まほカン

jukaito

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第27話 密会! 少女と交わす財宝のような時間 (Cパート)

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 そして、カナミとアルミは順調に二に着いた。
 しかし、当然のことながら二のポイントを探し回ったが宝は見つからなかった。
 地面に埋まってるから掘り起こそうという考えもあるにはあったが、今ここで消耗するわけにはいかないのとあと一時間以内に三に向かわないといけない。その二つの理由をアルミは言って、カナミも渋々ながら納得して三に向かった。
 それで三には三十分とかからず、とたどり着いた。
「なんにもなくて拍子抜けねー」
「落とし穴とか、底なし沼とか、スイッチ踏んだら何か飛んでくるとか、岩ごろごろ追いかけてくるとか、やめてくださいよ!」
 ちなみに落とし穴と岩ごろごろは途中であったのだが、魔法少女に変身したおかげで難なく切り抜けられた。
 しかし、こんな罠がどこに潜んでいるか、いつ飛んでくるかわからないから精神衛生上よろしくないというのがカナミの本音であった。 
 しかも罠にはまるのは、いつも決まってカナミの方。不思議とアルミには罠が襲いかかってこないのだ。
 一体何なんだろうこの差は、とカナミは不満を漏らしたくなる。
「この三にも何も無さそうね」
「やっぱり堀るしかないんじゃないですか!?」
「何、カナミちゃん? そんなに掘りたいの?」
「掘らないと宝が出ないかもしれないんですよ! 掘るしかないじゃないですか!」
「まあ、そりゃそうだけど……私達の得物って土掘りに向いてないっていうか?」
「え、社長のドライバーなんて地面グリグリえぐって掘り進められそうじゃないですか」
「あ、あのね……いや、待てよ、それもアリか」
 アルミは地面にドライバーを突き刺してみる。
「え? え?」
 これから何するのか予想はつかないが、悪い予感だけはするカナミは大いに戸惑った。
「どりゃあッ!」
 アルミの気合の一声でドライバーは回転し、物凄い勢いで地面が抉られる。、
 掘る。というより抉る。といったものだ。
 しかも、抉られた地面の土は思いっきり、周囲に発散する。
 それはもう軽い土砂災害といっていい勢いだ。
「ひゃあぁぁぁッ!」
 そばにいたカナミは当然その被害を思いっきり被こうむるのであった。
「泥まみれ系魔法少女、だね」
「こ、これで昇給してもらえるんなら、安いものよ……」
 涙目になって強がりながら立ち上がる。
「あー、やっぱり無いわね」
 地形がちょっと変わるぐらいの勢いで掘ったのに、宝は見つからなかった。
「それじゃ宝はどこなんですか?」
「さあ、あとは四か五ね……」
「一と二もまだ埋まっているかもしれませんよ」
「まあ、その後ね。結構便利な魔法も出来たし」
「べ、便利ですか……」
 カナミにとっては思いっきり砂を被せられる嫌な魔法である。
「で、でも……」
 宝探しのとき、掘る手間が省ける。今後のために覚えておいた方が便利なのかもしれない、とカナミは前向きに考えることにした。
「社長……ちょっと、コツを教えてもらえませんか?」
「コツって言われてもね……」
 アルミは面倒そうに頭をかく。
「こう、グイッと突き刺してドリャアッって感じで回せば出来るわよ」
「いえ、わかりませんから。出来る気がしませんよ」
「そう……案外やってみたら簡単に出来ると思うけど」
「それは社長だけですよ」
「仕方ないわね。そんじゃもう一回やってみせてあげるわ」
「え、えぇ」
「よく見ておきなさい」
「ちょ、ちょっと待ってください!」
 しかし、カナミの制止などアルミは聞かずに実演を始める。
「グイッと突き刺してドリャアッ」
「きゃあぁぁぁぁぁぁッ!!」
 カナミは悲鳴を上げて、押し寄せる土砂を思いっきり被せられる。
「昇給でどうにかなるダメージなのかな?」
「な、なるわよ……な、なんとかしてみせるから……!」
 泣き言を言いたい気持ちを抑えて精一杯の強がりを見せる。
「どう、カナミちゃん?」
 しかし、そんなカナミの被害など露知らず、実演してみせたアルミは得意げに訊く。
「はい、私には無理です」
 カナミは即答した。
「ええ、君には土砂を被せるより被せられる方が似合ってるみたいだし」
「そういう意味じゃなくて! ――って!」
 カナミは声のした方を見る。
 いたのはもちろんモモミだった。
「あんた、やっぱり来てたのね!」
「そりゃ罰則ペナルティがあるからね」
「あ、やっぱり怖いんだ」
「やっぱり? 別に私はそういう罰則ペナルティとかが怖いから従ってるわけじゃないわよ!」
 モモミは目を鋭くさせる。
「それよりも、あんたみたいな泥まみれに負けるわけにはいかないからやってるのよ」
「だ、誰が泥まみれよ! すなまるけになっただけじゃない!」
「どっちも一緒よ」
「うん、たしかにね」
 アルミも同意する。
「しゃ、社長まで……!」
 やはり、カナミには味方は一人もいない。というか、すなまるけにした張本人がそれを言うか。
「っていうか、何あれ? お宝掘り起こすとかそういうレベルじゃないでしょ」
 さすがのモモミもあの土砂災害には呆れたようだ。
「あ、うん、それは私も思った……」
「同じ意見というのがまたムカつくわね」
 モモミは銃を向ける。
「第三ラウンドってところかしら。どっちでもいいからかかってきなさいよ」
「どっちでもいいなら、カナミちゃん。相手してあげなさいよ」
「言われてなくてもやってやりますよ!」
「その意気よ」
 アルミは安心したように後退する。
「ここで逃げない度胸だけは褒めてあげるわ」
「あんたには負けられないからね」
「私もよ、あんたが超大嫌いだから!」
「私もあんたが嫌い。どうしてだかわからないけどとにかく気に食わない!」
「私もよ、気に食わない!」
 モモミは銃を突きつける。
「さあ、第三ラウンド開始よ!」
 発砲する。
 カナミは応戦して、魔法弾を撃つ。
「セブンスコール!」
 カナミは魔法弾を空へと撃ち上げて、爆散させ、雨のように降り注がせる。
「それで雨のつもり? ホントの雨はね、こういうのをいうのよ!」
 モモミは銃を魔法弾の雨に向かって撃ち返す。
 魔法弾と銃弾がぶつかり、花火のように飛び散る。
「地面から降ってくる雨ってのも面白いでしょ」
「傘が役に立つからお断りよ」
「君の場合、傘を買うお金が無いからどのみち意味ないでしょ」
「あんたは黙ってなさい」
 カナミはマニイは叩き通す。
「それじゃ、もう一回いっくわよー!」
 モモミは元気よく言って、二丁の拳銃で銃弾の雨を降らせる。
「ジャンバリック・ファミリア!」
 ステッキの鈴を外して、数十、数百の魔法弾で応戦する。
「まだまだ!」
 銃弾を全て叩き落として、その余力でモモミに攻撃を仕掛ける。
「チィ!」
 モモミは舌打ちして、それを避ける。
「逃がさない!」
 カナミは追撃をかける。
 ようやく巡ってきた反撃のチャンス、このまま畳み掛けて一気に勝負をつけたい。
「こいつッ!」
 モモミはジャンプして振り向く。
 銃口はしっかりカナミを捉えている。
「死ねぇッ! Gブレッド」
 特大の銃弾が発射される。
 これ一発でさっきの数百発の乱射の比べ物にならないほどの威力を秘めている感じがする。
「神殺砲!」
 カナミは即座にステッキを砲弾へと変化させ、発射する。
 急ごしらえの迎撃用だったから、そこまでの威力は無い。それでも、モモミが放った巨大な弾頭を撃ち落とすには十分だったようだ。
 さらに砲弾は直進し、モモミの肩を掠める。
「くッ……!」
 モモミは苦悶の表情を浮かべ、さらに肩を抱えて離脱する。
「に、逃がすか……!」
「まあ、いいところまでいったわね」
 追いかけようとするカナミをアルミが肩に手をかけて止める。
「今の戦い、よかったわ」
「え……?」
 カナミは意外そうな顔をする。アルミから褒められるなんて、これは本当に嵐の前触れかと本気で思ってしまう。
「次もこの調子で戦えば勝てるわよ」
「は、はい……って、次も戦うんですか」
「言ったでしょ。あと一回、私達とあの娘は衝突するわ」
 宝が眠っているはずの五つのポイント。
 カナミ達は一から順に、モモミは五から順に向かう。その過程で二組は三回衝突するという計算になる。
 モモミがカナミ達を待ち構えていたことはあるが、それは例外。それを含めずに行くとカナミ達とモモミは既に二回衝突している。つまり、あと一回衝突する。
 カナミ達が四から五へ向かう途中。
 モモミが二から一へ向かう途中。両者は最後の衝突が起こる。
「それはわかっています……でも、社長は戦わないんですか?」
 今の口ぶりからするとまたカナミだけ戦わせてアルミは何もしない。そういう風に聞こえた。
「私よりもカナミちゃんが戦ったほうがいいでしょ。それとも、あの娘のこと、私に任せていいの?」
 任せる……その言葉を肯定するのにカナミは強い抵抗を感じた。
 アルミに任せた方が確実に勝てるし、自分は楽をできる。

――でも、任せてはいけない。

 本能がそう答えを出している。
 モモミとは一対一で戦って決着をつける。
 そうしなければならない、敵だ。
 何故って? そりゃモモミが気に食わない、ただそれだけの理由だ。
「いいえ、私にやらせてください」
 その言葉を聞いて、アルミは満足げに笑う。
「――いい答えよ」



 その後、アルミとカナミは四のポイントに向かい、あっという間にたどり着いた。
 やはりというか予想通りというか、そこに宝は無かった。念の為、アルミはドライバで地面をえぐって調べてみたが、やはりなかった。
 ちなみに、カナミはこれで三度目になるのでさすがに学習したため、早めに逃げてすなまるけを回避した。
――これで残すは五のポイントだけ。
 いや、掘り起こしていない一と二に宝がある可能性がまだ残っている。
 しかし、とにもかくにも一時間という時間制限がある。
 その時間内に一や二へ寄っていくといった選択肢もあるにはあるのだが、モモミとの最後の衝突が控えているというのだから、体力や魔力の消耗は避けたい。
 そういうわけで寄り道など一切せずまっすぐ五のポイントへ向かう。とはいっても、この無人島には人が通るための道らしい道は一切なく、自然そのままの地形になっているため、まっすぐ行っても平地とは比べ物にならないぐらい時間と労力がかかる。
 おまけに、落とし穴、底なし沼、踏んだら何か飛び出してくるスイッチといった映画でよく見かける罠の数々が行く手を阻むおかげで余計に疲れる。
 魔法少女じゃなかったら、疲れるどころじゃないことになっていた気もするが、それはそれとして疲れるものは疲れるのであった。
「五のポイントまであとどのくらいですか……?」
「あともう少しね」
 アルミの少しは全然あてにならないと、今回のカナミは学んだ。
 何しろ、三十秒後につくこともあれば、十分近くかかってようやくつくこともあるので、『もう少し』というものは人の感覚によって変わるものというのは理屈の上ではあるが、この人の感覚はやはり常人のそれとは何か決定的に違うのね、と思い知らされる。
 そのアルミが今回答えた『もう少し』はあとどのくらいなのだろうか。
 いずれにしてもこうやって考えているうちに出るかもしれない。
 それよりも先にモモミがやってくるのか。
 カナミは一歩一歩踏みしめるたびに、緊張感を募らせる。
 魔法少女の一歩は、普通の人間の十歩分にも及ぶ。それも思いっきり地面を蹴って飛ぶように一歩踏み出すと、もう走り幅飛びのように一瞬で数メートルも先を進んでしまう。
 この超速度が無かったら、一時間に島の端から端まで移動するなんてことはとても無理だっただろう。
 当然、モモミにも同じことが言える。
 モモミはアルミとカナミが二のポイントに着くまで待ち伏せしていた。二のポイントにたどり着いたアルミと衝突して、すぐに撤退した。あのあと、すぐほぼ島の反対側にあるはずの四のポイントへ急いで行って、三でカナミ達とほぼ同時に着いてまた戦った。
 考えてみればモモミは休み無しで戦い続けているのではないか。だとするとさっきの戦いでカナミが優勢に回れたのも当然の成り行きともいえる。だからといって、同情や手心を加えるなんてことをするつもりはない。
 こっちは宝で借金返済というの大義がかかっているのだ。
 何よりもあの女に同情なんてしても意味はない。
 とにかくいかれているのだから、完膚なきまでに叩きのめしてやらないといけないのだ。
「――あ」
 思わず、声を上げる。
 見上げた先にあの洋館がまた見えたからだ。
「もう少しってまだまだ全然あるじゃないですか!」
 洋館は島の中央に位置している。
 つまり、四から五に移動する過程の今ちょうど半分にたどり着いたわけだ。
「うん、でもまあもう少しじゃない」
 そう答えるアルミが一体何を基準に『もう少し』と言っているのかまったくわからないカナミであった。
「カナミちゃん、一つ訊いていいかしら?」
「なんですか、急に?」
「カナミちゃんはもし宝を手に入れたらどうするつもり?」
 唐突にそんなこと言われて少し戸惑った。
「借金返済にあてます」
 しかし、答えは決まっていたため、すぐに答えられた。
「あ~夢が無いわね、わかっていたけど……」
「それでしたら、社長はどうするんですか?」
「私か、私ね……」
 アルミは顎に手を当てて考える。走りながら
「宝は見つかるまでが宝なのよ」
 親指を立てて答える。
「何も考えてなかったんですね」
「ええ、そうよ!」
「開き直らないでください!」
「じゃあ、パーティでもしましょうか!」
「パーティ?」
「そ、最高に派手でゴージャスでハッピーなパーティをね!」
「社長らしいです」
「借金返済もカナミちゃんらしいじゃない」
「それ、褒めてませんよね!?」
「当然よ」」
 カナミの気が重くなる。
「でも、パーティか……いいですね」
 翠華やみあ、紫織と一緒にわいわいがやがやするのは楽しそうだ。
 そういう楽しさはお金に代え難いものがあるとカナミは思う。
 以前、ネガサイドに身を寄せた時、今では信じられないぐらいお金は充実していたが、ちっとも楽しくなかった。むしろ気だけが滅入らされる日々だった。
 そう考えると今はお金こそないものの気力だけは充実している。というか、気力が無いとやっていけない。
 でも、その気力を支えてくる仲間がいてくれる。
「じゃ、決まりね。宝が見つかったらパーティね」
「そんなこと、大丈夫なんですか?」
 なんだか嫌なことが引き起こりそうな一言に感じてならなかった。
「大丈夫よ、カナミちゃんはちゃんと勝つもの」
「勝てますかね……」
 アルミは力強く言ってくれたものの、カナミは不安を隠せないでいる。
 相手はモモミ。気に食わない奴だけど、実力は本物だ。さっきはたまたま上手くいって優勢にたてたとしか思えない。まだまだ力を隠し持っている余裕はありそうに感じてならないし、確実に勝てると断言できる敵じゃない。
「勝てなきゃ、パーティは無しね」
「それは困ります」
「じゃあ、勝ちなさい。経費はちゃんと持ってあげるから」
「それを聞いて安心しました。絶対に勝ちます」
「うん、いい言葉ね」
 アルミは満足げにそう言う。
「まったく、言ってくれるじゃないの」
 そう言ってモモミは姿を現す。
「人の戦いをパーティの前座か何かみたいに言ってくれちゃって……!」
「それって怒ってるの?」
「別に………パーティならここでやりなさいよ。硝煙と血糊にまみれたヤツをね」
「そんなの血生臭いパーティはお断りよ!」
「だったら、大人しくやられなさいな。敵がいなくちゃパーティは成立しないのよ」
「絶対に嫌。あんたにやられるのだけは我慢ならないから」
「奇遇ね、私もあんたにだけは負けたくないわ」
 カナミとモモミは睨み合う。
「負けたくない同士が戦ったら負けるのはどっちなのかしら?」
「当然、モモミあんたよ!」
「私は負けないわ。負けるのはあんたよ、カナミッ!」
 魔法弾と銃弾がぶつかり合う。
 これで最後。ここで決着をつける。
 ルールで定められているからじゃない。
 お互いにここで決めると全力を出し尽くそうという気概が攻撃を通して伝わってくる。

バンバンバンバンバンバンバンバン!

 銃声と爆音が絶え間なく鳴り響く。
 手数の応酬ならもう何度もやってきた。
 そのチカラは互角。数はモモミ、威力はカナミに軍配が上がるが、総合的に見ると両者は拮抗している。だからこそ、長時間お互いに決定打を打てないまま銃声と魔法弾の撃ち合いが続く。
「埓が開かないわね……!」
 しかし、その拮抗に業を煮やしたモモミは一石を投じる。
「必殺! ファントムバレット!」
 モモミは数十もの弾丸を一斉に発射する。
 それだけならいつも通り撃ち落とすだけですむ。はずだった。
 しかし、その銃弾は直進しなかった。
 曲線を描き、右から、左から、上から、下から、縦横無尽に弾丸が駆け巡りやってくる。
「必ず当てて、必ず殺す」
 モモミのその一言とともに銃弾は一斉にカナミの身体を貫かんと弧を描き襲いかかる。
「ええいッ!」
 しかし、カナミも黙ってやられるような魔法少女じゃない。
「ジャンバリック・ファミリア!」
 向こうが曲線を描いてくるなら、こちらも対抗して動く砲台で撃ち落とすだけだ。
 鈴が銃弾と同じく弧を描くように飛び回り、銃弾に対抗する。
 しかし、速さが違う。
 音を超える速度でカナミに迫る銃弾の何発かは鈴から放たれる魔法弾をかいくぐりカナミに襲いかかる。
「――!」
 腕、足にカナミの身体を銃弾が貫く。
「ああぁぁぁァァァッ!」
 痛みをこらえきれずに悲鳴を上げる。
「これで終わりよ、さようなら!」
 眉間を狙って、モモミは最後の一発を飛ばす。
「まだよ!」
 しかし、カナミは眉間に飛んできた弾丸をステッキをかざしてはじく。
「終わらない、終わってたまるか!」
 カナミは踏み出す。
 銃弾が飛び交う真っ只中を飛び込んでいくのだ。
 そんな危険地帯をいって、無事で済むはずがない。
 鈴から放つ魔法弾が撃ち落としてくれるのだが、それでも弾が多くて曲線を描いてくるものだから防ぎきれない。
「ば、バカじゃないの! そんなに傷だらけになって!」
 銃弾が当たり、血飛沫が飛び散り、激痛が走る。
 だが、それでもカナミは止まらない。
「どうせ私はバカで傷だらけなんだから!」
「開き直ったッ!?」
「だから、あんたも傷だらけになりなさい!」
「八つ当たりじゃない! 冗談じゃないわ!」
 モモミは一歩後退する。
「こいつぅッ!」
 しかし、カナミは食らいつく。
「しつこいのよ!」
 モモミは付き合ってるられるかと言わんばかりに弾を撃つ。
「だぁぁぁぁッ!」
 カナミの気合の一声で魔法弾を一斉発射し、銃弾を全て撃ち落とす。
――いくら豪雨スコールでも暴風ストームには勝てないでしょ
 アルミの言葉が脳裏をよぎり、今まさにカナミは暴風ストームと化してモモミに襲いかかる。
「そう、モモミ。カナミちゃんの強さは膨大な魔力なんかじゃないわ。その撃たれても折れてもねじ曲がっても開き直る不屈の闘志よ」
 アルミは誇らしげにそう言うとカナミはモモミの懐にまで飛び込む。
「ピンゾロの半!」
「こんのぉぉぉッ!」
 モモミはとっさに銃を盾代わりにする。

スパァァァン!!

 しかし、銃はものの見事に真っ二つになり、宙を舞う。
「――!」
 これにはモモミもショックで一瞬硬直する。
「もうひとぉぉぉつッ!!」
 カナミは今度こそ首を取らんがために仕込みステッキを振りかぶる。
「ま、負けるかァァァァッ!!」
 そこへモモミは持ち直して銃を突き出す。

バシィン!

 斬撃と銃撃の火花を散らす。
「あ……」
 空を見上げていたのはモモミであった。
 視界は赤く染まっている。それは飛び散った自らの血だ。
――私、負けたの……?
 そう自分に疑問を投げかけた。
 すると自分とよく似た、しかし別人の声がは答えを返してくれた。
――勝つわ、そう決まっているもの
 モモミは踏みとどまる。
「――私は負けない!」
「いいえ、私が勝つわ!」
 カナミはステッキを構える。
 ここに来て、銃撃で受けた身体中の傷が痛み出したのだ。
「く……ッ!」
「そんなボロボロで勝てるわけないじゃない。勝者っていうのはね、華々しくて輝かしいものなのよぉッ!」
「違うわ! 勝つっていうのは輝かしくなんてない! 泥臭くて、汗臭くて、それでも勝ち取りたいものなのよぉッ!」
 二人の叫びがぶつかり合う。
「カナミ、あんたはわかっていない。私はね、勝たなくちゃいけないのよ!
戦って! 勝って! それが私の存在意義なのよ!」
「そん、ざい、いぎ……!」
 モモミの思いも寄らない心からの叫びにカナミは足を止めた。
「負けて這いつくばるばかりのあんたにはわからないでしょ! 勝つことしか許されなくて勝つためだけに生かされている――私のことがぁぁぁぁッ!」
「そんな、そんなこと……!」
 カナミはステッキを握る拳を震わせる。
「わかるわけないじゃない! 私はあんたじゃないのよ!」
 カナミは言い返す。
 どうして、カナミはモモミをここまで嫌悪するのか。
 なんだか、わかってきたような気がする。
 似ているのだ。
 具体的に、どこが、とかまではわからないが。
 何かに縛られているところが。そして、その『何か』というのは自分らにとってどうしようもなく煩わしいものだということ。
 カナミは借金。モモミは勝利。
 お互いに抗いようのない現実と向き合い、立ち向かっていく。
 その先に、敵がいる。
 カナミにはモモミ。モモミにはカナミ。
 戦ってたどり着いた先にいる敵にはどうしても負けられない。
「そりゃそうよ! だって私は百地萌実で、あんたは結城かなみなんだから!」
「そうよ! 私は結城かなみで、あんたは百地萌実!」
「絶対に負けるか! 負けてたまるかぁッ!」
「私だってぇッ! 負けられないのよ!」
 互いの想い、信念のステッキと銃が重なり、閃光が迸る。



「はじめまして、百地萌実でーす! みんな、よろしくね!」
 株式会社魔法少女のオフィスで、萌実はあざとい笑顔でウィンクまでして自己紹介する。
「「「……………………」」」
 それを目の当たりにした翠華達は絶句する。
「な、ななななッ!」
 後ろで見守っていたかなみだけが震えた。
「なにやってんの、萌実ぃッ!」
 そして、絶叫した。
「だって、これが自己紹介の仕方だって、カリウスが言ってたのよ」
「騙されてる! あんた、騙されてるわよ!」
「かもね。でも、いい反応が見れたから正解だったわ」
 萌実は満足そうに言う。しかし、かなみは不満たらたらであった。
「いったい、どういうことなのよ、これ……?」
 みあが翠華と紫織の分の気持ちまで代弁した。
「ウシシ、聞くところによると今日からここで働くみたいだぜ、あいつ」
「新しい仲間ってやつか、ハァハァ」
 ウシィとイシィと愉快そうに語り合う。
「そんな呑気なものじゃないでしょ。何考えてんのよ、ネガサイドもあるみも」
「ど、どうなちゃうんでしょうか……?」
「そ、そんなのわからないわよ! なんとかしなさいよ、かなみ!」
「なんで私が!?」
「まあ、君が面倒を見るってことで契約成立したようなものだからね」
「そんなの聞いてない!」
「君が聞いてない時に決まった話だからね」
「社長に抗議する!」
「あるみはまた出張に行ったよ。留守は任せたわ、とメッセージ付きでね」
「任せるんだったら、ボーナスよこしなさいってのよ!
「ボーナスは私がいただきますよ、かなみ先輩」
 モモミはカナミへ寄り添う。
「誰があんたによこすもんですか!」
「いいえ、絶対にいただくわ! それが唯一にして最大の楽しみなんだから!」
 モモミは邪悪な笑みを浮かべて宣言する。
「絶対にあんたを楽しませないんだから!」



「……引き分けか」
 横たわる二人を見下ろしてリリィはそう言った。
「ええ、かなみちゃんならひょっとしたらって思ったけど……やっぱり、一筋縄じゃいかなかったみたいね」
「それでも、善戦したと思う」
「あなたが褒めるなんて珍しいわね。私にとっても宝に勝る収穫だけど」
 アルミは携帯を操作する。
「あなたも見てたでしょ?」
『うむ、しっかりと観戦させてもらったよ』
 電話越しにカリウスが上機嫌に答える。
『素晴らしいものだよ。意地と意地のぶつかりあい、想いの丈を張り上げる戦いは見世物として最上だ』
「いい趣味しているわね。なんだったら今ここで私と戦ってみる?」
『いや、やめておく。君と私じゃ見世物にならないよ』
「ふうん。まあいいわ、楽しみは後にとっておくタイプなのよね、私も。あなたもそうでしょ?」
『フフ、君とはとことん気が合うようで楽しいよ』
「ええ、楽しいわね。それで宝はいただけるのかしら?」
『残念ながらタイムアップだ。こちらも手駒を失ったのだから続行不可能なのだよ』
 アルミは時計を見てみる。
 四のポイントを通ってから今ちょうど一時間経ったようだ。
「本当に宝はあったのかしら?」
『さあ、それは私にもわからないよ。ただこれだけは言える。
――この島から宝は未だ見つかっていない。見つかっていないのだからこれから見つかるかもしれない』
「ロマンある言葉ね。まあ、見つけるのは誰かわからないけどね」
『そういうことだ。これで二つ目の議題は終了。最後の議題に移行しよう』
「そういえば……議題は三つあったわね」
 アルミは完全に忘れていた。
 というか、これだけ島中を歩き回らさせておいて、この上にまだ会議させようとするなんて、少しだけ気が合わないかもしれないとアルミは思った。
「なんなの? 今私達疲れてるんだから手短にしてちょうだい」
『なあに、簡単なことさ。モモミを君に預けたいんだ』
「はあ?」
 アルミは気が抜けて思わず携帯を落としかけた。
『まあ、深い意味はないよ。所謂インターンシップというやつだよ』
「インターンシップってね……私的にはどう扱っていいのかわからない人材なんだけど……」
『扱いに関しては君に一任するよ。その結果、もし君達側についたとしても、それもまた運命だったとこちらは納得するよ』
「そこまで織り込み済みだったら言うことないわ。
ええ、いいわ。我が社は、来るモノ拒まず、が基本方針なんだから」
『ネガサイドも、まあ似たようなものだよ。
さて、会談はこれで終了だ。もう帰ってくれていいよ』
「最後にもう一度顔を合わせるってことはないのかしら?」
『ないね。君と顔を合わせるだけで生きた心地がしないんでね』
「臆病ね。そんなんで関東支部長なんて務まるの?」
『悪いが、そんな安っぽい長髪には乗らないよ。ああ、帰りの船はちゃんと船着場にあるから連れて帰るといい。モモミの身柄は既にもう君のモノだから』
「話が早いわね。それじゃ遠慮なく連れて帰るわよ」
『ああ、遠慮はいらないよフフ』
 カリウスは最後に言い残すと電話は切れた。
「まったく、これも因果なのかしらね」
 アルミは一息ついて、カナミとモモミを担いだ。
 二人共、結構軽かった。
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