感情のやり場がなく…力なく起き上がる。
望む言葉が出てくる事は無く、紗貴は最後という言葉を掛けたにも関わらず、心做しか安堵したように見えたから。


「………紗貴、出ていけ。お前のような気の多い男、こちらから願い下げだ。もう顔も見せるな」

紗貴は、先程まで貪るように唇を奪っていた麻都の意を組む事が出来ない。

いきなり振りかけられた拒絶の言葉……だがこの学園には規律があった。ランク付けをされてランクに応じて生徒会のハーレムに振り分けられる……それは長く続く伝統だ。
紗貴がどれだけ副会長付きを嫌がろうとも、実質的な拒否権はない。

その規律に基づいた紗貴が罵倒されるのはお門違いである。

それ程に……麻都は憔悴していた。
お気に入りのおもちゃが取られたからなのか…つまらない下世話な規律に縛られているからだろうか。

麻都は自問すると、そこには涙を目に溜めた彩貴が居た。

「っう、もう…会えないのは寂しいけど……会長、ありがとうございま、ぅ…大好きでした……」

「っ……待っ!!」

その一言を叫んだが先か、扉が閉まるのが先か…無情にも静寂が響き渡る。

麻都は頭を掻きむしると壁を殴り付けた。

「……大好き……」

咀嚼し、飲み込むとその言葉が胸に広がる。
だが…その好意を喜ぶ暇もなく次に襲うのは絶望。
自分の吐いた言葉は拒絶…今更彼からの好意を喜ぶなど、支配者の麻都には酷く滑稽だった。
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