まほカン

jukaito

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第58話 降段! 地底に漂う魂は少女を求める (Aパート)

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「お久しぶりです」
 テンホーは跪いて、上方の男へかしづく。
「ご苦労だったな」
「いえ、元上司の依頼とあればこのぐらいのことは造作もありません」
「そうか。良い部下を持って私は恵まれているな」
「本来ならば、スーシーやカンセーがいればよかったのですが」
「仕方あるまい。いない者の話をしても仕方が無い。それより、ヨロズの調子はどうだね?」
「順調に成長しています。妖精の力も予定通り組み込んでおり、魔法少女達と戦わせた甲斐があったというものです」
「いずれは関東支部長に……というのも遠い話ではないな」
「現在、ヨロズを支部長に立てるのに半数の幹部候補の怪人が賛成派に取り込むことに成功しています」
 テンホーは怪人達の顔を映したパネルを宙に浮かせて男に見せる。
 そのうち、以前カナミが倒した虎顔の怪人・バッタイもいたが、それは黒く塗りつぶされている。
「残りの半分は反対、あるいは中立派ということか」
「申し訳ありません」
「いや、君が謝ることじゃないよ。私とて百パーセントの支持を得られていたわけではないのだよ」
「全ていろか様の采配の賜物です」
「まったく君は……少々自分を過大評価してもよいのではないか」
「私はへりくだる女ですので」
「それは初耳だよ」
「初めて口に致しましたので」
 テンホーは一礼する。
「ふむ……それでは、そろそろ私も表舞台に出るとしようかね」
「それは本当に?」
 テンホーの顔に喜びの色が浮かぶ。
「時が来れば、お前もまた私のもとで働いてもらうぞ」
「私は尽くす女ですので」
「それも初耳だよ」
 男は微笑み、姿を消す。



「中部地方の怪人が最近よく動くわね」
 あるみはコーヒーを来葉に出しながら話を切り出す。
「それは私の耳にも入ってきてるわ。表沙汰には中々ならないけどね」
「そのあたりはお偉い人達が処理してくれてるわよ。シャチホコのメッキをはがしたり、モーニングにコーヒーだけ出したり、昨日出した赤福を次の日も出したり……」
「……よく表沙汰にしなかったわね」
 来葉は苦笑いする。
「それで、中部の方の未来を見て欲しいんだけど」
「待って、距離が離れているところだと時間がかかるから」
 来葉は卓上に地図を広げて、中部地方の箇所を指でなぞる。
「ゆっくり待つわよ」
「ありがとう。あるみが傍にいてくれると安心できるから」
「一分ぐらいですませてね」
「……いけず」
 来葉はすねたように言う。
 きっちり一分経つ。
「はい。ちゃんと見れたわ」
「本当にきっちり一分で見るのね」
 あるみは感心する。
「あるみ、あなたそっちに行くのね」
「そりゃ肌で確かめなくちゃいけないわ。それで、誰と一緒にいったらいいかしら?」
「やっぱりかなみちゃん達も連れていくのね。私も連れて行ってくれないみたいだし」
「あなたが視た未来にいるのならそれもいいけど」
「……かなみちゃんと萌実よ」
 来葉は面白くなさそうに答える。
「そういう正直なところ、好きよ」
「嘘ついてもすぐ見抜くんだから、無駄なことはしないのよ」
「無駄と割り切るのも、正直さの顕れでしょ。
――それで、どんな未来が視えたの?」
「……不吉の一言、ね」
 来葉は苦い顔をして言う。
「あ、そう」
「全然困らないのね」
「困らせるために言ったの」
「困って頑張らせるために言ったの」
「頑張るわよ。最悪じゃなければやりようもあるし、もし最悪だったら最高に私が塗り替えるだけだから」
「………………」
 来葉は困ったように目を伏せてから言い継ぐ。
「私が未来を視る必要があるのかしらって、時々思う台詞ね。ま、いいわ」
「中部地方の支部長、戻ってきたと思う?」
 あるみが気になっているのかそこだった。
 最近中部地方の怪人達の動きが活発になっている。それは上に立つ者が再び現れて、その指示のもとに動いている、と考えるのが自然なことだ。そうなると、現在消息を絶っている中部支部長・刀吉が戻ってきたのかもしれない、というのがあるみの考えだ。
「……今視えた未来だけじゃ何とも言えないわね。距離が離れているから」
「あとは、自分の目で確かめるわよ」
「本当に私が未来を視る必要あるのかしら?」
 来葉はすねたように言うと、あるみはまっすぐに目を見て返す。
「必要よ、あなたもあなたの未来も」



「出張ですか?」
 かなみと萌実を呼び出して、出張の話を持ち掛ける。
「そう、かなみちゃんが前に行った場所よ」
「あそこですか……」
 正直いい思い出はほとんどない。
 行方不明になっていた父親と再会したが、すぐまた姿を消した。母親とは再会したが、父親のことは話してくれないせいで結局よくわかっていない。
 もう一度あの場所に行ったら父親のことがわかるのだろうか。そんなことを考えてしまう。
「なんで、そこへ行くんですか?」
 かなみは訊く。
「中部の方の怪人の動向を探りたくてね」
「なんで私が?」
 萌実はいかにも不満ありげに訊いてくる。
「あなたは怪人の事情に詳しいでしょ」
「興味ないわよ」
 萌実はそっぽ向く。
「興味が無くてもついてきてもらうわよ」
「嫌よ!」
 立ち上がり、拒絶の意思を示す。
「あんたの言いなりになるなんてまっぴらごめんよ!」
 パッと入り口の扉を開けて飛び出す。
「萌実……!」
「何してるの、かなみちゃん」
「え……?」
「追いかけなさいよ」
「なんで、私が?」
 正直、萌実と一緒の仕事は気が乗らない。一人の方が気が楽だし、成功率は高いんじゃないかとさえ思っている。萌実のことだから邪魔だってしかねないし。ということで、かなみには追いかける理由が見当たらないのだ。
「今回の出張はかなみちゃんと萌実を連れて行くのよ。萌実を連れていけないなんてことになったら連帯責任でかなみちゃんも減給よ」
「め、滅茶苦茶です!?」
「私の無茶苦茶は今に始まったことじゃないでしょ。さっさと萌実を追いなさい」
 あるみは外を指差して急かす。
「じ、自覚があるんだったら改善してくださいよ!」
 文句を言いながら、かなみは外へ出る。
「今更変えられないのよ、そういうことは」



 飛び出た萌実を追って、かなみはオフィスの外へ出た。
「萌実は……!」
 辺りを見回すと、萌実の背中が見える。
「待ちなさい!!」
 一目散へ追いかける。
 萌実もそれに気づいたのか、逃げる速度を上げる。
 それを逃がさまいと、かなみも必死に追いかける。何しろ、減給がかかっているのだから逃げすわけにはいかない。

クイ! クイ!

 リュミィも元気良くかなみの頭上を飛び回る。
「君も大変だね」
 肩にしがみつくマニィはまるで他人事のように言ってくる。
「そう言うんだったら、あんたも手伝いなさいよ!」
「ボクはマスコットだからそういうことは専門外だよ」
「専門も役立たずじゃない!」
 会計のことである。
「じゃ、頑張って」
 マニィは制服のポケットへ入る。
「役立たず!!」
 かなみはそう吐き捨ててるとともに、走る速度を速める。
「こんのぉぉぉぉッ!!」
 距離がどんどん詰まる。
 手を伸ばせば届きそうな距離。掴みかかろうとしたところで、萌実はクイッと曲がる。
「あ、ちょッ!?」
 横を向くと、萌実の姿は無い。
 そこは交差点で、行き交う人々の中に紛れ込んでしまったみたいだ。
「萌実~! どこよ!?」
 かなみは叫ぶが、当然のごとく返ってこない。
「こ、このままじゃ、萌実連れ帰られなくて、私は減給……!」
 かなみは青ざめる。

ヒュー!

 その危機感を察したのか、リュミィは人の中に飛び込む。
「リュミィ!?」
 一般の人にリュミィは見えない。だから、人ごみの中へ飛び込んでも見つからない。でも、だからといって追いかけないわけにはいかない。
「こら、髪引っ張るな!」
 萌実の声がした。
 リュミィが萌実の髪を引っ張って引き留めていたのだ。
「でかした、リュミィ!」
 かなみは指をパチンと鳴らして、萌実を逃がさまいと腕を掴む。
「な、なんなのよ!?」
「一緒に来てもらうわ」
「嫌よ! あの女の言いなりになるなんてまっぴらごめんよ!」
「わがまま言わないの! あんたがいかないと私が減給なのよ!」
「知ったこっちゃないわ!」
「連帯責任!」
「あんた一人で責任負いなさいよ!」
「そうもいかないのよ!」
 萌実は必死になって振り払おうとするが、かなみもまた必死になって掴む。
「………………」
 これ以上言っても無駄だと萌実は睨む。
「………………」
 かなみも負けじと睨み返す。
「どうやら、白黒つける必要があるみたいね」
「……そうみたいね」
 かなみと萌実の勝負は引き分けになっていた。
 どちらが上か、それほどこだわることはなかったが、こうなったら止められない。
 かなみと萌実は人気の無い空き地へ場所を移す。
「逃げるなら今のうちよ」
「そっちこそ! っていうか逃げたら、私は減給なのよ!!」
「知ったことじゃないって、言ったでしょ何度も言わせないで」
 かなみはコインを振るう。
「マジカルワーク!」
 かなみは黄色の衣装に、萌実は桃色の衣装に着飾る。
「愛と正義と借金の天使、魔法少女カナミ参上!」
「暴虐と命運の銃士、魔法少女モモミ降誕!」
 カナミはステッキを、モモミは銃を構える。

バァン!

 魔法弾と銃弾が激突する。
 モモミとの戦いはいつも手数の多さを決める戦いだ。
「なんだって一緒に来ないのよ!?」
「言いなりが嫌って言ったでしょ!」
「ヨロズに負けていじけてるだけじゃない!」
「なッ!?」
 モモミはその指摘に受けて、銃を撃つ手を止める。
 その間にもカナミの魔法弾は撃ち続けて、腕や足を撃つ。
「本当に目障りね、カナミッ!」
「どっちが!」
 モモミは二挺の拳銃を構える。
「こいつで黙らせてやるわ」
 二挺の拳銃に魔力が注がれているのがわかる。
 大砲が来る。
 そう直感したカナミも応戦のためにステッキを大砲へ変化させる。
「バカの一つ覚えの大砲ね!」
「あんただって芸がないくせに! ボーナスキャノン!!」
「ダブルファイア!!」
 カナミとモモミの大砲が激突する。
 それから何百、何千発と弾丸を撃ち尽くしてモモミへ倒れこむ。
「ハァハァ……!」
 そこへやってきたカナミは見下ろす。
「……私の勝ちよ」
 衣装は砂埃にまみれ、髪や肌がところどころ焼け焦げているが、それでも最後まで立っていたカナミが勝ちであることは誰の目に見ても明らかだ。
「……あぁ、もうどこへなりとも連れて行きなさいよ!」
 モモミはやけくそに答える。
「ええ、そうさせてもらうわ」



 あるみはスーツケースを持って、社長室を出ようとする。
「さ、行くわよ」
 ほうほうの体でやってきたかなみと萌実に見つけるや、さっそく言ってくる。
「今からですか?」
「今からよ。グズグズしないで」
 あっさりとそう言われる。
「……連れて行きなさいよ」
 萌実は恨み言のようにかなみへ言う。
「なんで、こんな役割ばっかり」
 かなみはぼやく。



「ちゃっかり、新幹線の指定席とっておいて……私が萌実を連れ帰らなかったらどうしたんですか?」
 新幹線の席に着くなり、かなみはあるみに訊く。
「連れて帰ったでしょ」
「だから、連れ帰らなかったら、ですよ」
「連れ帰らなかったら……聞きたい?」
 あるみの返答にかなみは空恐ろしさすら感じる。
「聞きたくありません! どうせ私の給料から引くだけだったのよ、とか、そんなオチでしょ!」
「それはそれで傑作だったわね」
 萌実は意地悪な笑みを浮かべて言ってくる。
「うるさいわね。それというのもあんたが逃げるからでしょ」
「こんなことだったら、もっと遠く行けばあんたの泣き言が聞けたのにね」
「遠くへ行ったら、泣き言なんて聞けないでしょ」
 嫌味を嫌味で返しあって、睨み合う。
「面白いわね、あんた達」
 クスクスとあるみは笑う。
「何が面白いんですか」
「振り回されてるあんたはいい見世物なんじゃないの」
「今回はあんたも被害者でしょ」
「ああ、そうだったわ。今からでも降りて……」
「こら! 逃げ出そうとするな!」
 かなみは萌実の腕をしっかり掴む。
「ああ、わかったわよ! まけたんだから大人しくしてあげるから!」
「あんたの大人しくは信じられないのよ!」
「なにをぉッ!? だったら、もう一回負かして本当に逃げてやろうか!?」
「望むところ!」
「あ~、二人とも新幹線の中で暴れないで」
 あるみは適当に言う。
 この後、二人はおよそ一時間半口げんかでいがみ合い続ける。



「こっちのコーヒーはおいしいわね」
 新幹線を降りた先にあった道端の喫茶店に入ってコーヒーを一服する。
「私はモーニングを食べたいんだけど」
 かなみはぼやく。
 もう夕暮れ時なので、それは望めない。
「とりあえず、今日はビジネスホテルに泊まって、明日から捜索ね」
「捜索って、どうやって……」
「ここよ」
 あるみは地図を出す。そこには四つのポイントが描かれている。それぞれ一から四と番号が割り振られている。
「来葉の未来視で割り出した怪人の潜入先よ。ここを二つずつ回って情報収集よ」
「二つずつ……? ここには三人いるんですが」
 正確にはもう二匹(マニィとリュミィ)いるのだが。
「二組、ね……私は一人、そっちはかなみちゃんと萌実の二人で捜索するのよ」
「「はああ!?」」
 二人は同時にテーブルをバンと叩いて抗議する。
「なんで、こんな奴と一緒に!?」
「私だってごめんですよ!!」
 萌実とかなみの抗議をすんなりとかわして、あるみはカップに口をつける。
「うーん、息が合っていい二人だと思うんだけど」
「「どこが!?」」
 意思とは別に息はピッタリであった。
「ま、何と言われても、もう決定事項だから文句あるんだったら私を倒せば言うこときいてあげるわよ」
「「う……!」」
 そこで抗議の声が同時に止まる。そして、お互いに顔を見合わせる。
「二人でならなんとかできない?」
「はあ? バカ言ってんじゃないわよ! 私とあんたの二人程度が力合わせたぐらいでこの化け物に勝てるわけないでしょ!!」
「……そうよね」
 かなみはため息をつく。
 さっき戦ったばかりだからお互いの実力はよくわかっている。勝ったとはいえ、かなみと萌実の実力は伯仲している。つまり二人の力を合わせたところで所詮二倍止まり。
(二人で二倍程度じゃ、どう考えても社長には勝てないのよね……)
 それがコンマ数秒で出た結論だ。
「うんうん、お互いの戦力差をよく把握できてるわね」
 そんな二人にあるみは感心する。
「……いつか、絶対に殺してやる……!」
 萌実は歯ぎしりする。



 その後、喫茶店で夕食を食べてからビジネスホテルにやってくる。
「って、部屋割りまでこいつと一緒なわけ!?」
 萌実は部屋の鍵を渡されて早速文句を言う。
「二部屋しかとってなかったからね」
 あるみは悪びれもしていない。
「三部屋とりなさいよ」
「無駄な経費は使えないのよ」
「どこが!? こいつと同じ部屋で過ごすのが一番の無駄よ!!」
 さすがにそこまで言われてはかなみも黙っていない。
「私だって、あんたと同じ部屋なんて嫌よ!!」
「気が合うわね……だったら、この化け物、倒す算段つけなさいよ!!」
「はあ!? そんなの無理に決まってるってあんたも言ったじゃない!!」
「じゃあ、算段がついたら倒しにきなさい」
 あるみはさっさと自分の部屋に入ってしまう。
「って、待てこらー!!」
「あうう、気分は最悪よ……」
 などと言いながらも廊下で文句たれていても仕方が無いので、とりあえずホテルの部屋に入る。
「……ベッドが一つしかない」
「予想はしていたけど、やっぱりシングルベッドね……」
 あるみがダブルベッドなんて気の利いたことはしてくれるはずがない。
(第一、経費が足りないって言ってたのにダブルなんてありえないでしょ)
 わかっていても、ベッドが一つしかないというのは辛い。
「二人で一つのベッドは辛いわね」
「はあ!? あんたと一緒に寝るくらいだったら床で寝てやるわ!!」
「床で寝たら風邪引くでしょ! そうなったら明日の仕事、失敗するわよ!」
「別に失敗すればいいじゃない!」
「そういうわけにはいかないでしょ!!」
 かなみは萌実の腕を掴む。
「ちょ!?」
「強引に! 押し倒しても!! ベッドで寝てもらうわよ!!」
「あんた、そういう趣味!?」

バフン!?

 力勝負なら、さっき戦いで勝ったばかりのかなみの方に分があった。そういうわけでかなみは言葉通り強引にベッドへ押し倒す。
「く……なんで、こんな奴に負けたのよ……?」
「そりゃ、私の方が強いからよ」
 かなみは断言する。
「……あんたのそういう素直なところ、嫌い」
「私もあんたのそういうひねくれたところ嫌いよ」
「ああ、やるか!?」
「なにをぉ!?」
 ベッドの上で取っ組み合いのキャットファイトが始まる。
 魔法は何もない。ただ、顔をひっかきあい、髪をひっぱりあいの勝負。
「にゃぁぁぁぁぁぁッ!!」
 かなみは本当のネコのような鳴き声を上げる。
「本当にネコになってんじゃないわよ!! あ、こら、髪引っ張るな!!」
「そっちだって!?」
 二人がベッドの上でガサゴソ鳴っているのをマニィとリュミィはやれやれといった面持ちで眺める。
「平和だね。君もそう思わないかい?」
 マニィがそう言うと、リュミィはうんうんと頷く。



『それで様子はどう?』
 来葉は電話越しに訊いてくる。
「まだ来たばかりだから何とも言えないわ。ただ活発ときいてたからちょっと静かすぎて拍子抜けね」
『そう……ま、平和なのがいいわよ』
「同感ね。ただ現状は嵐の前の静けさってこともあり得るけどね」
『あなたがそう言うと不吉なことが起きそうね』
「そう、おみくじでも引いてみようかしら?」
『それは引くだけ無駄ね。結果が見えてるもの』
「なんて出たの?」
『大凶、って言ったらどうする?』
「大吉にする魔法をやってのけてみせるわよ」
『ね、見えてるでしょ』
 電話越しでも来葉が誇らしげに微笑んでいるのが見える。
「……確かにそうね。それじゃ明日のためにもう寝るわよ」
『もう少し話がしたいんだけど』
「帰ってゆっくり聞かせてあげるわよ」
『楽しみにしてるわ、……それじゃ』
 来葉の方から先に電話を切った。

ガサゴソガサゴソ!

 隣の部屋から物音が響いてくる。「ニャァァッ!」と猫のような鳴き声まで聞こえてくる。
 防音性が悪いホテル。というよりもあるみが聴覚を魔力で強化しているおかげで壁なんてないみたいにはっきりと聞こえる。
「仲良くやってみるね」
 その様子を聞いて、あるみは安心してベッドで眠りにつく。



 かなみと萌実のベッド上のキャットファイトは数十分にも及ぶ壮絶なものになっていた。
「ハァハァ、どうよまいった?」
 ここに来るまでに魔力を使い果たし、新幹線で長距離移動した。
 既に疲労困憊という条件は同じなのだが、一度は勝っていてわずかに余力があるかなみに分があった。
「ま、まだまだ!」
 萌実はヘトヘトでベッドにへたり込んでいるが、それでもまだ闘志は消えていない。
「だったら、これで!」
 かなみは萌実をつねって、無理矢理引き延ばす。
「ほぐわああ、やめろおおッ!」
 続いて耳を引っ張りあげる。
「あたたたたた!」
「これでもまいったしないの!?」
「いたいっての!? こんの!?」
 萌実は倒れた体勢から腕を振り上げて、かなみの頬をはたく。
「あた!?」
「どうよ!」
「ニャァァァァァッ!!」
 かなみも負けじとはたき返す。
「あんた、さっきからそればっかりで猫か!?」
「何よ!?」
「何を!?」
 もうしばらく数十分はこのキャットファイトは続きそうだった。
「やれやれ……あるみ社長も休んだことだし、ボク達も休もうか?」
 ずっと眺めていたマニィの提案にリュミィはブンブンと身体ごと首を横に振る。
「そう……だったら気が済むまで観戦しておいた方がいいよ」
 うんうん、とリュミィは頷く。
「君も物好きな妖精だね」
 さらにうんうん、と肯定するかのように頷く。
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