60 / 60
続話集
その後
しおりを挟む
妖精宮
ここは私と愛しい番リディアの住まいである。
休日の今日、私は歩き始めたばかりの愛娘ミューズの護衛となる者の身上書を眺めていた。
候補であるアラン・サモエドはリディの護衛でもあるドラフトの推薦である。
大型犬種族であるアランか……
母親であるリディのモフモフ好きが遺伝しているらしいミューズの玩具となるであろうな。。。
リディがドラフトの耳や尾をもふるのでさえ許せない私が娘がサモエドの……違った、アランのあの真っ白な毛に顔を埋める姿を見ていられるのか。
そんな事を考えていると庭の方から愛しい妻に似つかわしくない声が聞こえて来た。
「こら、待ちなさい!」
「やーもー」
先ほどまで妖精の池で水浴びをしていた母子に何があったのだ?
「レニー、ミューズを捕まえてちょうだい!」
「ん?」
見ればずぶ濡れになった小さな塊が、覚束ない飛び方でパタパタと私の膝の高さ位のところを飛びながらこちらに向かってくる。
私は書類をテーブルの置き、そのまま裸足で庭に降りると羽根つきの塊を掬い上げるように懐に抱き上げる。
「これミューズ、何をしたのだ?」
「クシュン」
クシャミをしている羽根の付いた塊は娘のミューズが白竜に変化した姿である。
近くまでくれば子竜と分かるが、遠目に見るとコロコロと太った姿がただの塊に羽が生えているようにしか見えないのだ。
まだ高く飛べず、地面スレスレか私の膝の高さまでを上下に揺れながら飛ぶ事しか出来ない。
腕の中で我が子は見る見るうちに小さな白竜から人の子の姿へと変わっていった。
「とーま、とーま」
言葉が早いのか遅いのかは分からないが、竜族の寿命は長いのであまり気にしていない。
一才半近くなる娘は、産まれたときに全身を覆っていた白く真珠色に輝く鱗は全て皮膚に吸収されており、時折こうして竜の姿に変化するようにもなった。
腕の中ですっぽんぽんの娘は私の顔を見て上機嫌で笑っている。
きっと覚束ない足で逃げるよりトロトロでも飛んで逃げた方が早いのだろう。
「もう、ミューったら。池から出て服を着せようとしたら嫌がって、駄々を捏ねて逃げ出したのよ。都合が悪くなると竜になって飛んで行くんだから」
「あはは、仕方ないだろう」
「いまからちゃんとしないと、ダメでしょう?」
ぷんぷんと怒りながらそう話す愛妻は、我が子を急いで追いかけてきたとはいえ、私から見たら娘と大差ない姿だ。
自分が幼い姿だった頃と同じくシュミーズ姿で池に入ったのであろう。
薄い生地はピタリと肌にへばりつき、豊かな胸の頂の先端の赤い実までくっきりと透けて見えている。
我妻ながら、その淫靡な姿にそそられ、下半身が反応してしまった。
いかんいかん、娘の前だ。
私は手をかざし、リディの濡れた躰を風魔法でさっと乾かしてあげる。
「ん、あっ、ありがとうレニー。さぁ、ミューお洋服を着ましょうね」
私にしがみ付いていた娘が観念したようにリディに差し出された腕の中に移動していく。
何と可愛いのだろうか、我が妻と娘は。
ミューをリディに預けると、私はリディの肩を抱いて屋敷の中へ入って行ったのだった。
暫くして娘を寝かしつけてたリディが私のもとへやって来た。
テーブルの上の書類を手に取り口元を緩めている。
どうやら護衛候補のアランが気に入ったらしい。
「サモエドさんて、本当にサモエドなんだ」
「ああ、そうだな。犬族サモエドの族長の孫に当たる」
きっともう、妻の頭の中には大きくモフモフのサモエド犬の姿で埋め尽くされているに違ない。
「ふーん、十八歳、若いのね」
意外な言葉にえっ?と顔を覗き込むと、彼女はふふと笑いながら私の膝の上に腰を下ろしてきた。
「レニーの事だからやきもちを妬いてもっと年配の護衛を付けると思ってた」
「なっ、、、私はそれほど狭量ではないつもりだが……
それにこれから動き回る様になるミューズに振り回される事を考えれば、若い者の方が良いであろう?」
「そう言われれば(笑)」
「だろう?アランは若いが優秀な騎士だ。普段は君と一緒にいるのだからドラフトもついておる。心配はないと思うぞ」
「そうね。でももう少しミューが成長したらもう一人必要になるわ。走り回る子を追い掛けるのは大変よ。ましては飛ぶことも出来るんですもの。追いかけるばかりでは周りに気が回らなくなるわ」
「ふむ、確かにその通りだな。今からもう一人増やして置くか。その方がミューズも慣れるだろう?」
「ええ、そうして貰えると嬉しいわ。
ふふ、サモエドね、出来たらもう一人はトラ族か……優しい系なら羊族の騎士」
「おい、それはリディがモフりたいだけだろう?」
「あら、バレちゃった?」
可愛い舌をちろりと出して肩を竦める可愛い妻の唇を奪えば、細い腕が私の首に巻き付いて来る。
ベッドは愛娘に占領されている。
昼寝の邪魔をしてはいけないと、私はそのままソファにリディを押し倒した。
のどかで濃い休日となった。
**********
※短いですが親子の休日の一コマでした。
※新しいお話をアップしております。
『異世界で王城生活~陛下の隣で~」こちらも緩い更新ですが、宜しかったらお立ち寄りください。
https://www.alphapolis.co.jp/novel/823880103/100580199
ここは私と愛しい番リディアの住まいである。
休日の今日、私は歩き始めたばかりの愛娘ミューズの護衛となる者の身上書を眺めていた。
候補であるアラン・サモエドはリディの護衛でもあるドラフトの推薦である。
大型犬種族であるアランか……
母親であるリディのモフモフ好きが遺伝しているらしいミューズの玩具となるであろうな。。。
リディがドラフトの耳や尾をもふるのでさえ許せない私が娘がサモエドの……違った、アランのあの真っ白な毛に顔を埋める姿を見ていられるのか。
そんな事を考えていると庭の方から愛しい妻に似つかわしくない声が聞こえて来た。
「こら、待ちなさい!」
「やーもー」
先ほどまで妖精の池で水浴びをしていた母子に何があったのだ?
「レニー、ミューズを捕まえてちょうだい!」
「ん?」
見ればずぶ濡れになった小さな塊が、覚束ない飛び方でパタパタと私の膝の高さ位のところを飛びながらこちらに向かってくる。
私は書類をテーブルの置き、そのまま裸足で庭に降りると羽根つきの塊を掬い上げるように懐に抱き上げる。
「これミューズ、何をしたのだ?」
「クシュン」
クシャミをしている羽根の付いた塊は娘のミューズが白竜に変化した姿である。
近くまでくれば子竜と分かるが、遠目に見るとコロコロと太った姿がただの塊に羽が生えているようにしか見えないのだ。
まだ高く飛べず、地面スレスレか私の膝の高さまでを上下に揺れながら飛ぶ事しか出来ない。
腕の中で我が子は見る見るうちに小さな白竜から人の子の姿へと変わっていった。
「とーま、とーま」
言葉が早いのか遅いのかは分からないが、竜族の寿命は長いのであまり気にしていない。
一才半近くなる娘は、産まれたときに全身を覆っていた白く真珠色に輝く鱗は全て皮膚に吸収されており、時折こうして竜の姿に変化するようにもなった。
腕の中ですっぽんぽんの娘は私の顔を見て上機嫌で笑っている。
きっと覚束ない足で逃げるよりトロトロでも飛んで逃げた方が早いのだろう。
「もう、ミューったら。池から出て服を着せようとしたら嫌がって、駄々を捏ねて逃げ出したのよ。都合が悪くなると竜になって飛んで行くんだから」
「あはは、仕方ないだろう」
「いまからちゃんとしないと、ダメでしょう?」
ぷんぷんと怒りながらそう話す愛妻は、我が子を急いで追いかけてきたとはいえ、私から見たら娘と大差ない姿だ。
自分が幼い姿だった頃と同じくシュミーズ姿で池に入ったのであろう。
薄い生地はピタリと肌にへばりつき、豊かな胸の頂の先端の赤い実までくっきりと透けて見えている。
我妻ながら、その淫靡な姿にそそられ、下半身が反応してしまった。
いかんいかん、娘の前だ。
私は手をかざし、リディの濡れた躰を風魔法でさっと乾かしてあげる。
「ん、あっ、ありがとうレニー。さぁ、ミューお洋服を着ましょうね」
私にしがみ付いていた娘が観念したようにリディに差し出された腕の中に移動していく。
何と可愛いのだろうか、我が妻と娘は。
ミューをリディに預けると、私はリディの肩を抱いて屋敷の中へ入って行ったのだった。
暫くして娘を寝かしつけてたリディが私のもとへやって来た。
テーブルの上の書類を手に取り口元を緩めている。
どうやら護衛候補のアランが気に入ったらしい。
「サモエドさんて、本当にサモエドなんだ」
「ああ、そうだな。犬族サモエドの族長の孫に当たる」
きっともう、妻の頭の中には大きくモフモフのサモエド犬の姿で埋め尽くされているに違ない。
「ふーん、十八歳、若いのね」
意外な言葉にえっ?と顔を覗き込むと、彼女はふふと笑いながら私の膝の上に腰を下ろしてきた。
「レニーの事だからやきもちを妬いてもっと年配の護衛を付けると思ってた」
「なっ、、、私はそれほど狭量ではないつもりだが……
それにこれから動き回る様になるミューズに振り回される事を考えれば、若い者の方が良いであろう?」
「そう言われれば(笑)」
「だろう?アランは若いが優秀な騎士だ。普段は君と一緒にいるのだからドラフトもついておる。心配はないと思うぞ」
「そうね。でももう少しミューが成長したらもう一人必要になるわ。走り回る子を追い掛けるのは大変よ。ましては飛ぶことも出来るんですもの。追いかけるばかりでは周りに気が回らなくなるわ」
「ふむ、確かにその通りだな。今からもう一人増やして置くか。その方がミューズも慣れるだろう?」
「ええ、そうして貰えると嬉しいわ。
ふふ、サモエドね、出来たらもう一人はトラ族か……優しい系なら羊族の騎士」
「おい、それはリディがモフりたいだけだろう?」
「あら、バレちゃった?」
可愛い舌をちろりと出して肩を竦める可愛い妻の唇を奪えば、細い腕が私の首に巻き付いて来る。
ベッドは愛娘に占領されている。
昼寝の邪魔をしてはいけないと、私はそのままソファにリディを押し倒した。
のどかで濃い休日となった。
**********
※短いですが親子の休日の一コマでした。
※新しいお話をアップしております。
『異世界で王城生活~陛下の隣で~」こちらも緩い更新ですが、宜しかったらお立ち寄りください。
https://www.alphapolis.co.jp/novel/823880103/100580199
26
この作品の感想を投稿する
みんなの感想(46件)
あなたにおすすめの小説
【完結】2番目の番とどうぞお幸せに〜聖女は竜人に溺愛される〜
雨香
恋愛
美しく優しい狼獣人の彼に自分とは違うもう一人の番が現れる。
彼と同じ獣人である彼女は、自ら身を引くと言う。
自ら身を引くと言ってくれた2番目の番に心を砕く狼の彼。
「辛い選択をさせてしまった彼女の最後の願いを叶えてやりたい。彼女は、私との思い出が欲しいそうだ」
異世界に召喚されて狼獣人の番になった主人公の溺愛逆ハーレム風話です。
異世界激甘溺愛ばなしをお楽しみいただければ。
最愛の番に殺された獣王妃
望月 或
恋愛
目の前には、最愛の人の憎しみと怒りに満ちた黄金色の瞳。
彼のすぐ後ろには、私の姿をした聖女が怯えた表情で口元に両手を当てこちらを見ている。
手で隠しているけれど、その唇が堪え切れず嘲笑っている事を私は知っている。
聖女の姿となった私の左胸を貫いた彼の愛剣が、ゆっくりと引き抜かれる。
哀しみと失意と諦めの中、私の身体は床に崩れ落ちて――
突然彼から放たれた、狂気と絶望が入り混じった慟哭を聞きながら、私の思考は止まり、意識は閉ざされ永遠の眠りについた――はずだったのだけれど……?
「憐れなアンタに“選択”を与える。このままあの世に逝くか、別の“誰か”になって新たな人生を歩むか」
謎の人物の言葉に、私が選択したのは――
何年も相手にしてくれなかったのに…今更迫られても困ります
Karamimi
恋愛
侯爵令嬢のアンジュは、子供の頃から大好きだった幼馴染のデイビッドに5度目の婚約を申し込むものの、断られてしまう。さすがに5度目という事もあり、父親からも諦める様言われてしまった。
自分でも分かっている、もう潮時なのだと。そんな中父親から、留学の話を持ち掛けられた。環境を変えれば、気持ちも落ち着くのではないかと。
彼のいない場所に行けば、彼を忘れられるかもしれない。でも、王都から出た事のない自分が、誰も知らない異国でうまくやっていけるのか…そんな不安から、返事をする事が出来なかった。
そんな中、侯爵令嬢のラミネスから、自分とデイビッドは愛し合っている。彼が騎士団長になる事が決まった暁には、自分と婚約をする事が決まっていると聞かされたのだ。
大きなショックを受けたアンジュは、ついに留学をする事を決意。専属メイドのカリアを連れ、1人留学の先のミラージュ王国に向かったのだが…
【完結】番(つがい)でした ~美しき竜人の王様の元を去った番の私が、再び彼に囚われるまでのお話~
tea
恋愛
かつて私を妻として番として乞い願ってくれたのは、宝石の様に美しい青い目をし冒険者に扮した、美しき竜人の王様でした。
番に選ばれたものの、一度は辛くて彼の元を去ったレーアが、番であるエーヴェルトラーシュと再び結ばれるまでのお話です。
ヒーローは普段穏やかですが、スイッチ入るとややドS。
そして安定のヤンデレさん☆
ちょっぴり切ない、でもちょっとした剣と魔法の冒険ありの(私とヒロイン的には)ハッピーエンド(執着心むき出しのヒーローに囚われてしまったので、見ようによってはメリバ?)のお話です。
別サイトに公開済の小説を編集し直して掲載しています。
【完結】お前を愛することはないとも言い切れない――そう言われ続けたキープの番は本物を見限り国を出る
堀 和三盆
恋愛
「お前を愛することはない」
「お前を愛することはない」
「お前を愛することはない」
デビュタントを迎えた令嬢達との対面の後。一人一人にそう告げていく若き竜王――ヴァール。
彼は新興国である新獣人国の国王だ。
新獣人国で毎年行われるデビュタントを兼ねた成人の儀。貴族、平民を問わず年頃になると新獣人国の未婚の娘は集められ、国王に番の判定をしてもらう。国王の番ではないというお墨付きを貰えて、ようやく新獣人国の娘たちは成人と認められ、結婚をすることができるのだ。
過去、国の為に人間との政略結婚を強いられてきた王族は番感知能力が弱いため、この制度が取り入れられた。
しかし、他種族国家である新獣人国。500年を生きると言われる竜人の国王を始めとして、種族によって寿命も違うし体の成長には個人差がある。成長が遅く、判別がつかない者は特例として翌年の判別に再び回される。それが、キープの者達だ。大抵は翌年のデビュタントで判別がつくのだが――一人だけ、十年近く保留の者がいた。
先祖返りの竜人であるリベルタ・アシュランス伯爵令嬢。
新獣人国の成人年齢は16歳。既に25歳を過ぎているのに、リベルタはいわゆるキープのままだった。
旦那様、政略結婚ですので離婚しましょう
おてんば松尾
恋愛
王命により政略結婚したアイリス。
本来ならば皆に祝福され幸せの絶頂を味わっているはずなのにそうはならなかった。
初夜の場で夫の公爵であるスノウに「今日は疲れただろう。もう少し互いの事を知って、納得した上で夫婦として閨を共にするべきだ」と言われ寝室に一人残されてしまった。
翌日から夫は仕事で屋敷には帰ってこなくなり使用人たちには冷たく扱われてしまうアイリス……
(※この物語はフィクションです。実在の人物や事件とは関係ありません。)
最初で最後の我儘を
みん
恋愛
獣人国では、存在が無いように扱われている王女が居た。そして、自分の為、他人の為に頑張る1人の女の子が居た。この2人の関係は………?
この世界には、人間の国と獣人の国と龍の国がある。そして、それぞれの国には、扱い方の違う“聖女”が存在する。その聖女の絡む恋愛物語。
❋相変わらずの、(独自設定有りの)ゆるふわ設定です。メンタルも豆腐並なので、緩い気持ちで読んでいただければ幸いです。
❋他視点有り。
❋気を付けてはいますが、誤字脱字がよくあります。すみません!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。
完結後、再読しています
何故か21話が消えているのですが…
チョコレート様、再読みありがとうございます❣️
先日読み直しながら再度誤字などの確認作業をした際に、どうやら間違えて削除してしまったようです。
ご不便をおかけして申し訳けありませんです。先程再度アップ完了致しましたので、楽しんで頂けたら幸いです。
ありがとう😊
あはっ!更新嬉しいです!
偶に、またお願いしま〜す!
オオマサ華代様
ありがとうございます!
はい、また小噺が書けたらと思っています。
よろしくです°˖☆◝(⁰▿⁰)◜☆˖°
サモエド〜((*///Д///*))イヤーン
penpen様
サモエド、ツボって頂けたようで❣(*^-^*)❣