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第46話 往路! 少女達はすれ違い、交わるもの (Bパート)
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「じゃあ、今回の仕事はかなみちゃんと翠華ちゃんにやってもらうわ!!」
いきなりホワイトボードをボンと叩いて言ってくる。
「は……?」
「え……?」
それを聞いたかなみと翠華は呆気にとられた。
「内容はシンプルね、ある場所に向かってもらって出没する怪人を倒す、以上よ!」
「あの、ちょっと待って下さい……」
翠華があるみに食い入るように申し出る。
「私、かなみさんとはちょっと……」
翠華はかなみに聞こえないように言う。
ただ、どんなことを言っているのかわからなくても、「かなみとは組めない」と言っているのではないかと逆にかなみを不安にさせた。
「もう決めたことだからダメよ」
「そ、そうですか……」
翠華もそこまで強くは言わなかった。それでも、かなみからしてみれば「やっぱり拒絶されている」と感じる。
(まあ、仕方ないか……)
とも思ってしまう。
そうされても仕方ないことをした。なんであんなことを言ってしまったんだろうと後悔が絶えない。
(誤解解きたい……)
嫌われたくないとかより、拒絶されたくないとかより、一番にそう思った。
「………………」
そんなことを思っていたら、翠華と目が合った。
思わず、視線をそらす。
(あ……!)
ここで、かなみはふと思う。
(もしかして、拒絶しているのは、私の方……?)
その疑問に答えが出る前にあるみから仕事内容の詳細を言い渡される。
「………………」
「………………」
かなみと翠華は揃って、その建物を唖然として見上げる。
「本当に、ここで合ってるんですよね?」
「ええ、そのはずよ」
まだ若干わだかまりがあるものの、そんなやりとりをする。しかし、かなみはそんなことは気にせず、マニィの方を見る。
「うん、間違いないね」
翠華とマニィが合ってるというのなら、もう疑いようが無い。
「でも、でも……」
それでも疑ってしまうのは、認めたくない。
「ここ、ラブホじゃないですか?」
翠華は沈痛な表情を浮かべたあと、答える。
「え、ええ、そうね……」
その建物は『ホテル:カーニバル』の看板が提げられたホテルで、夜に差し掛かった今の時間だとネオンで眩しく照らし出されている。
当然のことながらこんなところ、未成年のかなみや翠華にはまったくもって縁が無い場所であった。
しかし、今回の仕事内容が、『ここに現れるであろう怪人の退治』なのだから仕方が無い。……ちなみに、報酬は宿泊代という経費があるせいか、少なくて割に合わないのが正直なところ。
「か、かなみさん、あの……?
「な、なんでしょうか?」
かなみは反射的にビクッと震える。その反応に翠華は少しだけ震える。
「あの……よければ、私一人ででもいいのよ」
「え、どういうことですか?」
「こ、ここはかなみさんにはまだ早いから。かなみさん、まだ中学生だし」
「す、翠華さんだって高校生でしょ! 未成年ですよ!」
「大丈夫よ、そのためにこんな格好してきたんだから」
翠華はその頼りない胸を張って言う。
その格好というのは、以前闇カジノに潜入した時にした正装のスーツ姿。これなら若干大人びて見えるのでホテルの利用客として申し分無い……ように見える。
対するかなみは学生服なので少々浮いている。
「う、うーん……でも」
「ボーナスならちゃんと二人で分けるから安心して。なんだったら全額かなみさんにあげても」
「それはダメです! ありがたい話ですけど!」
かなみは即座に翠華を止める。
いくら厚意とはいえ、仕事を全部任せてボーナスだけもらうなんてことは出来ない。たとえ、自分を想いやってくれてのことだとしても。
「かなみさん……でも」
「翠華さん、ありがとうございます。嫌いだなんて言っちゃった、私なんかのために」
「そ、それは……」
翠華の胸がチクリと痛む。
かなみはそのまま深々と頭を上げる。
「ごめんなさい!」
「……え?」
「嫌いだなんて心にもないこと言うつもりは無かったんです……ただ、ちょっと質問しようかと思って、それで緊張して……」
「え、ど、どういうことなの!?」
「とにかく、ごめんなさい!」
かなみは地面に頭をぶつけようかという勢いでまた謝る。
翠華は大いに困惑したが、同時に安心もした。
ちなみに、この二人のやり取りは周囲からはスーツ姿の女子が女子中学生をホテルに連れ込もうとしたら、思いっきり断られるといった奇妙な光景に見えたらしい。
「……そういうことだったのね」
事情をあらかた聞いた翠華は心の底から安心する。
「ごめんなさい、翠華さん。私がドジなばっかりに……」
「ううん、いいのよ。私がかなみさんに嫌われていないことがわかればそれで……」
「翠華さん……」
かなみはなんていい人なんだと思った。
嫌いだって言い間違いとはいえ、面と向かって言ってしまった自分に対してここまで優しく接してくれるなんて、中々いない。
だからこそ、今度こそちゃんと訊かなければならないと思った。
「翠華さん、私のこと、本当に嫌いじゃないんですか?」
聞かれた翠華の方はキョトンとするが、すぐに満面の笑みで答えてくれる。
「どうして、私がかなみさんのことを嫌いになるの?」
とまあ、ここまでは感動の仲直りということでよかったのだが、問題はこの後だった。
仲直りは終わった後でも、仕事はまだ始まってすらいなかったのだ。
結局、かなみは翠華のありがたい申し出を断って二人でこの仕事を引き受けることにした。
仕事内容は至って簡単。
『ただホテルに宿泊して、そこに現れるであろう怪人を倒してボーナスを貰う』
と単純な内容だったはずなのだが、この仕事の実態は、
『ただラブホテルに二人っきりで宿泊して、いつ現れるかわからないであろう怪人を下手をすると一晩中待ちつつ、そこに現れるであろう怪人を倒してボーナスを貰う』
と難易度の高い仕事なのであった。
このことに二人が気がつくのはロビーの受付で部屋の鍵を受け取って、実際に部屋に入った後だった。
「す、すごい……」
かなみは部屋に入った後、思わず漏らした。
その部屋は清潔感の整った寝室そのもので、大きなベッドが置かれている。一目見て寝心地の良さそうな羽毛とシーツに二人は十分に入れる大きさのベッドであった。
「……こ、このベッドで、私とかなみさんが……」
翠華はわなわなと震える。
「でも、みあちゃんのベッドは広いかも」
「えぇッ!?」
かなみの心無い発言に翠華はショックを受ける。
(ああ、そうか。かなみさんは私のことを嫌いじゃなくても、好きじゃないのね……)
もちろん、翠華の好きというのは先輩後輩や友人を超えたものであるが、かなみは知る由もなかった。
「でも、翠華さんと一緒のベッドなんて初めてですから、ちょっと緊張しますね」
「――ッ!?」
翠華は衝撃を受ける。
「かなみさん、あなたって娘こは……!」
「ん? どうしたんですか、翠華さん?」
「い、いえ、なんでもない! なんでもないのよ!」
翠華はブンブンと頭を振る。
(かなみさん、あなたは酷いわ。その気がないのに、その気にさせるようなことばっかり言って!
ああ、でも、かなみさんは純粋に言ってるのだから、仕方ないわね! ええ、仕方ないわね!
とにかく、落ち着くのよ! いくら、かなみさんと二人っきりでラブホに泊まってるからって!
間違いが起きないとも……むしろ、起きてほしいかもしれないけど! でも、起こさないように! 注意しないと!
そのために、まず落ち着くのよ! いい、私はかなみさんの頼れる先輩なんだから!! ええ、先輩なんだから!)
翠華は必死に心の中で叫んで言い聞かせる。
「かなみさん……私達は仕事で来てるのよ。ベッドで寝ることは考えない方がいいわ」
それが翠華が散々心の中で叫んだ結果、出た結論であった。
「翠華さん……」
しかし、かなみには翠華がこの上なく真面目で仕事熱心に映った。それは尊敬すべき先輩の姿であった。
「そうですよね、私達は仕事で来てるんですからね。気を引き締めていかないと」
「かなみさん……」
翠華もまたその純粋な尊敬の眼差しが心地良かった。
「翠華さんには彼氏がいるのに、こんな仕事を引き受けてくださったんですもの! 頑張りましょう!」
「かなみさん……!」
翠華の落胆の声が混ざっていた。
そういえば、かなみにはそんなとんでもない誤解をされていたんだった。
翠華には彼氏がいる。
かなみはそれを信じて疑わなかった。
翠華は彼氏の話なんて一言もしないのに。いや出来るはずがないのに。
普通なら彼氏がいないって勘付いてもいいのではないか。いや、勘付いて欲しかった。
『私に彼氏なんていないわ』
そう一言言えればいいのだったが、そこまでの勇気は翠華には無かった。
何しろ、彼氏がいるということだけで、かなみが向ける憧れの視線は眩しすぎるのだ。
「あ、大丈夫ですよ! 翠華さんとここまで来たことは彼氏さんには黙っておきますので」
(会ったことないでしょ!)
翠華は心の中でツッコミを入れる。
「まあ、翠華さんの彼氏って会ったことないんですけどね、あははは」
(そりゃいないものね)
しかし、それは口に出さなかった。
「シャワーもあるみたいですね、こういうところだと必ずシャワーするのがお約束だって聞きました」
「どこから聞いてきたの、それ!?」
ラブホでそんなお約束、普通だったらまず聞かない。というか、翠華は聞いたことが無い。
(というより、シャワーってまさか……)
ラブホのことを考えると、なんだかいけない想像が浮かんでくる。翠華の顔が赤くなる。
「じゃあ、私がしてきますね!」
「待って、かなみさん!」
「……え?」
「シャワーはまだ、はやいわ……」
「どういうことですか?」
「ほ、ほら、夜はまだ長いんだから……」
「……意味がわからないんですけど……」
「う、う~ん……」
翠華は返答に困った。
しかし、翠華のことだから何か意味があるのだとかなみは察した。
「それじゃ、ベッドでお話しませんか?」
「ベッドッ!?」
「あ、ベッドだとそのまま眠っちゃうかもしれませんね」
「え、ええ、そ、そうね!!」
「それじゃシャワールームでお話しませんか」
「は、はひッ!?」
翠華の声が裏返る。
「どうかしたんですか、翠華さん?」
「い、いいえ、私、外の見張りしておくから! かなみさんは早くシャワーを!」
翠華は慌てて部屋を出る。
「翠華さん、どうしてそんなに慌てるんだろう……?」
その理由を一切知る由もないかなみは首を傾げる。
「今日のかなみさんはなんて大胆なの……」
翠華は部屋を出て、すぐに扉を背にへたり込む。
「ウシシシ、千載一遇のチャンスだったのにな」
「何がチャンスよ。こういうことはもっと過程を経てからじゃないとダメなのよ」
「ウシシシ、そんな悠長なこと言ってるとかなみ嬢はさっさと恋人を作っちまうぞ」
「――!」
翠華は硬直する。
「ウシシシ、そうなる前にさっさと恋人になっちまえばいいだろ」
「そ、そんな……! 無理よ、とてもそんなことできるわけないじゃない!」
「ウシシシ、だったら今まで通り先輩後輩のままだぜ。これは一歩踏み込むチャンスだぞ」
「一歩踏み込むチャンス……」
翠華はツバをゴクリと飲み込む。
「――まあ、踏み外して奈落へ転落ってこともありうるがな」
「ええぇぇぇぇぇッ!?」
翠華の悲鳴が鳴り響く。
「翠華さん、何事ですかッ!?」
ドタンとかなみが扉を開けてやってくる。
「もしかして、怪人ですか!? どこにいったんですか!?」
かなみはキョロキョロと辺りを見る。
「か、かなみさん……?」
翠華は絶句する。
翠華の悲鳴を聞きつけたかなみは即座に飛び出してやってきた。しかし、かなみは翠華に言われたとおりにシャワーを浴びており、その真っ最中であった。
つまり、シャワーの真っ最中に飛び出してきたということなので、全裸なのであった。
「え、あ……!?」
かなみはようやく自分がどういうことになっているか気づいた。
「か、かなみさんが、すっぱだかで……」
「翠華さん、これはその……」
「あ、ああぁ……」
翠華は倒れた。
「翠華さぁぁぁぁんッ!!」
目を開けると、天井が見えた。
「あ、うぅん……」
気だるい頭を起こす。
何があったのか思い出してみる。
まず、ここはラブホの一室。かなみと一緒に仕事でやってきた。そこでかなみがシャワーを使おうと提案したから終わるまで待っていると外に出た。そしてウシィと話しているうちに、思わず悲鳴を上げてしまった。
『これは一歩踏み込むチャンスだぞ。
――まあ、踏み外して奈落へ転落ってこともありうるがな』
なんてとんでもない一言を言われたのだけど、さすがに迂闊だった。
だが、本当に問題だったのは、その次の瞬間だった。
まさか悲鳴を聞きつけたかなみが、シャワーの真っ最中にも関わらず飛び出してくるとは思わなかった。そんなあられもない姿を目の当たりにして、倒れてしまった。
「うぅ……」
思い出しただけで、頭がクラクラする。
バタンと倒れると、後頭部に心地よい感触がする。
これは枕か。ということは、ここはベッドの上か。
辺りを見回すとそれにようやく気づく。
(かなみさんが運んでくれたのかしら……?)
状況を鑑みるとそれしか考えられない。
(かなみさん、裸のまま、私を……?)
その光景を想像すると、また倒れそうになって枕を下にうずくまる。
「あ、あの、翠華さん……?」
その声に思わずビクンと震える。声の主はかなみだ。
「かなみさん……?」
「……その、大丈夫ですか?」
「え? 大丈夫って何が?」
「怪人に襲われたんじゃないんですか?」
翠華は何を言われたのかわからなかった。
振り返って考えてみる。翠華の悲鳴を聞きつけて、かなみはやってきた。何故翠華は悲鳴をあげたのか、かなみはそれを怪人に襲われているからだと考えたのだろう。だから、シャワーの真っ最中にも関わらず飛び出してきた。
「あの、私……怪人に……」
「どんな怪人だったんですか? 翠華さんが悲鳴を上げたんですから、よっぽど恐ろしい怪人だったんですね!」
「え、えぇ、そ、そういうわけじゃ……」
かなみがどんどん誤解していく。早く解かないと、翠華は焦って、どう説明していけばいいのかわからなくなる。
「また襲ってくるかもしれませんから、これは油断できませんね」
「え、えぇっと……」
翠華は頭を抱える。
「でも、翠華さんを一瞬で気絶させるなんてとんでもない怪人ですね」
「……え、えぇ……」
翠華はとうとう首肯してしまう。本当はかなみの裸に目がくらんでしまったからなんてとても言えない。
「それで、翠華さんは大丈夫ですか?」
「え、私? ああ、私なら大丈夫よ!」
「そうですか……怪人が来たら私に任せてください。翠華さんの仇は取ってみせますから!」
「仇って、ちょっと大げさよ。それに怪人は……」
「そうですね、翠華さんは殺されていませんから」
「それはそうだけど……」
むしろ、かなみに殺されるんじゃないかと思ってしまう。このままベッドにまでもつれこんでもしようものなら。
「――あぁッ!」
翠華はまた枕に頭をうずくませる。
「翠華さん、どうかしたんですか?」
かなみはその行為に戸惑う。
しかし、翠華には言えるはずがなかった。かなみとベッドの上でなんて……なんてことを考えてしまうのだろう。ホテルの淫靡な空気のせいか。それとも、かなみの裸を見てあてられたか。
「――ッ!」
翠華はまたかなみの裸を思い出す。
別に裸を見たのは初めてじゃない。会社旅行で温泉に行ったときだって、みあの家でお泊りしてお風呂に入った時だって。
でも、あんな不意打ちのように見せられたのは初めてだった
しかも、ここはラブホだ。しかも、二人っきりだ。
いや、正確には二匹の邪魔者、もといマスコットがいる。
いや、マスコットがいてくれるおかげで理性を保てているのかもしれない。
『ウシシシ、そうなる前にさっさと恋人になっちまえばいいだろ』
『ウシシシ、だったら今まで通り先輩後輩のままだぜ。これは一歩踏み込むチャンスだぞ』
ううん、そのマスコットにけしかけられたんだった。
まったくもって自信が無い。というか、このまま成り行きに身を任せてしまって……そんなことを考えているようでは、理性は保てていなくなっているんだと思ってしまう。
「あの、かなみさん……」
「なんでしょうか?」
「一緒に寝ましょうか?」
「え……?」
かなみは呆然とする。
その様子に、翠華は自分がとんでもないことを言ってしまったか気づく。
「あ、あの、かなみさん……今のは……」
「いいですよ」
「……え?」
「翠華さんとなら私も嬉しいです」
「かなみさん?」
かなみが有無を言わさずベッドに入り込んでくる。
「あ……」
「私、言ってませんでしたけど、ずっと前からこういうことしたいと思っていたいんですよ」
「えぇ……ッ!?」
翠華は飛び上がりそうになった。
かなみからこんなことを言われるなんて夢のようだ。
――だけど、何か違う。
この上なく嬉しいはずなのに、言い表せない違和感がある。
「あの、かなみさん……」
「なんですか?」
かなみの顔が近い。
丸ったい瞳に吸い寄せられそうになる。さらさらな黄色の髪がこっちにまでたれてきそうだ。
「なんでしょうか?」
目をパチリとさせて、微笑んでくる。
たまらない。可愛すぎる。抱きしめたくなる。
でも、やっぱり何か違うような気がする。
「これって、もしかして夢かしら?」
そこでまた目が開く。
「……え?」
また天井が見えた。しかし、かなみの姿が見えない。
「もしかして……今のは夢……?」
枕にうずくまる。夢とまったく同じ感触だ。
なんて夢を見てしまったのか。そりゃ、いつもと違って大胆なかなみには違和感があったけど、それでも十分魅力的だった。
あのまま、抱きしめておけばよかった。
ほんの少し、いや、かなりの後悔が込み上げてくる。
「あれがもし現実だったら……」
ううん、考えるのはよそう。
夢は夢だ。
かなみはあれだけ仲よくなれるようにしたい。そういう現実にすればいい。
そう頭を切り替える。
「ところで、かなみさんは……」
ゴトンと扉が開く。
「あ、翠華さん、起きたんですか?」
かなみは部屋に入ってくる。
「大丈夫ですか? 怪人に襲われたかと思いましたよ」
「え、ええ、大丈夫よ。ちょっと気分が悪くなって」
ここまで夢と全く同じ。二度目だから慣れている。
「ところで、かなみさんはどこに?」
「怪人が近くにいるかと思ってパトロールしてきました」
「そ、そうなんだ……」
夢と違ってずっと見守ってくれなかったことに少しだけ落胆する。
「本当は翠華さんの看病をしたかったんですけど、まだ怪人がいると思うと落ち着いていられなくて、ごめんなさい」
「ううん、かなみさんの判断は正しい。気分が悪くなった私の方が悪いだし」
「そんな、誰だって気分が悪くなるときだってありますよ」
「ありがとう。かなみさんは優しいわね」
「ええ……私なんて、そんな」
かなみは照れる。そういった仕草も可愛い。
なんだかいい雰囲気になってきた気がする。この調子なら夢みたいに一緒のベッドで。
「ああッ!」
枕に頭を埋める。
これで何度目だろうか。夢でやった回数も数えるとかなりの数になりそうだ。
「す、翠華さん!」
「ごめんなさい、かなみさん。やっぱり気分が悪いみたい」
「そ、そうですか。私どうしたらいいでしょうか?」
どうしたらいいか、それはこっちが聞きたいぐらいだ。
――かなみさんが一緒に寝てくれたら……
翠華は脳裏に浮かんだ考えを否定する。夢であったようなことなんて起きるはずがないし、そんなこと言える勇気もなかった。
本当にどうかしていた。でも、少しだけなら希望を持ったって……ああ、やっぱり部屋の空気にあてられている。
本当にどうしたらいいのだろうか。
コンコン!
そこへ部屋をノックする音がする。
「あ、あれ……」
こんな時間に誰か来たのだろうか。
「あ、もしかしてルームサービスかも」
「え、かなみさん、何か頼んだの?」
「いいえ、てっきり翠華さんが頼んだものかと思いまして」
「私は今起きたばかりだから頼めないわよ」
「あ、そうですね。じゃあ、誰なんでしょうかね……?」
かなみはそう言いながら、ドアノブに手をかける。
「あ、かなみさん、簡単に開けたらダメよ!」
「……え?」
しかし、かなみは驚かされた拍子にあけてしまう。
開けた先に男が立っていた。
詰め襟を着ており、顔は帽子で隠している。どうみてもホテルマンじゃない。というか怪しさ全開の男だ。
ドン!
かなみは反射的にドアを閉める。いや、閉めようとした。
閉めそこなった理由は男が手を伸ばしたからだ。そのせいで、手がドアに挟まって完全には閉められなかった。
「――!」
挟まれた手はあまりにも痛々しく見えて、かなみはいたたまれず目を逸らす。
「って、きゃああああッ!」
その様相はホラー映画を彷彿させる不気味さであった。思わずかなみは恐怖と驚きでよろめく。
「オンナか……!」
野太い声だ。男はそう言ってもう片方の指をドアの隙間に入れてきてドアノブに手をかけてきたのだ。
「ひ……!」
「かなみさん、どうしたの?」
「変な人がドアに手をかけてきて!」
「変な人!」
翠華は飛び出してくる。
ガタン!
そこから男はドアを蹴破って、部屋に入り込んでくる。
「オンナが二人……オンナノコが二人……」
男はねばったい視線をかなみ達に向ける。
「な、何よ……? 私達に何か用!?」
かなみは強気に言い返す。
悪漢なんて、こんなの怪人に比べたら大したことはない。
もし、ラブホの空気に身を任せて襲いかかってこようものなら、即座に撤退するか、いざとなったら魔法を使ってでも逃げ切る。そう思えば怖くなかった。
「オトコはいないか。だったら」
男は頭を振って帽子を飛ばして、その目をギョロリと開ける。
「――オンナはいただくか!」
そう言った男の目はギチギチと飛び出して、床へと垂れ落ちる。
「いやぁぁぁぁぁぁッ! お化け! ラブホのおばけぇぇぇぇッ!」
「待って、かなみさん! こんなことをするのはネガサイドの怪人しかありえないわ!」
「あ、そうか!」
ネガサイドの怪人だとわかったら、もう恐怖はない。というか、遠慮もいらない。
「オンナ、オンナ……どこ?」
男は落とした目玉を拾い上げて自分の目にくっつける。
「むむ、中々インパクトのある怪人だな」
「ウシシシ、こいつの名前はギョロリでいいだろ」
この怪人はギョロリと命名された。
「そんなことどうでもいいから! 翠華さん、変身しましょう!」
「ええッ!」
「「マジカルワークス!!」」
コインを宙に舞い上げて、光が降り注ぐ。
光のカーテンが開くと、黄色と青色の魔法少女が姿を現す。
「愛と正義と借金の天使、魔法少女カナミ参上!」
「青百合の戦士、魔法少女スイカ推参!」
「オンナノコじゃなかった、魔法少女か」
ギョロリは肩を落とす。明らかにガッカリしたようだ。
「なんでそこでガッカリするのよ!?」
「魔法少女はオンナノコじゃない」
「女の子よ! 少女よ!」
「襲っても悲鳴上げない」
「襲うな!」
「だから殺さなきゃならない」
「は?」
カナミが驚きの声を上げると、ギョロリは腕を飛ばしてきた。
「ギャアアアッ!」
カナミはあまりにもグロテスクな攻撃に迎撃も出来ず、ただ悲鳴をあげることしかできなかった。
「この!」
それをスイカがレイピアで斬って落とした。
「スイカさん、ありがとうございました」
「いえ……カナミさんのピンチだったから身体が勝手に」
「お前、魔法少女のくせに悲鳴を上げるのか」
「魔法少女だって女の子よ!」
「そうか、お前はオンナノコか!」
ニヒヒ、と、ギョロリは不気味に笑う。さっきつけた目玉がまた垂れ落ちそうになっている。
「ひいッ!」
「カナミさん、下がって!」
スイカが前に出る。
この距離なら一呼吸どころか瞬きする間もなくレイピアで貫ける。
グシャリ!
スイカは一切の迷いなく、レイピアで突き刺す。
「え……?」
突き刺したスイカは、その感触に面を食らう。
ドロリとした感触だ。まるで泥を斬ったみたいだ。
「ちょっと痛い」
そう言ってギョロリはレイピアを持っているスイカの手を握る。
「キャッ!?」
触れれると感触が本当に泥みたいだった。
人のような柔らかさと硬さがなくて、泥のような柔らかさと滑りしかない。はっきり言って気持ち悪い。
「スイカさん!」
カナミは魔法弾を撃った。
「ゴフッ!?」
ギョロリはぶっ飛ばされて後ろの壁に叩きつけられる。
「スイカさん、大丈夫ですか?」
「ええ、でも、不気味な敵よ。気をつけて」
「痛い、痛いな……」
ヨロヨロとギョロリは立ち上がる。
そのゆったりとした仕草に不気味さを感じる。
「カナミさん、ここは私に任せて」
「スイカさん?」
「ここは狭すぎるから、カナミさんの魔法弾だと壊しちゃかもしれないから」
「あぁ……」
そう言われるとカナミは弱かった。
カナミの魔法は威力がありすぎて、この部屋どころかフロアまるごと破壊する事だって出来る。
そうなったら弁償代でボーナスは消し飛ぶ。スイカの申し出はそんなカナミを気遣ってのものだったが、何も出来ないのは歯がゆくてたまらない。
「というわけで、ここは私が戦うわ!」
「別にいいぜ……魔法少女もオンナノコだってわかったからな」
「女の子よ!」
スイカはレイピアを突き刺す。
「ぐう……痛い」
しかし、またレイピアで掴まれてしまう。
「こんのッ!」
そこをもう一つのレイピアを魔法で出して、突き刺す。
「ぬおッ!?」
ギョロリは驚いて、飛び退く。
「ストリッシャ―モード!」
スイカは二刀のレイピアから目にも留まらぬ早業で高速突きを繰り出す。
「う、うおおおおッ!?」
ギョロリはレイピアが突き刺さる度に身体を剥ぎ取られ、悲鳴を上げる。
ダメージはちゃんと受けているとわかる。スイカはこのまま一気に決めると踏み込む。
「ノーブルスティンガー!」
渾身の突きの一撃がギョロリを襲う。
「顔は、ダメだ……」
ギョロリはそう言って、両腕で防御の体制を取る。
それでノーブルスティンガーを受け止め、代わりに両腕は砕け散った。
「腕はすぐに治るから」
そう言ってすぐに腕が生えた。
まるで時間が巻き戻されたかのように、腕がみるみる形を成して治っていく。
「なんて怪人なの!?」
「そんで、これで驚け」
ギョロリはまた腕を飛ばしてくる。血、というか泥を撒き散らす様はちょっとしたグロテスク。だが、そんなことで攻撃に怯えるほどスイカは臆病ではなかった。
レイピアで腕を薙ぎ払う。
しかし、もう片方の腕も飛んでくることに気づく。一発目の腕の影にかくれていたため、見えなかったのだ。
「――あぁッ!」
その腕がスイカの額に当たる。
「スイカさん!」
「次はお前だ」
そう言い切ったギョロリに対して、カナミはキィッと睨み返す。
「よくもスイカさんをッ!」
カナミは仕込みステッキを引き抜く。
狙うは頭。スイカの一撃で貫こうとしたら、「顔は、ダメだ……」と言っていたことをカナミは聞き逃さなかったからだ。そこを斬れば致命傷なのかもしれないと思った。
カン!
「あぁッ!」
ステッキを振りかぶったところでカナミは失敗する。
ここはラブホの部屋の出入り口で幅は両腕で広げた程度しかない。天井だって中学生のかなみがジャンプすれば届くぐらいの高さ。そんなところでステッキを思い切りふれば当然、壁に突き刺さる。
はっきりいってこんなのは初歩的なミスもいいところ。焦って戦う場所を把握していなかったのだから。
「マヌケか」
「うるさい!」
カナミは壁に刺さったステッキを抜く。
「ふん!」
その隙にギョロリが放った拳打をカナミの腹へ打ち込む。
「ぐッ!」
カナミは腹を抱えて後退する。
「マヌケ」
「二度も言うなッ!」
カナミは癇癪を起こす。
この怪人、腕を飛ばしてくるだけで大した事ない。ちょっと雰囲気が不気味なものの慣れてしまえばどうということはない。
問題はどうやって倒すかだ。
斬った腕が片っ端から再生してしまうということから再生能力に長けた怪人なのはわかる。
(頭を庇ったから、頭を潰されたら再生出来なくなるかも)
これまでの戦闘経験からその考えに行き着くまでさほど時間はかからなかった。
しかし、先程スイカの渾身の一撃が腕を犠牲にして防御されてしまった。
破壊された腕はすぐに再生できるからこそできる防御みたいだけど、正直神殺砲を一発撃てば倒せそうではある。ただ、そうすると部屋をぶっ飛ばしてしまって、ボーナスがゼロになってしまうのでできればやりたくない。
しかし、周囲に被害を出さない強い攻撃となると、さっきのスイカのノーブルスティンガーだった。
あれ以上になると被害が出てしまう。
「どうした、こっちからいくぞ」
迷っている内に、ギョロリから拳が飛んでくる。
「そんなもので!」
カナミは魔法弾で撃ち落とす。
この腕飛ばし、最初こそグロテスクで戸惑ったが、見慣れてきたせいで眼前に迫っても魔法弾で十分対処できる。それほどに遅いのだ。
「バカのひとつ覚えね、マヌケはどっちよ」
「ぬううッ!」
ギョロリは悔しさで歯軋りする。
「ならば!」
ギョロリは自分の目に手を突っ込む。
「これでどうだ!?」
そして、掴んだそれを投げ込んでくる。
「うわああああああ、なんてものをッ!?」
カナミは腕以上にグロテスクなそれにカナミは悲鳴を上げる。
それとは、――目玉だ。
よくわからない水滴を撒き散らしながら、やってくるそれは、ある意味お化けより怖い。
「ああぁぁぁぁぁッ!?」
カナミはたまらず魔法弾で目玉を撃ち落とす。
バァン!
目玉は腕以上に意外なほどあっさりと爆散した。そう爆散したのだ。
ピタ
散った目玉のかけらがカナミの頬に張り付く。
「わああああ、なにかなにか、なにかついたあああああッ!?」
カナミは完全に錯乱していた。
「カナミさん、落ち着いて」
「むりです、むりむりむりッ!」
「ああ、ダメだね、これは……」
マニィも肩から降りてそう言う。
「スイカさん、これ目玉ですよ! グロですよ!?」
「あぁ、それはわかるけど……それぐらいだったら洗い落とせるわよ」
「洗い、落とす……?」
その言葉のおかげでいくらか落ち着けたような気がする。
「随分とビビったな」
ギョロリはさも愉快げに言ってくる。それを聞いたカナミは、動揺が消えてムッとする。
「ビビってないわよ、ちょっと驚いただけ!」
「人それをビビるという……」
「ああ、もう! ムカつくわね!」
「ムカつく? ビビるわけじゃないのか?」
「だ、誰が、あんたなんかにビビるかッ!!」
カナミは気張って言うが、傍から見ているスイカからはかなり頑張っていると思われている。
「じゃあ、今度はこれでどうだ?」
そう言って、今度は足を飛ばしてくる。
「ああ、それね」
カナミは思ったより冷静でいられた。あっさりと魔法弾を足で落とした。
「なに?」
「腕も足も対した違いないじゃない」
「ええ、そうなの!?」
スイカからしてみれば、どっちもグロくて裸足で逃げ出したくなるようなものであった。
「だって、目玉と比べたらね」
「お、おのれ……!」
ギョロリは飛ばした方の片足を再生させる。
それを見て、カナミはあることに気づく。
ギョロリの飛ばしてきた方の目玉が再生していない。つまり、今は片目なのだが、何故再生させないのか。
『顔は、ダメだ……』
ギョロリはそう言っていた。
やっぱり顔は再生できないから、ダメだということか。
「スイカさん?」
「なに、カナミさん?」
「顔を狙いましょう」
「ええ、顔ね。わかったわ」
すぐに自分がやりたいことを察してくれた。
やっぱりスイカは頼りになる先輩だと、改めて実感した。
「それでは、行きます!」
カナミは突撃する。
「仕込みステッキ・ピンゾロの半!」
カナミはギョロリの両腕を切り落とす。
その両腕はすぐに再生されるが、再生されるには一瞬の時間を要するはず。その間、頭は無防備だ。
「ノーブルスティンガー!」
渾身の一突きで頭へ繰り出す。もう片方の目へ突き刺す。
「ぐおおおおおおッ!!」
ギョロリは悲鳴を上げる。
腕を斬られても、足を斬られても、悲鳴一つ上げなかったのに、頭を貫かれて、断末魔のように悲鳴を上げている。
「目がッ!? メガァッ!? メガァァァァァァァァァッ!1」
耳をつんざくような悲鳴がひとしきり叫んだ後、ギョロリは身体が泥のようになって崩れ落ちた。
「なんだか、疲れましたね……」
「そうね、カナミさん、喉大丈夫?」
「大丈夫ですよ。いっつも叫んでますから」
「そ、そういえば……」
いつも喉が潰れんばかりに魔法を叫んでいることを思い出す。
あれも何気なく毎回やっているけど、凄い事なんだなと改めてスイカは思った。
「……ところで、これ、どうします?」
カナミは不安げに、ギョロリの死体を指差す。
「あ~」
これにはスイカもどうしたものかと思った。
何しろ、ドロが山のように積み上がっていて、ただでさえ片付けるのに苦労しそうなのに、どこに片付けたらいいのかさえわからない。
「うーん、ひとまず、ルームサービスでどうにかならないかしら?」
カナミはズッコケた。
「やあ、おはよう」
鯖戸は珍しく自分の方から挨拶してくる。
「……おはよう」
かなみは明らかな不機嫌顔で答える。
「ああ、昨日の経費のことなんだけど」
鯖戸がそう言うと、カナミはキィッと睨みつける。
「つべこべいわず、ボーナスよこせ!」
「そういう単刀直入なところは嫌いじゃないが、私がかかった手間のことも考えてくれないか?」
「知るか!」
かなみは単刀直入どころか一刀両断する。
「わかった。今回のボーナスの査定はゼロだ」
それを受けて鯖戸も即座に用件を答える。
聞いたかなみは不機嫌な顔にさらに殺気を募らせる。
「はあ? どういうこと?」
「追加経費でね、君へのボーナスはゼロになってしまったんだよ」
鯖戸は一切悪びれもせず答える。
「追加経費って、あれの死体処理でしょ! いくらなんでもあれでボーナスがゼロになるわけないじゃない!」
「それがなるんだよ、諦めてくれたまえ」
「諦められるか!」
「どうしたのぉ?」
涼美が台所からやってくる。
「母さん、聞いてよ! 鯖戸が私のボーナスをピンハネしたッ!!」
「あらぁ、ピンハネはよくないわねぇ」
「人聞きが悪いことは止めてくれたまえ。私は事実を言っただけだし、本当に追加経費が消えてしまったんだ」
「なんでよ? 怪人の死体処理しただけじゃない」
「それが問題なんだ。ああいうことは公にできないから秘密裏に処理する必要があってね、色々根回しとか手配とかが必要なんだ」
「だってぇ、かなみ?
涼美はそう言われて納得したようだ。なんだか味方だと思って頼ったら敵に回されたかのような気分だ。
「……母さん、これじゃ私達の借金返せないのよ
「でもぉ、世の中無情なのよぉ」
母の呑気に残酷なことを告げる様は、まさしく無情かもしれない。
「おはようございます」
そこへ翠華がやってくる。
「翠華さぁん!?」
入ってくるなり、いきなりかなみがすがるようにやってくるので、翠華は思わず硬直する。
「か、かなみさん!? どうしたの?」
「部長と母さんが私の敵なんです!」
「えぇ? 一体何があったの?」
「ボーナス、ピンハネされました!」
「あぁ、なるほど……」
翠華は納得する。
「翠華さんが、翠華さんだけが、私の味方です!」
「わ、私だけッ!?」
その言葉にとても惹かれるものがあった。
ふと、翠華は涼美の視線に気がつく。
――かなみと仲良くねぇ
そう言われているような気がした。
(もしかして、これって……――親公認ッ!?)
翠華は小躍りしたくなるような衝動にかられる。
「かなみさん!」
「はい、なんでしょうかッ!?」
「ボーナスは次、頑張りましょう!」
「翠華さぁぁぁんッ!」
「大丈夫、私も協力するから!」
「翠華さん、そういうなら……」
かなみは渋々納得する。
「翠華ちゃんには素直ねぇ」
涼美からそう言われてかなみは苦笑し、翠華は赤面した。
いきなりホワイトボードをボンと叩いて言ってくる。
「は……?」
「え……?」
それを聞いたかなみと翠華は呆気にとられた。
「内容はシンプルね、ある場所に向かってもらって出没する怪人を倒す、以上よ!」
「あの、ちょっと待って下さい……」
翠華があるみに食い入るように申し出る。
「私、かなみさんとはちょっと……」
翠華はかなみに聞こえないように言う。
ただ、どんなことを言っているのかわからなくても、「かなみとは組めない」と言っているのではないかと逆にかなみを不安にさせた。
「もう決めたことだからダメよ」
「そ、そうですか……」
翠華もそこまで強くは言わなかった。それでも、かなみからしてみれば「やっぱり拒絶されている」と感じる。
(まあ、仕方ないか……)
とも思ってしまう。
そうされても仕方ないことをした。なんであんなことを言ってしまったんだろうと後悔が絶えない。
(誤解解きたい……)
嫌われたくないとかより、拒絶されたくないとかより、一番にそう思った。
「………………」
そんなことを思っていたら、翠華と目が合った。
思わず、視線をそらす。
(あ……!)
ここで、かなみはふと思う。
(もしかして、拒絶しているのは、私の方……?)
その疑問に答えが出る前にあるみから仕事内容の詳細を言い渡される。
「………………」
「………………」
かなみと翠華は揃って、その建物を唖然として見上げる。
「本当に、ここで合ってるんですよね?」
「ええ、そのはずよ」
まだ若干わだかまりがあるものの、そんなやりとりをする。しかし、かなみはそんなことは気にせず、マニィの方を見る。
「うん、間違いないね」
翠華とマニィが合ってるというのなら、もう疑いようが無い。
「でも、でも……」
それでも疑ってしまうのは、認めたくない。
「ここ、ラブホじゃないですか?」
翠華は沈痛な表情を浮かべたあと、答える。
「え、ええ、そうね……」
その建物は『ホテル:カーニバル』の看板が提げられたホテルで、夜に差し掛かった今の時間だとネオンで眩しく照らし出されている。
当然のことながらこんなところ、未成年のかなみや翠華にはまったくもって縁が無い場所であった。
しかし、今回の仕事内容が、『ここに現れるであろう怪人の退治』なのだから仕方が無い。……ちなみに、報酬は宿泊代という経費があるせいか、少なくて割に合わないのが正直なところ。
「か、かなみさん、あの……?
「な、なんでしょうか?」
かなみは反射的にビクッと震える。その反応に翠華は少しだけ震える。
「あの……よければ、私一人ででもいいのよ」
「え、どういうことですか?」
「こ、ここはかなみさんにはまだ早いから。かなみさん、まだ中学生だし」
「す、翠華さんだって高校生でしょ! 未成年ですよ!」
「大丈夫よ、そのためにこんな格好してきたんだから」
翠華はその頼りない胸を張って言う。
その格好というのは、以前闇カジノに潜入した時にした正装のスーツ姿。これなら若干大人びて見えるのでホテルの利用客として申し分無い……ように見える。
対するかなみは学生服なので少々浮いている。
「う、うーん……でも」
「ボーナスならちゃんと二人で分けるから安心して。なんだったら全額かなみさんにあげても」
「それはダメです! ありがたい話ですけど!」
かなみは即座に翠華を止める。
いくら厚意とはいえ、仕事を全部任せてボーナスだけもらうなんてことは出来ない。たとえ、自分を想いやってくれてのことだとしても。
「かなみさん……でも」
「翠華さん、ありがとうございます。嫌いだなんて言っちゃった、私なんかのために」
「そ、それは……」
翠華の胸がチクリと痛む。
かなみはそのまま深々と頭を上げる。
「ごめんなさい!」
「……え?」
「嫌いだなんて心にもないこと言うつもりは無かったんです……ただ、ちょっと質問しようかと思って、それで緊張して……」
「え、ど、どういうことなの!?」
「とにかく、ごめんなさい!」
かなみは地面に頭をぶつけようかという勢いでまた謝る。
翠華は大いに困惑したが、同時に安心もした。
ちなみに、この二人のやり取りは周囲からはスーツ姿の女子が女子中学生をホテルに連れ込もうとしたら、思いっきり断られるといった奇妙な光景に見えたらしい。
「……そういうことだったのね」
事情をあらかた聞いた翠華は心の底から安心する。
「ごめんなさい、翠華さん。私がドジなばっかりに……」
「ううん、いいのよ。私がかなみさんに嫌われていないことがわかればそれで……」
「翠華さん……」
かなみはなんていい人なんだと思った。
嫌いだって言い間違いとはいえ、面と向かって言ってしまった自分に対してここまで優しく接してくれるなんて、中々いない。
だからこそ、今度こそちゃんと訊かなければならないと思った。
「翠華さん、私のこと、本当に嫌いじゃないんですか?」
聞かれた翠華の方はキョトンとするが、すぐに満面の笑みで答えてくれる。
「どうして、私がかなみさんのことを嫌いになるの?」
とまあ、ここまでは感動の仲直りということでよかったのだが、問題はこの後だった。
仲直りは終わった後でも、仕事はまだ始まってすらいなかったのだ。
結局、かなみは翠華のありがたい申し出を断って二人でこの仕事を引き受けることにした。
仕事内容は至って簡単。
『ただホテルに宿泊して、そこに現れるであろう怪人を倒してボーナスを貰う』
と単純な内容だったはずなのだが、この仕事の実態は、
『ただラブホテルに二人っきりで宿泊して、いつ現れるかわからないであろう怪人を下手をすると一晩中待ちつつ、そこに現れるであろう怪人を倒してボーナスを貰う』
と難易度の高い仕事なのであった。
このことに二人が気がつくのはロビーの受付で部屋の鍵を受け取って、実際に部屋に入った後だった。
「す、すごい……」
かなみは部屋に入った後、思わず漏らした。
その部屋は清潔感の整った寝室そのもので、大きなベッドが置かれている。一目見て寝心地の良さそうな羽毛とシーツに二人は十分に入れる大きさのベッドであった。
「……こ、このベッドで、私とかなみさんが……」
翠華はわなわなと震える。
「でも、みあちゃんのベッドは広いかも」
「えぇッ!?」
かなみの心無い発言に翠華はショックを受ける。
(ああ、そうか。かなみさんは私のことを嫌いじゃなくても、好きじゃないのね……)
もちろん、翠華の好きというのは先輩後輩や友人を超えたものであるが、かなみは知る由もなかった。
「でも、翠華さんと一緒のベッドなんて初めてですから、ちょっと緊張しますね」
「――ッ!?」
翠華は衝撃を受ける。
「かなみさん、あなたって娘こは……!」
「ん? どうしたんですか、翠華さん?」
「い、いえ、なんでもない! なんでもないのよ!」
翠華はブンブンと頭を振る。
(かなみさん、あなたは酷いわ。その気がないのに、その気にさせるようなことばっかり言って!
ああ、でも、かなみさんは純粋に言ってるのだから、仕方ないわね! ええ、仕方ないわね!
とにかく、落ち着くのよ! いくら、かなみさんと二人っきりでラブホに泊まってるからって!
間違いが起きないとも……むしろ、起きてほしいかもしれないけど! でも、起こさないように! 注意しないと!
そのために、まず落ち着くのよ! いい、私はかなみさんの頼れる先輩なんだから!! ええ、先輩なんだから!)
翠華は必死に心の中で叫んで言い聞かせる。
「かなみさん……私達は仕事で来てるのよ。ベッドで寝ることは考えない方がいいわ」
それが翠華が散々心の中で叫んだ結果、出た結論であった。
「翠華さん……」
しかし、かなみには翠華がこの上なく真面目で仕事熱心に映った。それは尊敬すべき先輩の姿であった。
「そうですよね、私達は仕事で来てるんですからね。気を引き締めていかないと」
「かなみさん……」
翠華もまたその純粋な尊敬の眼差しが心地良かった。
「翠華さんには彼氏がいるのに、こんな仕事を引き受けてくださったんですもの! 頑張りましょう!」
「かなみさん……!」
翠華の落胆の声が混ざっていた。
そういえば、かなみにはそんなとんでもない誤解をされていたんだった。
翠華には彼氏がいる。
かなみはそれを信じて疑わなかった。
翠華は彼氏の話なんて一言もしないのに。いや出来るはずがないのに。
普通なら彼氏がいないって勘付いてもいいのではないか。いや、勘付いて欲しかった。
『私に彼氏なんていないわ』
そう一言言えればいいのだったが、そこまでの勇気は翠華には無かった。
何しろ、彼氏がいるということだけで、かなみが向ける憧れの視線は眩しすぎるのだ。
「あ、大丈夫ですよ! 翠華さんとここまで来たことは彼氏さんには黙っておきますので」
(会ったことないでしょ!)
翠華は心の中でツッコミを入れる。
「まあ、翠華さんの彼氏って会ったことないんですけどね、あははは」
(そりゃいないものね)
しかし、それは口に出さなかった。
「シャワーもあるみたいですね、こういうところだと必ずシャワーするのがお約束だって聞きました」
「どこから聞いてきたの、それ!?」
ラブホでそんなお約束、普通だったらまず聞かない。というか、翠華は聞いたことが無い。
(というより、シャワーってまさか……)
ラブホのことを考えると、なんだかいけない想像が浮かんでくる。翠華の顔が赤くなる。
「じゃあ、私がしてきますね!」
「待って、かなみさん!」
「……え?」
「シャワーはまだ、はやいわ……」
「どういうことですか?」
「ほ、ほら、夜はまだ長いんだから……」
「……意味がわからないんですけど……」
「う、う~ん……」
翠華は返答に困った。
しかし、翠華のことだから何か意味があるのだとかなみは察した。
「それじゃ、ベッドでお話しませんか?」
「ベッドッ!?」
「あ、ベッドだとそのまま眠っちゃうかもしれませんね」
「え、ええ、そ、そうね!!」
「それじゃシャワールームでお話しませんか」
「は、はひッ!?」
翠華の声が裏返る。
「どうかしたんですか、翠華さん?」
「い、いいえ、私、外の見張りしておくから! かなみさんは早くシャワーを!」
翠華は慌てて部屋を出る。
「翠華さん、どうしてそんなに慌てるんだろう……?」
その理由を一切知る由もないかなみは首を傾げる。
「今日のかなみさんはなんて大胆なの……」
翠華は部屋を出て、すぐに扉を背にへたり込む。
「ウシシシ、千載一遇のチャンスだったのにな」
「何がチャンスよ。こういうことはもっと過程を経てからじゃないとダメなのよ」
「ウシシシ、そんな悠長なこと言ってるとかなみ嬢はさっさと恋人を作っちまうぞ」
「――!」
翠華は硬直する。
「ウシシシ、そうなる前にさっさと恋人になっちまえばいいだろ」
「そ、そんな……! 無理よ、とてもそんなことできるわけないじゃない!」
「ウシシシ、だったら今まで通り先輩後輩のままだぜ。これは一歩踏み込むチャンスだぞ」
「一歩踏み込むチャンス……」
翠華はツバをゴクリと飲み込む。
「――まあ、踏み外して奈落へ転落ってこともありうるがな」
「ええぇぇぇぇぇッ!?」
翠華の悲鳴が鳴り響く。
「翠華さん、何事ですかッ!?」
ドタンとかなみが扉を開けてやってくる。
「もしかして、怪人ですか!? どこにいったんですか!?」
かなみはキョロキョロと辺りを見る。
「か、かなみさん……?」
翠華は絶句する。
翠華の悲鳴を聞きつけたかなみは即座に飛び出してやってきた。しかし、かなみは翠華に言われたとおりにシャワーを浴びており、その真っ最中であった。
つまり、シャワーの真っ最中に飛び出してきたということなので、全裸なのであった。
「え、あ……!?」
かなみはようやく自分がどういうことになっているか気づいた。
「か、かなみさんが、すっぱだかで……」
「翠華さん、これはその……」
「あ、ああぁ……」
翠華は倒れた。
「翠華さぁぁぁぁんッ!!」
目を開けると、天井が見えた。
「あ、うぅん……」
気だるい頭を起こす。
何があったのか思い出してみる。
まず、ここはラブホの一室。かなみと一緒に仕事でやってきた。そこでかなみがシャワーを使おうと提案したから終わるまで待っていると外に出た。そしてウシィと話しているうちに、思わず悲鳴を上げてしまった。
『これは一歩踏み込むチャンスだぞ。
――まあ、踏み外して奈落へ転落ってこともありうるがな』
なんてとんでもない一言を言われたのだけど、さすがに迂闊だった。
だが、本当に問題だったのは、その次の瞬間だった。
まさか悲鳴を聞きつけたかなみが、シャワーの真っ最中にも関わらず飛び出してくるとは思わなかった。そんなあられもない姿を目の当たりにして、倒れてしまった。
「うぅ……」
思い出しただけで、頭がクラクラする。
バタンと倒れると、後頭部に心地よい感触がする。
これは枕か。ということは、ここはベッドの上か。
辺りを見回すとそれにようやく気づく。
(かなみさんが運んでくれたのかしら……?)
状況を鑑みるとそれしか考えられない。
(かなみさん、裸のまま、私を……?)
その光景を想像すると、また倒れそうになって枕を下にうずくまる。
「あ、あの、翠華さん……?」
その声に思わずビクンと震える。声の主はかなみだ。
「かなみさん……?」
「……その、大丈夫ですか?」
「え? 大丈夫って何が?」
「怪人に襲われたんじゃないんですか?」
翠華は何を言われたのかわからなかった。
振り返って考えてみる。翠華の悲鳴を聞きつけて、かなみはやってきた。何故翠華は悲鳴をあげたのか、かなみはそれを怪人に襲われているからだと考えたのだろう。だから、シャワーの真っ最中にも関わらず飛び出してきた。
「あの、私……怪人に……」
「どんな怪人だったんですか? 翠華さんが悲鳴を上げたんですから、よっぽど恐ろしい怪人だったんですね!」
「え、えぇ、そ、そういうわけじゃ……」
かなみがどんどん誤解していく。早く解かないと、翠華は焦って、どう説明していけばいいのかわからなくなる。
「また襲ってくるかもしれませんから、これは油断できませんね」
「え、えぇっと……」
翠華は頭を抱える。
「でも、翠華さんを一瞬で気絶させるなんてとんでもない怪人ですね」
「……え、えぇ……」
翠華はとうとう首肯してしまう。本当はかなみの裸に目がくらんでしまったからなんてとても言えない。
「それで、翠華さんは大丈夫ですか?」
「え、私? ああ、私なら大丈夫よ!」
「そうですか……怪人が来たら私に任せてください。翠華さんの仇は取ってみせますから!」
「仇って、ちょっと大げさよ。それに怪人は……」
「そうですね、翠華さんは殺されていませんから」
「それはそうだけど……」
むしろ、かなみに殺されるんじゃないかと思ってしまう。このままベッドにまでもつれこんでもしようものなら。
「――あぁッ!」
翠華はまた枕に頭をうずくませる。
「翠華さん、どうかしたんですか?」
かなみはその行為に戸惑う。
しかし、翠華には言えるはずがなかった。かなみとベッドの上でなんて……なんてことを考えてしまうのだろう。ホテルの淫靡な空気のせいか。それとも、かなみの裸を見てあてられたか。
「――ッ!」
翠華はまたかなみの裸を思い出す。
別に裸を見たのは初めてじゃない。会社旅行で温泉に行ったときだって、みあの家でお泊りしてお風呂に入った時だって。
でも、あんな不意打ちのように見せられたのは初めてだった
しかも、ここはラブホだ。しかも、二人っきりだ。
いや、正確には二匹の邪魔者、もといマスコットがいる。
いや、マスコットがいてくれるおかげで理性を保てているのかもしれない。
『ウシシシ、そうなる前にさっさと恋人になっちまえばいいだろ』
『ウシシシ、だったら今まで通り先輩後輩のままだぜ。これは一歩踏み込むチャンスだぞ』
ううん、そのマスコットにけしかけられたんだった。
まったくもって自信が無い。というか、このまま成り行きに身を任せてしまって……そんなことを考えているようでは、理性は保てていなくなっているんだと思ってしまう。
「あの、かなみさん……」
「なんでしょうか?」
「一緒に寝ましょうか?」
「え……?」
かなみは呆然とする。
その様子に、翠華は自分がとんでもないことを言ってしまったか気づく。
「あ、あの、かなみさん……今のは……」
「いいですよ」
「……え?」
「翠華さんとなら私も嬉しいです」
「かなみさん?」
かなみが有無を言わさずベッドに入り込んでくる。
「あ……」
「私、言ってませんでしたけど、ずっと前からこういうことしたいと思っていたいんですよ」
「えぇ……ッ!?」
翠華は飛び上がりそうになった。
かなみからこんなことを言われるなんて夢のようだ。
――だけど、何か違う。
この上なく嬉しいはずなのに、言い表せない違和感がある。
「あの、かなみさん……」
「なんですか?」
かなみの顔が近い。
丸ったい瞳に吸い寄せられそうになる。さらさらな黄色の髪がこっちにまでたれてきそうだ。
「なんでしょうか?」
目をパチリとさせて、微笑んでくる。
たまらない。可愛すぎる。抱きしめたくなる。
でも、やっぱり何か違うような気がする。
「これって、もしかして夢かしら?」
そこでまた目が開く。
「……え?」
また天井が見えた。しかし、かなみの姿が見えない。
「もしかして……今のは夢……?」
枕にうずくまる。夢とまったく同じ感触だ。
なんて夢を見てしまったのか。そりゃ、いつもと違って大胆なかなみには違和感があったけど、それでも十分魅力的だった。
あのまま、抱きしめておけばよかった。
ほんの少し、いや、かなりの後悔が込み上げてくる。
「あれがもし現実だったら……」
ううん、考えるのはよそう。
夢は夢だ。
かなみはあれだけ仲よくなれるようにしたい。そういう現実にすればいい。
そう頭を切り替える。
「ところで、かなみさんは……」
ゴトンと扉が開く。
「あ、翠華さん、起きたんですか?」
かなみは部屋に入ってくる。
「大丈夫ですか? 怪人に襲われたかと思いましたよ」
「え、ええ、大丈夫よ。ちょっと気分が悪くなって」
ここまで夢と全く同じ。二度目だから慣れている。
「ところで、かなみさんはどこに?」
「怪人が近くにいるかと思ってパトロールしてきました」
「そ、そうなんだ……」
夢と違ってずっと見守ってくれなかったことに少しだけ落胆する。
「本当は翠華さんの看病をしたかったんですけど、まだ怪人がいると思うと落ち着いていられなくて、ごめんなさい」
「ううん、かなみさんの判断は正しい。気分が悪くなった私の方が悪いだし」
「そんな、誰だって気分が悪くなるときだってありますよ」
「ありがとう。かなみさんは優しいわね」
「ええ……私なんて、そんな」
かなみは照れる。そういった仕草も可愛い。
なんだかいい雰囲気になってきた気がする。この調子なら夢みたいに一緒のベッドで。
「ああッ!」
枕に頭を埋める。
これで何度目だろうか。夢でやった回数も数えるとかなりの数になりそうだ。
「す、翠華さん!」
「ごめんなさい、かなみさん。やっぱり気分が悪いみたい」
「そ、そうですか。私どうしたらいいでしょうか?」
どうしたらいいか、それはこっちが聞きたいぐらいだ。
――かなみさんが一緒に寝てくれたら……
翠華は脳裏に浮かんだ考えを否定する。夢であったようなことなんて起きるはずがないし、そんなこと言える勇気もなかった。
本当にどうかしていた。でも、少しだけなら希望を持ったって……ああ、やっぱり部屋の空気にあてられている。
本当にどうしたらいいのだろうか。
コンコン!
そこへ部屋をノックする音がする。
「あ、あれ……」
こんな時間に誰か来たのだろうか。
「あ、もしかしてルームサービスかも」
「え、かなみさん、何か頼んだの?」
「いいえ、てっきり翠華さんが頼んだものかと思いまして」
「私は今起きたばかりだから頼めないわよ」
「あ、そうですね。じゃあ、誰なんでしょうかね……?」
かなみはそう言いながら、ドアノブに手をかける。
「あ、かなみさん、簡単に開けたらダメよ!」
「……え?」
しかし、かなみは驚かされた拍子にあけてしまう。
開けた先に男が立っていた。
詰め襟を着ており、顔は帽子で隠している。どうみてもホテルマンじゃない。というか怪しさ全開の男だ。
ドン!
かなみは反射的にドアを閉める。いや、閉めようとした。
閉めそこなった理由は男が手を伸ばしたからだ。そのせいで、手がドアに挟まって完全には閉められなかった。
「――!」
挟まれた手はあまりにも痛々しく見えて、かなみはいたたまれず目を逸らす。
「って、きゃああああッ!」
その様相はホラー映画を彷彿させる不気味さであった。思わずかなみは恐怖と驚きでよろめく。
「オンナか……!」
野太い声だ。男はそう言ってもう片方の指をドアの隙間に入れてきてドアノブに手をかけてきたのだ。
「ひ……!」
「かなみさん、どうしたの?」
「変な人がドアに手をかけてきて!」
「変な人!」
翠華は飛び出してくる。
ガタン!
そこから男はドアを蹴破って、部屋に入り込んでくる。
「オンナが二人……オンナノコが二人……」
男はねばったい視線をかなみ達に向ける。
「な、何よ……? 私達に何か用!?」
かなみは強気に言い返す。
悪漢なんて、こんなの怪人に比べたら大したことはない。
もし、ラブホの空気に身を任せて襲いかかってこようものなら、即座に撤退するか、いざとなったら魔法を使ってでも逃げ切る。そう思えば怖くなかった。
「オトコはいないか。だったら」
男は頭を振って帽子を飛ばして、その目をギョロリと開ける。
「――オンナはいただくか!」
そう言った男の目はギチギチと飛び出して、床へと垂れ落ちる。
「いやぁぁぁぁぁぁッ! お化け! ラブホのおばけぇぇぇぇッ!」
「待って、かなみさん! こんなことをするのはネガサイドの怪人しかありえないわ!」
「あ、そうか!」
ネガサイドの怪人だとわかったら、もう恐怖はない。というか、遠慮もいらない。
「オンナ、オンナ……どこ?」
男は落とした目玉を拾い上げて自分の目にくっつける。
「むむ、中々インパクトのある怪人だな」
「ウシシシ、こいつの名前はギョロリでいいだろ」
この怪人はギョロリと命名された。
「そんなことどうでもいいから! 翠華さん、変身しましょう!」
「ええッ!」
「「マジカルワークス!!」」
コインを宙に舞い上げて、光が降り注ぐ。
光のカーテンが開くと、黄色と青色の魔法少女が姿を現す。
「愛と正義と借金の天使、魔法少女カナミ参上!」
「青百合の戦士、魔法少女スイカ推参!」
「オンナノコじゃなかった、魔法少女か」
ギョロリは肩を落とす。明らかにガッカリしたようだ。
「なんでそこでガッカリするのよ!?」
「魔法少女はオンナノコじゃない」
「女の子よ! 少女よ!」
「襲っても悲鳴上げない」
「襲うな!」
「だから殺さなきゃならない」
「は?」
カナミが驚きの声を上げると、ギョロリは腕を飛ばしてきた。
「ギャアアアッ!」
カナミはあまりにもグロテスクな攻撃に迎撃も出来ず、ただ悲鳴をあげることしかできなかった。
「この!」
それをスイカがレイピアで斬って落とした。
「スイカさん、ありがとうございました」
「いえ……カナミさんのピンチだったから身体が勝手に」
「お前、魔法少女のくせに悲鳴を上げるのか」
「魔法少女だって女の子よ!」
「そうか、お前はオンナノコか!」
ニヒヒ、と、ギョロリは不気味に笑う。さっきつけた目玉がまた垂れ落ちそうになっている。
「ひいッ!」
「カナミさん、下がって!」
スイカが前に出る。
この距離なら一呼吸どころか瞬きする間もなくレイピアで貫ける。
グシャリ!
スイカは一切の迷いなく、レイピアで突き刺す。
「え……?」
突き刺したスイカは、その感触に面を食らう。
ドロリとした感触だ。まるで泥を斬ったみたいだ。
「ちょっと痛い」
そう言ってギョロリはレイピアを持っているスイカの手を握る。
「キャッ!?」
触れれると感触が本当に泥みたいだった。
人のような柔らかさと硬さがなくて、泥のような柔らかさと滑りしかない。はっきり言って気持ち悪い。
「スイカさん!」
カナミは魔法弾を撃った。
「ゴフッ!?」
ギョロリはぶっ飛ばされて後ろの壁に叩きつけられる。
「スイカさん、大丈夫ですか?」
「ええ、でも、不気味な敵よ。気をつけて」
「痛い、痛いな……」
ヨロヨロとギョロリは立ち上がる。
そのゆったりとした仕草に不気味さを感じる。
「カナミさん、ここは私に任せて」
「スイカさん?」
「ここは狭すぎるから、カナミさんの魔法弾だと壊しちゃかもしれないから」
「あぁ……」
そう言われるとカナミは弱かった。
カナミの魔法は威力がありすぎて、この部屋どころかフロアまるごと破壊する事だって出来る。
そうなったら弁償代でボーナスは消し飛ぶ。スイカの申し出はそんなカナミを気遣ってのものだったが、何も出来ないのは歯がゆくてたまらない。
「というわけで、ここは私が戦うわ!」
「別にいいぜ……魔法少女もオンナノコだってわかったからな」
「女の子よ!」
スイカはレイピアを突き刺す。
「ぐう……痛い」
しかし、またレイピアで掴まれてしまう。
「こんのッ!」
そこをもう一つのレイピアを魔法で出して、突き刺す。
「ぬおッ!?」
ギョロリは驚いて、飛び退く。
「ストリッシャ―モード!」
スイカは二刀のレイピアから目にも留まらぬ早業で高速突きを繰り出す。
「う、うおおおおッ!?」
ギョロリはレイピアが突き刺さる度に身体を剥ぎ取られ、悲鳴を上げる。
ダメージはちゃんと受けているとわかる。スイカはこのまま一気に決めると踏み込む。
「ノーブルスティンガー!」
渾身の突きの一撃がギョロリを襲う。
「顔は、ダメだ……」
ギョロリはそう言って、両腕で防御の体制を取る。
それでノーブルスティンガーを受け止め、代わりに両腕は砕け散った。
「腕はすぐに治るから」
そう言ってすぐに腕が生えた。
まるで時間が巻き戻されたかのように、腕がみるみる形を成して治っていく。
「なんて怪人なの!?」
「そんで、これで驚け」
ギョロリはまた腕を飛ばしてくる。血、というか泥を撒き散らす様はちょっとしたグロテスク。だが、そんなことで攻撃に怯えるほどスイカは臆病ではなかった。
レイピアで腕を薙ぎ払う。
しかし、もう片方の腕も飛んでくることに気づく。一発目の腕の影にかくれていたため、見えなかったのだ。
「――あぁッ!」
その腕がスイカの額に当たる。
「スイカさん!」
「次はお前だ」
そう言い切ったギョロリに対して、カナミはキィッと睨み返す。
「よくもスイカさんをッ!」
カナミは仕込みステッキを引き抜く。
狙うは頭。スイカの一撃で貫こうとしたら、「顔は、ダメだ……」と言っていたことをカナミは聞き逃さなかったからだ。そこを斬れば致命傷なのかもしれないと思った。
カン!
「あぁッ!」
ステッキを振りかぶったところでカナミは失敗する。
ここはラブホの部屋の出入り口で幅は両腕で広げた程度しかない。天井だって中学生のかなみがジャンプすれば届くぐらいの高さ。そんなところでステッキを思い切りふれば当然、壁に突き刺さる。
はっきりいってこんなのは初歩的なミスもいいところ。焦って戦う場所を把握していなかったのだから。
「マヌケか」
「うるさい!」
カナミは壁に刺さったステッキを抜く。
「ふん!」
その隙にギョロリが放った拳打をカナミの腹へ打ち込む。
「ぐッ!」
カナミは腹を抱えて後退する。
「マヌケ」
「二度も言うなッ!」
カナミは癇癪を起こす。
この怪人、腕を飛ばしてくるだけで大した事ない。ちょっと雰囲気が不気味なものの慣れてしまえばどうということはない。
問題はどうやって倒すかだ。
斬った腕が片っ端から再生してしまうということから再生能力に長けた怪人なのはわかる。
(頭を庇ったから、頭を潰されたら再生出来なくなるかも)
これまでの戦闘経験からその考えに行き着くまでさほど時間はかからなかった。
しかし、先程スイカの渾身の一撃が腕を犠牲にして防御されてしまった。
破壊された腕はすぐに再生できるからこそできる防御みたいだけど、正直神殺砲を一発撃てば倒せそうではある。ただ、そうすると部屋をぶっ飛ばしてしまって、ボーナスがゼロになってしまうのでできればやりたくない。
しかし、周囲に被害を出さない強い攻撃となると、さっきのスイカのノーブルスティンガーだった。
あれ以上になると被害が出てしまう。
「どうした、こっちからいくぞ」
迷っている内に、ギョロリから拳が飛んでくる。
「そんなもので!」
カナミは魔法弾で撃ち落とす。
この腕飛ばし、最初こそグロテスクで戸惑ったが、見慣れてきたせいで眼前に迫っても魔法弾で十分対処できる。それほどに遅いのだ。
「バカのひとつ覚えね、マヌケはどっちよ」
「ぬううッ!」
ギョロリは悔しさで歯軋りする。
「ならば!」
ギョロリは自分の目に手を突っ込む。
「これでどうだ!?」
そして、掴んだそれを投げ込んでくる。
「うわああああああ、なんてものをッ!?」
カナミは腕以上にグロテスクなそれにカナミは悲鳴を上げる。
それとは、――目玉だ。
よくわからない水滴を撒き散らしながら、やってくるそれは、ある意味お化けより怖い。
「ああぁぁぁぁぁッ!?」
カナミはたまらず魔法弾で目玉を撃ち落とす。
バァン!
目玉は腕以上に意外なほどあっさりと爆散した。そう爆散したのだ。
ピタ
散った目玉のかけらがカナミの頬に張り付く。
「わああああ、なにかなにか、なにかついたあああああッ!?」
カナミは完全に錯乱していた。
「カナミさん、落ち着いて」
「むりです、むりむりむりッ!」
「ああ、ダメだね、これは……」
マニィも肩から降りてそう言う。
「スイカさん、これ目玉ですよ! グロですよ!?」
「あぁ、それはわかるけど……それぐらいだったら洗い落とせるわよ」
「洗い、落とす……?」
その言葉のおかげでいくらか落ち着けたような気がする。
「随分とビビったな」
ギョロリはさも愉快げに言ってくる。それを聞いたカナミは、動揺が消えてムッとする。
「ビビってないわよ、ちょっと驚いただけ!」
「人それをビビるという……」
「ああ、もう! ムカつくわね!」
「ムカつく? ビビるわけじゃないのか?」
「だ、誰が、あんたなんかにビビるかッ!!」
カナミは気張って言うが、傍から見ているスイカからはかなり頑張っていると思われている。
「じゃあ、今度はこれでどうだ?」
そう言って、今度は足を飛ばしてくる。
「ああ、それね」
カナミは思ったより冷静でいられた。あっさりと魔法弾を足で落とした。
「なに?」
「腕も足も対した違いないじゃない」
「ええ、そうなの!?」
スイカからしてみれば、どっちもグロくて裸足で逃げ出したくなるようなものであった。
「だって、目玉と比べたらね」
「お、おのれ……!」
ギョロリは飛ばした方の片足を再生させる。
それを見て、カナミはあることに気づく。
ギョロリの飛ばしてきた方の目玉が再生していない。つまり、今は片目なのだが、何故再生させないのか。
『顔は、ダメだ……』
ギョロリはそう言っていた。
やっぱり顔は再生できないから、ダメだということか。
「スイカさん?」
「なに、カナミさん?」
「顔を狙いましょう」
「ええ、顔ね。わかったわ」
すぐに自分がやりたいことを察してくれた。
やっぱりスイカは頼りになる先輩だと、改めて実感した。
「それでは、行きます!」
カナミは突撃する。
「仕込みステッキ・ピンゾロの半!」
カナミはギョロリの両腕を切り落とす。
その両腕はすぐに再生されるが、再生されるには一瞬の時間を要するはず。その間、頭は無防備だ。
「ノーブルスティンガー!」
渾身の一突きで頭へ繰り出す。もう片方の目へ突き刺す。
「ぐおおおおおおッ!!」
ギョロリは悲鳴を上げる。
腕を斬られても、足を斬られても、悲鳴一つ上げなかったのに、頭を貫かれて、断末魔のように悲鳴を上げている。
「目がッ!? メガァッ!? メガァァァァァァァァァッ!1」
耳をつんざくような悲鳴がひとしきり叫んだ後、ギョロリは身体が泥のようになって崩れ落ちた。
「なんだか、疲れましたね……」
「そうね、カナミさん、喉大丈夫?」
「大丈夫ですよ。いっつも叫んでますから」
「そ、そういえば……」
いつも喉が潰れんばかりに魔法を叫んでいることを思い出す。
あれも何気なく毎回やっているけど、凄い事なんだなと改めてスイカは思った。
「……ところで、これ、どうします?」
カナミは不安げに、ギョロリの死体を指差す。
「あ~」
これにはスイカもどうしたものかと思った。
何しろ、ドロが山のように積み上がっていて、ただでさえ片付けるのに苦労しそうなのに、どこに片付けたらいいのかさえわからない。
「うーん、ひとまず、ルームサービスでどうにかならないかしら?」
カナミはズッコケた。
「やあ、おはよう」
鯖戸は珍しく自分の方から挨拶してくる。
「……おはよう」
かなみは明らかな不機嫌顔で答える。
「ああ、昨日の経費のことなんだけど」
鯖戸がそう言うと、カナミはキィッと睨みつける。
「つべこべいわず、ボーナスよこせ!」
「そういう単刀直入なところは嫌いじゃないが、私がかかった手間のことも考えてくれないか?」
「知るか!」
かなみは単刀直入どころか一刀両断する。
「わかった。今回のボーナスの査定はゼロだ」
それを受けて鯖戸も即座に用件を答える。
聞いたかなみは不機嫌な顔にさらに殺気を募らせる。
「はあ? どういうこと?」
「追加経費でね、君へのボーナスはゼロになってしまったんだよ」
鯖戸は一切悪びれもせず答える。
「追加経費って、あれの死体処理でしょ! いくらなんでもあれでボーナスがゼロになるわけないじゃない!」
「それがなるんだよ、諦めてくれたまえ」
「諦められるか!」
「どうしたのぉ?」
涼美が台所からやってくる。
「母さん、聞いてよ! 鯖戸が私のボーナスをピンハネしたッ!!」
「あらぁ、ピンハネはよくないわねぇ」
「人聞きが悪いことは止めてくれたまえ。私は事実を言っただけだし、本当に追加経費が消えてしまったんだ」
「なんでよ? 怪人の死体処理しただけじゃない」
「それが問題なんだ。ああいうことは公にできないから秘密裏に処理する必要があってね、色々根回しとか手配とかが必要なんだ」
「だってぇ、かなみ?
涼美はそう言われて納得したようだ。なんだか味方だと思って頼ったら敵に回されたかのような気分だ。
「……母さん、これじゃ私達の借金返せないのよ
「でもぉ、世の中無情なのよぉ」
母の呑気に残酷なことを告げる様は、まさしく無情かもしれない。
「おはようございます」
そこへ翠華がやってくる。
「翠華さぁん!?」
入ってくるなり、いきなりかなみがすがるようにやってくるので、翠華は思わず硬直する。
「か、かなみさん!? どうしたの?」
「部長と母さんが私の敵なんです!」
「えぇ? 一体何があったの?」
「ボーナス、ピンハネされました!」
「あぁ、なるほど……」
翠華は納得する。
「翠華さんが、翠華さんだけが、私の味方です!」
「わ、私だけッ!?」
その言葉にとても惹かれるものがあった。
ふと、翠華は涼美の視線に気がつく。
――かなみと仲良くねぇ
そう言われているような気がした。
(もしかして、これって……――親公認ッ!?)
翠華は小躍りしたくなるような衝動にかられる。
「かなみさん!」
「はい、なんでしょうかッ!?」
「ボーナスは次、頑張りましょう!」
「翠華さぁぁぁんッ!」
「大丈夫、私も協力するから!」
「翠華さん、そういうなら……」
かなみは渋々納得する。
「翠華ちゃんには素直ねぇ」
涼美からそう言われてかなみは苦笑し、翠華は赤面した。
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