末っ子第三王女は竜王殿下に溺愛される【本編完結】

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最終章

5/ 再会と……

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 レニー竜は王城の上空を旋回した後、噴水の広場に降り立つ。

 圧倒的な黒竜の姿にすべての人が呆然と見入るだけで、その場から動く事も出来ずにいた。
 神竜の化身と言われる黒竜の背に自国の元第三王女の可憐な姿を見つけると、誰からともなく「お帰りなさいませ」との声が上がる。
 その中にはリディアが幼い姿になってしまった事を知る者もいる。
 その王女が王太子妃となり、今は見目麗しい姿となって母国へ戻って来たのだ。
 出迎えたオーレア王と王妃は愛娘の成長したした姿を見ると、人目もはばからず涙を流しその女性らしくなった体を抱きしめる。

「お帰りリディア。ああ、本当に魔法が解けたのだな」

「はい、お父様。いろいろご心配をおかけしましたが、この様な姿になることが出来ました」

「ああ、リディ……私の可愛い娘。本当に貴女なのね」

「お母様……」
「良かった、本当に良かったわ」

「これもみな、レオナルド様のお陰です」

 そう言って後ろを振り向くと、いつの間にか竜の姿から人の姿に変化していたレオナルドが優しく微笑みながら近づいて来た。

「殿下、ありがとう。たった一年でリディアへの魔法が解けたのは殿下と、竜王国の皆のお陰です。心より感謝申し上げる」
 オーレア王がレオナルドの手を両手で握り感謝の気持ちを伝える。

「いえ、リディが元に戻れたのは水の精霊殿のお陰であります。リディが貴国を守護する水の精霊殿の愛し子であったからこそなのです」

「リディが精霊様の愛し子だと仰るのですか?」
 王妃が驚き震える声で問いながら抱きしめていたリディアの顔を見る。

「私は精霊様にお逢いしていないので良く分かりませんが、レニーにそう告げられたそうです」

「まあ、何てこと。貴女は本当に精霊様に守られているのね」
 感極まった王妃はもう一度ぎゅっとリディアを抱きしめた。

「二人の姉君も同じく愛し子であると、精霊殿は言っておられました」
「クリスティアとリリアーヌも愛し子とは……なんと有難い事だ。
 ああ、何時までもここにいる訳にもいかないな。中で話を聞かせて下され、レオナルド殿下、そしてリディよ」
「「はい」」

 正面入り口を見ると四人の姉と兄たちが笑顔で並んで立っていた。
 リディアは竜に乗るために乗馬服に似た衣装を着てブーツを履いていたこともあり、周囲を気にする事も無く四人の元へと走っていく。

「姿は十六になっても所作は幼児のようだな」

 オーレア王は愛娘の走る後ろ姿を見ながら、目尻の皺を深め呟いていたがその顔には嬉しさが滲み出ていた。


◇◆◇


 到着した夜には盛大な歓迎パーティーが開かれ、その後数日家族水入らずの時を過ごしたリディア。
 レナルドとファビアンはアダマンタイトの選別に鉱山へと向かって行った。

 王太子である長兄アゼルは公爵令嬢と婚約。
 第一王女の姉クリスティアは隣国の第二王子との婚姻も決まっており、直ぐ上の双子の兄姉ラスカルとリリアーヌもそれぞれ婚約者候補が上がっているという。
 それぞれが王族という立場を踏まえながら自分たちの進む道を歩き始めている。
 オーレア王国もこの先安泰と思われた。

 あっという間にオーレア王国での十日間が過ぎていった。
 一年前、突然「番」だと言われ、幼児の姿の末っ子王女を送り出した時は、竜王国に嫁ぐ娘に対し心配が尽きなかったが、今回は違う。
 次期竜王となる夫の番という立場を理解し、その生涯を竜の伴侶として生きたいと強い意志を込めた娘の瞳を見て、もう何も不安に思う事はないのだとオーレア王は思えた。

 魔力を持たない身体にその器が出来つつあるという。
 それもまた、精霊の加護のお陰だと聞いた。
 年数は掛かるであろうけれど、何時かはその身体に小さな命を授かることになるだろう。
 どのような子が生まれるかは推測が及ばないが、神竜の化身と精霊の加護を持つ二人の子供なのだ。
 何も杞憂することはないだろう。

 竜王国サザーランドへ帰るために馬車へと向かうレオナルドとリディアの背を見て、オーレア王と王妃は互いに目を細め頷き合ったのだった。


*ー*ー*
 
 帰路は馬車に乗り込んだ二人。
 馬車の中はお付きの者も同乗せず二人きりだった。

「レニー、私……竜王国へ嫁いで本当に良かったと思っているわ」

「リディ?」

「レニーの番で本当に良かった。あの時、オーレアに来てくれてありがとう」

 レオナルドの膝の上で彼の首に腕を回し、頬にキスをする。

「リディからそう言って貰えて私も嬉しい。あの時、父上からサミュエルに同行しオーレア王国へ行けと命を出されなかったら……私は生涯リディアという番を見つけられなかったかもしれない」

「そうね、あの池で出会う事も無かった」

「ああ、父上にも感謝している。でも今思えば、精霊と妖精たちのお導きだったのかもしれない」

「私もそんな気がするわ」

 二人は見つめ合い微笑み合う。

「愛している、リディ」

「私もよ、レニー」

 どちらからともなく唇を寄せると次第にそれが深くなっていく。

「ん……これ以上はダメよ」

「誰もおらぬ」

「それでもダメ」

「せっかく帰りは馬車にしたのだから」

「私は、帰りもレニーに乗っていきたかったのに」

「背に乗っていたら愛しい番とくちづけも交わせない」

「もう、ほんの少しの我慢じゃない」

「待てぬな」

 王家専用馬車のふかふかの座面に押し倒されたリディアの顔に、はらりとレオナルドの黒髪が落ちた。


 中の様子を知らないまま十数台の馬車と騎馬騎士の一行は竜王国へとのんびりと向かって行ったのであった。




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