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第102話 相似! 動き出した少女は面影を重ねる (Cパート)
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そんなわけで、かなみ達は近くの公園の広場に場所を移した。
そうして、かなみ、萌実、若芽の三人でそれぞれ離れた場所に位置取る。
「どうして、こんなことに?」
かなみへ月へ問いかけるように空を仰ぐ。あとついでに母親にも問いかけた。
どうせこの声も聞こえているだろう。そして、どうせ聞こえていて聞こえていないフリをしていることだろう。
あの母はそういう人なのだ。
一人で勝手に仕切って、勝手に取り決めてしまう。
それで有無を言わさない説得力が何故かあるのだから、なおのこと質が悪い。
「かなみに倒した方がぁ、上(うえ)ってことでいいわねぇ」
かなみは即座に「いいわけない!」と反論したけど、当然のことながら聞く耳を持ってくれなかった。
「かなみに任せるわぁ」
その一点張りだった。
「無茶振りにも程があるわよ……」
「それだけ信頼してるってことだよ」
マニィがフォローを入れる。
「信頼って……社長か母さんに任せた方が絶対うまくいくのに……」
「同じことを社長や涼美さんは思ってるってことだよ」
「え……そ、そうなの?」
かなみは涼美に顔を見る。
笑顔で手を振っている。
「確かに私が失敗することを考えていない顔してるわ」
「全幅の信頼って感じだね」
でも、あまり嬉しくないのは何故だろうか。
「ちなみに社長はなんて?」
かなみはマニィに確認を取る。
「全部任せる、ってさ」
それは投げやりなのでは? と思う。
「それじゃ~合図出すわよぉ!」
涼美はやけに間延びした声だけど、妙に通る声で合図を出す。
チリリリン!
そして、鈴の音が響く。
それが合図でかなみはコインを弾く。
「マジカルワーク!」
コインを弾いて、光に包まれて、黄色の魔法少女が現れる。
「愛と正義と借金の天使、魔法少女カナミ参上!」
「暴虐と命運の銃士、魔法少女モモミ降誕!」
それに乗っかるようにモモミが名乗りを上げる。
「そういうの考えていませんでした……」
若芽は外套を翻して、自身の衣装を披露する。
「とりあえず、魔法少女モイ誕生? ですかね」
「そこ、疑問形なのね……」
カナミは少し意外に思う。
「細かいことは気にしないでください」
バァン!
言うやいなや発砲する。
文字通り挨拶代わりのつもりだった。
「わわあ!?」
カナミはササッとよくてしまう。
「反射神経は大したものですね」
社長室でライフルの弾を避けたことも含めて、モイはカナミを評価する。
「あんたに撃たれるわけにはいかないからね!」
「じゃあ、私に撃たれなさいよ」
モモミが言うやいなや発砲する。
バァン!
「じゃあ、じゃないでしょ!」
これもカナミは避ける。
「前よりすばしっこくなったわね!」
「色々動けるようになったのよ!」
「的だったら大人しくしていなさいよ」
「誰が的よ!」
逆にカナミが撃ち返してやる。
バァン!
「的が撃ち返すな!」
「だから、的じゃないって!」
「――いいですよ、撃ち返しても」
モイは構わずライフルの引き金を引く。
「そのくらいでないと張り合いがありませんから」
「上等じゃない!」
モモミは嬉々として、カナミへ銃弾を撃ち込む。
「なんでもいいけど、仲良く私を的にするのはやめてよ」
「仲良くないわ!」
「仲良くありません!」
「……説得力無い!!」
やっぱり理不尽だと思うカナミだった。
「やっておるな」
見物していた涼美のもとへ煌黄がやってくる。
「人払いの結界ありがとうねぇ、コウちゃん」
「まったく、あるみといい、お主ら仙人を便利にこき使いすぎじゃ」
煌黄はため息をつきながらぼやく。
「でもぉ、頼めるのはコウちゃんだけだって、かなみが言うからぁ」
「まあやむなしの判断じゃな」
煌黄は公園一帯に人払いの結界を張り巡らした。
これは仙術の一種で、簡単に言うと人が「その場所に行きたくない」と思うようになり、人が寄り付かなくなる結界だった。
おかげで今公園には、カナミ、モモミ、モイ、それに少し離れたところに涼美、煌黄しかいない。
「しかし、あやつら……」
煌黄はモモミとモイを見やる。
「わかっちゃうぅ?」
「仙人じゃからな。そのくらいはわかる」
「さすがねぇ」
「あるみだけかと思ったが、お主も知っていたのか」
「そりゃぁ、まぁねぇ」
「難儀なものじゃ。かなみには教えぬつもりか?」
「私達から話してもぉ、しかたないがないって~あるみちゃんがぁ」
「なるほどな……」
煌黄は納得しつつ、公園で戦いを繰り広げている三人に目を見やる。
バァン! バァン! バァン! バァン! バァン! バァン!
けたたましい銃声が深夜の公園に響き続ける。
今のところ、カナミはモモミの銃弾もモイの銃弾も当たっていない。
反射神経を頼りに避ける。あるいは魔法弾で撃ち落とす。
「ほう」
これに煌黄は感心して、感嘆の声を上げる。
何十、何百発もの弾丸が飛び交う中で、カナミは避けている。
しかも、モモミとモイの二人による二方向からの同時攻撃。
「え!? わあ!? この!! あぶなッ!? いぃぃぃッ!? わああああッ!!」
悲鳴とかけ声がごちゃまぜになった声が忙しなく響く。
「あぶない! 今のかすったわよね!?」
モモミかモイか。どちらが放ったのかわからないけど、とにかく頬をかすめた。
「キャッ!?」
今度は髪をかすめた。
次は頭か身体のどこかか。とにかくハチの巣になる未来は近い。そんな予感がしてならない。
(二人とも本当に遠慮が無い! このままだとやられる! ――反撃しなくちゃ!!)
カナミはステッキをふりかざす。
ズザザァァァァァン!!
公園の砂が巻き上がる。
「砂煙ですか!?」
モイは驚いて、引き金を引く手を止める。
「かまうことないわ!」
対してモモミは構わず撃ち続ける。
「やっぱりモモミは撃つのをやめないわね!」
砂煙で視界を悪くした程度ではモモミは止まらない。モイが止めてくれただけでも好都合だった。
「ジャンバリック・ファミリア!」
ステッキの鈴を飛ばして、上からモモミとモイの姿を補足する。
バァン! バァン! バァン! バァン! バァン! バァン!
鈴からの魔法弾を撃ち放つ。
「これが魔法少女カナミの魔法!?」
モイは初めて見るカナミの魔法に驚愕しつつ、かわしていく。
「しゃらくさい!」
モモミは鈴の魔法弾をかいくぐりながら砂煙の中を突っ切る。
「モモミ!?」
「カナミ!!」
モモミとカナミが向かい合う。
カキィィィン!!
ステッキと銃身がぶつかる。
「見つけたわよ、大人しく撃たれなさい!」
「嫌だって言ってるでしょ!!」
カキィィィン!!
言葉をぶつけ、互いの武器をぶつけ合う。
「っていうか、打つつもりでしょあんた!?」
「細かいこと気にすんな!!」
「細かくない!!」
カキィィィン!!
声が響き合い、武器がぶつかる度に火花が上がる。
こいつには負けられない。
そんな意地のぶつかり合いだ。
バァン!!
そこへ一発の銃弾が撃ち込まれる。
「――!?」
カナミはのけぞってこれをかわす。
その目は反射的に弾の出どころを追っていた。――撃ったのはモイだ。
モモミと戦っているうちに、かすめとろうした一発だった。
「チャンス!」
モモミはこれをチャンスと捉え、銃身をカナミの眉間に向ける。
この状態で銃弾を撃たれたら、普通の人間だったら即死、魔法少女でも昏倒はまぬがれない。
しかも、モイの銃弾をかわすためにのけぞっている。ここからじゃかわせない。
バァン!!
弾丸はカナミの眉間に当たる……――事はなかった。
直前で鈴の魔法弾が弾丸を弾いてくれたからだ。
「や! ほ! とお!」
のけぞったカナミはバク転して、モモミから距離を取る。
「チィ、うっとおしいわね!!」
モモミは舌打ちする。
もう少しのところで仕留められるはずだったのに。
「あれをかわしますか」
モイはカナミの器用さに驚嘆する。
『カナミほど強く、速く無かった』
ヨロズの言葉が脳裏をよぎる。
認めたくなかった。ただの世迷い言だと聞き流したかった。
しかし、こうしてカナミを目にする度に、ヨロズの言葉が正しかったことを思い知らされる。
「……不愉快です」
モイは率直に自分の中から出てきた想いを口にした。
だったら、その不愉快な気持ちをどうしたら解消できるのか。
カナミを撃ち倒す。
そうすることで、あの怪物が言っていたことが正しくなかったことを証明する。
バァン!
決意を新たにして、ライフルの引き金を引く。
「――!」
しかし、カナミはこれを察知して避ける。
「目がもう一つあるのではないですか?」
モイはそんな疑問を口にする。
さっきから自分の放った弾丸のみならず、モモミが放った弾丸もちゃんと避けている。
しかも、認めたくないけど、モモミの方が両手に二丁の拳銃を持っている分、手数が多い。その分、威力と速度はこちらに分があるとモイは思っているけど。
それらの銃弾を全て避けるか、あるいは魔法弾で撃ち落としてさばいている。
二つの目だけでそんな芸当ができるとは思えない。
「何か秘密でもあるのでしょうか?」
モイはそこに攻略のヒントがある気がした。
とはいえ、カナミからすると秘密と言われるほど大層なものでもなかった。
涼美が特訓をつけてくれたおかげで、耳が良くなったおかげで銃声を聞き分けることができた。
モモミとモイ。二方向からやってくる銃声がどこからどこへとんでくるか、どれが自分に当たるかを聞き分けることでなんとか避けたり撃ち落としたりして、なんとかさばききることができている。
しかし、それも時間の問題だとカナミは思っている。
このまま二人とも遠慮無く撃ち込まれ続けたら、いつか直撃する。
なんとかして二人を止めなければ……!
「セブンスコール!!」
カナミは空へと魔法弾を撃つ。
パァァァン!!
空へ上がった魔法弾は花火のように弾けて、今度は雨のように地上へ降り注ぐ。
「「――!?」」
モモミとモイ、二人揃って襲いかかった。
特にカナミの魔法を初めて見るモイは面をくらって、反応が遅れた。
「いっけええええッ!!」
これをカナミは好機とみて、鈴とともに魔法弾を一斉発射する。
バババババァァァァァァン!!
凄まじい魔法弾に砂煙が舞い上がり、霧のように立ち込める。
「派手にやったわねぇ」
「しかし、このくらいであやつらが怯むとは思えないが」
涼美と煌黄は冷静に状況を見る。
涼美は耳、煌黄は仙術による眼によって、視界が悪くなっても状況を把握することができる。
バァン! バァン! バァン! バァン! バァン! バァン!
モモミは構わず撃ち込み続けているせいで、銃声が絶え間なく響いている。
「いい加減、倒れなさいよ!!」
「倒れないわよ!!」
カナミも応戦する。
激しい撃ち合いが続くものの、カナミは違和感を覚える。
(モモミしか撃ち込んでこない。モイは――)
モイへ意識を向けようにも、モモミが撃ち込み続けているせいで動けない。
バァン! バァン! バァン! バァン! バァン! バァン!
魔法弾と銃撃の応酬が続いていく。
時間にして一分。
全力で走り続けるように、撃ち込み続けた限界がそろそろやってくる時間だった。
「ハアハア!」
先に息が上がってきたのはモモミの方だった。それに比べてカナミは幾分か余裕がある。
「く……!」
モモミが息が続かず、距離を取る。
「今よ!」
カナミはこれをチャンスと捉え、ステッキを構える。
「――!」
しかし、カナミの直感が危険を告げる。
「モイ!」
モイがこちらを狙っていた。
その手に持ったライフルには神殺砲並の魔力が充填されていた。
カナミとモモミが激しい銃撃戦を繰り広げているうちに、モイは一人息を潜めて魔力を蓄えていたのだ。
(あれをまともに食らったらまずい!?)
カナミはステッキを砲台へと変化させる。
「あんなこともできるなんて、でも! チャージブラスト!!」
モイはカナミの神殺砲に驚愕しつつも、構わず充填した魔力をライフルから撃ち放つ。
「ボーナスキャノン!!」
カナミはすかさず砲弾を撃ち込む。
バァァァァァァァァン!!
大爆発が巻き起こる。
「まさか、そんな……私が……まけ、た……」
軍配はカナミに上がった。
敗れたモイは爆発に巻き込まれて、吹っ飛ばされる。
「……あぁ、やりすぎちゃった」
やむを得なかったとはいえ、神殺砲が直撃させてしまって大丈夫だろうかと心配になる。
「人の心配している場合!?」
「モモミ!」
カナミとモイの撃ち合いの間に、呼吸を整えていたモモミが撃ち放つ。
逃げ場のない視界を埋め尽くす何百発もの弾丸が一斉に襲いかかってくる。
神殺砲を撃った直後で体勢が崩れた中で、防ぎようがなかった。
「ツゥゥゥッ!!」
顔だけは腕で覆って防ぐ。
それでも身体中に銃弾が撃ち込まれていく。その痛みに耐える。
モモミがこのあと、必ず仕掛けてくる。それを見逃しはしまいと視線だけはモモミから外さない。
「あ……!」
しかし、モモミは仕掛けてこなかった。
いきなり頭から倒れて微動だにしなくなったからだ。
「ええぇぇぇッ!? モモミ、大丈夫!?」
勝負を忘れて、カナミはモモミへ駆け寄る。
一方、神殺砲に撃ち負けたモイは……
「大丈夫ぅ?」
涼美が呼びかける。
「……私は負けたんですね」
「そうねぇ、見事な負けっぷりだったわよぉ」
涼美ははっきりと言う。
「………………」
そう言われて、悔しさで歯噛みする。
「次は負けません……」
モイは立ち上がりその場から立ち去っていく。
「そういうことはぁ、カナミに言ったほうがいいのにねぇ」
涼美のぼやき、それはモイの耳にも入っていた。
でも、それを実行する気にはなれなかった。
どうして? と、聞かれてもとにかく今は魔法少女カナミと顔を合わせたくないとしか言いようがなかった。
「負けず嫌いなのねぇ」
涼美は微笑ましくその様子を見守る。
「って、呑気にしてる場合ではないぞ!」
煌黄が言う。
「コウちゃん、モモミは大丈夫なの?」
カナミは心配そうに煌黄に訊く。
「うーん」
煌黄はモモミを観察して、医者の触診のようにモモミの額に手を当てる。
「大丈夫じゃな」
「本当?」
「うむ、寝ているだけじゃからな」
「え、寝ているだけ?」
煌黄にそう言われて、モモミの様子をじっくり見る。
「スー」
確かに呑気そうに寝息を立てている。
「でも、急になんで倒れたりしたの?」
「魔力切れじゃな。身体の中にある魔力を出し尽くしてしまって睡眠を要求しておるんじゃ。お主にも経験があるじゃろ?」
「それはあるけど……そんなに急に倒れたりすることあるの?」
「まあ、普通じゃったら、眠る前にバテて息切れするくらいじゃろうな」
「そうよね。それに前にモモミと戦った時はもっと魔法を使ってたと思うけど」
その時は倒れたりなんてしなかった。
「あ~それは儂にもよおわからん。あるみが知っておるじゃろ」
「社長ね……」
カナミと煌黄は顔を見合わせる。
「社長が喋ってくれると思う?」
「……お主の努力次第じゃな」
煌黄はしかめ面で答える。
「……そう、よね」
カナミはため息をつく。
その後、萌実は涼美が運び出してくれた。
「ゴギアアガゴゴゴ!?」
本当はカナミが運ぼうとしたのだけど、モイを運んで筋肉が限界を迎えていたことを思い出す。
萌実を持ち上げようとして、カナミは奇声を上げて煌黄は腹を抱えて笑った。
「オッケィ~任せてぇ~」
涼美は軽々と持ち上げた。
涼美は身体はかなみより幾分か身体が大きいくらいで大人の女性にしてみたら小柄の部類に入る。
(今度から力仕事は母さんに頼もう)
かなみは筋肉痛で悲鳴を上げる身体に呼びかけるように言う。
涼美はそうやって、萌実を持ち上げたまま公園からオフィスへ、オフィスから階段を上がってあっという間に三階の社長室まで運んでいってしまった。
ソファーに横たわる萌実は安らかで、本当にただ昼寝をしているだけに見える。
そんな萌実を見て、かなみもソファーで寝たい気分になってきた。
「ふああああああッ!」
一段落ついたらあくびが出てきた。
「かなみもぉ寝るぅ?」
「そうしたいけど、今夜はそういうわけにもいかないから」
かなみは社長室からインスタントコーヒーを取り出す。
「社長から話を聞くまで今夜は眠れない!」
「今夜というかぁ、もうすぐ今朝になるけどねぇ」
「えぇ!?」
かなみは驚きのあまり硬直する。
「ほぉらぁ」
涼美は時計を見せる。
――確かにもう朝日が昇りそうな時間だった。
「は、はは……どうりで眠いわけね……あははは……」
もう笑うしかできなくなる。
「コーヒーならぁ私が淹れておくわよぉ」
「う、うん、ありがとう……あははは……」
かなみはその場にへたりこむ。
そうして待つこと小一時間。
眠気を吹き飛ばしてくれたコーヒーのカフェインも切れた頃、社長室の扉は静かに開く。
「ただいま。なんて呑気に言ってる場合じゃないわよね」
あるみは真剣な面持ちで言って入ってくる。
「おかえりなさい。待ってましたよ社長」
社長は伏せ目でにらみつけるように言う。伏せ目なのは眠気で目蓋が重いせいだ。
「そうね。随分待ったみたいね」
「どういうことなのか聞くまで今日は退けませんから」
「仕方ない娘ね……でも、まあ仕方ないか。私がかなみちゃんの立場でもそうしたでしょうから」
「わかってるなら」
「――教えてあげるわよ」
「……え?」
予想外の返答に、かなみは面を食らう。
「それじゃぁ、私達はぁ」
「うむ」
涼美と煌黄は立ち上がって社長室を出る。
そうして社長室には、あるみとかなみ、そしてソファーで寝ている萌実だけになった。
「さて、何から話そうかしらね……」
「本当に教えてくれるんですか?」
「かなみちゃんは何を知りたいの? 萌実のこと? 若芽のこと?」
「両方です!」
かなみは食いつく。
「そうね、そりゃそうね……でも、教える前に確認しておきたいことがあるわ?」
「確認?」
「かなみちゃんは萌実のことをどう思ってるの?」
「……え」
思いも寄らない問いかけに、かなみは言葉に詰まる。
「どうって?」
「敵だと思う? 仲間だと思う?」
「そ、それは……」
かなみは思わず、ソファーに寝ている萌実に視線を移す。
さっきまで自分に襲いかかってきた少女。
本気で銃弾を撃ち込んできて向かってきた少女。
それでも、その寝顔を見ていると……
「……敵だとは思いません」
「そう」
あるみは満足げに微笑む。
「でも、仲間っていわれるとおかしくて、友達っていうのもなんだか違う気がして……」
「結構よ。敵でなければ十分すぎるわ」
「社長は私と萌実を戦わせたいんですか?」
「ケンカするほど仲が良いと言うわ」
「冗談じゃないですよ!」
かなみは条件反射で強く言い返す。
「萌実は私を倒すつもりでやってますよ。ケンカってレベルじゃありません」
「それだけ、かなみちゃんに勝ちたいってことよ」
「い、いい迷惑です!」
「まあ、それが彼女の目標であり、生き甲斐なんだから仕方ないわ」
「い、生き甲斐……?」
何故かその言葉に重みを感じた。
『勝ち続けることが私の存在意義だから! あんたに私はまだ勝っていないから!!』
以前、萌実はそう言っていた。
思えば、萌実はいつも勝つことにこだわっていた。本人が言うようにそれが存在意義だと。
今夜だってそうだ。
ことさらに勝つことにこだわって、かなみに勝とうとした。
「勝つことが萌実の生き甲斐ってことですか?」
改めて考えると、何故そんなにもこだわっているのか。
「そうね……でも、勝ちたいって感情は誰にでもあるじゃないの?」
「確かにそうですけど……でも、萌実は特に強いですよ」
「特にかなみちゃんに対してね。絶対に負けないって気持ちが伝わってくるわ」
「だから、それが迷惑なんですってば」
「ライバルって感じよね」
「……社長、はぐらかさないでください」
いつもだったらこのまま煙に巻かれるところなのだけど、今日ばかりはそういかない。
「あぁ、そうだったわね……」
あるみは少し困り顔で萌実に視線を移してから、かなみに向き直す。
「かなみちゃん、もし萌実が怪人だったとしたらどう思うの?」
「……え、なんですか急に? 萌実は怪人なんですか?」
「怪人じゃないわ。でも、もし怪人だったらやっぱり敵だと思う?」
「萌実は怪人じゃないけど、もし怪人だったら……」
かなみは考えてみる。
もし、萌実が怪人だったら……
「やっぱり怪人だったのね、と納得します」
かなみは素直な気持ちで返答する。
ネガサイドの基地にいたし、怪人と親しそうにしていたし、正義の魔法少女とは到底思えない。
これらのことを踏まえると、萌実は悪の怪人でした。といわれた方が納得する。
「納得する、だけなのね」
「他に何があるんですか?」
「驚き、とか、敵意、とか……」
「そりゃ確かに驚きはしますけど……」
「気を遣って驚こうとしなくてもいいけどね、ハハハ」
「笑い事じゃないですよ。萌実が怪人じゃないんだとしたら、人間なんですか?」
「いいえ、人間じゃないわ」
「……え?」
その返答に、かなみは絶句する。
「それって、『もし』の話ですよね?」
「『もし』じゃないわ。本当の話よ」
「………………」
あるみの返答に、かなみは驚きで固まる。
数秒の重たい沈黙の後、かなみは問う。
「怪人でもない、人間でもない……だったら、萌実は何なんですか?」
「かなみちゃん、もう一度訊くわ」
「……え?」
「かなみちゃんは萌実のことをどう思ってるの?」
「そ、それは……」
かなみは同じように即答できなかった。
「人間でもなくて、怪人でもなくて、それでも今と同じように接することができる?」
「………………」
かなみは沈黙して考え込む。
萌実と出会ってからこれまでのこと。
時に戦って、時に言い合って、時に一緒に仕事をして、時に一緒に戦って……色々あったなと思う。
萌実がもし人間じゃないとしたら……今までとどう変わるのだろう。
「多分……変わら、ない、と、思い、ます……」
バタリ
かなみの意識は途絶えた。
「スースー」
そして、安らかな寝息を立てた。
日付が変わるまでの業務。若芽を部屋にまで運んだ重労働。さらに魔法少女として萌実と若芽と戦って、そして、夜明けまであるみを待ち続けた。
押し寄せる睡魔にとうとう限界を迎えたのだった。
「おやすみ、かなみちゃん」
あるみはかなみへそう言葉を送る。
「――起きてるんでしょ?」
「……む」
萌実は起き上がる。
「ずっと話聞いてたでしょ。寝顔の演技、上手かったわよ」
「うるさいわね……あんたが変な話始めるからいつ起きていいかわからなかったのよ」
「そんな気遣いいらなかったのに、そんなに気まずかった」
「うるさいって言ってるでしょ」
萌実は睨みつける。
「かなみちゃん、あんたが怪人でも人間でも変わらないって……」
「そんなこと、どうでもいいわよ」
「そう、どうでもいいってことよ」
「…………あ~」
萌実は面倒そうに頭をかく。
「いっそ敵だと思えばよかったのに……」
「素直じゃないわね」
「かなみ、起きなさい。遅刻するわよ」
「え!?」
かなみはその言葉で飛び起きる。
「まったくよく寝るわね」
「萌実……?」
「寝ぼけてるの? だったら、眉間に一発撃ちこんどく?」
「それ、起こす気ないでしょ?」
かなみはツッコミを入れる。
「それじゃ行くわよ」
「行くってどこに?」
「仕事に決まってるでしょ、今日はあんたと私の二人で行くってあるみが言うから」
「ああ、そうだったわね」
「まったく……そんなんで借金返していけるの?」
「返していけるわよ!」
「そ、だったら……」
萌実はかなみの手を引く。
「え……?」
「ほら、さっさと行くわよ」
すると、身体が浮き上がる。まるで背中に羽が生えたように。
それは――違和感だった。
その後、突然視界が白と黒に明滅する。
それが落ち着くと、今度はよくわからない空間を浮遊していた。
虹の七色、どころじゃない。何百という色が溶け合って混ざり合っている、そんな色の空気が流れている。そんな不思議な空間だった。
「ここどこ……?」
ボソリと呟く。
――どこでもない、どこかよ。
声がした。
女の子の声だ。
よく知っている子の声と似ているけど違う。かなみが知っている声より穏やかで優しいような気がする。
「誰?」
――そっか、あなたは私のことを知らなかったね。私はあなたのことをよく知ってるよ、かなみちゃん
声は自分の名前を呼ぶ。
その声から友達に語りかけるような親しさを感じる。
――でも、仕方ないね。こうして話せるのも奇跡みたいなものだし。
「奇跡? あなたは誰?」
――わたし……わたしは……
声がそう言うと、その声は形に成して、かなみの前に立つ。
「……え?」
それは、かなみがよく知っている子だった。
桃色の髪をした、自分と同じ年頃の少女だった。
「私は百地、――だよ……」
よく聞き取れなかった。
その部分だけ靄がかかったように、彼女がなんて言ったのかわからなかった。
「萌実、若芽をよろしくね、かなみちゃん」
彼女は笑顔でそう言った。
その顔は、かなみがよく知っているけど違う。優しさに満ち溢れた笑顔だった。
しかし、そう言った彼女の身体は徐々にモヤの中に消えた。
もうお別れの時間になったのだと悟る。
「また会える?」
かなみはもっと彼女と一緒にいたいと思った。だから問う。
「わからない」
彼女は残念そうに答える。
「――でも奇跡は起きたらまた会えるよ」
けれども、彼女は希望に満ちた声で答える。
「奇跡は何度でも起きるよ。そう教えてくれた人がいるから」
目を開ける。
社長室のソファーで横たわっていた。
何が起きて、こんなところで寝ていたのか。
たしか、あるみと萌実について話していて、質問をされて、それで考えているうちに……そこから記憶が途切れている。どうやら、考えているうちに寝てしまったみたいだ。
「夢……?」
内容ははっきりと思い出せない。
萌実が起こしてきて、そうしたら、急に視界が変わって……それから……よく思い出せない。
「まったくよく寝るわね」
呆れたといわんばかりの声がする。
夢の中でも聞いた声だ。
「萌実……」
「相変わらずマヌケな顔ね。起き抜けだからよけいにそう見えるわ」
「マヌケって……そういうあんただって、メチャクチャ寝ちゃってたじゃない」
「さあ、どうだったか……」
萌実はそっぽ向く。
都合の悪いことは知らんふりする。いつもの手だ。
「それより仕事が来てるのよ」
「仕事?」
「あるみから……むかつくことにあんたと私で二人で行きなさい、って」
「また面倒な仕事じゃなければいいんだけど……」
「あんたと一緒の時点で、もうかなり面倒なんだけど」
「嫌なら一緒に行かなくてもいいんじゃないの?」
かなみは提案する。
「そうもいかないでしょ、社長命令なんだし」
「それもそうね」
萌実にそう言い返されて、かなみは納得せざるを得なかった。
「……やっぱり」
「ん?」
「夢と違う」
「何言ってるの?」
夢で見た萌実はもっと優しげで、もっとかなみのことを思いやってくれて、かなみの手を引いてくれた。
でも、現実の萌実はそうじゃなかった。
――萌実、若芽をよろしくね、かなみちゃん
声を思い出す。
誰かはわからないけど、声はそう言っていた。
自然とかなみは萌実の手を引いた。
「え……?」
「ほら、さっさと行くわよ」
夢で見たのと同じやり取り。
しかし、引いたのはかなみからだった。
でも、なんというか、こうするのが正解な気がした。
「かなみちゃんは萌実のことをどう思ってるの?」
夢を見る前に、あるみから問いかけられた。
「人間でもなくて、怪人でもなくて、それでも今と同じように接することができる?」
その時、かなみはどう答えたのか憶えていない。
でも、今ならこう答えるだろうと自信を持って言える気がした。
「今と変わらないと思います」
そうして、かなみ、萌実、若芽の三人でそれぞれ離れた場所に位置取る。
「どうして、こんなことに?」
かなみへ月へ問いかけるように空を仰ぐ。あとついでに母親にも問いかけた。
どうせこの声も聞こえているだろう。そして、どうせ聞こえていて聞こえていないフリをしていることだろう。
あの母はそういう人なのだ。
一人で勝手に仕切って、勝手に取り決めてしまう。
それで有無を言わさない説得力が何故かあるのだから、なおのこと質が悪い。
「かなみに倒した方がぁ、上(うえ)ってことでいいわねぇ」
かなみは即座に「いいわけない!」と反論したけど、当然のことながら聞く耳を持ってくれなかった。
「かなみに任せるわぁ」
その一点張りだった。
「無茶振りにも程があるわよ……」
「それだけ信頼してるってことだよ」
マニィがフォローを入れる。
「信頼って……社長か母さんに任せた方が絶対うまくいくのに……」
「同じことを社長や涼美さんは思ってるってことだよ」
「え……そ、そうなの?」
かなみは涼美に顔を見る。
笑顔で手を振っている。
「確かに私が失敗することを考えていない顔してるわ」
「全幅の信頼って感じだね」
でも、あまり嬉しくないのは何故だろうか。
「ちなみに社長はなんて?」
かなみはマニィに確認を取る。
「全部任せる、ってさ」
それは投げやりなのでは? と思う。
「それじゃ~合図出すわよぉ!」
涼美はやけに間延びした声だけど、妙に通る声で合図を出す。
チリリリン!
そして、鈴の音が響く。
それが合図でかなみはコインを弾く。
「マジカルワーク!」
コインを弾いて、光に包まれて、黄色の魔法少女が現れる。
「愛と正義と借金の天使、魔法少女カナミ参上!」
「暴虐と命運の銃士、魔法少女モモミ降誕!」
それに乗っかるようにモモミが名乗りを上げる。
「そういうの考えていませんでした……」
若芽は外套を翻して、自身の衣装を披露する。
「とりあえず、魔法少女モイ誕生? ですかね」
「そこ、疑問形なのね……」
カナミは少し意外に思う。
「細かいことは気にしないでください」
バァン!
言うやいなや発砲する。
文字通り挨拶代わりのつもりだった。
「わわあ!?」
カナミはササッとよくてしまう。
「反射神経は大したものですね」
社長室でライフルの弾を避けたことも含めて、モイはカナミを評価する。
「あんたに撃たれるわけにはいかないからね!」
「じゃあ、私に撃たれなさいよ」
モモミが言うやいなや発砲する。
バァン!
「じゃあ、じゃないでしょ!」
これもカナミは避ける。
「前よりすばしっこくなったわね!」
「色々動けるようになったのよ!」
「的だったら大人しくしていなさいよ」
「誰が的よ!」
逆にカナミが撃ち返してやる。
バァン!
「的が撃ち返すな!」
「だから、的じゃないって!」
「――いいですよ、撃ち返しても」
モイは構わずライフルの引き金を引く。
「そのくらいでないと張り合いがありませんから」
「上等じゃない!」
モモミは嬉々として、カナミへ銃弾を撃ち込む。
「なんでもいいけど、仲良く私を的にするのはやめてよ」
「仲良くないわ!」
「仲良くありません!」
「……説得力無い!!」
やっぱり理不尽だと思うカナミだった。
「やっておるな」
見物していた涼美のもとへ煌黄がやってくる。
「人払いの結界ありがとうねぇ、コウちゃん」
「まったく、あるみといい、お主ら仙人を便利にこき使いすぎじゃ」
煌黄はため息をつきながらぼやく。
「でもぉ、頼めるのはコウちゃんだけだって、かなみが言うからぁ」
「まあやむなしの判断じゃな」
煌黄は公園一帯に人払いの結界を張り巡らした。
これは仙術の一種で、簡単に言うと人が「その場所に行きたくない」と思うようになり、人が寄り付かなくなる結界だった。
おかげで今公園には、カナミ、モモミ、モイ、それに少し離れたところに涼美、煌黄しかいない。
「しかし、あやつら……」
煌黄はモモミとモイを見やる。
「わかっちゃうぅ?」
「仙人じゃからな。そのくらいはわかる」
「さすがねぇ」
「あるみだけかと思ったが、お主も知っていたのか」
「そりゃぁ、まぁねぇ」
「難儀なものじゃ。かなみには教えぬつもりか?」
「私達から話してもぉ、しかたないがないって~あるみちゃんがぁ」
「なるほどな……」
煌黄は納得しつつ、公園で戦いを繰り広げている三人に目を見やる。
バァン! バァン! バァン! バァン! バァン! バァン!
けたたましい銃声が深夜の公園に響き続ける。
今のところ、カナミはモモミの銃弾もモイの銃弾も当たっていない。
反射神経を頼りに避ける。あるいは魔法弾で撃ち落とす。
「ほう」
これに煌黄は感心して、感嘆の声を上げる。
何十、何百発もの弾丸が飛び交う中で、カナミは避けている。
しかも、モモミとモイの二人による二方向からの同時攻撃。
「え!? わあ!? この!! あぶなッ!? いぃぃぃッ!? わああああッ!!」
悲鳴とかけ声がごちゃまぜになった声が忙しなく響く。
「あぶない! 今のかすったわよね!?」
モモミかモイか。どちらが放ったのかわからないけど、とにかく頬をかすめた。
「キャッ!?」
今度は髪をかすめた。
次は頭か身体のどこかか。とにかくハチの巣になる未来は近い。そんな予感がしてならない。
(二人とも本当に遠慮が無い! このままだとやられる! ――反撃しなくちゃ!!)
カナミはステッキをふりかざす。
ズザザァァァァァン!!
公園の砂が巻き上がる。
「砂煙ですか!?」
モイは驚いて、引き金を引く手を止める。
「かまうことないわ!」
対してモモミは構わず撃ち続ける。
「やっぱりモモミは撃つのをやめないわね!」
砂煙で視界を悪くした程度ではモモミは止まらない。モイが止めてくれただけでも好都合だった。
「ジャンバリック・ファミリア!」
ステッキの鈴を飛ばして、上からモモミとモイの姿を補足する。
バァン! バァン! バァン! バァン! バァン! バァン!
鈴からの魔法弾を撃ち放つ。
「これが魔法少女カナミの魔法!?」
モイは初めて見るカナミの魔法に驚愕しつつ、かわしていく。
「しゃらくさい!」
モモミは鈴の魔法弾をかいくぐりながら砂煙の中を突っ切る。
「モモミ!?」
「カナミ!!」
モモミとカナミが向かい合う。
カキィィィン!!
ステッキと銃身がぶつかる。
「見つけたわよ、大人しく撃たれなさい!」
「嫌だって言ってるでしょ!!」
カキィィィン!!
言葉をぶつけ、互いの武器をぶつけ合う。
「っていうか、打つつもりでしょあんた!?」
「細かいこと気にすんな!!」
「細かくない!!」
カキィィィン!!
声が響き合い、武器がぶつかる度に火花が上がる。
こいつには負けられない。
そんな意地のぶつかり合いだ。
バァン!!
そこへ一発の銃弾が撃ち込まれる。
「――!?」
カナミはのけぞってこれをかわす。
その目は反射的に弾の出どころを追っていた。――撃ったのはモイだ。
モモミと戦っているうちに、かすめとろうした一発だった。
「チャンス!」
モモミはこれをチャンスと捉え、銃身をカナミの眉間に向ける。
この状態で銃弾を撃たれたら、普通の人間だったら即死、魔法少女でも昏倒はまぬがれない。
しかも、モイの銃弾をかわすためにのけぞっている。ここからじゃかわせない。
バァン!!
弾丸はカナミの眉間に当たる……――事はなかった。
直前で鈴の魔法弾が弾丸を弾いてくれたからだ。
「や! ほ! とお!」
のけぞったカナミはバク転して、モモミから距離を取る。
「チィ、うっとおしいわね!!」
モモミは舌打ちする。
もう少しのところで仕留められるはずだったのに。
「あれをかわしますか」
モイはカナミの器用さに驚嘆する。
『カナミほど強く、速く無かった』
ヨロズの言葉が脳裏をよぎる。
認めたくなかった。ただの世迷い言だと聞き流したかった。
しかし、こうしてカナミを目にする度に、ヨロズの言葉が正しかったことを思い知らされる。
「……不愉快です」
モイは率直に自分の中から出てきた想いを口にした。
だったら、その不愉快な気持ちをどうしたら解消できるのか。
カナミを撃ち倒す。
そうすることで、あの怪物が言っていたことが正しくなかったことを証明する。
バァン!
決意を新たにして、ライフルの引き金を引く。
「――!」
しかし、カナミはこれを察知して避ける。
「目がもう一つあるのではないですか?」
モイはそんな疑問を口にする。
さっきから自分の放った弾丸のみならず、モモミが放った弾丸もちゃんと避けている。
しかも、認めたくないけど、モモミの方が両手に二丁の拳銃を持っている分、手数が多い。その分、威力と速度はこちらに分があるとモイは思っているけど。
それらの銃弾を全て避けるか、あるいは魔法弾で撃ち落としてさばいている。
二つの目だけでそんな芸当ができるとは思えない。
「何か秘密でもあるのでしょうか?」
モイはそこに攻略のヒントがある気がした。
とはいえ、カナミからすると秘密と言われるほど大層なものでもなかった。
涼美が特訓をつけてくれたおかげで、耳が良くなったおかげで銃声を聞き分けることができた。
モモミとモイ。二方向からやってくる銃声がどこからどこへとんでくるか、どれが自分に当たるかを聞き分けることでなんとか避けたり撃ち落としたりして、なんとかさばききることができている。
しかし、それも時間の問題だとカナミは思っている。
このまま二人とも遠慮無く撃ち込まれ続けたら、いつか直撃する。
なんとかして二人を止めなければ……!
「セブンスコール!!」
カナミは空へと魔法弾を撃つ。
パァァァン!!
空へ上がった魔法弾は花火のように弾けて、今度は雨のように地上へ降り注ぐ。
「「――!?」」
モモミとモイ、二人揃って襲いかかった。
特にカナミの魔法を初めて見るモイは面をくらって、反応が遅れた。
「いっけええええッ!!」
これをカナミは好機とみて、鈴とともに魔法弾を一斉発射する。
バババババァァァァァァン!!
凄まじい魔法弾に砂煙が舞い上がり、霧のように立ち込める。
「派手にやったわねぇ」
「しかし、このくらいであやつらが怯むとは思えないが」
涼美と煌黄は冷静に状況を見る。
涼美は耳、煌黄は仙術による眼によって、視界が悪くなっても状況を把握することができる。
バァン! バァン! バァン! バァン! バァン! バァン!
モモミは構わず撃ち込み続けているせいで、銃声が絶え間なく響いている。
「いい加減、倒れなさいよ!!」
「倒れないわよ!!」
カナミも応戦する。
激しい撃ち合いが続くものの、カナミは違和感を覚える。
(モモミしか撃ち込んでこない。モイは――)
モイへ意識を向けようにも、モモミが撃ち込み続けているせいで動けない。
バァン! バァン! バァン! バァン! バァン! バァン!
魔法弾と銃撃の応酬が続いていく。
時間にして一分。
全力で走り続けるように、撃ち込み続けた限界がそろそろやってくる時間だった。
「ハアハア!」
先に息が上がってきたのはモモミの方だった。それに比べてカナミは幾分か余裕がある。
「く……!」
モモミが息が続かず、距離を取る。
「今よ!」
カナミはこれをチャンスと捉え、ステッキを構える。
「――!」
しかし、カナミの直感が危険を告げる。
「モイ!」
モイがこちらを狙っていた。
その手に持ったライフルには神殺砲並の魔力が充填されていた。
カナミとモモミが激しい銃撃戦を繰り広げているうちに、モイは一人息を潜めて魔力を蓄えていたのだ。
(あれをまともに食らったらまずい!?)
カナミはステッキを砲台へと変化させる。
「あんなこともできるなんて、でも! チャージブラスト!!」
モイはカナミの神殺砲に驚愕しつつも、構わず充填した魔力をライフルから撃ち放つ。
「ボーナスキャノン!!」
カナミはすかさず砲弾を撃ち込む。
バァァァァァァァァン!!
大爆発が巻き起こる。
「まさか、そんな……私が……まけ、た……」
軍配はカナミに上がった。
敗れたモイは爆発に巻き込まれて、吹っ飛ばされる。
「……あぁ、やりすぎちゃった」
やむを得なかったとはいえ、神殺砲が直撃させてしまって大丈夫だろうかと心配になる。
「人の心配している場合!?」
「モモミ!」
カナミとモイの撃ち合いの間に、呼吸を整えていたモモミが撃ち放つ。
逃げ場のない視界を埋め尽くす何百発もの弾丸が一斉に襲いかかってくる。
神殺砲を撃った直後で体勢が崩れた中で、防ぎようがなかった。
「ツゥゥゥッ!!」
顔だけは腕で覆って防ぐ。
それでも身体中に銃弾が撃ち込まれていく。その痛みに耐える。
モモミがこのあと、必ず仕掛けてくる。それを見逃しはしまいと視線だけはモモミから外さない。
「あ……!」
しかし、モモミは仕掛けてこなかった。
いきなり頭から倒れて微動だにしなくなったからだ。
「ええぇぇぇッ!? モモミ、大丈夫!?」
勝負を忘れて、カナミはモモミへ駆け寄る。
一方、神殺砲に撃ち負けたモイは……
「大丈夫ぅ?」
涼美が呼びかける。
「……私は負けたんですね」
「そうねぇ、見事な負けっぷりだったわよぉ」
涼美ははっきりと言う。
「………………」
そう言われて、悔しさで歯噛みする。
「次は負けません……」
モイは立ち上がりその場から立ち去っていく。
「そういうことはぁ、カナミに言ったほうがいいのにねぇ」
涼美のぼやき、それはモイの耳にも入っていた。
でも、それを実行する気にはなれなかった。
どうして? と、聞かれてもとにかく今は魔法少女カナミと顔を合わせたくないとしか言いようがなかった。
「負けず嫌いなのねぇ」
涼美は微笑ましくその様子を見守る。
「って、呑気にしてる場合ではないぞ!」
煌黄が言う。
「コウちゃん、モモミは大丈夫なの?」
カナミは心配そうに煌黄に訊く。
「うーん」
煌黄はモモミを観察して、医者の触診のようにモモミの額に手を当てる。
「大丈夫じゃな」
「本当?」
「うむ、寝ているだけじゃからな」
「え、寝ているだけ?」
煌黄にそう言われて、モモミの様子をじっくり見る。
「スー」
確かに呑気そうに寝息を立てている。
「でも、急になんで倒れたりしたの?」
「魔力切れじゃな。身体の中にある魔力を出し尽くしてしまって睡眠を要求しておるんじゃ。お主にも経験があるじゃろ?」
「それはあるけど……そんなに急に倒れたりすることあるの?」
「まあ、普通じゃったら、眠る前にバテて息切れするくらいじゃろうな」
「そうよね。それに前にモモミと戦った時はもっと魔法を使ってたと思うけど」
その時は倒れたりなんてしなかった。
「あ~それは儂にもよおわからん。あるみが知っておるじゃろ」
「社長ね……」
カナミと煌黄は顔を見合わせる。
「社長が喋ってくれると思う?」
「……お主の努力次第じゃな」
煌黄はしかめ面で答える。
「……そう、よね」
カナミはため息をつく。
その後、萌実は涼美が運び出してくれた。
「ゴギアアガゴゴゴ!?」
本当はカナミが運ぼうとしたのだけど、モイを運んで筋肉が限界を迎えていたことを思い出す。
萌実を持ち上げようとして、カナミは奇声を上げて煌黄は腹を抱えて笑った。
「オッケィ~任せてぇ~」
涼美は軽々と持ち上げた。
涼美は身体はかなみより幾分か身体が大きいくらいで大人の女性にしてみたら小柄の部類に入る。
(今度から力仕事は母さんに頼もう)
かなみは筋肉痛で悲鳴を上げる身体に呼びかけるように言う。
涼美はそうやって、萌実を持ち上げたまま公園からオフィスへ、オフィスから階段を上がってあっという間に三階の社長室まで運んでいってしまった。
ソファーに横たわる萌実は安らかで、本当にただ昼寝をしているだけに見える。
そんな萌実を見て、かなみもソファーで寝たい気分になってきた。
「ふああああああッ!」
一段落ついたらあくびが出てきた。
「かなみもぉ寝るぅ?」
「そうしたいけど、今夜はそういうわけにもいかないから」
かなみは社長室からインスタントコーヒーを取り出す。
「社長から話を聞くまで今夜は眠れない!」
「今夜というかぁ、もうすぐ今朝になるけどねぇ」
「えぇ!?」
かなみは驚きのあまり硬直する。
「ほぉらぁ」
涼美は時計を見せる。
――確かにもう朝日が昇りそうな時間だった。
「は、はは……どうりで眠いわけね……あははは……」
もう笑うしかできなくなる。
「コーヒーならぁ私が淹れておくわよぉ」
「う、うん、ありがとう……あははは……」
かなみはその場にへたりこむ。
そうして待つこと小一時間。
眠気を吹き飛ばしてくれたコーヒーのカフェインも切れた頃、社長室の扉は静かに開く。
「ただいま。なんて呑気に言ってる場合じゃないわよね」
あるみは真剣な面持ちで言って入ってくる。
「おかえりなさい。待ってましたよ社長」
社長は伏せ目でにらみつけるように言う。伏せ目なのは眠気で目蓋が重いせいだ。
「そうね。随分待ったみたいね」
「どういうことなのか聞くまで今日は退けませんから」
「仕方ない娘ね……でも、まあ仕方ないか。私がかなみちゃんの立場でもそうしたでしょうから」
「わかってるなら」
「――教えてあげるわよ」
「……え?」
予想外の返答に、かなみは面を食らう。
「それじゃぁ、私達はぁ」
「うむ」
涼美と煌黄は立ち上がって社長室を出る。
そうして社長室には、あるみとかなみ、そしてソファーで寝ている萌実だけになった。
「さて、何から話そうかしらね……」
「本当に教えてくれるんですか?」
「かなみちゃんは何を知りたいの? 萌実のこと? 若芽のこと?」
「両方です!」
かなみは食いつく。
「そうね、そりゃそうね……でも、教える前に確認しておきたいことがあるわ?」
「確認?」
「かなみちゃんは萌実のことをどう思ってるの?」
「……え」
思いも寄らない問いかけに、かなみは言葉に詰まる。
「どうって?」
「敵だと思う? 仲間だと思う?」
「そ、それは……」
かなみは思わず、ソファーに寝ている萌実に視線を移す。
さっきまで自分に襲いかかってきた少女。
本気で銃弾を撃ち込んできて向かってきた少女。
それでも、その寝顔を見ていると……
「……敵だとは思いません」
「そう」
あるみは満足げに微笑む。
「でも、仲間っていわれるとおかしくて、友達っていうのもなんだか違う気がして……」
「結構よ。敵でなければ十分すぎるわ」
「社長は私と萌実を戦わせたいんですか?」
「ケンカするほど仲が良いと言うわ」
「冗談じゃないですよ!」
かなみは条件反射で強く言い返す。
「萌実は私を倒すつもりでやってますよ。ケンカってレベルじゃありません」
「それだけ、かなみちゃんに勝ちたいってことよ」
「い、いい迷惑です!」
「まあ、それが彼女の目標であり、生き甲斐なんだから仕方ないわ」
「い、生き甲斐……?」
何故かその言葉に重みを感じた。
『勝ち続けることが私の存在意義だから! あんたに私はまだ勝っていないから!!』
以前、萌実はそう言っていた。
思えば、萌実はいつも勝つことにこだわっていた。本人が言うようにそれが存在意義だと。
今夜だってそうだ。
ことさらに勝つことにこだわって、かなみに勝とうとした。
「勝つことが萌実の生き甲斐ってことですか?」
改めて考えると、何故そんなにもこだわっているのか。
「そうね……でも、勝ちたいって感情は誰にでもあるじゃないの?」
「確かにそうですけど……でも、萌実は特に強いですよ」
「特にかなみちゃんに対してね。絶対に負けないって気持ちが伝わってくるわ」
「だから、それが迷惑なんですってば」
「ライバルって感じよね」
「……社長、はぐらかさないでください」
いつもだったらこのまま煙に巻かれるところなのだけど、今日ばかりはそういかない。
「あぁ、そうだったわね……」
あるみは少し困り顔で萌実に視線を移してから、かなみに向き直す。
「かなみちゃん、もし萌実が怪人だったとしたらどう思うの?」
「……え、なんですか急に? 萌実は怪人なんですか?」
「怪人じゃないわ。でも、もし怪人だったらやっぱり敵だと思う?」
「萌実は怪人じゃないけど、もし怪人だったら……」
かなみは考えてみる。
もし、萌実が怪人だったら……
「やっぱり怪人だったのね、と納得します」
かなみは素直な気持ちで返答する。
ネガサイドの基地にいたし、怪人と親しそうにしていたし、正義の魔法少女とは到底思えない。
これらのことを踏まえると、萌実は悪の怪人でした。といわれた方が納得する。
「納得する、だけなのね」
「他に何があるんですか?」
「驚き、とか、敵意、とか……」
「そりゃ確かに驚きはしますけど……」
「気を遣って驚こうとしなくてもいいけどね、ハハハ」
「笑い事じゃないですよ。萌実が怪人じゃないんだとしたら、人間なんですか?」
「いいえ、人間じゃないわ」
「……え?」
その返答に、かなみは絶句する。
「それって、『もし』の話ですよね?」
「『もし』じゃないわ。本当の話よ」
「………………」
あるみの返答に、かなみは驚きで固まる。
数秒の重たい沈黙の後、かなみは問う。
「怪人でもない、人間でもない……だったら、萌実は何なんですか?」
「かなみちゃん、もう一度訊くわ」
「……え?」
「かなみちゃんは萌実のことをどう思ってるの?」
「そ、それは……」
かなみは同じように即答できなかった。
「人間でもなくて、怪人でもなくて、それでも今と同じように接することができる?」
「………………」
かなみは沈黙して考え込む。
萌実と出会ってからこれまでのこと。
時に戦って、時に言い合って、時に一緒に仕事をして、時に一緒に戦って……色々あったなと思う。
萌実がもし人間じゃないとしたら……今までとどう変わるのだろう。
「多分……変わら、ない、と、思い、ます……」
バタリ
かなみの意識は途絶えた。
「スースー」
そして、安らかな寝息を立てた。
日付が変わるまでの業務。若芽を部屋にまで運んだ重労働。さらに魔法少女として萌実と若芽と戦って、そして、夜明けまであるみを待ち続けた。
押し寄せる睡魔にとうとう限界を迎えたのだった。
「おやすみ、かなみちゃん」
あるみはかなみへそう言葉を送る。
「――起きてるんでしょ?」
「……む」
萌実は起き上がる。
「ずっと話聞いてたでしょ。寝顔の演技、上手かったわよ」
「うるさいわね……あんたが変な話始めるからいつ起きていいかわからなかったのよ」
「そんな気遣いいらなかったのに、そんなに気まずかった」
「うるさいって言ってるでしょ」
萌実は睨みつける。
「かなみちゃん、あんたが怪人でも人間でも変わらないって……」
「そんなこと、どうでもいいわよ」
「そう、どうでもいいってことよ」
「…………あ~」
萌実は面倒そうに頭をかく。
「いっそ敵だと思えばよかったのに……」
「素直じゃないわね」
「かなみ、起きなさい。遅刻するわよ」
「え!?」
かなみはその言葉で飛び起きる。
「まったくよく寝るわね」
「萌実……?」
「寝ぼけてるの? だったら、眉間に一発撃ちこんどく?」
「それ、起こす気ないでしょ?」
かなみはツッコミを入れる。
「それじゃ行くわよ」
「行くってどこに?」
「仕事に決まってるでしょ、今日はあんたと私の二人で行くってあるみが言うから」
「ああ、そうだったわね」
「まったく……そんなんで借金返していけるの?」
「返していけるわよ!」
「そ、だったら……」
萌実はかなみの手を引く。
「え……?」
「ほら、さっさと行くわよ」
すると、身体が浮き上がる。まるで背中に羽が生えたように。
それは――違和感だった。
その後、突然視界が白と黒に明滅する。
それが落ち着くと、今度はよくわからない空間を浮遊していた。
虹の七色、どころじゃない。何百という色が溶け合って混ざり合っている、そんな色の空気が流れている。そんな不思議な空間だった。
「ここどこ……?」
ボソリと呟く。
――どこでもない、どこかよ。
声がした。
女の子の声だ。
よく知っている子の声と似ているけど違う。かなみが知っている声より穏やかで優しいような気がする。
「誰?」
――そっか、あなたは私のことを知らなかったね。私はあなたのことをよく知ってるよ、かなみちゃん
声は自分の名前を呼ぶ。
その声から友達に語りかけるような親しさを感じる。
――でも、仕方ないね。こうして話せるのも奇跡みたいなものだし。
「奇跡? あなたは誰?」
――わたし……わたしは……
声がそう言うと、その声は形に成して、かなみの前に立つ。
「……え?」
それは、かなみがよく知っている子だった。
桃色の髪をした、自分と同じ年頃の少女だった。
「私は百地、――だよ……」
よく聞き取れなかった。
その部分だけ靄がかかったように、彼女がなんて言ったのかわからなかった。
「萌実、若芽をよろしくね、かなみちゃん」
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「――でも奇跡は起きたらまた会えるよ」
けれども、彼女は希望に満ちた声で答える。
「奇跡は何度でも起きるよ。そう教えてくれた人がいるから」
目を開ける。
社長室のソファーで横たわっていた。
何が起きて、こんなところで寝ていたのか。
たしか、あるみと萌実について話していて、質問をされて、それで考えているうちに……そこから記憶が途切れている。どうやら、考えているうちに寝てしまったみたいだ。
「夢……?」
内容ははっきりと思い出せない。
萌実が起こしてきて、そうしたら、急に視界が変わって……それから……よく思い出せない。
「まったくよく寝るわね」
呆れたといわんばかりの声がする。
夢の中でも聞いた声だ。
「萌実……」
「相変わらずマヌケな顔ね。起き抜けだからよけいにそう見えるわ」
「マヌケって……そういうあんただって、メチャクチャ寝ちゃってたじゃない」
「さあ、どうだったか……」
萌実はそっぽ向く。
都合の悪いことは知らんふりする。いつもの手だ。
「それより仕事が来てるのよ」
「仕事?」
「あるみから……むかつくことにあんたと私で二人で行きなさい、って」
「また面倒な仕事じゃなければいいんだけど……」
「あんたと一緒の時点で、もうかなり面倒なんだけど」
「嫌なら一緒に行かなくてもいいんじゃないの?」
かなみは提案する。
「そうもいかないでしょ、社長命令なんだし」
「それもそうね」
萌実にそう言い返されて、かなみは納得せざるを得なかった。
「……やっぱり」
「ん?」
「夢と違う」
「何言ってるの?」
夢で見た萌実はもっと優しげで、もっとかなみのことを思いやってくれて、かなみの手を引いてくれた。
でも、現実の萌実はそうじゃなかった。
――萌実、若芽をよろしくね、かなみちゃん
声を思い出す。
誰かはわからないけど、声はそう言っていた。
自然とかなみは萌実の手を引いた。
「え……?」
「ほら、さっさと行くわよ」
夢で見たのと同じやり取り。
しかし、引いたのはかなみからだった。
でも、なんというか、こうするのが正解な気がした。
「かなみちゃんは萌実のことをどう思ってるの?」
夢を見る前に、あるみから問いかけられた。
「人間でもなくて、怪人でもなくて、それでも今と同じように接することができる?」
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