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第106話 騒霊! 月下で踊る玩具と少女の小夜曲 (Aパート)
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「ちょっと、かなみ」
不意にみあが呼びかけてくる。
「何、みあちゃん?」
「ちょっと頼みたいことがあるんだけど」
「みあちゃんからそう言ってくれるなんて……」
珍しいと、かなみは思った。
「仕事のことなんだけど、手伝ってもらいたいのよ」
「仕事だったらなおさらよ」
「でも、かなみが断りそうだから……」
「みあちゃんが手伝って欲しいっていうんなら、なんでも手伝うわよ!」
「へえ、なんでも……」
みあは不敵に笑う。
「それじゃ、お願いするわね。『おもちゃのポルターガイスト騒動』」
「え? 今なんて?」
「『おもちゃのポルターガイスト騒動』」
「『おもちゃの……」
「――ポルターガイスト騒動』」
かなみは回れ右する。
「この話は無かったことに……」
「――ならなわいよ!」
みあはかなみの髪を引っ張って引き止める。
「痛い!? 痛いよ、みあちゃん!?」
「あんた、なんでも手伝うって言ったじゃない」
「なんでもって言ったけど……おばけは別よ!」
「おばけじゃなくてポルターガイストでしょ」
「ポルターガイストはおばけでしょ!」
「まだそうだと決まったわけじゃないから! 怪人の仕業かもしれないでしょ」
「……本当?」
「だから、それを確かめに行くんじゃないの」
「おばけだったらどうするの!?」
「おばけだったら千歳になんとかしてもらえばいいでしょ」
「千歳さん、なんとかしてくれる!?」
『はーい、私のことを呼んだ』
「きゃぁぁぁぁぁぁッ!?」
唐突に千歳の声がした。
『いきなり、きゃあって可愛いわね、かなみちゃん』
「千歳さん、どこですか? どこにいるんですか?」
かなみはオフィスを見回す。
千歳は確か仙人になるべく山奥で修行中の身のはず。オフィスにいるはずがない。だったら、この声は……
「声はすれども姿は見えず」
みあは言う。
「もしかして、おばけ!?」
かなみは青ざめる。
「千歳は元からおばけでしょ」
『おばけから仙人になるため、修行中です!』
「でも、なんで声が!?」
「電話でしょ。糸電話の要領で声を飛ばしてきたんでしょ」
『そうなのよ! さすがみあちゃん! 一緒に仙人になりましょう!』
「……ならない」
みあはそっけなく答える。
『みあちゃんのいけず~~!』
「千歳さん、テンション高いですね」
『だって、久しぶりの会話よ。悠亀様は必要な時以外喋らないし、コウちゃんはたまにしか来ないから寂しかったのよ』
「はいはい、それじゃ、あたし達は仕事で出るから」
「え、まだ私行くって了承してないんだけど」
『そうよ! かなみちゃんはここで私とお喋りするんだから!』
「そ、それはさすがに……」
みあはため息をつく。
「ボーナス、七三でどう?」
「行く!」
かなみは即決だった。
ボーナスを七割もらえるというのはあまりにも魅力的な提案だった。
『あーん、かなみちゃん、みあちゃん!』
千歳は引き止めようとする。
『それでここが現場なのね』
千歳もついてきた。声だけだけど
「千歳さん、視えるんですか?」
『うん、修行の甲斐あってね! 糸先に』
「でも、その糸はどこにあるんですか?」
『かなみちゃんの髪の毛』
「え、どこ!?」
かなみは髪の毛を掻いてみる。
『髪の中の糸の一本はわからないわよ』
「気をつけなさいよ。そのうち、身体を乗っ取ったりしてくるから」
「え、乗っ取る!?」
『そんなこと、今はしないわよ』
「今は!?」
かなみは身震いする。
「そ、そういえば……前に、身体を貸したことが……」
『あの時は緊急事態だったから。ほらあの釜須って人を助けるためにやむを得ないことだったのよ』
「そうだった、かしら……」
かなみの記憶はあやふやだった。
「別に、乗っ取ってもいいけど、仕事はちゃんと果たすのよ」
「みあちゃん、ひどい……」
「それじゃ、行くわよ」
かなみのぼやきを聞き逃して、みあは進む。
『おもちゃのポルターガイスト騒動』
その騒動があったマンションにやってきた。
このマンションは八階建てでその八階の住人達の話によると、夜な夜な子供のおもちゃが動き出すそうだ。
はじめは子供達が騒ぐだけだったけど、やがて親達もおもちゃが動いているところを目撃したため、マンションやその近所で噂で広まりつつあった。
「っていうのが現状なんだけど……」
みあは鯖戸から受け取った書類を読み上げていると、ガクガクという音が聞こえたような気がしたので、かなみの方を見る。
「ガクガク……」
「めちゃくちゃ震えてるわね」
みあはその様子を見て、クスクスと笑う。
「それじゃ、現場検証といきましょうか」
「いやああああッ!?」
「うるさいわね、近所迷惑でしょ」
「現場検証って言っても、どうやって入るの? もしかして忍び込むの?」
「それもありだけど」
「ありなの!?」
「見つかったら面倒だから、面倒な手で行くわよ」
「面倒だから面倒な手??」
かなみは首を傾げる。
「正攻法で入るってことよ」
「え、どうするの?」
「ここにこの階の住人リストがあるわ」
みあは書類をかなみに見せる。
「ここには色々な情報が乗ってるわ。部屋の家族構成、生年月日、勤め先、学歴……」
「ぷ、プライバシー……」
「使える情報は利用するものよ」
「ハァハァ、お嬢はリアリストだからな」
イシィが自慢気に言う。
「そこはちょっと、かなみにも見習って欲しいところだよね」
「うーん、そうだけど……そういうことができるのは、みあちゃんが頭いいからよ。私には無理、かな……」
かなみは素直に言う。
「ほ、褒めてもボーナスは出ないわよ」
みあは照れくさそうに言う。
「それじゃ、最初のとこから行ってみましょうか」
みあは七○一号室の前に立つ。
「七○一号室……川田家、父母子供一人の三人家族、両親は共働きで今は子供の小学一年生の男の子が留守番しているわ」
みあはインターフォンを鳴らす。
ピンポーン、と鳴ってすぐに、ドア越しから足音がして扉が開く。
「はーい」
扉を開けたのは男の子だった。
「こんにちは」
みあは挨拶する。
「誰?」
「隣のクラスの阿方よ」
「隣のクラスに阿方さんなんていたっけ」
「隣の学校のよ」
「え、知らない子なんだけど」
「あたし、このマンションで夜な夜なおばけが出るって聞いたのよ」
「おばけ!?」
かなみはビクッと震える。
「あんたが反応してどうすんのよ!」
みあは振り向いてツッコミを入れる。
「というわけで、おばけを探しにきたんだけど」
「おばけ……」
男の子はそう言われて、部屋の方を見る。
「夜におもちゃが動くんだよ」
「おもちゃが動くのを見たの?」
「う、うん……お父さんやお母さんに言っても、夢を見てたんだって言われちゃって……」
男の子はブルブル震えながら話す。
「わかる! わかるわよ! 怖いわよね!」
かなみはその震えに同調する。
「う、うん……」
「かなみ、あんたは黙ってて……」
みあは呆れつつ、かなみを引っ込める。
「んで、その動いてたおもちゃ、見せてくれない?」
「うん、いいよ」
男の子はあっさり承諾してくれた。
(みあちゃん、頼りになる……)
かなみは内心そう思った。
みあの喋り方は小学生には見えないくらい、頼もしさを感じられた。
男の子の方も相談できる相手が欲しかったので、あっさりと部屋に入れてくれた。
「こっちだよ」
みあとかなみは、男の子の部屋に案内された。
部屋には、漫画の本棚、ランドセルがのっている勉強机、布団がひるがえったベッド、それに隅におもちゃ箱があった。
(男の子の部屋って感じ……)
散らかっているというほどのものはないけど、適度に床には物が置かれたままになっている。
かなみはそれらを含めてそんな印象を受けた。
「夜中に動いてたおもちゃって?」
「これだよ」
男の子はロボットのおもちゃをおもちゃ箱から取り出す。
「ひ、おばけ!?」
「ただのおもちゃよ」
みあはツッコミを入れつつ、おもちゃを見る。
「ギガンダーね」
そのおもちゃは、アニメ『超電銅機ギガンダー』に登場するロボットだった。
「見覚えがあると思った」
かなみは普段ロボットアニメは見ないものの、そのロボットのことは知っていた。
(みあちゃんのお父さんの会社がスポンサーをやってるし、戦ったこともある……)
脳裏にその時の戦いの光景がよぎる。
ネガサイドが使うダークマターという魔法によって、怪人のように動き出して襲いかかってきた。あれには物凄く苦戦した。
「見たところ、ただのおもちゃね。動きそうにないけど……」
「でも、本当に夜に動いてたんだよ」
「わかってるわ」
男の子の主張をみあは聞き入れつつも、ギガンダーのおもちゃをじっくり見る。
「ど、どう……?」
かなみは不安げに訊く。
かなみからすると、おもちゃが突然動き出すなんて心霊現象が今に起こらないか不安でたまらない。
「動きそうにないわね」
「それじゃ、今はおばけがいないってこと?」
「そういうことになるわね。他に動いたりしてたおもちゃはないの?」
「うーん……」
みあが問われて、男の子は考える。
やがて、おもちゃ箱をまさぐって、取り出す。
「これも歩いてたかも」
「ひ!」
かなみは条件反射でビクッとする。
「いちいち驚かないの。ま、見てる分には楽しいけど」
「人のリアクション見て楽しまないでよ」
かなみとしては、見世物でやってるわけじゃないのに。
「……お姉さん達って、芸人なの?」
男の子が訊く。
「はあ? そんなわけないでしょ! あ、でも、こいつはある意味芸人かもしんない」
「どういう意味で!?」
「身の振り方が芸人みたいなものでしょうが」
「私の借金は芸じゃないんだけど!?」
「あははははは!!」
男の子が笑い出す。
「ほら、この子にもウケたじゃない」
何故かみあは得意げである。
「なんでウケたのかわからないけど……」
かなみの心境は複雑だった。
「それで、そのおもちゃはどうなの? やっぱりおばけ??」
かなみはみあの手に持ったおもちゃに対して問う。
「おもちゃがおばけなわけないでしょ。そうね、これは……よくできたゴドランね」
ゴドランというのは怪獣映画に出てくる街を襲う大怪獣で、これはそのゴドランを模したおもちゃで、スイッチを入れる鳴き声が出るくらいのおもちゃだ。
「………………」
みあはこれまたじっくりとゴドランを見る。
やがて、ゴドランを男の子に渡して言う。
「大事に使って、遊びなさいよ」
「う、うん……」
かなみとみあは、それ以上見るものはなくなったので、部屋を出た。
男の子からの印象が良かったのか、出る際に「また来てね」と言ってくれた。
「いい子だったわね」
「そうね……」
みあは真剣な表情で答える。
「どうしたの、みあちゃん? あのおもちゃで何もわからなかったから怒ってるの?」
「別に怒ってなんかない」
「そう……」
「でも、魔力がちょっと残ってたわ」
「え!?」
「何かが取り憑いてたって可能性はゼロじゃないわ」
「そ、そんな……」
かなみはブルブル震えながら、今出てきたばかりの部屋を振り返る。
「まだおばけと決まったわけでもないわよ」
「そ、そうよね! うん、おばけなんていない!」
『かなみちゃんはげんきんね』
「きゃーおばけ!?」
唐突にきた千歳の声に、かなみは驚かされる。
『失礼しちゃうわね。せっかく空気を読んで黙ってたのに』
千歳はぼやく。
そりゃ、おもちゃが動き出す心霊現象で怖がっている男の子の前で、いきなりこんな声がしたら男の子は恐れ慄いて会話どころじゃなくなって
そういう意味では空気を読んで黙っていてくれたのはありがたい。
しかし、それはそれとして。
「いきなり声がするとびっくりしますよ」
「第一、千歳は本当におばけなんだから失礼にならないでしょ」
『あら、そうだったわね。これは一本取られたわ、あはは』
みあの指摘に千歳は楽しそうに笑う。
かなみやみあと会話できるのがそんなに嬉しいのか。
「それで、あんたはあの部屋、どう思ったの?」
『うーん、特におかしなところは感じられなかったわね』
みあの問いに、千歳はそう答える。
「千歳さんが感じないってことは、おばけはいないってことですか?」
かなみは、少し嬉しそうに訊く。
おばけが相手じゃないとなると、かなり安心できる。
『そうとも限らないわよ。糸を伝って感じられるのはそれなりに強い魔力だけよ。本当の私は山奥なんだから、感知能力はその場にいるみあちゃんの方がよっぽど高いわよ』
「そうなると、この騒動の犯人がいるとしたら、感知しづらいくらい弱いやつか、あるいは、感知させないくらい強い魔力で隠蔽する魔法が使えるやつかの極端な二択ね」
『どっちにしても、まだおばけの仕業の可能性もあるわね』
千歳は楽しそうに言っているけど、かなみにとっては寒気が走るような冷淡な一言に聞こえて仕方がなかった。
「それは、どっちにしても……怖いですね」
かなみは青ざめる。
「まだ一件目だから結論を出すの早いわね」
みあはそう言って、七○三号室の前へ移動する。
「それじゃ、次ね」
「次も今みたいにあげてもらうの?」
「ええ、そうね。次も三人家族よ。この時間、子供は塾に行ってるわ」
「塾? それじゃ、あげてもらえないじゃないの?」
「ま、見てなさい」
みあは七○三号室のインターフォンを鳴らす。
「はい」
母親と思われる大人の女性が出てくる。
「こんにちは」
みあは笑顔で言う。
その声は、普段のみあから想像もつかないほど明るいもので、かなみは驚く。
「誰?」
「娘ちゃん、いますか?」
「めぐは今塾に行ってるんだけど」
「そうなんですか……今日これから遊ぶ約束してたのに……」
みあは平然と嘘をつく。
「遊ぶ約束……?」
「はい、今日学校の帰りでしたんです。そうだよね、お姉ちゃん?」
「おね!?」
かなみは急にふられて驚かされる。
「はい、めぐちゃんとは妹ともども仲良くさせてもらってます」
とりあえずアドリブをきかせた。
「そうなの……」
母親は困った顔をする。
やがて、意を決したかのように言う。
「それじゃ、とりあえずあがって」
母親は案内してくれた。
中に入ると同じマンションなので、先程の川田家と同じ作りで、男の子のときと同じ配置に部屋があった。
「ゆっくり待っててね」
母親はそう言って、かなみとみあを部屋に入れて扉を閉める。
「さて」
みあはスイッチを切り替えるように、人懐っこい陽気そうな顔から真剣な顔に一変させる。
「みあちゃん、お姉ちゃんって……?」
「小学生同士なのに、中学生とかいるのはおかしいでしょ。お姉ちゃんってことにした方が都合良かったのよ」
「じゃなくて、お姉ちゃんって、そんな呼ばれ方したのは初めてだから」
「……なんで嬉しそうなのよ」
みあはため息をつく。
面倒なことを言っちゃったかと。
「それで、この部屋でも夜に動き出すおもちゃがあるみたいだけど」
みあは部屋を見回す。
「あれが怪しいわね」
「アルヒ君とミーアちゃん?」
勉強机に愛くるしい男女ペアの人形を指す。
ちなみに男の子がアルヒ君で、女の子の方がミーアちゃん。
「これにもさっきと同じような魔力が残ってるわね」
みあは言う。
「え、つまりこの人形は、おばけ!?」
「いえ、普通の人形よ」
「この人形……みあちゃんの部屋にもあったよね?」
「ん、ああ、そうね」
「このうちの子も好きなんだね」
「まあ、よく売れてるみたいだし」
みあはそこから目を背けるように辺りを見回す。
あれが、みあがよくしている照れ隠しの仕草であることを、かなみはよく知っている。
「前の部屋と同じみたいね。人形からちょっと魔力を感じるくらいで、おかしなところは何もないわ」
みあは立ち上がる。
「さ、出ていくわよ」
かなみはみあに言われるまま、一緒に出ていく。母親には「急用を思い出した」と言って。
「ねえ、みあちゃん?」
「何?」
みあは面倒そうに訊く。
「これって、私がいなくてもよかったんじゃない?」
「そうね」
みあはあっさり肯定する。
「……え?」
「そう言って欲しかったんじゃないの?」
「いやいや、そこは「そんなことないよ」とか、「どうしても、かなみが必要だった」とか、言ってくれる、とか?」
「なんでそこで疑問形なのよ? それにそんなこと言うわけないじゃない」
「えぇ~」
『みあちゃん、照れ屋さんだから本当にそう思っていても、口には出さないってことよ、かなみちゃん』
千歳がフォローを入れる、
「千歳、余計なこと言ってると切るわよ」
かなみの身体の何処かにつけられた『魔法の糸』、みあならそれを見つけて『切る』ことができる。それに加えて通話を『切る』をかけた言い回しだ。
『みあちゃん、脅さないで』
「まあまあ、いきなり切らないのがみあちゃんの優しさですよ」
『そうね』
「かなみも余計なこと言ってると、この仕事きるわよ」
首をきるという意味だった。
ちなみに、首をきられるということは、ボーナスはもらえないということだ。
「ごめん、みあちゃん! 許して! この仕事を首になったら生きていけない!」
わりと今月の生活費はピンチなのである。
「許して欲しかったら、次にあたしが言うことをききます」
「なんでもききます!」
「ふうん、なんでも?」
みあはニヤリと笑う。
その瞬間、かなみは墓穴を掘ったと自覚する。
ピンポーン
かなみは七○六号室のインターフォンを鳴らす。
「………………」
しかし、一度鳴らしてもこないので、もう一度鳴らす。
「誰でしょうか?」
小太りの男性が出てくる。
「……ん?」
男性はかなみを見るなり、我が目を疑う。
「あ、あの、ど、どど、どちら様でしょうか?」
「あなたに聞きたいことがありまして?」
「き、きき、聞きたいことですか?」
「マンションに最近出るみたいなんですけど」
「最近出るというと」
「お、お、おばけ、なんですけど!」
「お、お、おばけ!?」
かなみと男性の声の震えが同じになっている。
「シンクロしてるわね」
後ろから見守っているみあは呆れて言う。
「おおおばけが出るって聞いたんですけど、本当ですか!?」
「おおおばけが出るなんて!? 聞いたことありませんし!?」
「よ、夜な夜な夜な夜なおもちゃが動くって知りませんか!?」
「……おもちゃが動く?」
男性の震えが止まる。
「お、おお、おもちゃというのは、がが、玩具という、い、い、意味でしょうか?」
それまでの震えが嘘のように、かなみへ問いかける。
「はい、玩具のおもちゃです。それで、動くんですか? おばけみたいに」
「そ、そそ、それがですね。じじ、実は、それがしは、昨夜目撃したのですよ?」
「はひ!? 目撃したって、おばけをですか!?」
かなみは食い込むように、男性へ迫る。
「はひ!?」
男性はかなみと同じような悲鳴をあげる。
「そ、そそ、それがし、リアル少女にそこまで接近されるなんて、め、めめ、滅多にないので!」
「リアル、少女……? 魔法少女みたいなものですかね……?」
「魔法少女!? ななななんとも、すす素敵な響き!? ああ、それで動いてたのは」
「それ、見せてください!」
「み、みみ、見せて!?」
「あ、いえ、やっぱりいいです」
驚く男性を見て、かなみは我に返って、やっぱりおばけが怖くなる。
「い、いいです!? あ~やっぱりボクの部屋に上がるなんて無理ですよね!?」
「あ、いえいえ、そういうわけじゃないんです!?」
「な、なな、なんなんと、きき、君はボクの部屋にあがりたい、と!?」
「あ、えっと、そういうわけじゃなくて……いえ、やっぱりそういうわけで!?」
「どっちなのよ!?」
みあは我慢できずにツッコミを入れる。
「……ほあああ、も、もも、もう一人幼女が、そ、そそれがしの目の前に!? これは夢でおじゃるか?」
「あ~気持ち悪い……だから、かなみに任せたかったのに……」
みあは恨めしげな視線を、かなみへ向ける。
「ごめん、みあちゃん……どうしても、おばけが怖くて」
みあはため息をつく。
「あんた、クビ」
「ええ、そんな!?」
残酷に告げられる。
「お、おおお、おばけは怖いけど、私頑張るから!!」
かなみは必死な目つきで嘆願する。
「それじゃ、挽回のチャンスあげるわ」
「チャンス?」
かなみは首を傾げると、みあは男性の方を向く。
みあの鋭い目つきを受けて、男性は「ひ!」と小さく悲鳴を上げる。
「あんた? あたし達を部屋にあげなさい」
「よ、よよよ、幼女二人が、そそ、それがしの部屋に!?」
「ええ、そうよ。そこで見たいものがあるのよ」
「お、おお、ということは、我がコレクションの見学ですな!?」
男性は嬉々として、扉を大きく開ける。
「そ、そそれでは、よ、よ、幼女二人をご案内いたしまする」
かなみとみあは部屋に上がる。
「言っておくけど、変なことしようとしたら、すぐに通報だからね」
みあは強い語気で、男性へ釘を刺す。
「は、はひ、わかっております! それがしはし、しし、しん、紳士ですから!」
男性はたどたどしい口調で答える。
「変なことって?」
かなみはみあに訊く。
みあは、かなみの無知さに呆れる。
「知らない方があんたの幸せよ」
はぐらかされた。
「ところで」
かなみは男性に問いかける。
「はい、なんでしょうか?」
「幼女二人って、みあちゃんはわかるんだけど、私のこと?」
「ほほ、他に、だだ、誰がいるんでしょうか??」
「私、中学生よ」
かなみは制服をアピールする。
「ちゅ、ちゅちゅ、中学生? てててっきり、コスプレかと?」
「コスプレ!?」
「あんた、勘違いされやすいから」
「み、みあちゃん?」
「まま、ちゅちゅ、中学生も、よよ、幼女ですから」
「え、そうなの?」
かなみは首を傾げる。
「そのあたりは人によって違うわね。幼稚園児までとか。小学生までとか、あと中学生も幼女っていう輩もいるわね」
みあが補足する。
「イ、イエス! な、な、なんだか、気が合いそうな幼女殿でおじゃるな!」
「気が合いそうでも、近寄るな!」
みあは拒否する。
「お、おお、オッケー! しし、紳士のエチケットでござる!」
「あ~ちゃんとわきまえてるわね」
「もしかして、似た者同士なの?」
『同族嫌悪かもしれないわね』
ちなみに千歳のこの声は、かなみとみあにだけ聞こえるくらい小さいものだった。
「怖気が走るからそういう事言わないで」
みあは青筋を立てて言う。
「……は、はい」
これ以上言うと本当に首かもしれないので、かなみは口にチャックをつける想いだった。
「さ、こ、ここです!」
奥の部屋に案内される。
男の子、女の子と同じ位置だった。
「西倉和春」
みあは男性の名前を呼ぶ。
リストを読み上げるように言う。
「一人暮らし。在宅勤務のシステムエンジニア、その趣味はおもちゃと人形のコレクション」
案内された部屋はそのコレクションであるおもちゃと人形がズラッと並び立てられていた。
「凄い……!」
かなみは思わず感嘆の声を漏らす。
「そ、そ、そんなに、大したものじゃないけど……」
「いえ、大したものよ」
謙遜する和春に対して、みあは素直に称賛する。
「こんだけちゃんとしたコレクションなのは、予想外ね」
「そ、そ、そうでございますか……そ、そう言われると、う、嬉しいですね……」
「でも、こんだけちゃんと並べられてると、ちょっと動いただけですぐわかるわね」
「そ、そうなんですよ!」
みあの発言に、和春は食い気味に言う。
「あ、朝起きたら、はは、配置が変わってたりすることがあって! お、おかしいなと思ってたりして!」
「それで、おばけの仕業って!」
かなみは得心を得たように発言する。
「そう、おばけ! あるいは泥棒!」
「泥棒って何か盗まれたんですか?」
「いいや、な、何も盗めれてないですよ! ここ、このとおり、ちゃ、ちゃんと配置してるから無くなってたらすぐ」
「なるほど……それじゃ、やっぱりおばけの仕業でしょうか!?」
かなみは青ざめた顔をして言う。
「ひいいいい、お、おお、おばけですか!?」
「そうですよ、おばけですよ!!」
「……あんた達、仲良いわね」
変なところで意気投合しているかなみと和春を見て、みあは呆れる。
「それで、何が動いてたのかわかるの?」
みあは部屋を見回して訊く。
「は、はい……こ、これでして……」
和春は、恐る恐るそれらを指差す。
「フェアリーガール……」
かなみはその人形の名前を言う。
「そ、そそ、そうなんですよ! こ、ここ、これは『魔法妖精フェアリープリンセス』のフェアリーガール達ですよ!」
「フェアリーフラワー! フェアリーアクア! フェアリーソイル!」
かなみもアニメ『魔法妖精フェアリープリンセス』を見ていて好きなので、テンションが上がった。
花の妖精として、花びらのようなピンクの衣装をしたフェアリフラワー。
水の妖精として、流水のような青色の衣装をしたフェアリ―アクア。
土の妖精として、砂金のような金色の衣装をしたフェアリーソイル。
三者三様の衣装をまとったフェアリーガールの人形の造形に、かなみは見惚れた。
「これは受注生産限定フィギュアなんだよ」
「やっぱり! お店で見るより凄い可愛い!」
かなみは目を輝かせる。
かなみはフィギュアの造形に関して詳しくない。
そんなかなみでさえ、一目見ただけでもアニメで見たときと同じような可愛さがこの場に現界したかと感じるくらいに出来の良さが伝わってくる。
「ちなみに、これおいくら万円したんですか?」
「お、おお、よ、よ、よくぞ聞いてくれました! 実はですな……――一体三万円でござる!」
「さ、さささ、三万!? そ、そそ、そそれが、三人分だから……つまり!」
「合計で九万円したでおじゃる」
「きゅ、きゅー、きゅーまんえん!?」
かなみはあまりの金額に泡を吹く勢いで震える。
「ある意味、おばけより怖いわね」
みあはわりと真面目な顔つきでコメントする。
「おばけとどっちが怖いかって問題ね」
「おばけとどっちが怖いか……うーん、うーん」
「いや、真面目に考えなくてもいいわ」
かなみは深刻な表情をして悩みだすものだから、みあはツッコミを入れる。
「んで、このフィギュアが動いたの?」
みあが本題を切り出す。
「そ、そそ、そうなんですよ。よ、よ、夜眺めてから眠りについて、ああ、朝起きたら、べ、べ、別の場所に移ってたりしてたんですよ」
和春は震え声で話す。
それが余計にかなみを恐怖感を与えた。
「ひいいい、みあちゃん、やっぱりおばけだよ!? フェアリーガールのおばけだよ!?」
「フェアリーガールじゃなくて、フェアリーガールのフィギュアでしょ!」
「あ、そ、そうだったわね……」
「まったく、勝手にフェアリーガールをおばけ扱いしたら、皆木希奈が怒るわよ」
「う、うん……そうだね」
かなみは苦笑する。
「なんと、あなた方は皆木希奈を知ってるんですか!?」
「あ、はい、一応知り合いです」
かなみはあっさり答える。
「……マジすか!?」
和春は驚愕し、拝み始める。
「え、え、どうしたんですか!?」
「あんたが余計なこと言うからよ」
みあは、面倒なことになったとため息をつく。
「て、て、天使のように可愛らしいと思ったら、ほほ、本当に、か、神からの使いだったとは……!」
「え、神の使い、どういうこと!?」
「言っておくけど、あたし達は皆木希奈とは知り合いだけど、そんなに親しいわけじゃないからあたし達に取り入っても無駄よ」
戸惑うかなみに対して、みあは冷めた対応を和春に対してする。
「そ、そそそ、そんな、よよ、邪な気持ちで、いい、言ってるわけじゃありませんぬ!!」
和春は力いっぱい否定する。
「希奈ちゃんのファンだったんですね」
「信者といってもいいでございます!!」
「そこは胸を張って言えるのね……」
みあは呆れる。
「それで話を戻すけど、夜動いてた人形は朝どこにいたの?」
「お、おお、それですか!? ど、ど、どこと言われましても!? たた、確か、け、今朝はそこです」
和春は窓際を指す。
「そそ、それがしはそんなところに配置した覚えはなくて、た、た、大層驚きました!」
「そうですか、それはメチャクチャビックリしたでしょうね!」
「お、おお、わ、わかっていただけますか!?」
「わかります!」
やはり意気投合するかなみと和春。
「……窓際ね」
そんな二人をよそに、みあは窓を開けて外を見てみる。
「みあちゃん、何かわかった?」
「……同じね」
みあは言う。
「同じってことは……」
「この人形にも魔力が残ってるわ」
「ってことは、おばけ?!」
「早とちりするな! ひとまずもうここには用はないわ!」
「そ、そそ、それがしはもう用済みだと!?」
和春は騒ぎ立てる。
「ええ、そうよ。もう用済みよ」
みあははっきり言ってやる。
「ががーん!!?」
和春は目に見えてがっかりする。
「ほら行くわよ、かなみ」
みあはかなみの手を引いて、部屋を出ようとする。
「あ、う、うん。それじゃお邪魔しました」
かなみとみあは部屋を出ていって、和春は一人呆然とする。
「……ほ、ほほ、本当に、今の時間は、げげ、現実だったんでしょうか」
不意にみあが呼びかけてくる。
「何、みあちゃん?」
「ちょっと頼みたいことがあるんだけど」
「みあちゃんからそう言ってくれるなんて……」
珍しいと、かなみは思った。
「仕事のことなんだけど、手伝ってもらいたいのよ」
「仕事だったらなおさらよ」
「でも、かなみが断りそうだから……」
「みあちゃんが手伝って欲しいっていうんなら、なんでも手伝うわよ!」
「へえ、なんでも……」
みあは不敵に笑う。
「それじゃ、お願いするわね。『おもちゃのポルターガイスト騒動』」
「え? 今なんて?」
「『おもちゃのポルターガイスト騒動』」
「『おもちゃの……」
「――ポルターガイスト騒動』」
かなみは回れ右する。
「この話は無かったことに……」
「――ならなわいよ!」
みあはかなみの髪を引っ張って引き止める。
「痛い!? 痛いよ、みあちゃん!?」
「あんた、なんでも手伝うって言ったじゃない」
「なんでもって言ったけど……おばけは別よ!」
「おばけじゃなくてポルターガイストでしょ」
「ポルターガイストはおばけでしょ!」
「まだそうだと決まったわけじゃないから! 怪人の仕業かもしれないでしょ」
「……本当?」
「だから、それを確かめに行くんじゃないの」
「おばけだったらどうするの!?」
「おばけだったら千歳になんとかしてもらえばいいでしょ」
「千歳さん、なんとかしてくれる!?」
『はーい、私のことを呼んだ』
「きゃぁぁぁぁぁぁッ!?」
唐突に千歳の声がした。
『いきなり、きゃあって可愛いわね、かなみちゃん』
「千歳さん、どこですか? どこにいるんですか?」
かなみはオフィスを見回す。
千歳は確か仙人になるべく山奥で修行中の身のはず。オフィスにいるはずがない。だったら、この声は……
「声はすれども姿は見えず」
みあは言う。
「もしかして、おばけ!?」
かなみは青ざめる。
「千歳は元からおばけでしょ」
『おばけから仙人になるため、修行中です!』
「でも、なんで声が!?」
「電話でしょ。糸電話の要領で声を飛ばしてきたんでしょ」
『そうなのよ! さすがみあちゃん! 一緒に仙人になりましょう!』
「……ならない」
みあはそっけなく答える。
『みあちゃんのいけず~~!』
「千歳さん、テンション高いですね」
『だって、久しぶりの会話よ。悠亀様は必要な時以外喋らないし、コウちゃんはたまにしか来ないから寂しかったのよ』
「はいはい、それじゃ、あたし達は仕事で出るから」
「え、まだ私行くって了承してないんだけど」
『そうよ! かなみちゃんはここで私とお喋りするんだから!』
「そ、それはさすがに……」
みあはため息をつく。
「ボーナス、七三でどう?」
「行く!」
かなみは即決だった。
ボーナスを七割もらえるというのはあまりにも魅力的な提案だった。
『あーん、かなみちゃん、みあちゃん!』
千歳は引き止めようとする。
『それでここが現場なのね』
千歳もついてきた。声だけだけど
「千歳さん、視えるんですか?」
『うん、修行の甲斐あってね! 糸先に』
「でも、その糸はどこにあるんですか?」
『かなみちゃんの髪の毛』
「え、どこ!?」
かなみは髪の毛を掻いてみる。
『髪の中の糸の一本はわからないわよ』
「気をつけなさいよ。そのうち、身体を乗っ取ったりしてくるから」
「え、乗っ取る!?」
『そんなこと、今はしないわよ』
「今は!?」
かなみは身震いする。
「そ、そういえば……前に、身体を貸したことが……」
『あの時は緊急事態だったから。ほらあの釜須って人を助けるためにやむを得ないことだったのよ』
「そうだった、かしら……」
かなみの記憶はあやふやだった。
「別に、乗っ取ってもいいけど、仕事はちゃんと果たすのよ」
「みあちゃん、ひどい……」
「それじゃ、行くわよ」
かなみのぼやきを聞き逃して、みあは進む。
『おもちゃのポルターガイスト騒動』
その騒動があったマンションにやってきた。
このマンションは八階建てでその八階の住人達の話によると、夜な夜な子供のおもちゃが動き出すそうだ。
はじめは子供達が騒ぐだけだったけど、やがて親達もおもちゃが動いているところを目撃したため、マンションやその近所で噂で広まりつつあった。
「っていうのが現状なんだけど……」
みあは鯖戸から受け取った書類を読み上げていると、ガクガクという音が聞こえたような気がしたので、かなみの方を見る。
「ガクガク……」
「めちゃくちゃ震えてるわね」
みあはその様子を見て、クスクスと笑う。
「それじゃ、現場検証といきましょうか」
「いやああああッ!?」
「うるさいわね、近所迷惑でしょ」
「現場検証って言っても、どうやって入るの? もしかして忍び込むの?」
「それもありだけど」
「ありなの!?」
「見つかったら面倒だから、面倒な手で行くわよ」
「面倒だから面倒な手??」
かなみは首を傾げる。
「正攻法で入るってことよ」
「え、どうするの?」
「ここにこの階の住人リストがあるわ」
みあは書類をかなみに見せる。
「ここには色々な情報が乗ってるわ。部屋の家族構成、生年月日、勤め先、学歴……」
「ぷ、プライバシー……」
「使える情報は利用するものよ」
「ハァハァ、お嬢はリアリストだからな」
イシィが自慢気に言う。
「そこはちょっと、かなみにも見習って欲しいところだよね」
「うーん、そうだけど……そういうことができるのは、みあちゃんが頭いいからよ。私には無理、かな……」
かなみは素直に言う。
「ほ、褒めてもボーナスは出ないわよ」
みあは照れくさそうに言う。
「それじゃ、最初のとこから行ってみましょうか」
みあは七○一号室の前に立つ。
「七○一号室……川田家、父母子供一人の三人家族、両親は共働きで今は子供の小学一年生の男の子が留守番しているわ」
みあはインターフォンを鳴らす。
ピンポーン、と鳴ってすぐに、ドア越しから足音がして扉が開く。
「はーい」
扉を開けたのは男の子だった。
「こんにちは」
みあは挨拶する。
「誰?」
「隣のクラスの阿方よ」
「隣のクラスに阿方さんなんていたっけ」
「隣の学校のよ」
「え、知らない子なんだけど」
「あたし、このマンションで夜な夜なおばけが出るって聞いたのよ」
「おばけ!?」
かなみはビクッと震える。
「あんたが反応してどうすんのよ!」
みあは振り向いてツッコミを入れる。
「というわけで、おばけを探しにきたんだけど」
「おばけ……」
男の子はそう言われて、部屋の方を見る。
「夜におもちゃが動くんだよ」
「おもちゃが動くのを見たの?」
「う、うん……お父さんやお母さんに言っても、夢を見てたんだって言われちゃって……」
男の子はブルブル震えながら話す。
「わかる! わかるわよ! 怖いわよね!」
かなみはその震えに同調する。
「う、うん……」
「かなみ、あんたは黙ってて……」
みあは呆れつつ、かなみを引っ込める。
「んで、その動いてたおもちゃ、見せてくれない?」
「うん、いいよ」
男の子はあっさり承諾してくれた。
(みあちゃん、頼りになる……)
かなみは内心そう思った。
みあの喋り方は小学生には見えないくらい、頼もしさを感じられた。
男の子の方も相談できる相手が欲しかったので、あっさりと部屋に入れてくれた。
「こっちだよ」
みあとかなみは、男の子の部屋に案内された。
部屋には、漫画の本棚、ランドセルがのっている勉強机、布団がひるがえったベッド、それに隅におもちゃ箱があった。
(男の子の部屋って感じ……)
散らかっているというほどのものはないけど、適度に床には物が置かれたままになっている。
かなみはそれらを含めてそんな印象を受けた。
「夜中に動いてたおもちゃって?」
「これだよ」
男の子はロボットのおもちゃをおもちゃ箱から取り出す。
「ひ、おばけ!?」
「ただのおもちゃよ」
みあはツッコミを入れつつ、おもちゃを見る。
「ギガンダーね」
そのおもちゃは、アニメ『超電銅機ギガンダー』に登場するロボットだった。
「見覚えがあると思った」
かなみは普段ロボットアニメは見ないものの、そのロボットのことは知っていた。
(みあちゃんのお父さんの会社がスポンサーをやってるし、戦ったこともある……)
脳裏にその時の戦いの光景がよぎる。
ネガサイドが使うダークマターという魔法によって、怪人のように動き出して襲いかかってきた。あれには物凄く苦戦した。
「見たところ、ただのおもちゃね。動きそうにないけど……」
「でも、本当に夜に動いてたんだよ」
「わかってるわ」
男の子の主張をみあは聞き入れつつも、ギガンダーのおもちゃをじっくり見る。
「ど、どう……?」
かなみは不安げに訊く。
かなみからすると、おもちゃが突然動き出すなんて心霊現象が今に起こらないか不安でたまらない。
「動きそうにないわね」
「それじゃ、今はおばけがいないってこと?」
「そういうことになるわね。他に動いたりしてたおもちゃはないの?」
「うーん……」
みあが問われて、男の子は考える。
やがて、おもちゃ箱をまさぐって、取り出す。
「これも歩いてたかも」
「ひ!」
かなみは条件反射でビクッとする。
「いちいち驚かないの。ま、見てる分には楽しいけど」
「人のリアクション見て楽しまないでよ」
かなみとしては、見世物でやってるわけじゃないのに。
「……お姉さん達って、芸人なの?」
男の子が訊く。
「はあ? そんなわけないでしょ! あ、でも、こいつはある意味芸人かもしんない」
「どういう意味で!?」
「身の振り方が芸人みたいなものでしょうが」
「私の借金は芸じゃないんだけど!?」
「あははははは!!」
男の子が笑い出す。
「ほら、この子にもウケたじゃない」
何故かみあは得意げである。
「なんでウケたのかわからないけど……」
かなみの心境は複雑だった。
「それで、そのおもちゃはどうなの? やっぱりおばけ??」
かなみはみあの手に持ったおもちゃに対して問う。
「おもちゃがおばけなわけないでしょ。そうね、これは……よくできたゴドランね」
ゴドランというのは怪獣映画に出てくる街を襲う大怪獣で、これはそのゴドランを模したおもちゃで、スイッチを入れる鳴き声が出るくらいのおもちゃだ。
「………………」
みあはこれまたじっくりとゴドランを見る。
やがて、ゴドランを男の子に渡して言う。
「大事に使って、遊びなさいよ」
「う、うん……」
かなみとみあは、それ以上見るものはなくなったので、部屋を出た。
男の子からの印象が良かったのか、出る際に「また来てね」と言ってくれた。
「いい子だったわね」
「そうね……」
みあは真剣な表情で答える。
「どうしたの、みあちゃん? あのおもちゃで何もわからなかったから怒ってるの?」
「別に怒ってなんかない」
「そう……」
「でも、魔力がちょっと残ってたわ」
「え!?」
「何かが取り憑いてたって可能性はゼロじゃないわ」
「そ、そんな……」
かなみはブルブル震えながら、今出てきたばかりの部屋を振り返る。
「まだおばけと決まったわけでもないわよ」
「そ、そうよね! うん、おばけなんていない!」
『かなみちゃんはげんきんね』
「きゃーおばけ!?」
唐突にきた千歳の声に、かなみは驚かされる。
『失礼しちゃうわね。せっかく空気を読んで黙ってたのに』
千歳はぼやく。
そりゃ、おもちゃが動き出す心霊現象で怖がっている男の子の前で、いきなりこんな声がしたら男の子は恐れ慄いて会話どころじゃなくなって
そういう意味では空気を読んで黙っていてくれたのはありがたい。
しかし、それはそれとして。
「いきなり声がするとびっくりしますよ」
「第一、千歳は本当におばけなんだから失礼にならないでしょ」
『あら、そうだったわね。これは一本取られたわ、あはは』
みあの指摘に千歳は楽しそうに笑う。
かなみやみあと会話できるのがそんなに嬉しいのか。
「それで、あんたはあの部屋、どう思ったの?」
『うーん、特におかしなところは感じられなかったわね』
みあの問いに、千歳はそう答える。
「千歳さんが感じないってことは、おばけはいないってことですか?」
かなみは、少し嬉しそうに訊く。
おばけが相手じゃないとなると、かなり安心できる。
『そうとも限らないわよ。糸を伝って感じられるのはそれなりに強い魔力だけよ。本当の私は山奥なんだから、感知能力はその場にいるみあちゃんの方がよっぽど高いわよ』
「そうなると、この騒動の犯人がいるとしたら、感知しづらいくらい弱いやつか、あるいは、感知させないくらい強い魔力で隠蔽する魔法が使えるやつかの極端な二択ね」
『どっちにしても、まだおばけの仕業の可能性もあるわね』
千歳は楽しそうに言っているけど、かなみにとっては寒気が走るような冷淡な一言に聞こえて仕方がなかった。
「それは、どっちにしても……怖いですね」
かなみは青ざめる。
「まだ一件目だから結論を出すの早いわね」
みあはそう言って、七○三号室の前へ移動する。
「それじゃ、次ね」
「次も今みたいにあげてもらうの?」
「ええ、そうね。次も三人家族よ。この時間、子供は塾に行ってるわ」
「塾? それじゃ、あげてもらえないじゃないの?」
「ま、見てなさい」
みあは七○三号室のインターフォンを鳴らす。
「はい」
母親と思われる大人の女性が出てくる。
「こんにちは」
みあは笑顔で言う。
その声は、普段のみあから想像もつかないほど明るいもので、かなみは驚く。
「誰?」
「娘ちゃん、いますか?」
「めぐは今塾に行ってるんだけど」
「そうなんですか……今日これから遊ぶ約束してたのに……」
みあは平然と嘘をつく。
「遊ぶ約束……?」
「はい、今日学校の帰りでしたんです。そうだよね、お姉ちゃん?」
「おね!?」
かなみは急にふられて驚かされる。
「はい、めぐちゃんとは妹ともども仲良くさせてもらってます」
とりあえずアドリブをきかせた。
「そうなの……」
母親は困った顔をする。
やがて、意を決したかのように言う。
「それじゃ、とりあえずあがって」
母親は案内してくれた。
中に入ると同じマンションなので、先程の川田家と同じ作りで、男の子のときと同じ配置に部屋があった。
「ゆっくり待っててね」
母親はそう言って、かなみとみあを部屋に入れて扉を閉める。
「さて」
みあはスイッチを切り替えるように、人懐っこい陽気そうな顔から真剣な顔に一変させる。
「みあちゃん、お姉ちゃんって……?」
「小学生同士なのに、中学生とかいるのはおかしいでしょ。お姉ちゃんってことにした方が都合良かったのよ」
「じゃなくて、お姉ちゃんって、そんな呼ばれ方したのは初めてだから」
「……なんで嬉しそうなのよ」
みあはため息をつく。
面倒なことを言っちゃったかと。
「それで、この部屋でも夜に動き出すおもちゃがあるみたいだけど」
みあは部屋を見回す。
「あれが怪しいわね」
「アルヒ君とミーアちゃん?」
勉強机に愛くるしい男女ペアの人形を指す。
ちなみに男の子がアルヒ君で、女の子の方がミーアちゃん。
「これにもさっきと同じような魔力が残ってるわね」
みあは言う。
「え、つまりこの人形は、おばけ!?」
「いえ、普通の人形よ」
「この人形……みあちゃんの部屋にもあったよね?」
「ん、ああ、そうね」
「このうちの子も好きなんだね」
「まあ、よく売れてるみたいだし」
みあはそこから目を背けるように辺りを見回す。
あれが、みあがよくしている照れ隠しの仕草であることを、かなみはよく知っている。
「前の部屋と同じみたいね。人形からちょっと魔力を感じるくらいで、おかしなところは何もないわ」
みあは立ち上がる。
「さ、出ていくわよ」
かなみはみあに言われるまま、一緒に出ていく。母親には「急用を思い出した」と言って。
「ねえ、みあちゃん?」
「何?」
みあは面倒そうに訊く。
「これって、私がいなくてもよかったんじゃない?」
「そうね」
みあはあっさり肯定する。
「……え?」
「そう言って欲しかったんじゃないの?」
「いやいや、そこは「そんなことないよ」とか、「どうしても、かなみが必要だった」とか、言ってくれる、とか?」
「なんでそこで疑問形なのよ? それにそんなこと言うわけないじゃない」
「えぇ~」
『みあちゃん、照れ屋さんだから本当にそう思っていても、口には出さないってことよ、かなみちゃん』
千歳がフォローを入れる、
「千歳、余計なこと言ってると切るわよ」
かなみの身体の何処かにつけられた『魔法の糸』、みあならそれを見つけて『切る』ことができる。それに加えて通話を『切る』をかけた言い回しだ。
『みあちゃん、脅さないで』
「まあまあ、いきなり切らないのがみあちゃんの優しさですよ」
『そうね』
「かなみも余計なこと言ってると、この仕事きるわよ」
首をきるという意味だった。
ちなみに、首をきられるということは、ボーナスはもらえないということだ。
「ごめん、みあちゃん! 許して! この仕事を首になったら生きていけない!」
わりと今月の生活費はピンチなのである。
「許して欲しかったら、次にあたしが言うことをききます」
「なんでもききます!」
「ふうん、なんでも?」
みあはニヤリと笑う。
その瞬間、かなみは墓穴を掘ったと自覚する。
ピンポーン
かなみは七○六号室のインターフォンを鳴らす。
「………………」
しかし、一度鳴らしてもこないので、もう一度鳴らす。
「誰でしょうか?」
小太りの男性が出てくる。
「……ん?」
男性はかなみを見るなり、我が目を疑う。
「あ、あの、ど、どど、どちら様でしょうか?」
「あなたに聞きたいことがありまして?」
「き、きき、聞きたいことですか?」
「マンションに最近出るみたいなんですけど」
「最近出るというと」
「お、お、おばけ、なんですけど!」
「お、お、おばけ!?」
かなみと男性の声の震えが同じになっている。
「シンクロしてるわね」
後ろから見守っているみあは呆れて言う。
「おおおばけが出るって聞いたんですけど、本当ですか!?」
「おおおばけが出るなんて!? 聞いたことありませんし!?」
「よ、夜な夜な夜な夜なおもちゃが動くって知りませんか!?」
「……おもちゃが動く?」
男性の震えが止まる。
「お、おお、おもちゃというのは、がが、玩具という、い、い、意味でしょうか?」
それまでの震えが嘘のように、かなみへ問いかける。
「はい、玩具のおもちゃです。それで、動くんですか? おばけみたいに」
「そ、そそ、それがですね。じじ、実は、それがしは、昨夜目撃したのですよ?」
「はひ!? 目撃したって、おばけをですか!?」
かなみは食い込むように、男性へ迫る。
「はひ!?」
男性はかなみと同じような悲鳴をあげる。
「そ、そそ、それがし、リアル少女にそこまで接近されるなんて、め、めめ、滅多にないので!」
「リアル、少女……? 魔法少女みたいなものですかね……?」
「魔法少女!? ななななんとも、すす素敵な響き!? ああ、それで動いてたのは」
「それ、見せてください!」
「み、みみ、見せて!?」
「あ、いえ、やっぱりいいです」
驚く男性を見て、かなみは我に返って、やっぱりおばけが怖くなる。
「い、いいです!? あ~やっぱりボクの部屋に上がるなんて無理ですよね!?」
「あ、いえいえ、そういうわけじゃないんです!?」
「な、なな、なんなんと、きき、君はボクの部屋にあがりたい、と!?」
「あ、えっと、そういうわけじゃなくて……いえ、やっぱりそういうわけで!?」
「どっちなのよ!?」
みあは我慢できずにツッコミを入れる。
「……ほあああ、も、もも、もう一人幼女が、そ、そそれがしの目の前に!? これは夢でおじゃるか?」
「あ~気持ち悪い……だから、かなみに任せたかったのに……」
みあは恨めしげな視線を、かなみへ向ける。
「ごめん、みあちゃん……どうしても、おばけが怖くて」
みあはため息をつく。
「あんた、クビ」
「ええ、そんな!?」
残酷に告げられる。
「お、おおお、おばけは怖いけど、私頑張るから!!」
かなみは必死な目つきで嘆願する。
「それじゃ、挽回のチャンスあげるわ」
「チャンス?」
かなみは首を傾げると、みあは男性の方を向く。
みあの鋭い目つきを受けて、男性は「ひ!」と小さく悲鳴を上げる。
「あんた? あたし達を部屋にあげなさい」
「よ、よよよ、幼女二人が、そそ、それがしの部屋に!?」
「ええ、そうよ。そこで見たいものがあるのよ」
「お、おお、ということは、我がコレクションの見学ですな!?」
男性は嬉々として、扉を大きく開ける。
「そ、そそれでは、よ、よ、幼女二人をご案内いたしまする」
かなみとみあは部屋に上がる。
「言っておくけど、変なことしようとしたら、すぐに通報だからね」
みあは強い語気で、男性へ釘を刺す。
「は、はひ、わかっております! それがしはし、しし、しん、紳士ですから!」
男性はたどたどしい口調で答える。
「変なことって?」
かなみはみあに訊く。
みあは、かなみの無知さに呆れる。
「知らない方があんたの幸せよ」
はぐらかされた。
「ところで」
かなみは男性に問いかける。
「はい、なんでしょうか?」
「幼女二人って、みあちゃんはわかるんだけど、私のこと?」
「ほほ、他に、だだ、誰がいるんでしょうか??」
「私、中学生よ」
かなみは制服をアピールする。
「ちゅ、ちゅちゅ、中学生? てててっきり、コスプレかと?」
「コスプレ!?」
「あんた、勘違いされやすいから」
「み、みあちゃん?」
「まま、ちゅちゅ、中学生も、よよ、幼女ですから」
「え、そうなの?」
かなみは首を傾げる。
「そのあたりは人によって違うわね。幼稚園児までとか。小学生までとか、あと中学生も幼女っていう輩もいるわね」
みあが補足する。
「イ、イエス! な、な、なんだか、気が合いそうな幼女殿でおじゃるな!」
「気が合いそうでも、近寄るな!」
みあは拒否する。
「お、おお、オッケー! しし、紳士のエチケットでござる!」
「あ~ちゃんとわきまえてるわね」
「もしかして、似た者同士なの?」
『同族嫌悪かもしれないわね』
ちなみに千歳のこの声は、かなみとみあにだけ聞こえるくらい小さいものだった。
「怖気が走るからそういう事言わないで」
みあは青筋を立てて言う。
「……は、はい」
これ以上言うと本当に首かもしれないので、かなみは口にチャックをつける想いだった。
「さ、こ、ここです!」
奥の部屋に案内される。
男の子、女の子と同じ位置だった。
「西倉和春」
みあは男性の名前を呼ぶ。
リストを読み上げるように言う。
「一人暮らし。在宅勤務のシステムエンジニア、その趣味はおもちゃと人形のコレクション」
案内された部屋はそのコレクションであるおもちゃと人形がズラッと並び立てられていた。
「凄い……!」
かなみは思わず感嘆の声を漏らす。
「そ、そ、そんなに、大したものじゃないけど……」
「いえ、大したものよ」
謙遜する和春に対して、みあは素直に称賛する。
「こんだけちゃんとしたコレクションなのは、予想外ね」
「そ、そ、そうでございますか……そ、そう言われると、う、嬉しいですね……」
「でも、こんだけちゃんと並べられてると、ちょっと動いただけですぐわかるわね」
「そ、そうなんですよ!」
みあの発言に、和春は食い気味に言う。
「あ、朝起きたら、はは、配置が変わってたりすることがあって! お、おかしいなと思ってたりして!」
「それで、おばけの仕業って!」
かなみは得心を得たように発言する。
「そう、おばけ! あるいは泥棒!」
「泥棒って何か盗まれたんですか?」
「いいや、な、何も盗めれてないですよ! ここ、このとおり、ちゃ、ちゃんと配置してるから無くなってたらすぐ」
「なるほど……それじゃ、やっぱりおばけの仕業でしょうか!?」
かなみは青ざめた顔をして言う。
「ひいいいい、お、おお、おばけですか!?」
「そうですよ、おばけですよ!!」
「……あんた達、仲良いわね」
変なところで意気投合しているかなみと和春を見て、みあは呆れる。
「それで、何が動いてたのかわかるの?」
みあは部屋を見回して訊く。
「は、はい……こ、これでして……」
和春は、恐る恐るそれらを指差す。
「フェアリーガール……」
かなみはその人形の名前を言う。
「そ、そそ、そうなんですよ! こ、ここ、これは『魔法妖精フェアリープリンセス』のフェアリーガール達ですよ!」
「フェアリーフラワー! フェアリーアクア! フェアリーソイル!」
かなみもアニメ『魔法妖精フェアリープリンセス』を見ていて好きなので、テンションが上がった。
花の妖精として、花びらのようなピンクの衣装をしたフェアリフラワー。
水の妖精として、流水のような青色の衣装をしたフェアリ―アクア。
土の妖精として、砂金のような金色の衣装をしたフェアリーソイル。
三者三様の衣装をまとったフェアリーガールの人形の造形に、かなみは見惚れた。
「これは受注生産限定フィギュアなんだよ」
「やっぱり! お店で見るより凄い可愛い!」
かなみは目を輝かせる。
かなみはフィギュアの造形に関して詳しくない。
そんなかなみでさえ、一目見ただけでもアニメで見たときと同じような可愛さがこの場に現界したかと感じるくらいに出来の良さが伝わってくる。
「ちなみに、これおいくら万円したんですか?」
「お、おお、よ、よ、よくぞ聞いてくれました! 実はですな……――一体三万円でござる!」
「さ、さささ、三万!? そ、そそ、そそれが、三人分だから……つまり!」
「合計で九万円したでおじゃる」
「きゅ、きゅー、きゅーまんえん!?」
かなみはあまりの金額に泡を吹く勢いで震える。
「ある意味、おばけより怖いわね」
みあはわりと真面目な顔つきでコメントする。
「おばけとどっちが怖いかって問題ね」
「おばけとどっちが怖いか……うーん、うーん」
「いや、真面目に考えなくてもいいわ」
かなみは深刻な表情をして悩みだすものだから、みあはツッコミを入れる。
「んで、このフィギュアが動いたの?」
みあが本題を切り出す。
「そ、そそ、そうなんですよ。よ、よ、夜眺めてから眠りについて、ああ、朝起きたら、べ、べ、別の場所に移ってたりしてたんですよ」
和春は震え声で話す。
それが余計にかなみを恐怖感を与えた。
「ひいいい、みあちゃん、やっぱりおばけだよ!? フェアリーガールのおばけだよ!?」
「フェアリーガールじゃなくて、フェアリーガールのフィギュアでしょ!」
「あ、そ、そうだったわね……」
「まったく、勝手にフェアリーガールをおばけ扱いしたら、皆木希奈が怒るわよ」
「う、うん……そうだね」
かなみは苦笑する。
「なんと、あなた方は皆木希奈を知ってるんですか!?」
「あ、はい、一応知り合いです」
かなみはあっさり答える。
「……マジすか!?」
和春は驚愕し、拝み始める。
「え、え、どうしたんですか!?」
「あんたが余計なこと言うからよ」
みあは、面倒なことになったとため息をつく。
「て、て、天使のように可愛らしいと思ったら、ほほ、本当に、か、神からの使いだったとは……!」
「え、神の使い、どういうこと!?」
「言っておくけど、あたし達は皆木希奈とは知り合いだけど、そんなに親しいわけじゃないからあたし達に取り入っても無駄よ」
戸惑うかなみに対して、みあは冷めた対応を和春に対してする。
「そ、そそそ、そんな、よよ、邪な気持ちで、いい、言ってるわけじゃありませんぬ!!」
和春は力いっぱい否定する。
「希奈ちゃんのファンだったんですね」
「信者といってもいいでございます!!」
「そこは胸を張って言えるのね……」
みあは呆れる。
「それで話を戻すけど、夜動いてた人形は朝どこにいたの?」
「お、おお、それですか!? ど、ど、どこと言われましても!? たた、確か、け、今朝はそこです」
和春は窓際を指す。
「そそ、それがしはそんなところに配置した覚えはなくて、た、た、大層驚きました!」
「そうですか、それはメチャクチャビックリしたでしょうね!」
「お、おお、わ、わかっていただけますか!?」
「わかります!」
やはり意気投合するかなみと和春。
「……窓際ね」
そんな二人をよそに、みあは窓を開けて外を見てみる。
「みあちゃん、何かわかった?」
「……同じね」
みあは言う。
「同じってことは……」
「この人形にも魔力が残ってるわ」
「ってことは、おばけ?!」
「早とちりするな! ひとまずもうここには用はないわ!」
「そ、そそ、それがしはもう用済みだと!?」
和春は騒ぎ立てる。
「ええ、そうよ。もう用済みよ」
みあははっきり言ってやる。
「ががーん!!?」
和春は目に見えてがっかりする。
「ほら行くわよ、かなみ」
みあはかなみの手を引いて、部屋を出ようとする。
「あ、う、うん。それじゃお邪魔しました」
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ファンタジー
「この先は分からないな」
帰れると言っても、時間まで同じかどうかわからない。
さて。
「とりあえず──妹と家族は救わないと」
あと金持ちになって、ニート三昧だな。
こっちは地球と環境が違いすぎるし。
やりたい事が多いな。
「さ、お別れの時間だ」
これは、異世界で全てを手に入れた男の爛れた日常の物語である。
※物語に出てくる組織、人物など全てフィクションです。
※主人公の癖が若干終わっているのは師匠のせいです。
ゆっくり投稿です。
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