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第79話 来校! 未来の学び舎と現在の少女 (Aパート)
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「今日も一日頑張った~」
真夜中の道端でかなみは大きく伸びをする。
「お疲れ様」
カバンに引っ付いたマニィは労いの言葉をかける。
「あんたがそう言うなんて珍しいわね」
「そうかな?」
「ねえ、私の肩に乗ってみない?」
この時間に人の通りは少ない。暗闇でネズミが人の肩に乗っても目立たない。
「君からそう言うなんて珍しいね」
「そう?」
「まあ、せっかくだから」
マニィはカバンから外れてカナミの肩に乗る。
「正直、ここは居心地がいいよ」
「そう」
かなみも口にこそ出さないが、耳元でマニィの声を聞くと落ち着けた。
そうすることで自分が元の世界に帰ってきたと実感できる。
「うん、月が綺麗だよ」
「本当ね」
マニィに言われて夜空に浮かぶ見事な月を見上げる。
「ただいま」
アパートの部屋に入る。カギはかかっていない。
「おかえり」
煌黄が手を振ってそう言ってくれる。まるで同居人のように。
「今夜はぁとんかつよぉ」
「母さん、また無駄遣いして……今日、豚肉は特売じゃなかったでしょ」
かなみはため息をつく。
「今日はとんかつの気分だったからぁ」
「わしも食べたかったのじゃ」
テーブルにはきっちり三人分ある。
「仙人は食べなくても平気じゃないの?」
「食べなくても平気じゃが、食事をしたいときはあるぞ」
かなみはまたため息をつく。
「ほれ、食わぬか」
「食べるわよ。せっかくのお肉なんだから味わないと。いただきます!」
「いただきまぁす」
かなみはさっそくとんかつを一口頬張る。
「温かくておいしい」
身体は正直だった。
食事が終わると、煌黄はアパートの屋根で月を見上げる。
「今日も良い月じゃのう」
腹をさすってみる。
「これほど楽しい食事はいつ以来じゃろうな。こちらにやってきた価値があるというものじゃ」
そして、地上を睥睨する。
「しかし、楽しいことばかりではない。というのがつらいところじゃな」
誰に語って聞かせたのかわからない。
しかし、そのため息する姿はかなみとよく似ていた。
翌朝、かなみは学校に行く。
元の世界に戻ってから初めての登校だった。にも関わらず、いつも通りに制服に着替えてカバンを持って、いつも通りの通学路を経て、見慣れた校舎に入った。
脳裏に別世界に行ってしまったときの光景がよぎる。
見慣れた同級生、友達が、自分を見知らぬ顔として警戒する。
あんなことはもうない、と言い聞かせながら、教室を前にする。
「……大丈夫」
そう言って、教室に入る。
やはり、見慣れた教室で、見慣れている同級生の姿があった。
「かなみ、風邪はもう大丈夫なの?」
理英が心配そうに声を掛けてくれる。
「理英……」
かなみは、その姿を見て確信する。
ああ、元の世界に戻ってこれたのね、と。
「バカは風邪引かないっていうのにな」
貴子が言う。
「貴子にだけは、バカって言われたくないわね」
「なんでだよ?」
「そりゃ、貴子がバカだから」
「はっきり言うな! この間のテストはかなみより上だっただろ!」
「え、そうだっけ? 貴子と一緒なわけ……」
「かなみ、最近成績落ちてるよね」
理英にそう言われて、かなみは青ざめる。
「え……?」
「だって、こないだもすごい休んだし、先週だって休んだから成績大丈夫かなって……」
こないだというのはネガサイドに囚われている間のことだった。
ホテルのような場所でほぼ監禁状態だったから、学校に行けてなくて当然勉強はできてなくてしばらくついていけてなかった。ようやく、遅れを取り戻せてきたかなと思い始めた矢先に、別世界に数日彷徨うアクシデントに見舞われた。
成績が落ちるのも仕方が無いことだ。
「それでも……それでも……貴子よりは落ちていないはず、いないはず……」
かなみはうわ言のように呟く。
「酷いこと言うな」
「まあ、貴子はスポーツ推薦があるだろうから大丈夫だと思うけど、かなみは成績落ちたらやばいんじゃない?」
「え、私……?」
唐突に振られて、改めて考えさせられる。
私、進路はどうしようか。
「はあ……」
オフィスでかなみは頬杖をついてため息をつく。
「アホ面引っ提げて、どうしたってのよ?」
「アホ面?」
かなみはみあの方を言う。
「アホ面っていうのは頭悪そうな顔よ」
「頭悪そうな顔……成績落ちたから?」
今日の授業でやった小テストはかなり落ちていた。
それに理英に言われた進路のことが頭から離れない。
「……マジで頭悪くなってたの」
みあは呆れる。
そう言われて、かなみはますます落ち込む。
「……こんなに成績悪くなって、進路どうしたらいいのかしら?」
考えてみたら、進路のことなんて考えたことも無かった。考える余裕が無かったのだ。
毎日毎日、借金返済のために魔法少女として戦い続け、魔法少女としての仕事が無い日でもこうして雑務をこなして、日々追われているような生活を送っている。
先の事なんて考えられない。でも、考えなくちゃいけない。
でも、今まで考えてこなかったからどうしたらいいのかわからない。
「とりあえず、順当に考えたら進学よね……」
「それだったら、学費どうするのよ?」
「がく、ひ……!?」
かなみは絶句する。
「がくひって何?」
「授業料ともいうわね」
「じゅ、授業料!?」
「あんたが払えるわけないじゃない。あ、奨学金って手があるわね」
「しょうがくきん? なにそれ?」
「あんた、お金がからむと知能指数が低下するわね。奨学金! 簡単に言うと学校に通うために国に借金することよ!」
「しゃっきん!? くにに!?」
かなみには考えられないことだった。
「どうして、学校通うために国に借金しなくちゃならないの!?」
「あたしに言われても……」
「奨学金ってかなみさんみたいな人のためにある制度ですよね」
紫織が言う。
「わたしみたいな人?」
「いや、こいつみたいに借金背負った中学生、そうそういないわよ」
「みあちゃん、私の一生の一大事なのよ!!」
「成績が? 借金が?」
「両方よ!!」
かなみは頭を抱えて項垂れる。
「おはようございます」
翠華が入ってくる。
「あ……現役高校生」
「翠華さん!!」
かなみには翠華がまぶしく輝いて見えた。
「ひ、かなみさん!? どうしたの?!」
いきなりすがるようなかなみの姿勢に翠華は退く。
「高校受験ってどうやってやればいいんですか!?」
「え、高校受験!?」
「翠華さん、高校生ですよね!? 受験して合格したんですよね!?」
「そ、それは……そうだけど……」
「受験受からなかったら、高校生になれないものね」
みあが言う。
「みあちゃん、それ褒めてるの?」
翠華は苦笑する。
「それで、かなみさん? 急にどうしたの」
「実は……私、成績落ちちゃって、それで進路どうしようかと思いまして」
「なるほどね。そうよね、かなみさんは中学二年生だものね」
「翠華さん、私どうしたら……」
かなみは涙目で訴えてくる。
「かなみさんが私を頼りに……」
翠華は戸惑いつつも張り切る。
「わかったわ、私ができることあるなら言って、勉強だったら教えられるし、受験でわからないことがあったら相談に乗るから」
「翠華さん……!」
かなみにはこの上なく頼もしく感じた。
「それでかなみさん、志望校はあるの?」
「え、志望校……?」
そんなこと考えたことはなかった。
何しろ、進路のことさえ今朝までまったく考えていなかったのだ。
「考えたことありません」
「ん~まあ、そうね。だったら、近くの公立を受けてみたら?」
「公立だったら学費安いものね」
みあが言う。
「おお~公立! いいですね!!」
「こいつの成績で公立受かるの?」
「みあちゃん、ひどい! 私、成績そんなに悪くないんだけど!!
あ、そうだ! 翠華さんの高校はどうですか!?」
「私の?」
一瞬の間の後に驚きがやってくる。
「かなみさんが私の高校に!?」
「……はい」
翠華は頭に思い描く。
かなみと一緒に登校して、休憩時間には一緒にお話して、お昼休みには一緒に弁当を食べて、放課後になったら一緒に出社する。
最高としか言いようがない。
「いい……すごくいいわ! かなみさん、是非うちの高校に受けて!!」
翠華はかなみの手を取って迫る。
「はい」
「それで、あんたの高校ってどのくらいのレベルなの?」
「そんなに高くないと思うけど……」
翠華がそう言うと、かなみはホッとする。
「偏差値は?」
「……60くらいだったかしら」
「はあ!?」
「それって高いんですか?」
なんであんたが知らないの? と、みあは頭を抱える。
「通信簿でだいたい4くらいとってるってことよ」
「よ、よよよよよ、よーん!?」
かなみは奇声を発し、みあは耳を塞ぐ。
「諦めな、1か2しかとってないあんたじゃ不可能よ」
「1と2だけじゃないわよ! たまに4だってとるわよ!!」
「え、嘘……?」
みあは信じられない顔つきをする。
「そんなに驚かなくてもいいじゃない。最近は成績下がってますけど……」
「まあ、借金返しながらだものね、仕方ないわ」
「でも、受験失敗の言い訳にはならないわ」
「みあさん、厳しいですね」
まるで経験者みたいだ。小学生だというのに。
「でも、みあちゃんの言うとおりよ。私、頑張る!!」
かなみは拳をグッと握って張りきる。
「頑張ってね、かなみさん!」
「はい、一緒に高校通いましょう!」
「「えい! えい! おー!!」」
かなみと翠華は手を取り合って誓いを立てる。
「あ~、水を差すようだけどさ……」
みあが面倒そうに言う。
「翠華って、今二年生だよね?」
「「え……?」」
その一言にかなみと翠華は凍りつく。
今の今まで忘れ去られていたような、あまりにも当たり前な事実。
「あ……翠華さんが高校二年生で、かなみさんが中学二年生ですから。かなみさんが高校生になる頃には、翠華さんは高校を卒業してしまいます。つまり、翠華さんとかなみさんは一緒の高校に通えない」
紫織は長々と丁寧に言う。
「あ~、わざわざ言わなくてよかったのに」
「そ、そんな……!」
翠華はガクンと項垂れる。
「あ、あの、翠華さん……?」
「かなみさんと、いっしょの高校にかよえない……そんな、かよえない……こうこう……」
うわ言のように繰り替えす。思っていたよりショックが大きいようだ。
「そうだ、留年すればもう一年通えるから、かなみさんと一緒に通える!」
そこから突然天啓を得たように翠華は明るい声で言う。
「いやいや、それはダメでしょ!!」
「翠華さん、冗談でも留年なんて言わないでください」
「いやいや、本気よ! あいつ、本気で言ってるわよ」
「またまた~真面目でできる女の翠華さんが留年だなんて」
「真面目でできる女!」
翠華は復活する。
「そうよ、一緒の学校に通えなくても一緒の会社に通っているのよ! それで十分よ!」
「はい、翠華さんと一緒に仕事できて楽しいです!」
「え、え……!?」
その一言で翠華の顔が湯気が立ちそうなほど真っ赤に染まる。
「あれ、翠華さん、熱ですか?」
「自覚ないって怖いわね」
みあは呆れて言う。
「それじゃ、二人でおあつらえ向きの仕事を行ってもらおうかな」
鯖戸が封筒を持ってくる。
「二人って、かなみさんと私?」
翠華が恐る恐る訊く。
「他に誰がいる」
「みあちゃんに紫織ちゃん……」
「翠華さん、私と仕事したくないんですか?」
「え、あ、いや、そういうわけじゃないのよ! かなみさんとお仕事なんて!! 一生に一度の大チャンスだから!!」
「それはさすがに大げさ」
みあはツッコミを入れる。
「それじゃ、今日は二人で頑張りましょう!」
「ええ!」
そういうわけで今日はかなみと翠華の二人が組むことになった。
「それで、どんな仕事なんですか?」
「それじゃ、二人で翠華の高校に行ってもらおうかな」
「「え……?」」
そんなわけで翠華とかなみは揃って翠華の通う高校にやってきた。
「ここが翠華さんの通う高校なんですね!」
「ええ」
かなみは目を輝かせる。
翠華にとってはもう見慣れている高校の校舎でも、中学生のかなみには新鮮であった。
「この学校に隠れているかもしれない怪人を探す、か……私は毎日通ってるけど全然気づかなかったのよね」
「なんでも、放課後に出没するみたいですね。部活をしてる生徒さんから目撃情報があるそうです」
「私、見たことないのよね」
「翠華さんは放課後すぐにオフィスに来てるから仕方ありませんよ」
一刻も早くあなたに会いたいから、と翠華と喉から出かかってダムにせき止められたように止まってしまう。
「あれ、青木さん?」
校舎の窓から女子生徒が翠華を覗いてくる。
「どうしたの? もう帰ったかと思ったんだけど」
「うん、ちょっと用事があって」
「もしかして生徒会?」
「違うけど、なんで生徒会なの?」
「青木さん、今度生徒会に入るってもっぱらのウワサよ」
「まったくのデタラメよ。生徒会に入るつもりなんてまったくないんだから」
「でも、青木さんどこも部活はいってないし」
「それはまあ色々とあって……」
(魔法少女の仕事があるから、なんて言えないものね。でも、翠華さん、どうして魔法少女の仕事してるんだろう?)
と、かなみは思う。
「あら、その子は?」
ここで制服の違うかなみに目がいく。
「え、私?」
「ちっちゃいけど中学生?」
「あ、か、彼女は……!?」
翠華は挙動不審に手をフリフリする。
かなみのことをなんて紹介していいのかわからない。
想い人であり、仕事仲間でもあるのだけど、そんなことをただの学校の同級生に紹介できるわけがない。
「私は、翠華さんの後輩です!」
かなみは思い切って自分から言う。
「後輩? 中学の?」
「そ、そうなの! かなみさんは私の後輩で!!」
会社の、と心の中で付け加える。
「ふうん。可愛い子ね、来年来るのが楽しみね」
そんなことを言って女子生徒は去っていた。
「クラスメイトですか?」
「ええ、ごめんなさいね」
「なんで謝るんですか?」
「あ……うん、なんとなく……」
「私が翠華さんの後輩なのは本当のことでしょ?」
「会社の、ね……」
「それより来年来るのが楽しみって言ってましたね!」
「え、そうだけど」
「私、中三に見えたんですね!」
「ええ、そこ!?」
「小学生に間違われることはあるんですけど、中三だと言われたのは初めてです! 大人っぽく見えるんでしょうか?」
「そ、それはよかったわ」
ちっちゃいけど、とも言われたのは忘れたようだ。
「さあ、翠華さん! 行きましょう!」
「う、うん、案内するわ。まずどこへ行きましょうか?」
「翠華さんの教室です!」
「え……?」
翠華はかなみの返答に大いに戸惑った。
「ここが私の教室よ」
「わあ!?」
教室に案内すると、かなみは目を輝かせる。
「翠華さんはどの席ですか!?」
「え、えぇっと、真ん中よりちょっと後ろの方」
翠華が指差すと、かなみはすぐにその席に座る。
「翠華さん、ここですか」
(ちょ、ちょっと!? かなみさんが私の席に!?)
翠華は天井に頭をぶつけそうな勢いでそそり立つ。
「なんだか高校生になった気分です!」
「かなみさんだったら素敵な高校生になれるわよ」
「早く高校生になりたいです」
将来に期待を膨らませるかなみがとても素敵だと翠華は思った。
「そのために、勉強と学費が……」
しかし、一瞬にしてその期待は不安に塗り替えられた。
「か、かなみさん、勉強なら私も協力するから」
それにいざとなったら学費だって、と翠華は思った。
「そうですね! 翠華さんが協力してくれたら心強いです!!」
「ええ!」
勢いでかなみと翠華は手を取りあおうとする。
「いいムードのところ悪いんだけど」
そこへマニィが水を差す。
(ね、ネズミに邪魔された……)
心の中で翠華は落胆の声を上げる。
「ここに怪人がいないなら別の場所を探した方がいいよ」
「そうね、行きましょう翠華さん」
「あ……」
かなみはもう席を立って教室を出ようとしていた。
(かなみさん、はやい……)
翠華はかなみのそのあっさりとした態度を心底残念に思う。
翠華の案内で、理科室、調理実習室、美術室、視聴覚室、図書室と次々と回っていく。
「怪人の気配、まったくしませんね」
「そうね」
「でも、楽しいです!」
「そう、それはよかったわ」
翠華は本当にそう思った。
かなみが自分の学校を楽しそうに回っているのを見て満ち足りていく。
本当にかなみがこの高校の生徒になってくれたら、と思わずにはいられない。
同じ学校の生徒として通う。ごく普通の先輩と後輩のように。
それは決してかなわないことでありながら、いやかなわないことだからこそ強く願ってしまう。
「翠華さん、次はどこですか?」
「そうね……ここから近いのは音楽室かしらね」
「演奏が聞こえてきますね」
「そうね、今だと吹奏楽部が練習しているところね」
「いい音色ですね、早く行きましょう!」
「あ、ちょっと待って」
翠華は慌ててかなみを止める。
♪~♪~♪
かなみは音楽室の前で吹奏楽部の演奏を聞き入っていた。
「うちの吹奏楽部はレベル高くて、コンクールでよく入賞してるのよ」
「心地良い音楽です」
「かなみさん、吹奏楽部に興味が?」
「すごいですね。私、楽器やったことなくて音楽がよくわからないんですけど」
「涼美さんなら何かやってたりしてそうだけど」
「母さんが……? 母さんなら何かやってそうだけどよく知らないのよ」
「かなみさんだったら何か才能ありそうだけど」
「え、そうですか?」
「耳、良さそうだから」
「そうでしょうか……?」
かなみは首を傾げる。
涼美の耳の良さを受け継いでいるとは思えないから。
「次、行きましょうか」
ここに怪人がいないのは明白であった。
次にかなみと翠華がやってきたのは体育館だった。
バスケ部とバレー部が熱心に練習している。
ダンダンダンダン
バスケットボールとバレーボールがバウンドする音がリズミカルに鳴り響く。
「すごいです!」
かなみの中学にもどちらの部活はあるのだけど、レベルの高さが一目見てわかる。
「かなみさん、球技は得意なの?」
「うーん、どうなんでしょ? 体育でちょっとやったぐらいなんですけど」
そんな会話をしているとバレーボールが二人の前に転がってくる。
「あ、青木さん!」
バレー部の女子生徒がやってくる。
「バレー部の見学? やっと入部する気になったの?」
「そういうわけじゃないの」
「青木さんの運動神経だったら即戦力なのにもったいないわね。あら、その娘は?」
女子生徒はかなみに気づいて訊く。さっきもあったやり取りだ。
「翠華さんの後輩です!」
「ちょっと校内を案内してるのよ」
「へえ、そうなの。青木さんの後輩なんだ……バレー部に入るの?」
「あ、いえ、そういうわけじゃないんです。私、バレーは体育したことやったことなくて」
「うちのバレー部高いからね。今年もインターハイ狙ってるし」
「あなたもレギュラー入れそうじゃないの」
「そんな、ぜんぜん!」
女子生徒はお手上げと言いたげに手を振る。
「レベルが高いと厳しいんですね」
「そうなのよ。でもまだもう一年あるから頑張ってみるつもりよ」
かなみはその女子生徒の前向きさを見習いたいと思った。
「それじゃ、また!」
女子生徒はバレー部の練習に戻っていた。
真夜中の道端でかなみは大きく伸びをする。
「お疲れ様」
カバンに引っ付いたマニィは労いの言葉をかける。
「あんたがそう言うなんて珍しいわね」
「そうかな?」
「ねえ、私の肩に乗ってみない?」
この時間に人の通りは少ない。暗闇でネズミが人の肩に乗っても目立たない。
「君からそう言うなんて珍しいね」
「そう?」
「まあ、せっかくだから」
マニィはカバンから外れてカナミの肩に乗る。
「正直、ここは居心地がいいよ」
「そう」
かなみも口にこそ出さないが、耳元でマニィの声を聞くと落ち着けた。
そうすることで自分が元の世界に帰ってきたと実感できる。
「うん、月が綺麗だよ」
「本当ね」
マニィに言われて夜空に浮かぶ見事な月を見上げる。
「ただいま」
アパートの部屋に入る。カギはかかっていない。
「おかえり」
煌黄が手を振ってそう言ってくれる。まるで同居人のように。
「今夜はぁとんかつよぉ」
「母さん、また無駄遣いして……今日、豚肉は特売じゃなかったでしょ」
かなみはため息をつく。
「今日はとんかつの気分だったからぁ」
「わしも食べたかったのじゃ」
テーブルにはきっちり三人分ある。
「仙人は食べなくても平気じゃないの?」
「食べなくても平気じゃが、食事をしたいときはあるぞ」
かなみはまたため息をつく。
「ほれ、食わぬか」
「食べるわよ。せっかくのお肉なんだから味わないと。いただきます!」
「いただきまぁす」
かなみはさっそくとんかつを一口頬張る。
「温かくておいしい」
身体は正直だった。
食事が終わると、煌黄はアパートの屋根で月を見上げる。
「今日も良い月じゃのう」
腹をさすってみる。
「これほど楽しい食事はいつ以来じゃろうな。こちらにやってきた価値があるというものじゃ」
そして、地上を睥睨する。
「しかし、楽しいことばかりではない。というのがつらいところじゃな」
誰に語って聞かせたのかわからない。
しかし、そのため息する姿はかなみとよく似ていた。
翌朝、かなみは学校に行く。
元の世界に戻ってから初めての登校だった。にも関わらず、いつも通りに制服に着替えてカバンを持って、いつも通りの通学路を経て、見慣れた校舎に入った。
脳裏に別世界に行ってしまったときの光景がよぎる。
見慣れた同級生、友達が、自分を見知らぬ顔として警戒する。
あんなことはもうない、と言い聞かせながら、教室を前にする。
「……大丈夫」
そう言って、教室に入る。
やはり、見慣れた教室で、見慣れている同級生の姿があった。
「かなみ、風邪はもう大丈夫なの?」
理英が心配そうに声を掛けてくれる。
「理英……」
かなみは、その姿を見て確信する。
ああ、元の世界に戻ってこれたのね、と。
「バカは風邪引かないっていうのにな」
貴子が言う。
「貴子にだけは、バカって言われたくないわね」
「なんでだよ?」
「そりゃ、貴子がバカだから」
「はっきり言うな! この間のテストはかなみより上だっただろ!」
「え、そうだっけ? 貴子と一緒なわけ……」
「かなみ、最近成績落ちてるよね」
理英にそう言われて、かなみは青ざめる。
「え……?」
「だって、こないだもすごい休んだし、先週だって休んだから成績大丈夫かなって……」
こないだというのはネガサイドに囚われている間のことだった。
ホテルのような場所でほぼ監禁状態だったから、学校に行けてなくて当然勉強はできてなくてしばらくついていけてなかった。ようやく、遅れを取り戻せてきたかなと思い始めた矢先に、別世界に数日彷徨うアクシデントに見舞われた。
成績が落ちるのも仕方が無いことだ。
「それでも……それでも……貴子よりは落ちていないはず、いないはず……」
かなみはうわ言のように呟く。
「酷いこと言うな」
「まあ、貴子はスポーツ推薦があるだろうから大丈夫だと思うけど、かなみは成績落ちたらやばいんじゃない?」
「え、私……?」
唐突に振られて、改めて考えさせられる。
私、進路はどうしようか。
「はあ……」
オフィスでかなみは頬杖をついてため息をつく。
「アホ面引っ提げて、どうしたってのよ?」
「アホ面?」
かなみはみあの方を言う。
「アホ面っていうのは頭悪そうな顔よ」
「頭悪そうな顔……成績落ちたから?」
今日の授業でやった小テストはかなり落ちていた。
それに理英に言われた進路のことが頭から離れない。
「……マジで頭悪くなってたの」
みあは呆れる。
そう言われて、かなみはますます落ち込む。
「……こんなに成績悪くなって、進路どうしたらいいのかしら?」
考えてみたら、進路のことなんて考えたことも無かった。考える余裕が無かったのだ。
毎日毎日、借金返済のために魔法少女として戦い続け、魔法少女としての仕事が無い日でもこうして雑務をこなして、日々追われているような生活を送っている。
先の事なんて考えられない。でも、考えなくちゃいけない。
でも、今まで考えてこなかったからどうしたらいいのかわからない。
「とりあえず、順当に考えたら進学よね……」
「それだったら、学費どうするのよ?」
「がく、ひ……!?」
かなみは絶句する。
「がくひって何?」
「授業料ともいうわね」
「じゅ、授業料!?」
「あんたが払えるわけないじゃない。あ、奨学金って手があるわね」
「しょうがくきん? なにそれ?」
「あんた、お金がからむと知能指数が低下するわね。奨学金! 簡単に言うと学校に通うために国に借金することよ!」
「しゃっきん!? くにに!?」
かなみには考えられないことだった。
「どうして、学校通うために国に借金しなくちゃならないの!?」
「あたしに言われても……」
「奨学金ってかなみさんみたいな人のためにある制度ですよね」
紫織が言う。
「わたしみたいな人?」
「いや、こいつみたいに借金背負った中学生、そうそういないわよ」
「みあちゃん、私の一生の一大事なのよ!!」
「成績が? 借金が?」
「両方よ!!」
かなみは頭を抱えて項垂れる。
「おはようございます」
翠華が入ってくる。
「あ……現役高校生」
「翠華さん!!」
かなみには翠華がまぶしく輝いて見えた。
「ひ、かなみさん!? どうしたの?!」
いきなりすがるようなかなみの姿勢に翠華は退く。
「高校受験ってどうやってやればいいんですか!?」
「え、高校受験!?」
「翠華さん、高校生ですよね!? 受験して合格したんですよね!?」
「そ、それは……そうだけど……」
「受験受からなかったら、高校生になれないものね」
みあが言う。
「みあちゃん、それ褒めてるの?」
翠華は苦笑する。
「それで、かなみさん? 急にどうしたの」
「実は……私、成績落ちちゃって、それで進路どうしようかと思いまして」
「なるほどね。そうよね、かなみさんは中学二年生だものね」
「翠華さん、私どうしたら……」
かなみは涙目で訴えてくる。
「かなみさんが私を頼りに……」
翠華は戸惑いつつも張り切る。
「わかったわ、私ができることあるなら言って、勉強だったら教えられるし、受験でわからないことがあったら相談に乗るから」
「翠華さん……!」
かなみにはこの上なく頼もしく感じた。
「それでかなみさん、志望校はあるの?」
「え、志望校……?」
そんなこと考えたことはなかった。
何しろ、進路のことさえ今朝までまったく考えていなかったのだ。
「考えたことありません」
「ん~まあ、そうね。だったら、近くの公立を受けてみたら?」
「公立だったら学費安いものね」
みあが言う。
「おお~公立! いいですね!!」
「こいつの成績で公立受かるの?」
「みあちゃん、ひどい! 私、成績そんなに悪くないんだけど!!
あ、そうだ! 翠華さんの高校はどうですか!?」
「私の?」
一瞬の間の後に驚きがやってくる。
「かなみさんが私の高校に!?」
「……はい」
翠華は頭に思い描く。
かなみと一緒に登校して、休憩時間には一緒にお話して、お昼休みには一緒に弁当を食べて、放課後になったら一緒に出社する。
最高としか言いようがない。
「いい……すごくいいわ! かなみさん、是非うちの高校に受けて!!」
翠華はかなみの手を取って迫る。
「はい」
「それで、あんたの高校ってどのくらいのレベルなの?」
「そんなに高くないと思うけど……」
翠華がそう言うと、かなみはホッとする。
「偏差値は?」
「……60くらいだったかしら」
「はあ!?」
「それって高いんですか?」
なんであんたが知らないの? と、みあは頭を抱える。
「通信簿でだいたい4くらいとってるってことよ」
「よ、よよよよよ、よーん!?」
かなみは奇声を発し、みあは耳を塞ぐ。
「諦めな、1か2しかとってないあんたじゃ不可能よ」
「1と2だけじゃないわよ! たまに4だってとるわよ!!」
「え、嘘……?」
みあは信じられない顔つきをする。
「そんなに驚かなくてもいいじゃない。最近は成績下がってますけど……」
「まあ、借金返しながらだものね、仕方ないわ」
「でも、受験失敗の言い訳にはならないわ」
「みあさん、厳しいですね」
まるで経験者みたいだ。小学生だというのに。
「でも、みあちゃんの言うとおりよ。私、頑張る!!」
かなみは拳をグッと握って張りきる。
「頑張ってね、かなみさん!」
「はい、一緒に高校通いましょう!」
「「えい! えい! おー!!」」
かなみと翠華は手を取り合って誓いを立てる。
「あ~、水を差すようだけどさ……」
みあが面倒そうに言う。
「翠華って、今二年生だよね?」
「「え……?」」
その一言にかなみと翠華は凍りつく。
今の今まで忘れ去られていたような、あまりにも当たり前な事実。
「あ……翠華さんが高校二年生で、かなみさんが中学二年生ですから。かなみさんが高校生になる頃には、翠華さんは高校を卒業してしまいます。つまり、翠華さんとかなみさんは一緒の高校に通えない」
紫織は長々と丁寧に言う。
「あ~、わざわざ言わなくてよかったのに」
「そ、そんな……!」
翠華はガクンと項垂れる。
「あ、あの、翠華さん……?」
「かなみさんと、いっしょの高校にかよえない……そんな、かよえない……こうこう……」
うわ言のように繰り替えす。思っていたよりショックが大きいようだ。
「そうだ、留年すればもう一年通えるから、かなみさんと一緒に通える!」
そこから突然天啓を得たように翠華は明るい声で言う。
「いやいや、それはダメでしょ!!」
「翠華さん、冗談でも留年なんて言わないでください」
「いやいや、本気よ! あいつ、本気で言ってるわよ」
「またまた~真面目でできる女の翠華さんが留年だなんて」
「真面目でできる女!」
翠華は復活する。
「そうよ、一緒の学校に通えなくても一緒の会社に通っているのよ! それで十分よ!」
「はい、翠華さんと一緒に仕事できて楽しいです!」
「え、え……!?」
その一言で翠華の顔が湯気が立ちそうなほど真っ赤に染まる。
「あれ、翠華さん、熱ですか?」
「自覚ないって怖いわね」
みあは呆れて言う。
「それじゃ、二人でおあつらえ向きの仕事を行ってもらおうかな」
鯖戸が封筒を持ってくる。
「二人って、かなみさんと私?」
翠華が恐る恐る訊く。
「他に誰がいる」
「みあちゃんに紫織ちゃん……」
「翠華さん、私と仕事したくないんですか?」
「え、あ、いや、そういうわけじゃないのよ! かなみさんとお仕事なんて!! 一生に一度の大チャンスだから!!」
「それはさすがに大げさ」
みあはツッコミを入れる。
「それじゃ、今日は二人で頑張りましょう!」
「ええ!」
そういうわけで今日はかなみと翠華の二人が組むことになった。
「それで、どんな仕事なんですか?」
「それじゃ、二人で翠華の高校に行ってもらおうかな」
「「え……?」」
そんなわけで翠華とかなみは揃って翠華の通う高校にやってきた。
「ここが翠華さんの通う高校なんですね!」
「ええ」
かなみは目を輝かせる。
翠華にとってはもう見慣れている高校の校舎でも、中学生のかなみには新鮮であった。
「この学校に隠れているかもしれない怪人を探す、か……私は毎日通ってるけど全然気づかなかったのよね」
「なんでも、放課後に出没するみたいですね。部活をしてる生徒さんから目撃情報があるそうです」
「私、見たことないのよね」
「翠華さんは放課後すぐにオフィスに来てるから仕方ありませんよ」
一刻も早くあなたに会いたいから、と翠華と喉から出かかってダムにせき止められたように止まってしまう。
「あれ、青木さん?」
校舎の窓から女子生徒が翠華を覗いてくる。
「どうしたの? もう帰ったかと思ったんだけど」
「うん、ちょっと用事があって」
「もしかして生徒会?」
「違うけど、なんで生徒会なの?」
「青木さん、今度生徒会に入るってもっぱらのウワサよ」
「まったくのデタラメよ。生徒会に入るつもりなんてまったくないんだから」
「でも、青木さんどこも部活はいってないし」
「それはまあ色々とあって……」
(魔法少女の仕事があるから、なんて言えないものね。でも、翠華さん、どうして魔法少女の仕事してるんだろう?)
と、かなみは思う。
「あら、その子は?」
ここで制服の違うかなみに目がいく。
「え、私?」
「ちっちゃいけど中学生?」
「あ、か、彼女は……!?」
翠華は挙動不審に手をフリフリする。
かなみのことをなんて紹介していいのかわからない。
想い人であり、仕事仲間でもあるのだけど、そんなことをただの学校の同級生に紹介できるわけがない。
「私は、翠華さんの後輩です!」
かなみは思い切って自分から言う。
「後輩? 中学の?」
「そ、そうなの! かなみさんは私の後輩で!!」
会社の、と心の中で付け加える。
「ふうん。可愛い子ね、来年来るのが楽しみね」
そんなことを言って女子生徒は去っていた。
「クラスメイトですか?」
「ええ、ごめんなさいね」
「なんで謝るんですか?」
「あ……うん、なんとなく……」
「私が翠華さんの後輩なのは本当のことでしょ?」
「会社の、ね……」
「それより来年来るのが楽しみって言ってましたね!」
「え、そうだけど」
「私、中三に見えたんですね!」
「ええ、そこ!?」
「小学生に間違われることはあるんですけど、中三だと言われたのは初めてです! 大人っぽく見えるんでしょうか?」
「そ、それはよかったわ」
ちっちゃいけど、とも言われたのは忘れたようだ。
「さあ、翠華さん! 行きましょう!」
「う、うん、案内するわ。まずどこへ行きましょうか?」
「翠華さんの教室です!」
「え……?」
翠華はかなみの返答に大いに戸惑った。
「ここが私の教室よ」
「わあ!?」
教室に案内すると、かなみは目を輝かせる。
「翠華さんはどの席ですか!?」
「え、えぇっと、真ん中よりちょっと後ろの方」
翠華が指差すと、かなみはすぐにその席に座る。
「翠華さん、ここですか」
(ちょ、ちょっと!? かなみさんが私の席に!?)
翠華は天井に頭をぶつけそうな勢いでそそり立つ。
「なんだか高校生になった気分です!」
「かなみさんだったら素敵な高校生になれるわよ」
「早く高校生になりたいです」
将来に期待を膨らませるかなみがとても素敵だと翠華は思った。
「そのために、勉強と学費が……」
しかし、一瞬にしてその期待は不安に塗り替えられた。
「か、かなみさん、勉強なら私も協力するから」
それにいざとなったら学費だって、と翠華は思った。
「そうですね! 翠華さんが協力してくれたら心強いです!!」
「ええ!」
勢いでかなみと翠華は手を取りあおうとする。
「いいムードのところ悪いんだけど」
そこへマニィが水を差す。
(ね、ネズミに邪魔された……)
心の中で翠華は落胆の声を上げる。
「ここに怪人がいないなら別の場所を探した方がいいよ」
「そうね、行きましょう翠華さん」
「あ……」
かなみはもう席を立って教室を出ようとしていた。
(かなみさん、はやい……)
翠華はかなみのそのあっさりとした態度を心底残念に思う。
翠華の案内で、理科室、調理実習室、美術室、視聴覚室、図書室と次々と回っていく。
「怪人の気配、まったくしませんね」
「そうね」
「でも、楽しいです!」
「そう、それはよかったわ」
翠華は本当にそう思った。
かなみが自分の学校を楽しそうに回っているのを見て満ち足りていく。
本当にかなみがこの高校の生徒になってくれたら、と思わずにはいられない。
同じ学校の生徒として通う。ごく普通の先輩と後輩のように。
それは決してかなわないことでありながら、いやかなわないことだからこそ強く願ってしまう。
「翠華さん、次はどこですか?」
「そうね……ここから近いのは音楽室かしらね」
「演奏が聞こえてきますね」
「そうね、今だと吹奏楽部が練習しているところね」
「いい音色ですね、早く行きましょう!」
「あ、ちょっと待って」
翠華は慌ててかなみを止める。
♪~♪~♪
かなみは音楽室の前で吹奏楽部の演奏を聞き入っていた。
「うちの吹奏楽部はレベル高くて、コンクールでよく入賞してるのよ」
「心地良い音楽です」
「かなみさん、吹奏楽部に興味が?」
「すごいですね。私、楽器やったことなくて音楽がよくわからないんですけど」
「涼美さんなら何かやってたりしてそうだけど」
「母さんが……? 母さんなら何かやってそうだけどよく知らないのよ」
「かなみさんだったら何か才能ありそうだけど」
「え、そうですか?」
「耳、良さそうだから」
「そうでしょうか……?」
かなみは首を傾げる。
涼美の耳の良さを受け継いでいるとは思えないから。
「次、行きましょうか」
ここに怪人がいないのは明白であった。
次にかなみと翠華がやってきたのは体育館だった。
バスケ部とバレー部が熱心に練習している。
ダンダンダンダン
バスケットボールとバレーボールがバウンドする音がリズミカルに鳴り響く。
「すごいです!」
かなみの中学にもどちらの部活はあるのだけど、レベルの高さが一目見てわかる。
「かなみさん、球技は得意なの?」
「うーん、どうなんでしょ? 体育でちょっとやったぐらいなんですけど」
そんな会話をしているとバレーボールが二人の前に転がってくる。
「あ、青木さん!」
バレー部の女子生徒がやってくる。
「バレー部の見学? やっと入部する気になったの?」
「そういうわけじゃないの」
「青木さんの運動神経だったら即戦力なのにもったいないわね。あら、その娘は?」
女子生徒はかなみに気づいて訊く。さっきもあったやり取りだ。
「翠華さんの後輩です!」
「ちょっと校内を案内してるのよ」
「へえ、そうなの。青木さんの後輩なんだ……バレー部に入るの?」
「あ、いえ、そういうわけじゃないんです。私、バレーは体育したことやったことなくて」
「うちのバレー部高いからね。今年もインターハイ狙ってるし」
「あなたもレギュラー入れそうじゃないの」
「そんな、ぜんぜん!」
女子生徒はお手上げと言いたげに手を振る。
「レベルが高いと厳しいんですね」
「そうなのよ。でもまだもう一年あるから頑張ってみるつもりよ」
かなみはその女子生徒の前向きさを見習いたいと思った。
「それじゃ、また!」
女子生徒はバレー部の練習に戻っていた。
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