227 / 356
第89話 巨大! 少女と怪獣の戦いは映画!! (Bパート)
しおりを挟む
ドスン! ドスン!
怪獣はこちらへ向かってくる。
大地の揺れと連動して、心臓の鼓動が高鳴る。
怪獣。百メートルもある山に腕やら足やらがついていて、とても地球上の生物には見えない。
こんな戦うどころか相対するだけで圧倒されるような存在に対して、どうしたらいいか。
………………
急に辺りが静まり返る。
「向こうもこっちに気づいたのかもね」
マニィが言う。
「敵として認識されてるのね」
できれば無視して欲しかった、というのがカナミの本音だ。
「向こうはこっちが視えてるのかしら?」
「さあ、わからないよ」
「向こうからしたら私なんて虫みたいなものなのに、目はいいのかしらね」
「さあ。ただ虫でも一突きはできるものだよ」
マニィのその言葉に元気づけられた。
「ええ! やってやるわよ、ボーナスのために!!」
カナミは自分にも活を入れる。
ガォォォォォォォォォン!!
怪獣マグラが咆哮する。
ただ声を張り上げる。それだけの行為だというのに爆撃に晒されたかのように大気は震え、木々が飛び、土煙が舞う。
「くぅぅ、まるで竜巻ね!」
カナミは吹き飛ばされないようにその場で踏ん張る。
「こっちも負けてられないわね! 神殺砲!!」
負けじとステッキを砲台へ変化させる。
「ボーナスキャノン!!」
砲弾を発射する。
バァァァァン!!
見事、マグラの頭に命中した。
そして右側で待機していたミアはこう言った。
「もし、これがゲームであの怪獣のHPゲージが見えてたら一ドット減った程度のダメージね」
ドスン! ドスン!
再び足音がする。
「――!」
この場にいたらまずい! と、カナミは本能的に察知する。
ドゴシャアアアアアアアッ!!
マグラは腕を薙ぐ。
すると土石流が雪崩れ込んでくる。
「わああああ!?」
あの場にいたら間違いなく生き埋めになっただろう。
しかもまだ追加で雪崩はやってくる。
「こうなったら!」
カナミは木に登って土石流をやり過ごす。
しかし、ホッとしたのも束の間、マグラは大きく口を開ける。
ガォォォォォォォォォォォォン!!
咆哮と共に、口から火球が飛び出してくる。
「ちょッ!?」
カナミは面を食らった。
しかし、反射的に魔法弾を出して火球の軌道をそらす。
カナミの横へそれていったために、横側は火の海と化す。
「な、なんて、デタラメ……!」
怪獣のあまりのスケールに圧倒される。
一瞬の出来事だというのに、ちょっとでも判断が遅れていたら三回はやられていた。
しかも、神殺砲はまったくきいていない。
「四千万の案件は一筋縄じゃいかないね」
マニィは言う。
「だからってまだやれることはあるわよ! ジャンバリック・ファミリア!!」
カナミは鈴を飛ばして、マグラに向かって数十発の魔法弾が放たれる。
バァン! バァン! バァン! バァン! バァン! バァン!
「あれって効果あると思う?」
ミアはマグラの側面からカナミの数十発の魔法弾を見つめて問いかける。
『ゼロじゃないわね』
魔法糸による通話でクルハが答える。
「あれで?」
カナミの攻撃は怪人に対しては有効打になり得る魔法弾の雨だけど、マグラのデタラメなスケールからしてみれば小雨で肌を湿らせる程度にしか見えない。
肌が湿った程度で人間が倒れるはずがない。ましてやあれだけ強大で強靭そうな身体を誇る怪獣だったら尚更だ。
『ダメ―ジは確実に受けているわ。ただマグラの体力があまりにも桁違いなだけよ』
「十ぐらいのダメージを与えてはいるけど、敵のHPは百億あるってわけね」
『そうね』
「なんとかならないの。あんた、一億ぐらい削れる切り札とかないの?」
『百億に対して一億、ね』
クルハは含み笑いをする。
ミアはクルハに対して、過度な期待をしていないことがわかる。
『あるにはあるけど』
「それじゃ、いざとなったらお願いね」
『了解。それまではどうするの?』
「とりあえず杭飛ばして、あたしもヨーヨーをぶつける!」
『十ぐらいのダメージにしかならないのに?』
「チリも積もれば山となる。カナミが今実践してるでしょ」
『そうね』
クルハがクスリと笑ったように聞こえた。
グサリ!
グサグサグサグサグサグサグサグサ!!
音がはっきり聞こえてきた。
側面から放たれた杭が次々とマグラの身体に突き刺さっていく。
「行動が早いわね」
ミアは感心して、ヨーヨーを投げ込む。
魔法弾、杭、ヨーヨーによる三方向からの同時攻撃にも怪獣マグラにはあまり効果が見られない。
「ご苦労なことじゃが、あれでは厳しいではないんか?」
小山の頂上から煌黄は文字通り高みの見物をしていた。
「そうね、頑張ってくれてはいるんだけど」
あるみは怪獣の様子をつぶさに観察しながら答える。
「のう、あるみ。お主が出ればすぐにカタがつくのではないか?」
「それじゃカナミちゃんとミアちゃんの成長にならないからね」
「そうか。やれやれ社長というものは大変じゃな」
「仙人は気楽じゃぞ」
「フフ、あなたほど気楽な仙人は初めてだわ」
あるみは余裕をもって返す。
「神殺砲!!」
カナミはステッキを砲台へと変化させる。
「ボーナスキャノン!」
そして、即座に撃ち込む。
あれだけ大きな的なんだから狙いを定めるなんてことをしない。
バァァァァン!!
今度は腹に命中する。
それでも、怪獣がダメージを負った様子は無い。
ガォォォォォォォォォン!!
むしろ、怒りを煽っただけのようにしか見えない。
ドゴシャアアアアアアアッ!!
マグラは腕を薙いで、土石流を雪崩れ込ませる。
カナミは神殺砲を撃った反動で逃げ遅れた。
『カナミ! 生きてるの!?』
土石流に飲まれた暗闇の中でミアの心配する声が聞こえる。
「うん、なんとかね……生きてるよ……」
カナミは砂をかきわけて、モグラのように出てくる。
『まったくもう~、ドジなんだから』
「心配かけてごめんね」
『あ、謝ってるヒマがあったら、もう一発砲弾撃ち込みなさい』
「了解!」
カナミはステッキを砲弾へ変化させる。
「神殺砲! ボーナスキャノン!!」
バァァァァン!!
三度砲弾がマグラに命中する。
「カナミの攻撃をあれだけ食らってもなんともないなんて……」
ミアは頭を悩ませる。
バカでお人好しで借金持ちだけど、砲弾の威力だけは一目置いていた。それがまったくきいてないのだから、頭が痛い話だ。
「さすがは怪獣といったところね」
正攻法ではとても倒せそうにない。
「急所とか弱点とかそういうのがあればいいんだけど……」
さっきから怪獣の身体のいろんなところに攻撃しているというのに、それらしい箇所が見当たらない。
『まだ攻撃してないところがあるわね』
クルハが指摘する。
正面にカナミ、右側にミア、左側にクルハがそれぞれ攻撃している。そうなると残るのは後方の背中だ。ミアもそれは十分に承知している。
「私が回り込むわ……」
ミアは決心する。マグラの後ろはマグラが歩いたせいで平原になっていて隠れられる場所が無い。
『ありがとうね、ミアちゃん』
「礼を言われるようなことじゃないわ」
ミアは飛び出す。
目指すはマグラの後ろである。
ボオオオオオオッ!!
マグラの口から出す火球とカナミの魔法弾がぶつかる。
――カナミ!
リュミィの声が聞こえる。
自分の力を使うように訴えかける呼びかけだ。
「リュミィ、力を貸してくれるの?」
リュミィはコクンと頷く。
それだったら使わない手は無い。
「お願い!」
カナミはそう言うと、リュミィは光になってカナミの身体に入り込んでいく。そして、背中から光り輝く妖精の羽根が生える。
「フェアリーフェザー!」
羽はまるで生まれた時からそうであるように、羽を羽ばたかせることができ、身体が浮かび上がる。
ドゴシャアアアアアアアッ!!
押し寄せてくる土石流もこれで難なくかわせる。
姿を怪獣の前にさらしてしまう危険を冒してしまうけど。
「神殺砲! ボーナスキャノン!!」
即座に砲弾を撃ち放つ。
バァァァァァァン!!
それでもマグラの決定打にはならない。
しかし、砲弾を撃ち込んだ分だけの魔力は妖精の羽が大気中から吸い上げて全開になる。
「もう一発!」
めげずにもう一発撃ち込もうとする。
ガォォォォォォォォォォォォン!!
怪獣は咆哮する。
まるで台風に身一つでさらされているかのような感覚だった。
「くうううう!」
カナミは羽の方に力を込めて、その場で踏ん張る。
ボオオオオオオオオオオッ!!
そこから口から炎を放射する。
「わああああ!?」
カナミは飛び上がってこれを回避する。
飛び上がりさえすれば、もう安全だ。何しろこっちには羽があって、向こうには羽がない。
ドォン!
そう思って、一安心しようとした時だった。
怪獣には羽が無くても、足があってジャンプすることができるのだ。しかもカナミが飛び上がった高みにすぐ追いつくほどの勢いで。
「ちょ、それは反則よ!」
カナミは思わず不平を漏らすが、マグラは聞く耳を持たない
ガシィ!
カナミはマグラの腕に捕まる。
逃れようとするけど、マグラの腕の力が強くて動けない。
ドゴォォォォォォン!!
そして、マグラの巨体は大地へ着地する。
「Gヨーヨー!!」
その着地を狙って、ミアは巨大化したヨーヨーを背中へ投げ込む。
バァン!!
巨大ヨーヨーは背中に命中して、マグラはよろめく。
「せっかくの巨大ヨーヨーも、怪獣の前じゃピンポン玉ね。でも効果はあったみたい!」
ヨーヨーの衝撃で腕の拘束が緩んだ。そのおかげで、カナミは脱出できた。
「ありがとう、ミアちゃん!」
「バカ! 礼言ってるヒマがあったら弾の一発でも撃ちなさい」
ミアは威勢よく言い返すと、カナミの元に迫る火球の存在に気づく。
「あ!」
カナミは旋回して、これを回避する。
ガォォォォォォォォォォォォン!!
マグラは咆哮する。
「――!」
そして、カナミと視線が合う。
――お前は敵だ。
今の咆哮はそういう宣言に聞こえてならなかった。
初めてマグラが自分を敵と認識されたような気がする。今にしてみれば、これまでは道端の石や虫か何か程度にしか思われていなかったのかもしれない。
その方がよかった、と、カナミは思う。
百メートルから放たれるあまりにも巨大すぎる威圧感に押しつぶされそうだ。
ボオオオオオオオオオオッ!!
早速、口からの火炎が放たれる。
カナミは妖精の羽を使って、押し寄せてくる炎から逃げる。
ブウン!!
突然、風切り音がする。
音が聞こえたと同時に、マグラがカナミが炎から逃げた先に回り込んでいた。
「なんてスピード!?」
さっきまでのどっしりとした鈍重さからは考えられないほどの軽快さと速度だった。
ブォン!!
そこから腕が突き出される。
拳を握りしめた強烈な一撃。直撃するわけにはいかない。
羽に力を込めて、拳をかわす。
ブォォォォォォォォォォォン!!
突き出した拳から竜巻が巻き起こる。
「キャア!?」
竜巻の突風に煽られて、一瞬自由を奪われる。
マグラはその隙を見逃さなかった。
「――!」
拳が突き出される。
直撃して一巻の終わりだ、とカナミは覚悟した。
しかし、拳は中途半端に伸びたところで止まる。
グサリ!
銀色の杭が拳に突き刺さって動きが止まったのだ。
「クルハさん!」
『今よ、カナミちゃん!』
魔法糸でクルハの声が届く。
「はい、神殺砲! ボーナスキャノン!!」
カナミは即座に砲弾を撃ち込む。
バァァァァァァン!!
しかし、それでも少し仰け反っただけで大したダメージにはなってないように見える。
「だったらボーナスキャノン・アディション!!」
全魔力を注ぎ込んだ砲弾を撃ち放つ。
バァァァァァァァァァァァァン!!
砲弾はマグラに命中し、大爆発が巻き起こる。
それでも倒しきれた手応えが無い。おそらくまだ平然と立っているだろう。
「もう一発!!」
カナミはすかさず妖精の羽の力で大気中から魔力を吸い上げ、全力の砲弾をもう一発放つ。
バァァァァァァァァァァァァン!!
二度目の大爆発が巻き起こる。
「くッ……!」
連続で二発放つのは負担が大きい。ただそれでも身体は魔力に満ち溢れてくる。
倒せるまで何発だって撃ってやる。そう心中で意気込んだ時だった。
「――消えた!?」
爆煙が晴れると、そこに百メートルある巨体の姿は無かった。
「どこに!?」
『カナミちゃん、下!』
クルハが警告する。
それと同時にカナミの下に地面がせり上がって、その物体はカナミへ襲い掛かる。
「あああああ、ちょっと待ってえええええッ!?」
カナミは悲鳴を上げて、その場から逃げようとする。
しかし、遅かった。
マグラはカナミの目の前にやってきて、その巨腕で殴り飛ばした。
「ガッ!?」
殴り飛ばされて、小川へ叩きつけられる。
バシャァァァァァァン!!
水飛沫が上がる。
「く……!」
全身の骨にヒビが入ったかのように激痛が走る。
「危なかったわ……」
クルハは汗をかきつつも一安心する。
今クルハの未来視の魔法で、カナミの未来を確定させた。
あのマグラの攻撃を避ける未来に確定させることは間に合わなかったものの、吹き飛ばされた先を地面ではなく川に確定させることは出来た。
それでいくらかダメージが和らいでくれたらいいのだけど。
「思った以上に柔軟で獰猛な怪獣みたいね」
こんな敵と戦わせようとするアルミを少しだけ恨めしく思った。
カナミには痛みに歯を食いしばってその場に耐える時間は無い。
(――来る!)
カナミの本能が警告を発する。
それはこれまで戦って培ってきた経験に基づくものだった。
この怪獣はダメージを負った敵に時間を与えるほど甘くはない。
飛び上がったマグラがカナミの頭上へと降り立つ。それはまるで人間がアリを踏み潰すような、そんな滑稽で絶望的な気分だった。
まさか自分がアリの側になるなんて。
「ああああああああッ!!」
冗談じゃないとカナミは心から叫んだ。
羽で水面から飛び上がって、低空飛行しつつマグラの追撃をかわす。
バシャァァァァァァン!!
川の水が全部ひっくり返ったように水が巻き上がり、虹ができる。
それを綺麗だなんて思っている時間はカナミには無かった。
「来るな! 来るなああああああッ!!」
カナミは叫ぶものの、マグラは意に介さずカナミを追いかけてくる。
あの巨体でとんでもない速度で追いかけてくる。カナミも羽を使って相当な速度を出しているはずなのに追いついてくる。
坂や林、川とカナミはあえて追いかけづらそうな場所を飛ぶものの、マグラはものともせず追いかけてくる。
川や坂は飛び上がり、林は木々をなぎ倒していきながら、である。その様はまさしく大災害だ。
おまけに疲れ知らずだ。もうかなり飛んで走り回っているはずなのに、一向にスピードが衰える気配が無い。
「本当に、化け物……!」
思わず吐き捨てたくなる。
四千万という大金がかかっていなければ匙を投げて全力で逃げたくなる。というより、今は逃げているのだけど。
『カナミ、聞こえておるか!?』
煌黄が聞こえてくる。
「コウちゃん、何!? 取り込み中なんだけど!!」
『そんなこと百も承知じゃ。それより、そのまままっすぐ海へ出たらまずいぞ』
「え、海!?」
『怪獣を海へ逃がして潜水でもされたら追跡は困難じゃし、人の世に被害が及ぶ恐れもある』
「じゃ、じゃあ、どうしたらいいの!?」
『――くいとめるんじゃ』
「………………」
とんでもない無茶振りをされたと思って言葉を失う。
「ああもう!」
しかし、煌黄の忠告を無視するわけにはいかない。海の中へ入られたら、戦うのは難しい。そうなったらこの案件は失敗したといっていい。ボーナスはもらえない。
何より、海へ出てもし人がいる街にでも辿り着いてしまったらと思うと……
「絶対に阻止しないと!」
カナミは振り向いて、魔法弾を放つ。
――!?
その魔法弾はマグラの目に当たって怯まされた。文字通り面を食らったわけだ。
その間にカナミは魔力を充填し、砲弾を撃ち込む体制に入る。
「ボーナスキャノン!」
カナミはマグラの頭へ向けて発射する。
ガォォォォォォォォォォォォン!!
マグラは執念を見せて、火球を放つ。
バァァァァァァン!!
神殺砲の砲弾とマグラの火球が衝突し、大爆発が巻き起こる。
グサリ!
そこへ銀色の杭がマグラの足へ突き刺さる。
ギャァァァァァァッ!!
マグラは悲鳴を上げる。
『今よ、ミアちゃん!』
『よし、Gヨーヨー!!』
ミアはマグラの背中に向けて巨大ヨーヨーを放つ。
ゴツン!!
マグラはよろめく。
「私の最大魔法だってのに! なんて怪獣よ!!」
ミアが悪態をついてると、マグラのお尻についているしっぽが伸びてミアを掴む。
「あう!?」
「リューズ!」
クルハが銀色の杭をマグラのしっぽへ突き刺す。
しっぽはそれで静止する。しかし、ミアは離さない。
「これは失敗してしまったわね」
クルハは苦い顔をする。
「でも、動きは止まりました。神殺砲! ボーナスキャノン・アディション!!」
カナミは最大出力の砲弾を撃ち放つ。
バァァァァァァァァァァァァン!!
マグラは足を固定されているため、かわすことも衝撃をころすこともできず、思いっきり直撃する。
マグラの巨体は宙を浮き、吹き飛んでいく。
バシャァァァァァァン!!
川に倒れ込み、巨大な水飛沫が上がる。
これは相当なダメージを与えたはずだ。
できればもう立たないでほしいと思うけど、多分まだ倒しきれていないだろうとも思う。
「ミアちゃん! ミアちゃん、無事!?」
それよりもしっぽに捕まっていたミアの方が心配だ。
今の衝撃で解放されているはずだと思うから返事をしてほしい。
『……うるさいわね、バカ』
ミアの声が聞こえる。
息もだえだえながらもちゃんと悪態をついてくるあたりがミアらしい。
『あたしが捕まってるっていうのに、ちょっとは手加減しなさいよ!』
「ご、ごめん、つい……」
『ま、まあ、おかげで助かったけど……』
カナミはそう言ってもらえて一安心する。
『カナミ、今の一撃でかなりのダメージを負ったようじゃぞ』
煌黄が言う。
「コウちゃん、それ本当!?」
『うむ、じゃがちとばかしまずい状況やぞ』
「え、まずい状況ってなに?」
カナミはドキリとする。
『今のカナミの強烈な一撃をくらってダメージを受けて、そのダメージから立ち直るために魔力を欲するはずじゃ』
「魔力?」
『あやつの身体を構成しており、主食でもあるんじゃ。ダメージの回復に最適なんじゃよ』
「ちょ、ちょっと待って、主食ってことは食べるってことでしょ!?」
『うむ。それも手近なところからのう』
煌黄の返答に、カナミは青ざめる。
今マグラの手近にある魔力の源といったら……。
「ミアちゃん、はやくそこから逃げて!!」
『ギャアアアアッ!?』
ミアの悲鳴が聞こえて、カナミは飛ぶ。
ガォォォォォォォォォォォォン!!
マグラは咆哮し、立ち上がる。
その腕にはしっかりミアを掴んでいた。
「ミアちゃん! 逃げて!!」
『に、逃げられない……!』
「そんな! だったら、私が助ける!!」
カナミはすかさず突撃する。
しかし、マグラの行動はそれよりも早かった。
掴んだミアをすぐに口の中へ放り込んだ。
「ミアちゃぁぁぁぁぁぁん!!」
カナミは必死に叫ぶけど、ミアは答えてくれない。
『ごめんなさい、私の失態だわ』
クルハは謝る。
「クルハさん、そんなことよりミアちゃんを助け出さないと!!」
『ええ、そうね!』
クルハは同意する。
グサグサグサグサ!!
そして、銀色の杭を次々と突き刺していく。
「コウちゃん、ミアちゃんを助け出せないの!?」
『あの巨体を維持できないほどのダメージを食らわせれば、あやつの身体は崩壊して消えてなくなるはずじゃ』
「ミアちゃんを助けるにはそれしかないってことね!」
カナミは即決して、ステッキを砲台を変化させる。
「神殺砲! ボーナスキャノン!!」
カナミは砲弾を撃ち込む。
バァァァァァァン!!
しかし、マグラは火球を放って反撃してくる。
まだまだ倒される気配は無い。
怪獣はこちらへ向かってくる。
大地の揺れと連動して、心臓の鼓動が高鳴る。
怪獣。百メートルもある山に腕やら足やらがついていて、とても地球上の生物には見えない。
こんな戦うどころか相対するだけで圧倒されるような存在に対して、どうしたらいいか。
………………
急に辺りが静まり返る。
「向こうもこっちに気づいたのかもね」
マニィが言う。
「敵として認識されてるのね」
できれば無視して欲しかった、というのがカナミの本音だ。
「向こうはこっちが視えてるのかしら?」
「さあ、わからないよ」
「向こうからしたら私なんて虫みたいなものなのに、目はいいのかしらね」
「さあ。ただ虫でも一突きはできるものだよ」
マニィのその言葉に元気づけられた。
「ええ! やってやるわよ、ボーナスのために!!」
カナミは自分にも活を入れる。
ガォォォォォォォォォン!!
怪獣マグラが咆哮する。
ただ声を張り上げる。それだけの行為だというのに爆撃に晒されたかのように大気は震え、木々が飛び、土煙が舞う。
「くぅぅ、まるで竜巻ね!」
カナミは吹き飛ばされないようにその場で踏ん張る。
「こっちも負けてられないわね! 神殺砲!!」
負けじとステッキを砲台へ変化させる。
「ボーナスキャノン!!」
砲弾を発射する。
バァァァァン!!
見事、マグラの頭に命中した。
そして右側で待機していたミアはこう言った。
「もし、これがゲームであの怪獣のHPゲージが見えてたら一ドット減った程度のダメージね」
ドスン! ドスン!
再び足音がする。
「――!」
この場にいたらまずい! と、カナミは本能的に察知する。
ドゴシャアアアアアアアッ!!
マグラは腕を薙ぐ。
すると土石流が雪崩れ込んでくる。
「わああああ!?」
あの場にいたら間違いなく生き埋めになっただろう。
しかもまだ追加で雪崩はやってくる。
「こうなったら!」
カナミは木に登って土石流をやり過ごす。
しかし、ホッとしたのも束の間、マグラは大きく口を開ける。
ガォォォォォォォォォォォォン!!
咆哮と共に、口から火球が飛び出してくる。
「ちょッ!?」
カナミは面を食らった。
しかし、反射的に魔法弾を出して火球の軌道をそらす。
カナミの横へそれていったために、横側は火の海と化す。
「な、なんて、デタラメ……!」
怪獣のあまりのスケールに圧倒される。
一瞬の出来事だというのに、ちょっとでも判断が遅れていたら三回はやられていた。
しかも、神殺砲はまったくきいていない。
「四千万の案件は一筋縄じゃいかないね」
マニィは言う。
「だからってまだやれることはあるわよ! ジャンバリック・ファミリア!!」
カナミは鈴を飛ばして、マグラに向かって数十発の魔法弾が放たれる。
バァン! バァン! バァン! バァン! バァン! バァン!
「あれって効果あると思う?」
ミアはマグラの側面からカナミの数十発の魔法弾を見つめて問いかける。
『ゼロじゃないわね』
魔法糸による通話でクルハが答える。
「あれで?」
カナミの攻撃は怪人に対しては有効打になり得る魔法弾の雨だけど、マグラのデタラメなスケールからしてみれば小雨で肌を湿らせる程度にしか見えない。
肌が湿った程度で人間が倒れるはずがない。ましてやあれだけ強大で強靭そうな身体を誇る怪獣だったら尚更だ。
『ダメ―ジは確実に受けているわ。ただマグラの体力があまりにも桁違いなだけよ』
「十ぐらいのダメージを与えてはいるけど、敵のHPは百億あるってわけね」
『そうね』
「なんとかならないの。あんた、一億ぐらい削れる切り札とかないの?」
『百億に対して一億、ね』
クルハは含み笑いをする。
ミアはクルハに対して、過度な期待をしていないことがわかる。
『あるにはあるけど』
「それじゃ、いざとなったらお願いね」
『了解。それまではどうするの?』
「とりあえず杭飛ばして、あたしもヨーヨーをぶつける!」
『十ぐらいのダメージにしかならないのに?』
「チリも積もれば山となる。カナミが今実践してるでしょ」
『そうね』
クルハがクスリと笑ったように聞こえた。
グサリ!
グサグサグサグサグサグサグサグサ!!
音がはっきり聞こえてきた。
側面から放たれた杭が次々とマグラの身体に突き刺さっていく。
「行動が早いわね」
ミアは感心して、ヨーヨーを投げ込む。
魔法弾、杭、ヨーヨーによる三方向からの同時攻撃にも怪獣マグラにはあまり効果が見られない。
「ご苦労なことじゃが、あれでは厳しいではないんか?」
小山の頂上から煌黄は文字通り高みの見物をしていた。
「そうね、頑張ってくれてはいるんだけど」
あるみは怪獣の様子をつぶさに観察しながら答える。
「のう、あるみ。お主が出ればすぐにカタがつくのではないか?」
「それじゃカナミちゃんとミアちゃんの成長にならないからね」
「そうか。やれやれ社長というものは大変じゃな」
「仙人は気楽じゃぞ」
「フフ、あなたほど気楽な仙人は初めてだわ」
あるみは余裕をもって返す。
「神殺砲!!」
カナミはステッキを砲台へと変化させる。
「ボーナスキャノン!」
そして、即座に撃ち込む。
あれだけ大きな的なんだから狙いを定めるなんてことをしない。
バァァァァン!!
今度は腹に命中する。
それでも、怪獣がダメージを負った様子は無い。
ガォォォォォォォォォン!!
むしろ、怒りを煽っただけのようにしか見えない。
ドゴシャアアアアアアアッ!!
マグラは腕を薙いで、土石流を雪崩れ込ませる。
カナミは神殺砲を撃った反動で逃げ遅れた。
『カナミ! 生きてるの!?』
土石流に飲まれた暗闇の中でミアの心配する声が聞こえる。
「うん、なんとかね……生きてるよ……」
カナミは砂をかきわけて、モグラのように出てくる。
『まったくもう~、ドジなんだから』
「心配かけてごめんね」
『あ、謝ってるヒマがあったら、もう一発砲弾撃ち込みなさい』
「了解!」
カナミはステッキを砲弾へ変化させる。
「神殺砲! ボーナスキャノン!!」
バァァァァン!!
三度砲弾がマグラに命中する。
「カナミの攻撃をあれだけ食らってもなんともないなんて……」
ミアは頭を悩ませる。
バカでお人好しで借金持ちだけど、砲弾の威力だけは一目置いていた。それがまったくきいてないのだから、頭が痛い話だ。
「さすがは怪獣といったところね」
正攻法ではとても倒せそうにない。
「急所とか弱点とかそういうのがあればいいんだけど……」
さっきから怪獣の身体のいろんなところに攻撃しているというのに、それらしい箇所が見当たらない。
『まだ攻撃してないところがあるわね』
クルハが指摘する。
正面にカナミ、右側にミア、左側にクルハがそれぞれ攻撃している。そうなると残るのは後方の背中だ。ミアもそれは十分に承知している。
「私が回り込むわ……」
ミアは決心する。マグラの後ろはマグラが歩いたせいで平原になっていて隠れられる場所が無い。
『ありがとうね、ミアちゃん』
「礼を言われるようなことじゃないわ」
ミアは飛び出す。
目指すはマグラの後ろである。
ボオオオオオオッ!!
マグラの口から出す火球とカナミの魔法弾がぶつかる。
――カナミ!
リュミィの声が聞こえる。
自分の力を使うように訴えかける呼びかけだ。
「リュミィ、力を貸してくれるの?」
リュミィはコクンと頷く。
それだったら使わない手は無い。
「お願い!」
カナミはそう言うと、リュミィは光になってカナミの身体に入り込んでいく。そして、背中から光り輝く妖精の羽根が生える。
「フェアリーフェザー!」
羽はまるで生まれた時からそうであるように、羽を羽ばたかせることができ、身体が浮かび上がる。
ドゴシャアアアアアアアッ!!
押し寄せてくる土石流もこれで難なくかわせる。
姿を怪獣の前にさらしてしまう危険を冒してしまうけど。
「神殺砲! ボーナスキャノン!!」
即座に砲弾を撃ち放つ。
バァァァァァァン!!
それでもマグラの決定打にはならない。
しかし、砲弾を撃ち込んだ分だけの魔力は妖精の羽が大気中から吸い上げて全開になる。
「もう一発!」
めげずにもう一発撃ち込もうとする。
ガォォォォォォォォォォォォン!!
怪獣は咆哮する。
まるで台風に身一つでさらされているかのような感覚だった。
「くうううう!」
カナミは羽の方に力を込めて、その場で踏ん張る。
ボオオオオオオオオオオッ!!
そこから口から炎を放射する。
「わああああ!?」
カナミは飛び上がってこれを回避する。
飛び上がりさえすれば、もう安全だ。何しろこっちには羽があって、向こうには羽がない。
ドォン!
そう思って、一安心しようとした時だった。
怪獣には羽が無くても、足があってジャンプすることができるのだ。しかもカナミが飛び上がった高みにすぐ追いつくほどの勢いで。
「ちょ、それは反則よ!」
カナミは思わず不平を漏らすが、マグラは聞く耳を持たない
ガシィ!
カナミはマグラの腕に捕まる。
逃れようとするけど、マグラの腕の力が強くて動けない。
ドゴォォォォォォン!!
そして、マグラの巨体は大地へ着地する。
「Gヨーヨー!!」
その着地を狙って、ミアは巨大化したヨーヨーを背中へ投げ込む。
バァン!!
巨大ヨーヨーは背中に命中して、マグラはよろめく。
「せっかくの巨大ヨーヨーも、怪獣の前じゃピンポン玉ね。でも効果はあったみたい!」
ヨーヨーの衝撃で腕の拘束が緩んだ。そのおかげで、カナミは脱出できた。
「ありがとう、ミアちゃん!」
「バカ! 礼言ってるヒマがあったら弾の一発でも撃ちなさい」
ミアは威勢よく言い返すと、カナミの元に迫る火球の存在に気づく。
「あ!」
カナミは旋回して、これを回避する。
ガォォォォォォォォォォォォン!!
マグラは咆哮する。
「――!」
そして、カナミと視線が合う。
――お前は敵だ。
今の咆哮はそういう宣言に聞こえてならなかった。
初めてマグラが自分を敵と認識されたような気がする。今にしてみれば、これまでは道端の石や虫か何か程度にしか思われていなかったのかもしれない。
その方がよかった、と、カナミは思う。
百メートルから放たれるあまりにも巨大すぎる威圧感に押しつぶされそうだ。
ボオオオオオオオオオオッ!!
早速、口からの火炎が放たれる。
カナミは妖精の羽を使って、押し寄せてくる炎から逃げる。
ブウン!!
突然、風切り音がする。
音が聞こえたと同時に、マグラがカナミが炎から逃げた先に回り込んでいた。
「なんてスピード!?」
さっきまでのどっしりとした鈍重さからは考えられないほどの軽快さと速度だった。
ブォン!!
そこから腕が突き出される。
拳を握りしめた強烈な一撃。直撃するわけにはいかない。
羽に力を込めて、拳をかわす。
ブォォォォォォォォォォォン!!
突き出した拳から竜巻が巻き起こる。
「キャア!?」
竜巻の突風に煽られて、一瞬自由を奪われる。
マグラはその隙を見逃さなかった。
「――!」
拳が突き出される。
直撃して一巻の終わりだ、とカナミは覚悟した。
しかし、拳は中途半端に伸びたところで止まる。
グサリ!
銀色の杭が拳に突き刺さって動きが止まったのだ。
「クルハさん!」
『今よ、カナミちゃん!』
魔法糸でクルハの声が届く。
「はい、神殺砲! ボーナスキャノン!!」
カナミは即座に砲弾を撃ち込む。
バァァァァァァン!!
しかし、それでも少し仰け反っただけで大したダメージにはなってないように見える。
「だったらボーナスキャノン・アディション!!」
全魔力を注ぎ込んだ砲弾を撃ち放つ。
バァァァァァァァァァァァァン!!
砲弾はマグラに命中し、大爆発が巻き起こる。
それでも倒しきれた手応えが無い。おそらくまだ平然と立っているだろう。
「もう一発!!」
カナミはすかさず妖精の羽の力で大気中から魔力を吸い上げ、全力の砲弾をもう一発放つ。
バァァァァァァァァァァァァン!!
二度目の大爆発が巻き起こる。
「くッ……!」
連続で二発放つのは負担が大きい。ただそれでも身体は魔力に満ち溢れてくる。
倒せるまで何発だって撃ってやる。そう心中で意気込んだ時だった。
「――消えた!?」
爆煙が晴れると、そこに百メートルある巨体の姿は無かった。
「どこに!?」
『カナミちゃん、下!』
クルハが警告する。
それと同時にカナミの下に地面がせり上がって、その物体はカナミへ襲い掛かる。
「あああああ、ちょっと待ってえええええッ!?」
カナミは悲鳴を上げて、その場から逃げようとする。
しかし、遅かった。
マグラはカナミの目の前にやってきて、その巨腕で殴り飛ばした。
「ガッ!?」
殴り飛ばされて、小川へ叩きつけられる。
バシャァァァァァァン!!
水飛沫が上がる。
「く……!」
全身の骨にヒビが入ったかのように激痛が走る。
「危なかったわ……」
クルハは汗をかきつつも一安心する。
今クルハの未来視の魔法で、カナミの未来を確定させた。
あのマグラの攻撃を避ける未来に確定させることは間に合わなかったものの、吹き飛ばされた先を地面ではなく川に確定させることは出来た。
それでいくらかダメージが和らいでくれたらいいのだけど。
「思った以上に柔軟で獰猛な怪獣みたいね」
こんな敵と戦わせようとするアルミを少しだけ恨めしく思った。
カナミには痛みに歯を食いしばってその場に耐える時間は無い。
(――来る!)
カナミの本能が警告を発する。
それはこれまで戦って培ってきた経験に基づくものだった。
この怪獣はダメージを負った敵に時間を与えるほど甘くはない。
飛び上がったマグラがカナミの頭上へと降り立つ。それはまるで人間がアリを踏み潰すような、そんな滑稽で絶望的な気分だった。
まさか自分がアリの側になるなんて。
「ああああああああッ!!」
冗談じゃないとカナミは心から叫んだ。
羽で水面から飛び上がって、低空飛行しつつマグラの追撃をかわす。
バシャァァァァァァン!!
川の水が全部ひっくり返ったように水が巻き上がり、虹ができる。
それを綺麗だなんて思っている時間はカナミには無かった。
「来るな! 来るなああああああッ!!」
カナミは叫ぶものの、マグラは意に介さずカナミを追いかけてくる。
あの巨体でとんでもない速度で追いかけてくる。カナミも羽を使って相当な速度を出しているはずなのに追いついてくる。
坂や林、川とカナミはあえて追いかけづらそうな場所を飛ぶものの、マグラはものともせず追いかけてくる。
川や坂は飛び上がり、林は木々をなぎ倒していきながら、である。その様はまさしく大災害だ。
おまけに疲れ知らずだ。もうかなり飛んで走り回っているはずなのに、一向にスピードが衰える気配が無い。
「本当に、化け物……!」
思わず吐き捨てたくなる。
四千万という大金がかかっていなければ匙を投げて全力で逃げたくなる。というより、今は逃げているのだけど。
『カナミ、聞こえておるか!?』
煌黄が聞こえてくる。
「コウちゃん、何!? 取り込み中なんだけど!!」
『そんなこと百も承知じゃ。それより、そのまままっすぐ海へ出たらまずいぞ』
「え、海!?」
『怪獣を海へ逃がして潜水でもされたら追跡は困難じゃし、人の世に被害が及ぶ恐れもある』
「じゃ、じゃあ、どうしたらいいの!?」
『――くいとめるんじゃ』
「………………」
とんでもない無茶振りをされたと思って言葉を失う。
「ああもう!」
しかし、煌黄の忠告を無視するわけにはいかない。海の中へ入られたら、戦うのは難しい。そうなったらこの案件は失敗したといっていい。ボーナスはもらえない。
何より、海へ出てもし人がいる街にでも辿り着いてしまったらと思うと……
「絶対に阻止しないと!」
カナミは振り向いて、魔法弾を放つ。
――!?
その魔法弾はマグラの目に当たって怯まされた。文字通り面を食らったわけだ。
その間にカナミは魔力を充填し、砲弾を撃ち込む体制に入る。
「ボーナスキャノン!」
カナミはマグラの頭へ向けて発射する。
ガォォォォォォォォォォォォン!!
マグラは執念を見せて、火球を放つ。
バァァァァァァン!!
神殺砲の砲弾とマグラの火球が衝突し、大爆発が巻き起こる。
グサリ!
そこへ銀色の杭がマグラの足へ突き刺さる。
ギャァァァァァァッ!!
マグラは悲鳴を上げる。
『今よ、ミアちゃん!』
『よし、Gヨーヨー!!』
ミアはマグラの背中に向けて巨大ヨーヨーを放つ。
ゴツン!!
マグラはよろめく。
「私の最大魔法だってのに! なんて怪獣よ!!」
ミアが悪態をついてると、マグラのお尻についているしっぽが伸びてミアを掴む。
「あう!?」
「リューズ!」
クルハが銀色の杭をマグラのしっぽへ突き刺す。
しっぽはそれで静止する。しかし、ミアは離さない。
「これは失敗してしまったわね」
クルハは苦い顔をする。
「でも、動きは止まりました。神殺砲! ボーナスキャノン・アディション!!」
カナミは最大出力の砲弾を撃ち放つ。
バァァァァァァァァァァァァン!!
マグラは足を固定されているため、かわすことも衝撃をころすこともできず、思いっきり直撃する。
マグラの巨体は宙を浮き、吹き飛んでいく。
バシャァァァァァァン!!
川に倒れ込み、巨大な水飛沫が上がる。
これは相当なダメージを与えたはずだ。
できればもう立たないでほしいと思うけど、多分まだ倒しきれていないだろうとも思う。
「ミアちゃん! ミアちゃん、無事!?」
それよりもしっぽに捕まっていたミアの方が心配だ。
今の衝撃で解放されているはずだと思うから返事をしてほしい。
『……うるさいわね、バカ』
ミアの声が聞こえる。
息もだえだえながらもちゃんと悪態をついてくるあたりがミアらしい。
『あたしが捕まってるっていうのに、ちょっとは手加減しなさいよ!』
「ご、ごめん、つい……」
『ま、まあ、おかげで助かったけど……』
カナミはそう言ってもらえて一安心する。
『カナミ、今の一撃でかなりのダメージを負ったようじゃぞ』
煌黄が言う。
「コウちゃん、それ本当!?」
『うむ、じゃがちとばかしまずい状況やぞ』
「え、まずい状況ってなに?」
カナミはドキリとする。
『今のカナミの強烈な一撃をくらってダメージを受けて、そのダメージから立ち直るために魔力を欲するはずじゃ』
「魔力?」
『あやつの身体を構成しており、主食でもあるんじゃ。ダメージの回復に最適なんじゃよ』
「ちょ、ちょっと待って、主食ってことは食べるってことでしょ!?」
『うむ。それも手近なところからのう』
煌黄の返答に、カナミは青ざめる。
今マグラの手近にある魔力の源といったら……。
「ミアちゃん、はやくそこから逃げて!!」
『ギャアアアアッ!?』
ミアの悲鳴が聞こえて、カナミは飛ぶ。
ガォォォォォォォォォォォォン!!
マグラは咆哮し、立ち上がる。
その腕にはしっかりミアを掴んでいた。
「ミアちゃん! 逃げて!!」
『に、逃げられない……!』
「そんな! だったら、私が助ける!!」
カナミはすかさず突撃する。
しかし、マグラの行動はそれよりも早かった。
掴んだミアをすぐに口の中へ放り込んだ。
「ミアちゃぁぁぁぁぁぁん!!」
カナミは必死に叫ぶけど、ミアは答えてくれない。
『ごめんなさい、私の失態だわ』
クルハは謝る。
「クルハさん、そんなことよりミアちゃんを助け出さないと!!」
『ええ、そうね!』
クルハは同意する。
グサグサグサグサ!!
そして、銀色の杭を次々と突き刺していく。
「コウちゃん、ミアちゃんを助け出せないの!?」
『あの巨体を維持できないほどのダメージを食らわせれば、あやつの身体は崩壊して消えてなくなるはずじゃ』
「ミアちゃんを助けるにはそれしかないってことね!」
カナミは即決して、ステッキを砲台を変化させる。
「神殺砲! ボーナスキャノン!!」
カナミは砲弾を撃ち込む。
バァァァァァァン!!
しかし、マグラは火球を放って反撃してくる。
まだまだ倒される気配は無い。
0
あなたにおすすめの小説
クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?
青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。
最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。
普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた?
しかも弱いからと森に捨てられた。
いやちょっとまてよ?
皆さん勘違いしてません?
これはあいの不思議な日常を書いた物語である。
本編完結しました!
相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです!
1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…
スーパー忍者・タカシの大冒険
Selfish
ファンタジー
時は現代。ある日、タカシはいつものように学校から帰る途中、目に見えない奇妙な光に包まれた。そして、彼の手の中に一通の封筒が現れる。それは、赤い文字で「スーパー忍者・タカシ様へ」と書かれたものだった。タカシはその手紙を開けると、そこに書かれた内容はこうだった。
冤罪で辺境に幽閉された第4王子
satomi
ファンタジー
主人公・アンドリュート=ラルラは冤罪で辺境に幽閉されることになったわけだが…。
「辺境に幽閉とは、辺境で生きている人間を何だと思っているんだ!辺境は不要な人間を送る場所じゃない!」と、辺境伯は怒っているし当然のことだろう。元から辺境で暮している方々は決して不要な方ではないし、‘辺境に幽閉’というのはなんとも辺境に暮らしている方々にしてみれば、喧嘩売ってんの?となる。
辺境伯の娘さんと婚約という話だから辺境伯の主人公へのあたりも結構なものだけど、娘さんは美人だから万事OK。
自力で帰還した錬金術師の爛れた日常
ちょす氏
ファンタジー
「この先は分からないな」
帰れると言っても、時間まで同じかどうかわからない。
さて。
「とりあえず──妹と家族は救わないと」
あと金持ちになって、ニート三昧だな。
こっちは地球と環境が違いすぎるし。
やりたい事が多いな。
「さ、お別れの時間だ」
これは、異世界で全てを手に入れた男の爛れた日常の物語である。
※物語に出てくる組織、人物など全てフィクションです。
※主人公の癖が若干終わっているのは師匠のせいです。
ゆっくり投稿です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる