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第85話 行進! 百鬼夜行の行き着く先は少女 (Cパート)
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「いてもたってもいられなくなったのね」
一方でオフィスビルの窓から戦いの様子を見ていたあるみは言う。
「せっかくお主も飛び出したい気持ちを我慢しておったのにな」
煌黄は楽し気に言う。
「まあ仕方ないわね。あんな状況じゃ、私も我慢できたのが不思議なくらいだもの」
「信じておるからじゃろ、カナミならば自力で切り抜けられると」
「多分ね」
「しかし、あやつも不思議な存在じゃのう」
煌黄はチトセを指して言う。
「人間で幽体でありながら仙人に近いチカラを持っておる。あともう一息で仙人の仲間入りするところまで来ておる」
「その一息というのは、多分彼女の望みかもしれないわよ。人のままでいたい、という」
「かもしれんな」
煌黄は同意する。
「ホホホ、面白い人間ばかりが集まっておるな」
「ガアアアアアアアッ!!」
地豹は雄叫びを上げる。糸を拘束している身体が裂けてでも構わない、と覚悟を感じる程に壮烈なものだった。
「必死ですね」
「素晴らしいものだ」
空孔と水剣が地豹の元に集う。
「これは振りほどかれるわね!」
チトセはそう言うと、地豹は裂帛の気合で腕を振りかざす。
パチーン!!
振りほどかれた糸か、はたまた極限の力を込めた腕の血潮か、何かが弾けた音がする。
それが戦闘再開のゴングとなった。
「いくぞ、水剣、空孔!」
「「オオッ!!」」
三匹の怪人が一斉にカナミへ襲い掛かる。
バァン!
遠くから銃声が響く。
そして、銃弾が空孔の七色の翼を撃ち抜く。
「私を忘れてもらっちゃ困るわね」
遠くから翼を撃ち抜いたモモミは、得意げに銃を掲げる。
「ぬううう、身体がああああああッ!?」
水剣は身体の自由を奪われ、突撃が止まる。
「そうね、眼中にぐらい入れておかないと痛い目を見るわよ!」
水剣の動きを止めたのはミアの魔法糸だった。
ヨーヨーを生成するときに出来る糸を使ったもので、チトセから教わった覚えたての魔法だ。
「だが、この程度!」
ただ、覚えたてゆえにチトセほどの拘束力は無く、すぐ振りほどかれた。
しかし、隙をつくには十分な時間をもたらした。
「ノーブルスティンガー!!」
「逆転のサヨナラホームラン!!」
スイカとシオリの同時攻撃をによって、彼方へ吹き飛ぶ。
「あやつの角は名刀にも勝る出来栄えじゃったが、それ以外はナマクラだった。というわけじゃな」
煌黄は吹き飛ばされた水剣を眺めながら言った。
そして、残る地豹は他の二匹がやられたことに一切目もくれず突進してくる。
「魔法少女カナミ! 俺はお前を倒して必ず十二席の座につく!!」
「もうその台詞は聞き飽きたわよ!」
カナミはステッキを地豹へ向ける。
「神殺砲! ボーナスキャノン!!」
ステッキを砲台に変化させて、砲弾を放つ。
バァァァァァァァン!!
しかし、地豹はその砲弾を受け止める。
「こいつはさっきみせてもらったからな! ダメージを負ったが、この俺を止めるには力不足だぜ!!」
「だったら!」
カナミはとんでいた鈴をステッキへ取り付ける。シオリを人質にされている間、ひそかに魔力を充填させておいたのだ。
「三連射よ!!!」
「な、なにぃぃぃぃッ!?」
カナミはさらに二連発の砲弾を発射する。
「ギャアアアアアアッ!!?」
バァァァァァァァァァァァァァァン!!
さすがの地豹もこれにはこらえきれず、砲弾に飲み込まれて大爆発する。
「や、やった……」
カナミは両膝に手をつける。今の三連発で魔力も体力もごっそりもっていかれた。
(これで倒せたらいいんだけど……!)
直撃させた手応えはあった。それでも地豹の耐久力は並外れていると思える。
「ガアアアアッ!!」
地豹は雄叫びを上げて立ち上がる。
しかし、もう立っているのがやっとだとわかるぐらいボロボロだった。
「ここまでやるとは……人間だと侮りすぎたか……退却だ!」
地豹はそう言って、背を向けて逃走する。
「必ず、十二席に……! 十二席に!!」
そんな血反吐をはくような想いで出した声が耳に残った。
「あはははは……タフね……」
そのまま倒れてもおかしくないほどボロボロでも、まだ即座に逃げ切れるだけの力を残している。それに、あれほどの執念を見せつけられたら感心するしかなかった。
「まんまと逃げられたわね……」
ミアは面倒そうに言う。
「私達も倒せられなかったわ……二匹ともね……」
「すみません……」
スイカとシオリは申し訳なさそうに言う。
「ああ、みんなで勝ったんだからよしとしましょう」
チトセは陽気に言う。
「はい、そうですね!」
カナミは元気よく言う。
もうヘトヘトだけど、みんなで戦い抜いたということが充足感を与えてくれた。
スイカがいて、ミアがいて、シオリがいて、しゃくだけど、モモミもいて、誰一人欠けることなく勝ったのだ。
「……ところで」
そこへ、ミアが水を差すように言う。
「あんた、また派手にやったわね」
「……え?」
ミアに言われて、辺りを見回してみる。
怪人は倒したら、身体を残さず綺麗さっぱり消えるからまだいいのだけど、問題はその後に浮彫りになってくる道路や建物への被害だ。
「……あ、あぁ、あああ……!」
特に神殺砲を撃ち込んだ後は深刻だった。
「罰金ってどのくらいになるのかしら?」
「わからないけど、ボーナスは今回もゼロになるのかもしれないのは覚悟した方がいいよ」
マニィの発言は地豹よりも残酷に聞こえた。
「そ、そんなぁ~~!!」
「判真様! 判真様!!」
何も無く黒く塗りつぶされた空間が果て無く広がる場所に訴える声が響き渡る。
「騒々しい!」
声の主達の元に視百が現れる。
「ああ、視百様!」
「なんだ、ヒバシラか。それに極星も一緒か」
全身が発火している怪人、四国支部長ヒバシラと人の形をした黄金の怪人極星の二人が立っていた。
「二人揃って何用だ?」
「俺達だけじゃない!!」
「むむ!」
「次の十二席の決め方に異議を申し立てるつもりはありませんでしたが」
人形を持った黒子が現れる。
近畿支部長のマイデとハーンだ。ちなみに人形の方がマイデで、黒子の方がハーンだ。
『不当! 不当! 不適当やで!!』
マイデはカタカタと壊れた人形のような不気味な音を立てて喋り出す。
「マイデとハーンの言う通りだぜ」
ネズミの顔をした筋肉隆々の偉丈夫、中国支部長チューソーだ。
「私は不満を漏らすつもりはないんだけどね」
九州支部長のいろかは艶のある声で言う。
「どういったわけがあってこういったことになったのか教えて欲しいわね」
「お前達には各地方の支部を統括する役割がある」
視百は最高役員十二席らしく威厳のこもった声で言い放つ。
「即自らの支部に戻るがよい!」
その発言にさすがの各支部長も黙る。
しかし、彼等とて大人しく帰るわけにはいかなかった。
それだけ今回十二席の座を決める方法に不満と疑問を抱いているのだ。
「――まあ、いいではないか」
そこへ黒い外套を羽織り、死の香りをふりまく幼女が現れる。
十二席の一人・グランサーだ。
「せっかくガン首揃えてやってきたのだ。無碍に帰すのは横暴であろう」
「グランサー、何が言いたい?」
「せっかくの祭りだ。参加者は多い方がいいということだ」
「祭り? 参加者?」
視百が疑問にすると、その百ある目全てに驚愕の色が浮かぶ。
「お、おお!? おおおおおおおおおッ!!?」
視百や各支部長達の周囲に最高役員十二席の面々が現れたからだ。
女郎姪、壊ゼル、白道化師、嬢王、無明、音速ジェンナ、ジェマス、そして、席長の判真。
これでヘヴルを除く最高役員十二席が勢揃いした。
「ま、まさか、全国の支部長と最高役員十二席が一緒に集うなど!?」
視百は驚愕で全身を震わせる・7
「何十年、何百年ぶりの大事件ですね! いやはや、キカイユカイツーカイであります!」
白道化師は芸を披露するかのように踊り回って言う。
「しかも、六天王様や判真の命令では無くね」
嬢王は言う。
「私達は事の真相が気になってやってきた」
音速ジェンナは判真に向けて問いただす。
「他所の世界からやってきたヘヴルを十二席として迎え入れたまではいい。だが、そのヘヴルか魔法少女カナミを倒した奴が十二席というのはどういうわけよ?」
その問いかけに対して視百が間に入る。
「判真様の取り決めに異議があると?」
「そうね」
女郎姪が言い継ぐ。
「いくら判真の勅命には逆らえなくても異議を申し立てる権利はあるわ」
「女郎姪の言う通りだ」
ジェマスが同意する。
「ジェマス! 女郎姪!」
視百は二人の反抗に憤る。
「――他の異議を申し立てる者は?」
判真は厳かな口調で十二席の面々へ問いかける。
「私は無いね。むしろこんな面白いことになってるんだ、楽しくてしかたないさ!」
グランサーは上機嫌に言う。
「俺もそうだ!」
壊ゼルはグランサーに同意する。
「私も面白ければそれでよいので」
「私はそうは思わないわね」
白道化師は壊ゼルの意見を肯定し、嬢王は否定する。
「混沌にだってルールがあるわ。第一に私を巻き込まないことよ」
「ハハ! 身勝手極まりないが、それが怪人というものの在り方だ!」
グランサーは嬉々として嬢王の意見を認める。
「意見はあらかた出ましたな」
視百が取りまとめる。
「判真様の取り決めに反対する者は、女郎姪、音速ジェンナ、嬢王、ジェマス、そして、不動大天」
「………………」
名前を呼ばれた不動大天は何も言わずただそこにそびえ立っていた。
ただ、十二席の面々はこれが不動大天なりの肯定だと理解していた。
「無明は中立として、賛成四、反対四か」
「まだ一人残っているじゃないか、視百」
壊ゼルは指摘する。
「ふむ……私は判真様の取り決めたことに従おう」
「賛成五か……さて、この意見に対して判真様はどうなさいますか?」
白道化師は判真へ問いかける。
「いや、ちょっと待ってくれ!」
そこへヒバシラが口を挟む。
「あんたら十二席だけじゃなく、俺達の意見を聞いてくれねえと横暴だぜ!」
「口を慎め、ヒバシラ! いくら支部長といえどこの場では」
「構わない」
判真が視百の発言を遮って言う。
「支部長、お前達の意見も聞こう」
「「「――!!」」」
最高役員十二席、支部長の面々が共に驚く。
「それでは、僭越ながら私めはこの度の取り決めを支持したいと思います」
まず最初にいろかが意見を言った。
「俺は反対だぜ!」
次にヒバシラが言う。
「わけのわからん奴が俺達の上に立たれちゃ困る」
「今の面子でも十分わけがわからんだろ」
グランサーはククッと笑って、ヒバシラを茶化す。
「判真様、一つお伺いしてもよろしいでしょうか?」
極星が判真へ伺う。
「構わぬ」
「もし我ら支部長の中で、ヘヴル様か魔法少女カナミを倒しても最高役員十二席の座につけるのですか?」
「――例外は無い」
判真の返答を聞いた支部長達の目にギラリと野望の色が浮かぶ。
「ならば、俺は賛成だ」
チューソーは言う。本心では自分が倒して十二席の座をいただいてやるという魂胆なのが誰の目にも明らかだ。
「私にも出世のチャンスが回ってきたということですね」
『抜け駆けして早い者勝ちや!』
一方のマイデとハーンは包み隠さず本心を言い、賛成の意を示す。
「私は反対だ」
しかし、問いただした当の極星は反対する。
「ふむ、それでは賛成は、いろか、チューソー、マイデとハーン、反対はヒバシラ、極星と出揃ったな」
「俺達十二席と合わせて、賛成八、反対六か」
壊ゼルが言う。
「判真様、このような結果になりましたが」
視百は恐る恐る確認するように判真へ進言する。
「取り決めに変更は無い」
判真はそう告げる。
「ふむ、それでは各自持ち場に戻りなさい」
「「「ハハ!」」」
支部長達は姿を消す。
「持ち場と言われてもね」
嬢王は視百へ嫌味を言う。
「私達十二席にそんなものはないんだけどな」
グランサーが言う。
「ならば好きに解散すればよかろう」
「それでは好きにさせてもらいます」
白道化師はそう言って姿を消す。
「そうね、誰が十二席になったか結果だけ教えてちょうだい」
嬢王も続けて姿を消す。
二人が姿を消したのにつられて、女郎姪、ジェマス、不動大天、音速ジェンナが消える。
「さて、結果的に支部長達にも混乱を招いてしまったわけだな」
グランサーは判真へ言う。
「奴等も十二席の座を狙うであろうな」
壊ゼルも付け加える。
「ククク、ますます面白くなった。これで魔法少女達から目を離せなくなってきた」
「グランサーよ。今回の件でお前が一番楽しんでいるのではないか」
「さあ、どうだろうな壊ゼルよ」
グランサーはとぼけた返答を残して姿を消す。
「ふむ、しかし判真よ。今回の取り決め、とてもお前が独断で決めたとは思えぬ。局長の六天王か、あるいは副局長の――」
「口を慎むのだ」
「――!」
判真にそう言われて、壊ゼルは沈黙する。
「去れ」
ただ一言勅命を下す。
「――御意に」
壊ゼルはその通りに姿を消す。
その空間には、判真と視百だけが残った。
一方でオフィスビルの窓から戦いの様子を見ていたあるみは言う。
「せっかくお主も飛び出したい気持ちを我慢しておったのにな」
煌黄は楽し気に言う。
「まあ仕方ないわね。あんな状況じゃ、私も我慢できたのが不思議なくらいだもの」
「信じておるからじゃろ、カナミならば自力で切り抜けられると」
「多分ね」
「しかし、あやつも不思議な存在じゃのう」
煌黄はチトセを指して言う。
「人間で幽体でありながら仙人に近いチカラを持っておる。あともう一息で仙人の仲間入りするところまで来ておる」
「その一息というのは、多分彼女の望みかもしれないわよ。人のままでいたい、という」
「かもしれんな」
煌黄は同意する。
「ホホホ、面白い人間ばかりが集まっておるな」
「ガアアアアアアアッ!!」
地豹は雄叫びを上げる。糸を拘束している身体が裂けてでも構わない、と覚悟を感じる程に壮烈なものだった。
「必死ですね」
「素晴らしいものだ」
空孔と水剣が地豹の元に集う。
「これは振りほどかれるわね!」
チトセはそう言うと、地豹は裂帛の気合で腕を振りかざす。
パチーン!!
振りほどかれた糸か、はたまた極限の力を込めた腕の血潮か、何かが弾けた音がする。
それが戦闘再開のゴングとなった。
「いくぞ、水剣、空孔!」
「「オオッ!!」」
三匹の怪人が一斉にカナミへ襲い掛かる。
バァン!
遠くから銃声が響く。
そして、銃弾が空孔の七色の翼を撃ち抜く。
「私を忘れてもらっちゃ困るわね」
遠くから翼を撃ち抜いたモモミは、得意げに銃を掲げる。
「ぬううう、身体がああああああッ!?」
水剣は身体の自由を奪われ、突撃が止まる。
「そうね、眼中にぐらい入れておかないと痛い目を見るわよ!」
水剣の動きを止めたのはミアの魔法糸だった。
ヨーヨーを生成するときに出来る糸を使ったもので、チトセから教わった覚えたての魔法だ。
「だが、この程度!」
ただ、覚えたてゆえにチトセほどの拘束力は無く、すぐ振りほどかれた。
しかし、隙をつくには十分な時間をもたらした。
「ノーブルスティンガー!!」
「逆転のサヨナラホームラン!!」
スイカとシオリの同時攻撃をによって、彼方へ吹き飛ぶ。
「あやつの角は名刀にも勝る出来栄えじゃったが、それ以外はナマクラだった。というわけじゃな」
煌黄は吹き飛ばされた水剣を眺めながら言った。
そして、残る地豹は他の二匹がやられたことに一切目もくれず突進してくる。
「魔法少女カナミ! 俺はお前を倒して必ず十二席の座につく!!」
「もうその台詞は聞き飽きたわよ!」
カナミはステッキを地豹へ向ける。
「神殺砲! ボーナスキャノン!!」
ステッキを砲台に変化させて、砲弾を放つ。
バァァァァァァァン!!
しかし、地豹はその砲弾を受け止める。
「こいつはさっきみせてもらったからな! ダメージを負ったが、この俺を止めるには力不足だぜ!!」
「だったら!」
カナミはとんでいた鈴をステッキへ取り付ける。シオリを人質にされている間、ひそかに魔力を充填させておいたのだ。
「三連射よ!!!」
「な、なにぃぃぃぃッ!?」
カナミはさらに二連発の砲弾を発射する。
「ギャアアアアアアッ!!?」
バァァァァァァァァァァァァァァン!!
さすがの地豹もこれにはこらえきれず、砲弾に飲み込まれて大爆発する。
「や、やった……」
カナミは両膝に手をつける。今の三連発で魔力も体力もごっそりもっていかれた。
(これで倒せたらいいんだけど……!)
直撃させた手応えはあった。それでも地豹の耐久力は並外れていると思える。
「ガアアアアッ!!」
地豹は雄叫びを上げて立ち上がる。
しかし、もう立っているのがやっとだとわかるぐらいボロボロだった。
「ここまでやるとは……人間だと侮りすぎたか……退却だ!」
地豹はそう言って、背を向けて逃走する。
「必ず、十二席に……! 十二席に!!」
そんな血反吐をはくような想いで出した声が耳に残った。
「あはははは……タフね……」
そのまま倒れてもおかしくないほどボロボロでも、まだ即座に逃げ切れるだけの力を残している。それに、あれほどの執念を見せつけられたら感心するしかなかった。
「まんまと逃げられたわね……」
ミアは面倒そうに言う。
「私達も倒せられなかったわ……二匹ともね……」
「すみません……」
スイカとシオリは申し訳なさそうに言う。
「ああ、みんなで勝ったんだからよしとしましょう」
チトセは陽気に言う。
「はい、そうですね!」
カナミは元気よく言う。
もうヘトヘトだけど、みんなで戦い抜いたということが充足感を与えてくれた。
スイカがいて、ミアがいて、シオリがいて、しゃくだけど、モモミもいて、誰一人欠けることなく勝ったのだ。
「……ところで」
そこへ、ミアが水を差すように言う。
「あんた、また派手にやったわね」
「……え?」
ミアに言われて、辺りを見回してみる。
怪人は倒したら、身体を残さず綺麗さっぱり消えるからまだいいのだけど、問題はその後に浮彫りになってくる道路や建物への被害だ。
「……あ、あぁ、あああ……!」
特に神殺砲を撃ち込んだ後は深刻だった。
「罰金ってどのくらいになるのかしら?」
「わからないけど、ボーナスは今回もゼロになるのかもしれないのは覚悟した方がいいよ」
マニィの発言は地豹よりも残酷に聞こえた。
「そ、そんなぁ~~!!」
「判真様! 判真様!!」
何も無く黒く塗りつぶされた空間が果て無く広がる場所に訴える声が響き渡る。
「騒々しい!」
声の主達の元に視百が現れる。
「ああ、視百様!」
「なんだ、ヒバシラか。それに極星も一緒か」
全身が発火している怪人、四国支部長ヒバシラと人の形をした黄金の怪人極星の二人が立っていた。
「二人揃って何用だ?」
「俺達だけじゃない!!」
「むむ!」
「次の十二席の決め方に異議を申し立てるつもりはありませんでしたが」
人形を持った黒子が現れる。
近畿支部長のマイデとハーンだ。ちなみに人形の方がマイデで、黒子の方がハーンだ。
『不当! 不当! 不適当やで!!』
マイデはカタカタと壊れた人形のような不気味な音を立てて喋り出す。
「マイデとハーンの言う通りだぜ」
ネズミの顔をした筋肉隆々の偉丈夫、中国支部長チューソーだ。
「私は不満を漏らすつもりはないんだけどね」
九州支部長のいろかは艶のある声で言う。
「どういったわけがあってこういったことになったのか教えて欲しいわね」
「お前達には各地方の支部を統括する役割がある」
視百は最高役員十二席らしく威厳のこもった声で言い放つ。
「即自らの支部に戻るがよい!」
その発言にさすがの各支部長も黙る。
しかし、彼等とて大人しく帰るわけにはいかなかった。
それだけ今回十二席の座を決める方法に不満と疑問を抱いているのだ。
「――まあ、いいではないか」
そこへ黒い外套を羽織り、死の香りをふりまく幼女が現れる。
十二席の一人・グランサーだ。
「せっかくガン首揃えてやってきたのだ。無碍に帰すのは横暴であろう」
「グランサー、何が言いたい?」
「せっかくの祭りだ。参加者は多い方がいいということだ」
「祭り? 参加者?」
視百が疑問にすると、その百ある目全てに驚愕の色が浮かぶ。
「お、おお!? おおおおおおおおおッ!!?」
視百や各支部長達の周囲に最高役員十二席の面々が現れたからだ。
女郎姪、壊ゼル、白道化師、嬢王、無明、音速ジェンナ、ジェマス、そして、席長の判真。
これでヘヴルを除く最高役員十二席が勢揃いした。
「ま、まさか、全国の支部長と最高役員十二席が一緒に集うなど!?」
視百は驚愕で全身を震わせる・7
「何十年、何百年ぶりの大事件ですね! いやはや、キカイユカイツーカイであります!」
白道化師は芸を披露するかのように踊り回って言う。
「しかも、六天王様や判真の命令では無くね」
嬢王は言う。
「私達は事の真相が気になってやってきた」
音速ジェンナは判真に向けて問いただす。
「他所の世界からやってきたヘヴルを十二席として迎え入れたまではいい。だが、そのヘヴルか魔法少女カナミを倒した奴が十二席というのはどういうわけよ?」
その問いかけに対して視百が間に入る。
「判真様の取り決めに異議があると?」
「そうね」
女郎姪が言い継ぐ。
「いくら判真の勅命には逆らえなくても異議を申し立てる権利はあるわ」
「女郎姪の言う通りだ」
ジェマスが同意する。
「ジェマス! 女郎姪!」
視百は二人の反抗に憤る。
「――他の異議を申し立てる者は?」
判真は厳かな口調で十二席の面々へ問いかける。
「私は無いね。むしろこんな面白いことになってるんだ、楽しくてしかたないさ!」
グランサーは上機嫌に言う。
「俺もそうだ!」
壊ゼルはグランサーに同意する。
「私も面白ければそれでよいので」
「私はそうは思わないわね」
白道化師は壊ゼルの意見を肯定し、嬢王は否定する。
「混沌にだってルールがあるわ。第一に私を巻き込まないことよ」
「ハハ! 身勝手極まりないが、それが怪人というものの在り方だ!」
グランサーは嬉々として嬢王の意見を認める。
「意見はあらかた出ましたな」
視百が取りまとめる。
「判真様の取り決めに反対する者は、女郎姪、音速ジェンナ、嬢王、ジェマス、そして、不動大天」
「………………」
名前を呼ばれた不動大天は何も言わずただそこにそびえ立っていた。
ただ、十二席の面々はこれが不動大天なりの肯定だと理解していた。
「無明は中立として、賛成四、反対四か」
「まだ一人残っているじゃないか、視百」
壊ゼルは指摘する。
「ふむ……私は判真様の取り決めたことに従おう」
「賛成五か……さて、この意見に対して判真様はどうなさいますか?」
白道化師は判真へ問いかける。
「いや、ちょっと待ってくれ!」
そこへヒバシラが口を挟む。
「あんたら十二席だけじゃなく、俺達の意見を聞いてくれねえと横暴だぜ!」
「口を慎め、ヒバシラ! いくら支部長といえどこの場では」
「構わない」
判真が視百の発言を遮って言う。
「支部長、お前達の意見も聞こう」
「「「――!!」」」
最高役員十二席、支部長の面々が共に驚く。
「それでは、僭越ながら私めはこの度の取り決めを支持したいと思います」
まず最初にいろかが意見を言った。
「俺は反対だぜ!」
次にヒバシラが言う。
「わけのわからん奴が俺達の上に立たれちゃ困る」
「今の面子でも十分わけがわからんだろ」
グランサーはククッと笑って、ヒバシラを茶化す。
「判真様、一つお伺いしてもよろしいでしょうか?」
極星が判真へ伺う。
「構わぬ」
「もし我ら支部長の中で、ヘヴル様か魔法少女カナミを倒しても最高役員十二席の座につけるのですか?」
「――例外は無い」
判真の返答を聞いた支部長達の目にギラリと野望の色が浮かぶ。
「ならば、俺は賛成だ」
チューソーは言う。本心では自分が倒して十二席の座をいただいてやるという魂胆なのが誰の目にも明らかだ。
「私にも出世のチャンスが回ってきたということですね」
『抜け駆けして早い者勝ちや!』
一方のマイデとハーンは包み隠さず本心を言い、賛成の意を示す。
「私は反対だ」
しかし、問いただした当の極星は反対する。
「ふむ、それでは賛成は、いろか、チューソー、マイデとハーン、反対はヒバシラ、極星と出揃ったな」
「俺達十二席と合わせて、賛成八、反対六か」
壊ゼルが言う。
「判真様、このような結果になりましたが」
視百は恐る恐る確認するように判真へ進言する。
「取り決めに変更は無い」
判真はそう告げる。
「ふむ、それでは各自持ち場に戻りなさい」
「「「ハハ!」」」
支部長達は姿を消す。
「持ち場と言われてもね」
嬢王は視百へ嫌味を言う。
「私達十二席にそんなものはないんだけどな」
グランサーが言う。
「ならば好きに解散すればよかろう」
「それでは好きにさせてもらいます」
白道化師はそう言って姿を消す。
「そうね、誰が十二席になったか結果だけ教えてちょうだい」
嬢王も続けて姿を消す。
二人が姿を消したのにつられて、女郎姪、ジェマス、不動大天、音速ジェンナが消える。
「さて、結果的に支部長達にも混乱を招いてしまったわけだな」
グランサーは判真へ言う。
「奴等も十二席の座を狙うであろうな」
壊ゼルも付け加える。
「ククク、ますます面白くなった。これで魔法少女達から目を離せなくなってきた」
「グランサーよ。今回の件でお前が一番楽しんでいるのではないか」
「さあ、どうだろうな壊ゼルよ」
グランサーはとぼけた返答を残して姿を消す。
「ふむ、しかし判真よ。今回の取り決め、とてもお前が独断で決めたとは思えぬ。局長の六天王か、あるいは副局長の――」
「口を慎むのだ」
「――!」
判真にそう言われて、壊ゼルは沈黙する。
「去れ」
ただ一言勅命を下す。
「――御意に」
壊ゼルはその通りに姿を消す。
その空間には、判真と視百だけが残った。
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自力で帰還した錬金術師の爛れた日常
ちょす氏
ファンタジー
「この先は分からないな」
帰れると言っても、時間まで同じかどうかわからない。
さて。
「とりあえず──妹と家族は救わないと」
あと金持ちになって、ニート三昧だな。
こっちは地球と環境が違いすぎるし。
やりたい事が多いな。
「さ、お別れの時間だ」
これは、異世界で全てを手に入れた男の爛れた日常の物語である。
※物語に出てくる組織、人物など全てフィクションです。
※主人公の癖が若干終わっているのは師匠のせいです。
ゆっくり投稿です。
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