まほカン

jukaito

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第38話 終結! 戦争の勝者に少女は微笑む (Bパート)

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「む、カナミ」
「どう、したの?」
 カナミの声に元気がない。本当なら返事するだけでも辛いのに、マニィの言葉に少しだけ急を要するものを感じたから応える。
「アルミの緊急招集だ、いってくる」
 マニィはそう言って光になって空へと舞い上がる。
「はやくもどってきてね……」
 カナミは聞こえないように言った。
「まだ頑張りますか。少々驚きましたよ。さぞ辛いでしょう」
 スーシーはカナミを見下して言う。
 このまま立ち上がって殴り飛ばしたいところなのだが、そこまでのチカラは残っていない。
「そのまま大人しくしていればすぐに楽になれるというのに悪あがきをしようとする、とことんあなたらしいですよ。
――それゆえに美しいと思います」
 スーシーははっきりと言う。顔はいつものように相変わらず胡散臭い笑みを浮かべているため、本心から出た言葉なのか判断できない。
「だ、だれが……あきらめるか……!」
「素晴らしい、ですからこそこっちもあがきますよ。この手で葬って差し上げます」
 スーシーはそう言ってナイフを取り出す。
「ファミリア!」
 カナミは身体が痛むのに耐え、鈴を飛ばす。
「おお、まだやりますかッ!・」
 スーシーは驚嘆する。
「そりゃ、私の娘だからぁッ!」
 さらにそこからスズミの鈴をぶつけられる。
「ええ、母娘揃って面倒ですね。いい加減諦めたらどうですか?」
「いいえ、諦めないわよ」
「どうせあと数十秒でみんな死ぬんですよ。最後のときはゆっくりと安らぎに満ちたものにしませんか」
「残念ながら私達は諦めが悪いのよ」
 ミアチトセは糸でスーシーが飛ばしてくる死体をバラバラに切り裂く。
「そうですか。ですが、諦めてもらいますよ。まもなく爆破は始まります。そうなればみんな死にます。
……ボクもあなたもあなたの大事な人も」
「あんた、忘れてない……?」
 カナミは息もだえだえになりながら言う。
「忘れる、何をですか?」
「まえ、にたようなことがあったでしょ」
「にたようなこと?」
「あのときも、あんたはわたしをあきらめさせようとした……でも、あきらめなかった
――そして、きせきはおきた。いいえ、奇跡を起こした!」
「まさか!?」
 カナミは立ち上がる。
 激痛を抑え、それでも奇跡を起こすために、あらん限りの負けん気をスーシーへ叩きつける。
 そこまで傷ついて、どうしようもない絶望が押し寄せているにも関わらず、立ち上がり奇跡を起こせることを信じ続ける。
 その姿に、スーシーは初めてカナミに対して恐怖を抱かせた。
「いえ、そんなはずは……!」



 十二の使い魔マスコットが魔力の塊となって、アルミのもとへ集中する。
 一つ、アルミへ還る度にただでさえ強大な魔力がさらに増幅していく。
 その量は体内だけにとどまらず、ビルの屋上にまで飛び上がる。
「ちょっと、近道を使うわね」
 ドライバーはその瞳のごとく螺旋を描き、空間に抜け道を作り出す。
 これこそ事象の分解が成せる魔法。
 アルミが今立っている場所とカナミ達の場所までの空間を分解する。そうすることでアルミとカナミの距離はゼロになる。
「なッ!?」
「ああ、スーシー、いたのね」
「本当に、奇跡起こしてきたわね」
 ミアチトセはもはや驚くでもなく呆れたようにアルミに向かって言う。
「アルミ、爆弾はこの上よ」
 スズミは空を指差して言う。
「ええ、わかったわ! 任せて」
「任せたわ、奇跡起こしてきて」
「ええ、それが魔法少女だから」
 アルミは力強く応じ、そして跳ぶ。
「く、アルミ……! いつもいつもそうやって邪魔を、また奇跡を起こしますか!」
 スーシーは心底憎らしげに空を見上げて言う。



 アルミは空高く舞い上がる。
 目前に迫るのは爆弾。それは魔力が超高密度に圧縮された球体が、一気に爆発力へと変換する危険物だった。
 フルパワーのアルミが危険物だと認識してしまうほど危険なもの。
 一目みただけでわかってしまう。

――あれは、首都一帯の何もかもを吹き飛ばせる。

 だからこそ、ここで逃げるわけにはいかなかった。
 みんな頑張った。
 カナミもスイカもミアもチトセもクルハもスズミも、あのモモミさえも……もちろん自分だって頑張った。
 それはこの場所を悪の秘密組織に好きに蹂躙させないため。
 そこに正義や信念を懸けて戦わなければならない敵がいたから。
 そして、勝って勝ち続けてきた。
 残ったのはこいつだけ。
 最後にして最大の脅威。
 でも、最後だからこそ、ここで今までの頑張り全部が無駄にされるのは我慢ならない。
 ならないから奇跡を起こす。

――奇跡

 それは人がどんなに頑張っても手が届かず、しかし、神の悪戯によってもたらされる救い。
 しかし、アルミがそれを口にすると意味が変わってくる。

――奇跡

 必ず起きる。否、必ず起こせる魔法。
「想いを束ね、解き放つ!」
 アルミは球体へ向けてドライバを突き出す。
 それと同時に爆発は始まる。――はずだった。
 球体は抑圧から解き放たれ、破壊を振りまく爆発が拡散するところをアルミのドライバーがねじこまれたことで、爆発が止まる。
「因果の彼方へ消えろォォォォォッ!」
 アルミの魔力と爆弾の爆発のせめぎ合い。
 しかし、質が違った。

――無から破壊へと変える魔法。
――破壊を無へと還る魔法。

 爆発しようとしたところでアルミのドライバーがそれを阻み、爆発を分解し、無へと再構成させてしまう。
 都市を破壊する爆発がたった一人の魔法によって消滅する。
 これが奇跡。
 アルミによって絶対にもたらされる魔法。

パァァァァァァァァァァァァン!!

 爆発は音だけを置き去りにして跡形もなく消える。
 あとにはアルミが起こした魔法による余波から発生した光が地上へと降り注ぐ。
「人、これを奇跡というわね。」
 ミアチトセは感慨深げに空を見上げて言う。
「戦時中に彼女がいたら……それは言わないほうがいいわね……」
 ため息もつく。
「……やった、わね」
 カナミは奇跡が起きたことを見届け、満足し倒れ込む。

ボイン

 なんだか凄く柔らかい感触がした。
「ん?」
「カナミ、大丈夫?」
「か、かあさん……」
 かなみは母の胸に埋まったことに気づく。
「無茶しすぎよぉ、身体が壊れてもぉおかしくなかったんだからぁ」
「じゃあ、壊れていないんだね」
「そうなるわねぇ」
 フフ、とスズミは微笑むとカナミは安堵し、目を閉じる。
「本当に、よく頑張ったわね」
「ふう、危ないところだったわ」
 地上に降り立ったアルミは、文字通り一仕事終えたように肩を振る。
「アルミぃ、なんかぁオバサンくさくなってない?」
「ええ、そんなことないって!」
「歳とってなお健在……いいじゃない、そういう魔法少女がいたって」
「そういうのはスズミだけで十分だって」
「ええぇ、そうねぇ。さすがに現役とまではいかないけどぉ」
 スズミはそう言ってカナミを見守る。
「まあぁ、娘と一緒に戦うのも悪くないわねぇ」
「そう思うんだったら、とっとと会いに来なさいよ」
 アルミは珍しく愚痴をこぼす。
「ところであの娘、誰?」
「はあ!?」
「ミアちゃんのような、チトセのような……さっき急いでたから問いたださなかったけど」
「今さら、それを……まあ、そうよね。事情を説明すると……」
「ああ! 合体したのね!」
 アルミは手をポンと叩いて言う。
「ええッ!? わかるのはやッ!?」
「う~ん、それぐらいしか考えられなくてね」
「あんたって……つくづく凄いわね」
 ミアチトセは感心する。
 つくづくというのは当然、爆弾を消滅させたことも含めている。
 あれは決して半端な威力ではなく、本当に街一帯が消えてもおかしくなかった。それを消滅させる奇跡の魔法を使った上に、チカラをまったく使い果たした様子が無い。というか、余力十分である。
「まあ、色々とあったからね」
「あんな奇跡……一体どんな色々があったら起こせるんですか……」
 チカラ尽きて膝をついているスーシーはぼやく。
「それは企業秘密ね……で、あんたはどうするの?」
「……どうもしませんよ、もうボクは死んだ身ですから」
「じゃあ、好きにさせてもらうわよ」
「ええ、構いません」
 スーシーはそう言って目を閉じる。



「これで戦争は終わったわ」
 クルハはビルの屋上で戦場を見渡して言う。
 その先にあった戦場とは、刀吉とカリウスが戦った場所。
 それはもうビル、家、道に至るまで、街という形づくっていた人工の物がことごとく破壊され、荒れ地と化している。
 あれでは戦いがあった後だなんて誰も思わない。
 何しろ、何もかも消えてしまったのだ。
 街を埋めつくすほどの怪人が戦ったあとも、その死体さえも。
「あの二人、どうなったの?」
 モモミは訊く。
 あの二人とは言うまでもなく、刀吉とカリウスである。
「……わからないわ、生き残ったのか、死んだのか……」
「そう」
「でも、これであなたに命令する存在はいなくなったわ」
「果たして、そうかしら……?」
 モモミははぐらかす。
 しかし、クルハはわかっている。
 モモミはカリウスの命令で動いている。アルミの元へ着いたのもその命令があったから。
 そのカリウスが消えた今、命令は解ける。
「あなたはこれからどうするの?」
「どうもしないわ。これまでと一緒に好きにやるわよ」
「だったら、アルミのもとにいるの?」
「………………」
 モモミは黙ってクルハを見つめる。
「あんたにはどう視えてるの?」
「さあ……」
 モモミの返答がどうなるかの未来。
 二通りあったけど、それは言わないでおいた。
「……いいわ、どうせ他にすることないし、このままアルミのところにいるわ」
 それを聞いてクルハは微笑んだ。
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