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第121話 埋没! 眠りし財宝を少女は起こす! (Aパート)
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「埋蔵金探しに行きましょう!!」
真昼のオフィスにて、唐突にかなみは拳を振り上げる。
「またいくら借金したのよ?」
みあは極めて冷静に訊く。
「借金は増えてない!!」
「借金で頭に血が回らなくなったんじゃないの」
「借金にそんな効能が」
「億単位の借金するとそうなるってことをあんたから知見を得たわ」
「ってことは、みあちゃんも借金すると私みたいになるってことじゃないの?」
「えッ!?」
みあはメチャクチャ嫌そうな顔をする。
「考えたこと無かったわ……借金したら、かなみみたいになるのか……」
さらに深刻そうに考え込む。
「親父が事業失敗したら、億単位の借金は……ありえない話じゃないし……」
「あ、みあちゃん、そんな考え込まないで! とにかく! 私は埋蔵金探しに行きたいの!」
かなみは再び拳を振り上げる。
「あ~はいはい、埋蔵金ね」
急にみあは雑に返事しだす。
「探しにいけばいいじゃない、どうせ見つからないんだから。好きでしょ、骨折り損のくたびれ儲け」
「みあちゃん、ひどい……別に好きなわけないじゃないからね」
「まあ、好きな人なんて普通いないわね」
「みあちゃん、次にあんたは普通じゃないけど、って言いそう」
「……う、なんでわかったのよ?」
「みあちゃんならそう言うと思ったから」
「……く、ワンパターンになってきたか。こりゃちょっと反省ね」
「あ、みあちゃん、そんなに深刻そうに考えなくても……私がみあちゃんのことをわかってきたわけだから」
「それがむかつくっていうの!」
「なんで?」
かなみは純粋に疑問だった。
「んで、一応訊くけど、なんで埋蔵金探しに行こうなんて言い出したの?」
「これみて」
かなみは手元にある雑誌をみあに渡す。
「『絶対発見全国埋蔵金百スポット』」
「ね、日本にはこんなには埋蔵金がこんなにあるのよ! 一つくらい掘り当てたら、私の借金はチャラになる! あ~夢のある話ねえ!!」
「所詮、夢は夢でしょ」
みあは雑誌をかなみに投げ返す。
「まああんたみたいな夢見るバカがいるから商売が成り立ってるのよね」
「みあちゃんは夢は見ないの?」
「あたしはそういう夢を見る年頃は過ぎたのよ」
「そうよね、その雑誌、みあちゃんが持ってきたものだからね」
あるみが社長席から言ってくる。
「な!?」
「あ~これ、みあちゃんのものだったのね。てっきり会社の備品かと」
「あるみ、何いらんこと言ってるの!?」
「本当のこと言っただけよ。まいぞーきん、まいぞーきん、って目を輝かせるみあちゃん可愛かったわね」
あるみは楽しそうに語る。
「それがいらんことだって言ってるのよ!?」
みあは怒りでワナワナと身体を震わせる。
「社長、そのときのことはビデオにとってないんですか」
「やめなさい! 怒るから!」
みあはかなみを止める。
「それで、みあちゃん。どうして埋蔵金に興味がなくなったの?」
「そんなの……ないってわかったからよ」
「ええ、ないの!?」
「むしろ、あるって本気で信じてたの?」
みあはちょっと驚く。
「本気も本寄よ! だって、ないと私が困るもの!」
「あんたの都合で埋蔵金は埋まっちゃいないのよ」
みあの厳しいツッコミが飛ぶ。
「それはそうだけど……でも、埋蔵金を掘り出してそれで私の借金をチャラにできる夢を諦めきれないのよ!」
「そんな夢さっさと捨てて、借金をコツコツ返す現実に戻りなさい」
「コツコツで返せるんなら夢は見ないわよ」
「あ、そうだったわね」
みあは嘲笑する。
「だから、夢を見るのよ! 埋蔵金を掘り出すのよ!!」
「あ~やっぱりそこにもどるわけか」
みあは面倒くさそうに言う。
「何々? 何を掘り出すって?」
そこへ唐突に床から伸びてきた影が質問を投げかけてくる。
「きゃああああああ、おばけええええええッ!?」
かなみは大いに悲鳴を上げる。
「よくみなさい。千歳でしょ」
「え、千歳さん!? やっぱり、おばけじゃないの!?」
「おばけ扱いなんて失礼ね」
千歳は微笑みを崩さず、優しく抗議する。
千夜千歳は、糸を操る魔法少女なのだけど、
「いや、実際おばけでしょ、あんた」
「みあちゃんまでそういうこと言うのね。そりゃ長いことおばけやってきてはいたけど、最近はもう仙人みたいなものだからね」
「仙人みたいなものって、仙人じゃないの?」
みあが訊く。
「そこはまだ修行中の身だからね。簡単には本物の仙人にはなれないのよ」
「んで、その修行中の身で何しに来たの?」
「一日休養を貰ったのよ。気分転換してきたらどうだ、と言われてね」
「気分転換でおどかさないでください!」
「でも、そのくらい驚いてくれる人は中々いないからついついおどかしてしまうのよ」
「ついついでおどかされるこっちの身になってくださいよ!」
「なってみたいわね。かなみちゃんが身体をわけてくれるならいいんだけど」
「嫌ですよ!」
かなみは身体を寄せて拒否する。
「それでは、みあちゃん?」
「あたしだって嫌よ!」
みあは即座に拒否する。
「えぇ……合体までした仲だと思うのだけど」
「あれは、やむを得ずでしょ。したくてしたわけじゃないから」
「え、でも、みあちゃん、合体とか結構好きじゃないの? ほら、合体するロボットとか、よく観せてくれるじゃない」
「かなみ、あんたは黙ってなさい!」
「やっぱり、みあちゃん。合体が好きなのね」
千歳は嬉しそうに言う。
「ロボットの合体と魔法少女の合体は別なのよ!」
「そういうものなの?」
千歳は首を傾げる。
「それで、何を掘り出す話をしていたの? イモ?」
「イモじゃありませんよ。埋蔵金です!」
「まいぞーきん?」
千歳は再び首を傾げる。
「これよ、これこれ」
みあは雑誌を千歳へ見せる。
「『絶対発見全国埋蔵金百スポット』。へえ、最近はこういうのが流行ってるのね」
「いや、最近っていうか、それかなり前の雑誌だし、埋蔵金が流行ってたのはあたしが生まれるより前の話だし」
「あ~そういえば、昔会った幽霊さんがブームだって言ってたわね。埋蔵金を狙うトレジャーハンターがどんどんやってきて大変だって」
「え、昔会った幽霊さん? 埋蔵金を狙うトレジャーハンター? どういうことですか?」
「昔会った幽霊さんが埋蔵金を狙うトレジャーハンターがどんどん狙ってくるから守るのが大変ってぼやいているということよ」
「その幽霊さんは埋蔵金を守ってるってこと?」
みあは興味を示す。
「ええ、そうなるわね。昔の藩主様から命じられてずっと財宝を守ってるのよ。死んで幽霊になってからもずっとね」
「し、死んで、幽霊になってからも、ずっと……」
かなみは身震いする。
「でも、幽霊まで出てきたら、ちょっと信憑性があるじゃないの」
みあが言う。
「え……? 信憑性って?」
「埋蔵金よ。億単位のやつ。夢なんでしょ?」
「あ、ああ、そうだったわ! で、でも、幽霊が……」
「幽霊だったら、友達よ。最初に会ったら刀を向けられたけど、幽霊にお金は必要ないってわかったら意気投合してね」
千歳は懐かしそうに語る。
「刃を向けられた。もしかして、その幽霊さんは魔法が使えるんですか?」
かなみは不安そうに訊く。
「魔法っていうほどのものじゃないんだけどね。服を斬る程度のことはできるそうです」
「じゅ、じゅ、十分やばいじゃないですか!?」
「大丈夫よ。そこまで見境のない人ではないから」
「千歳さんの大丈夫はそこまで保証がありませんからね」
「かなみちゃん、意外と手厳しいわね」
「それでも、私が一緒に行ったら財宝を分けてもらえないか交渉しにいけるわよ」
「え、財宝を!? う、うーん、うーん……!? うーんうーん!?」
かなみはこれくらいまでにないくらい苦悩する。
「まあ、それでも、決断せざるをえないのよね」
一人離れた位置にいるあるみは楽しそうに言う。
「なんだかこんなことが前にもあったような気がする」
結局、千歳の友人の幽霊が守っている財宝をわけて貰いに行くことにした。
今はその山に向かうバスに乗っている。
みあと千歳が同行している。
「前にもというと……そんなことあったかしら?」
千歳はみあに訊く。
「仙人の修行してるのに、ボケは治ってないのね」
「みあちゃんもきついわね……ということは、みあちゃんは覚えてるの?」
「そりゃもうね。せっかく見つけたお宝がアレだったんだからね」
「アレ……?」
千歳は首を傾げる。
「あ、ああ! 千歳さんに騙されたときよ!」
かなみはそこで思い出す。
「騙したとは、人聞きが悪いわね。私がかなみちゃんやみあちゃんにそんなことするはずがないでしょ」
「髪の毛……」
みあはボソリと呟く。
「髪の毛? ああ、あのときのことを言ってるのね」
それで千歳は思い出す。
以前、かなみ、みあ、千歳で山奥の宝探しに入り込んだことがある。
さんざん駆けずり回った上に怪人まで出てきて、大変な想いをして、ようやくお宝を見つけることができた。
そして、肝心のお宝というのが、千歳の遺髪だった。
かなみとみあにとっては、千歳に騙された気分になるけど、千歳からしてみればそれは紛れもなくお宝だった。
なので千歳からすると騙したつもりはなかった。
かなみとみあ、千歳の認識の齟齬はそのせいだ。
「私の髪を見つけてくれて、二人には本当に感謝しているのよ」
「感謝してるんなら、ちゃんと財宝わけてもらえる交渉してくださいね」
「それについて任せて! 会ったのはもう何十年も前だけど」
「それって、向こうは憶えてるの? あんたみたいにボケてる可能性ってないの?」
みあは訊く。
「大丈夫でしょう、私だって憶えていたし」
「……それがアテにならないんだけど」
かなみとみあにとって千歳は物忘れが激しいおばあちゃんだった。
「大丈夫よ。万が一忘れていても、かなみちゃんとみあちゃんならやられることはないから」
「全然、大丈夫に聞こえないんだけど……」
「嫌な予感がするわ……」
「かなみ、そういう予感って当たるものよ」
かなみとみあは浮かない顔をする。
「帰りたい……」
「埋蔵金手に入れるためでしょ、辛抱しなさい」
「母さんに取りに行ってもらえば良い」
「らしくない人任せ発言してんじゃないわよ」
「だって、だって、幽霊が……!」
かなみは涙目になって文字通りの泣き言を吐いた。
「まったく、幽霊ならここにもいるじゃない」
みあは千歳を指して言う。
「だから、千歳さんも怖いんですよ」
「……傷つくわね」
千歳は顎に手を当てて「やれやれ」といった表情をする。
「あんたらの距離感って変わらないのね」
電車からバスを乗り継いで数時間。木の家が建ち並ぶよくある村にやってきた。
「懐かしい雰囲気がするわね」
千歳は楽しそうに言う。
「はあ……ずいぶんと時間かかったわね」
みあはもうくたびれたと言わんばかりに両腕をだらんとしている。
「山奥だから仕方ないよね。あのあたりとかまだ見つかってない感じがする」
「かなみちゃん、反対の山だよ」
千歳は指摘する。
「え、じゃあ、あの山ですか!?」
かなみはクルッと回って一番高そうな山を指差す。
「それって確かなの?」
「うーん、左隣の山だったかしら? それとも、もう一つ左の山だったかしら?」
千歳がかなりうろ覚えだということがわかり、かなみとみあは不安に駆られる。
「……埋蔵金見つかったら電話して。あたしはここで待ってるから」
「ずるいよ、みあちゃん! 一緒に探そうって言ったじゃない!」
「誰が一緒に探すって言ったのよ!? 千歳が一緒に来いって言うからついてきただよ!!」
「だったら、最後まで一緒についてきてよ!」
「埋蔵金を一目みたら帰る! 逆に言えば、埋蔵金一目見られりゃいいのよ!?」
「みあちゃん、お願い! 一緒にいないと人間が私一人だけになっちゃう!」
「私も人間なんだけど」
千歳が申告してくる。
「千歳さんは幽霊です!」
「幽霊と人間は別カウントなのね」
「そう! そうなの! だから、みあちゃん、一緒に来て!」
「理屈はよくわからないけど、そういうことだったら余計に行きたくなくなるわね」
「そんなこと言わないで! お願いだから!」
かなみは懇願する。
「埋蔵金の分け前は七割もらうんだったらいってやるわよ」
みあにそう言われて、硬直する。
「えぇ、七割!? 七割って言ったら、もし財宝が百万くらいだったら百万割る七で、七十万!? でも、みあちゃんについてきれてくれないと怖いし……うーん、うーん」
かなみは苦悩する。
「みあちゃん、意地悪しないでついてきてあげたら?」
千歳がみあに言う。
「まあ、しょうがないわね……ちょっと、からかったら真面目に考え始めたし」
みあはため息をつく。
そんなやりとりをしていたら、かなみは「よし!」と決意を固めていた。
「決めた! みあちゃん、一緒についてきて! 七割はみあちゃんでいいから! みあちゃんに一緒についてきほしいの!」
かなみはみあに間近に迫る。
「え、あ、うん……」
そのあまりの迫真さに、みあは思わず気圧される。
「……半分くらいで手を打つわよ」
村を抜けて、千歳が指差した山を登る。
人が通らないせいで、人が通るためにできていない獣道。
標高はそれほど高くないとはいえ、頂上に登るまで時間と体力がかかった。
それだけに、この山のどこかにあって欲しいところだ。
「千歳さん、どうですか?」
かなみは懇願するように千歳へ確認する。
「うーん……」
千歳は頂上から景色を見下ろす。
千歳曰く「それで彼女がどこにいるか気配でわかる」という。
千歳の感知能力はみあよりも優れているし、あるみも「私より上よ」と認めている。
その千歳の感知能力が頼りなのだ。
「………………」
千歳はじっとしていて、無言で佇んでいる。
それだけ集中していることで、逆に言うと集中を要することなのだ。
「――いたわ」
「「おぉッ!?」」
千歳の一声に、かなみとみあは揃って驚嘆の声を上げる。
「なんと言っていいか、懐かしい感じがするわね。変わっていないというか、会うのが楽しみになってきたわね」
「え、私は怖いんだけど……」
「余計なこと言わないの。数少ない友達に久しぶりに会うんだから」
「いや、君十分余計なこと言ってるよ」
マニィが指摘する。
「さあ、行きましょう!」
千歳は張り切って山を下っていく。
山道ではなく、山を下っていったのだ。
「「えぇッ!? ちょッ!?」」
かなみとみあはそれを追いかけていかなくてはならないわけだけど、千歳は幽霊なので獣道だろうが坂道だろうが難なく進んでいく。
そのため、追いつこうと思ったら、それなりに頑張らなくてはならないわけで。
「待ってええええええッ!!」
「待ちなさいッ!!」
頑張って叫んで引き留めようとするのだけど、やまびこが虚しく木霊するだけだった。
「「ハァハァハァハァ……」」
かなみとみあは膝をついて息を切らせる。
「二人とも遅いわね」
千歳は振り向いてぼやいてくる。
「ハァハァ、あの幽霊、成仏させる方法はないの?」
みあは、かなみに意見を求める。
「千歳さんが満足したら成仏するんじゃないかしら?」
「あいつって何をしたら満足するの? いつもヘラヘラして幽霊、満喫してるようにみえるけど」
「それはわからないけど……」
千歳が成仏することなんてあるのだろうか。
ふと、かなみはそんなことを疑問に思った。
幽霊なのに、生きている自分たちよりも元気で楽しそうにしていて、もう百年以上は長生きしそうな気がする。
「二人して何の話をしているの?」
「千歳、むかつくって話」
みあはそっけなく答える。
「ひどいわね」
「ひどいと思うんならゆっくりしなさいよ。あたし達はあんたみたいに浮かべないんだから」
「浮かべばいいと思うのだけど、そういう魔法は教えてあげるから」
「浮かんだら幽霊みたいじゃないですか。嫌ですよ」
「リュミィと合体したときに浮いてるじゃない」
みあが指摘する。
そう言われて、かなみの肩にいるリュミィは機嫌よく一回転する。
「あれは、羽のおかげで飛んでるのよ。だから幽霊とは違うの」
「浮いていることにはかわりないのに」
千歳はぼやく。
「どう浮いてるのかが問題なんです」
「そういうものかしらね。さあ、行きましょう」
「あとどのくらいなんですか?」
かなみは不安げに訊く。
「うーん、そろそろなんだけど……」
千歳は浮かび上がって辺りを見回す。
「あいつ、モーロクしちゃったんじゃないの?」
「みあちゃん、それは言いすぎよ」
かなみがみあをたしなめる。
「おかしいわね」
千歳が降りてくる。
「祠があったはずなんだけど……」
「そんなの影も形もないじゃない」
「でも、彼女の気配は感じるのよね……」
「どういうこと? その彼女は近くにいるの?」
「近いような、遠いような……」
「はっきりしなさいよ」
「うーん、うーん」
千歳は困ったように腕組みして考える。
「ひょっとしてだけど……」
マニィが言う。
「このあたりって大雨とかで土石流が起きたとかってないかな?」
「あ、それだわ!」
千歳が指差す。
「十年くらい前にそんなことがあったみたいだよ」
マニィが携帯を見ながら言う。
その携帯、電波は通っているようだ。
「それだけ年月が経つと色々なことがあるものね」
千歳はしみじみ言う。
「でも、どうするのよ? 埋まっちゃってるんじゃ、見つからないじゃない」
「掘り出すしかないわね」
かなみが力強く言う。
「道具は何もないけどね」
「道具は無くても、魔法はあるわよ。そうでしょ、かなみちゃん」
千歳はかなみに向かって言う。
「はい。神殺砲で吹っ飛ばします」
「ちょっとは加減しなさいよ。祠ごと吹っ飛ばしたら埋蔵金ごとパアなんだから」
「わかってるって! マジカル・ワーク!!」
かなみはコインを放り投げる。
宙を舞うコインから降り注ぐ光がカーテンとなって、かなみを包み込む。
「愛と正義と借金の天使、魔法少女カナミ参上!」
黄色の衣装に身を包み、お馴染みの口上で名乗りを上げる。
「リュミィ。お願い!」
『うん!』
リュミィは光の粒子になって、カナミの背中へと集まっていき、羽を形成する。
「フェアリーフェザー!!」
妖精リュミィの力により得た妖精の羽。
羽は生まれたときから自分の身体の一部のように自在に動かせる。
手を振るのと同じ感覚で羽を羽ばたかせて、飛び上がる。
「彼女の気配はこの下から感じるわね。とりあえず壊さないように土砂だけどけるように頑張ってー」
千歳は地上から手を振って教えてくれる。
「よおし! 神殺砲!!」
カナミはステッキを砲台へと変化させて、眼下へ向ける。
「ボーナスキャノン!!」
そのまま砲弾を撃ち込む。
バァァァァァァァン!!
砲弾が地上へ着弾し、土砂が巻き上がる。
「うーん、弱すぎず強すぎず」
「宝ごと吹っ飛ばしてない?」
「大丈夫よ」
千歳はみあへ諭すように言う。
巻き上がった粉塵による爆煙が晴れると、そこには一つの大穴が出来上がっていた。
「結構派手にやったわね」
みあはその大穴を覗き込む。
覗き込んでみたら底が暗闇になっていてみえない。
「結構深いわね」
「財宝への道まで穴ができたようね。ちょっとみてみるか」
千歳は手の平の上に魔法の糸を生成して、糸を絡ませる。
やがて絡まりあった糸はロープになる。
「それ!」
千歳は一声かけて、すぐそばの太い幹の木に通す。
「これで大丈夫なの?」
みあが訊く。
「細いけど硬くて丈夫よ」
千歳はロープをクイクイと引っ張ってみて丈夫さをアピールする。
「それじゃ、私が降りていくわね。ロープを引っ張ったら降りてきてね」
千歳はそう言って、ロップを持って穴に飛び込む。
「あいつ、幽霊なんだからロープ必要ないじゃない。浮いてるんだし」
「私達のためだと思うよ」
カナミがみあに言うと、ロープがクイクイと鳴る。
真昼のオフィスにて、唐突にかなみは拳を振り上げる。
「またいくら借金したのよ?」
みあは極めて冷静に訊く。
「借金は増えてない!!」
「借金で頭に血が回らなくなったんじゃないの」
「借金にそんな効能が」
「億単位の借金するとそうなるってことをあんたから知見を得たわ」
「ってことは、みあちゃんも借金すると私みたいになるってことじゃないの?」
「えッ!?」
みあはメチャクチャ嫌そうな顔をする。
「考えたこと無かったわ……借金したら、かなみみたいになるのか……」
さらに深刻そうに考え込む。
「親父が事業失敗したら、億単位の借金は……ありえない話じゃないし……」
「あ、みあちゃん、そんな考え込まないで! とにかく! 私は埋蔵金探しに行きたいの!」
かなみは再び拳を振り上げる。
「あ~はいはい、埋蔵金ね」
急にみあは雑に返事しだす。
「探しにいけばいいじゃない、どうせ見つからないんだから。好きでしょ、骨折り損のくたびれ儲け」
「みあちゃん、ひどい……別に好きなわけないじゃないからね」
「まあ、好きな人なんて普通いないわね」
「みあちゃん、次にあんたは普通じゃないけど、って言いそう」
「……う、なんでわかったのよ?」
「みあちゃんならそう言うと思ったから」
「……く、ワンパターンになってきたか。こりゃちょっと反省ね」
「あ、みあちゃん、そんなに深刻そうに考えなくても……私がみあちゃんのことをわかってきたわけだから」
「それがむかつくっていうの!」
「なんで?」
かなみは純粋に疑問だった。
「んで、一応訊くけど、なんで埋蔵金探しに行こうなんて言い出したの?」
「これみて」
かなみは手元にある雑誌をみあに渡す。
「『絶対発見全国埋蔵金百スポット』」
「ね、日本にはこんなには埋蔵金がこんなにあるのよ! 一つくらい掘り当てたら、私の借金はチャラになる! あ~夢のある話ねえ!!」
「所詮、夢は夢でしょ」
みあは雑誌をかなみに投げ返す。
「まああんたみたいな夢見るバカがいるから商売が成り立ってるのよね」
「みあちゃんは夢は見ないの?」
「あたしはそういう夢を見る年頃は過ぎたのよ」
「そうよね、その雑誌、みあちゃんが持ってきたものだからね」
あるみが社長席から言ってくる。
「な!?」
「あ~これ、みあちゃんのものだったのね。てっきり会社の備品かと」
「あるみ、何いらんこと言ってるの!?」
「本当のこと言っただけよ。まいぞーきん、まいぞーきん、って目を輝かせるみあちゃん可愛かったわね」
あるみは楽しそうに語る。
「それがいらんことだって言ってるのよ!?」
みあは怒りでワナワナと身体を震わせる。
「社長、そのときのことはビデオにとってないんですか」
「やめなさい! 怒るから!」
みあはかなみを止める。
「それで、みあちゃん。どうして埋蔵金に興味がなくなったの?」
「そんなの……ないってわかったからよ」
「ええ、ないの!?」
「むしろ、あるって本気で信じてたの?」
みあはちょっと驚く。
「本気も本寄よ! だって、ないと私が困るもの!」
「あんたの都合で埋蔵金は埋まっちゃいないのよ」
みあの厳しいツッコミが飛ぶ。
「それはそうだけど……でも、埋蔵金を掘り出してそれで私の借金をチャラにできる夢を諦めきれないのよ!」
「そんな夢さっさと捨てて、借金をコツコツ返す現実に戻りなさい」
「コツコツで返せるんなら夢は見ないわよ」
「あ、そうだったわね」
みあは嘲笑する。
「だから、夢を見るのよ! 埋蔵金を掘り出すのよ!!」
「あ~やっぱりそこにもどるわけか」
みあは面倒くさそうに言う。
「何々? 何を掘り出すって?」
そこへ唐突に床から伸びてきた影が質問を投げかけてくる。
「きゃああああああ、おばけええええええッ!?」
かなみは大いに悲鳴を上げる。
「よくみなさい。千歳でしょ」
「え、千歳さん!? やっぱり、おばけじゃないの!?」
「おばけ扱いなんて失礼ね」
千歳は微笑みを崩さず、優しく抗議する。
千夜千歳は、糸を操る魔法少女なのだけど、
「いや、実際おばけでしょ、あんた」
「みあちゃんまでそういうこと言うのね。そりゃ長いことおばけやってきてはいたけど、最近はもう仙人みたいなものだからね」
「仙人みたいなものって、仙人じゃないの?」
みあが訊く。
「そこはまだ修行中の身だからね。簡単には本物の仙人にはなれないのよ」
「んで、その修行中の身で何しに来たの?」
「一日休養を貰ったのよ。気分転換してきたらどうだ、と言われてね」
「気分転換でおどかさないでください!」
「でも、そのくらい驚いてくれる人は中々いないからついついおどかしてしまうのよ」
「ついついでおどかされるこっちの身になってくださいよ!」
「なってみたいわね。かなみちゃんが身体をわけてくれるならいいんだけど」
「嫌ですよ!」
かなみは身体を寄せて拒否する。
「それでは、みあちゃん?」
「あたしだって嫌よ!」
みあは即座に拒否する。
「えぇ……合体までした仲だと思うのだけど」
「あれは、やむを得ずでしょ。したくてしたわけじゃないから」
「え、でも、みあちゃん、合体とか結構好きじゃないの? ほら、合体するロボットとか、よく観せてくれるじゃない」
「かなみ、あんたは黙ってなさい!」
「やっぱり、みあちゃん。合体が好きなのね」
千歳は嬉しそうに言う。
「ロボットの合体と魔法少女の合体は別なのよ!」
「そういうものなの?」
千歳は首を傾げる。
「それで、何を掘り出す話をしていたの? イモ?」
「イモじゃありませんよ。埋蔵金です!」
「まいぞーきん?」
千歳は再び首を傾げる。
「これよ、これこれ」
みあは雑誌を千歳へ見せる。
「『絶対発見全国埋蔵金百スポット』。へえ、最近はこういうのが流行ってるのね」
「いや、最近っていうか、それかなり前の雑誌だし、埋蔵金が流行ってたのはあたしが生まれるより前の話だし」
「あ~そういえば、昔会った幽霊さんがブームだって言ってたわね。埋蔵金を狙うトレジャーハンターがどんどんやってきて大変だって」
「え、昔会った幽霊さん? 埋蔵金を狙うトレジャーハンター? どういうことですか?」
「昔会った幽霊さんが埋蔵金を狙うトレジャーハンターがどんどん狙ってくるから守るのが大変ってぼやいているということよ」
「その幽霊さんは埋蔵金を守ってるってこと?」
みあは興味を示す。
「ええ、そうなるわね。昔の藩主様から命じられてずっと財宝を守ってるのよ。死んで幽霊になってからもずっとね」
「し、死んで、幽霊になってからも、ずっと……」
かなみは身震いする。
「でも、幽霊まで出てきたら、ちょっと信憑性があるじゃないの」
みあが言う。
「え……? 信憑性って?」
「埋蔵金よ。億単位のやつ。夢なんでしょ?」
「あ、ああ、そうだったわ! で、でも、幽霊が……」
「幽霊だったら、友達よ。最初に会ったら刀を向けられたけど、幽霊にお金は必要ないってわかったら意気投合してね」
千歳は懐かしそうに語る。
「刃を向けられた。もしかして、その幽霊さんは魔法が使えるんですか?」
かなみは不安そうに訊く。
「魔法っていうほどのものじゃないんだけどね。服を斬る程度のことはできるそうです」
「じゅ、じゅ、十分やばいじゃないですか!?」
「大丈夫よ。そこまで見境のない人ではないから」
「千歳さんの大丈夫はそこまで保証がありませんからね」
「かなみちゃん、意外と手厳しいわね」
「それでも、私が一緒に行ったら財宝を分けてもらえないか交渉しにいけるわよ」
「え、財宝を!? う、うーん、うーん……!? うーんうーん!?」
かなみはこれくらいまでにないくらい苦悩する。
「まあ、それでも、決断せざるをえないのよね」
一人離れた位置にいるあるみは楽しそうに言う。
「なんだかこんなことが前にもあったような気がする」
結局、千歳の友人の幽霊が守っている財宝をわけて貰いに行くことにした。
今はその山に向かうバスに乗っている。
みあと千歳が同行している。
「前にもというと……そんなことあったかしら?」
千歳はみあに訊く。
「仙人の修行してるのに、ボケは治ってないのね」
「みあちゃんもきついわね……ということは、みあちゃんは覚えてるの?」
「そりゃもうね。せっかく見つけたお宝がアレだったんだからね」
「アレ……?」
千歳は首を傾げる。
「あ、ああ! 千歳さんに騙されたときよ!」
かなみはそこで思い出す。
「騙したとは、人聞きが悪いわね。私がかなみちゃんやみあちゃんにそんなことするはずがないでしょ」
「髪の毛……」
みあはボソリと呟く。
「髪の毛? ああ、あのときのことを言ってるのね」
それで千歳は思い出す。
以前、かなみ、みあ、千歳で山奥の宝探しに入り込んだことがある。
さんざん駆けずり回った上に怪人まで出てきて、大変な想いをして、ようやくお宝を見つけることができた。
そして、肝心のお宝というのが、千歳の遺髪だった。
かなみとみあにとっては、千歳に騙された気分になるけど、千歳からしてみればそれは紛れもなくお宝だった。
なので千歳からすると騙したつもりはなかった。
かなみとみあ、千歳の認識の齟齬はそのせいだ。
「私の髪を見つけてくれて、二人には本当に感謝しているのよ」
「感謝してるんなら、ちゃんと財宝わけてもらえる交渉してくださいね」
「それについて任せて! 会ったのはもう何十年も前だけど」
「それって、向こうは憶えてるの? あんたみたいにボケてる可能性ってないの?」
みあは訊く。
「大丈夫でしょう、私だって憶えていたし」
「……それがアテにならないんだけど」
かなみとみあにとって千歳は物忘れが激しいおばあちゃんだった。
「大丈夫よ。万が一忘れていても、かなみちゃんとみあちゃんならやられることはないから」
「全然、大丈夫に聞こえないんだけど……」
「嫌な予感がするわ……」
「かなみ、そういう予感って当たるものよ」
かなみとみあは浮かない顔をする。
「帰りたい……」
「埋蔵金手に入れるためでしょ、辛抱しなさい」
「母さんに取りに行ってもらえば良い」
「らしくない人任せ発言してんじゃないわよ」
「だって、だって、幽霊が……!」
かなみは涙目になって文字通りの泣き言を吐いた。
「まったく、幽霊ならここにもいるじゃない」
みあは千歳を指して言う。
「だから、千歳さんも怖いんですよ」
「……傷つくわね」
千歳は顎に手を当てて「やれやれ」といった表情をする。
「あんたらの距離感って変わらないのね」
電車からバスを乗り継いで数時間。木の家が建ち並ぶよくある村にやってきた。
「懐かしい雰囲気がするわね」
千歳は楽しそうに言う。
「はあ……ずいぶんと時間かかったわね」
みあはもうくたびれたと言わんばかりに両腕をだらんとしている。
「山奥だから仕方ないよね。あのあたりとかまだ見つかってない感じがする」
「かなみちゃん、反対の山だよ」
千歳は指摘する。
「え、じゃあ、あの山ですか!?」
かなみはクルッと回って一番高そうな山を指差す。
「それって確かなの?」
「うーん、左隣の山だったかしら? それとも、もう一つ左の山だったかしら?」
千歳がかなりうろ覚えだということがわかり、かなみとみあは不安に駆られる。
「……埋蔵金見つかったら電話して。あたしはここで待ってるから」
「ずるいよ、みあちゃん! 一緒に探そうって言ったじゃない!」
「誰が一緒に探すって言ったのよ!? 千歳が一緒に来いって言うからついてきただよ!!」
「だったら、最後まで一緒についてきてよ!」
「埋蔵金を一目みたら帰る! 逆に言えば、埋蔵金一目見られりゃいいのよ!?」
「みあちゃん、お願い! 一緒にいないと人間が私一人だけになっちゃう!」
「私も人間なんだけど」
千歳が申告してくる。
「千歳さんは幽霊です!」
「幽霊と人間は別カウントなのね」
「そう! そうなの! だから、みあちゃん、一緒に来て!」
「理屈はよくわからないけど、そういうことだったら余計に行きたくなくなるわね」
「そんなこと言わないで! お願いだから!」
かなみは懇願する。
「埋蔵金の分け前は七割もらうんだったらいってやるわよ」
みあにそう言われて、硬直する。
「えぇ、七割!? 七割って言ったら、もし財宝が百万くらいだったら百万割る七で、七十万!? でも、みあちゃんについてきれてくれないと怖いし……うーん、うーん」
かなみは苦悩する。
「みあちゃん、意地悪しないでついてきてあげたら?」
千歳がみあに言う。
「まあ、しょうがないわね……ちょっと、からかったら真面目に考え始めたし」
みあはため息をつく。
そんなやりとりをしていたら、かなみは「よし!」と決意を固めていた。
「決めた! みあちゃん、一緒についてきて! 七割はみあちゃんでいいから! みあちゃんに一緒についてきほしいの!」
かなみはみあに間近に迫る。
「え、あ、うん……」
そのあまりの迫真さに、みあは思わず気圧される。
「……半分くらいで手を打つわよ」
村を抜けて、千歳が指差した山を登る。
人が通らないせいで、人が通るためにできていない獣道。
標高はそれほど高くないとはいえ、頂上に登るまで時間と体力がかかった。
それだけに、この山のどこかにあって欲しいところだ。
「千歳さん、どうですか?」
かなみは懇願するように千歳へ確認する。
「うーん……」
千歳は頂上から景色を見下ろす。
千歳曰く「それで彼女がどこにいるか気配でわかる」という。
千歳の感知能力はみあよりも優れているし、あるみも「私より上よ」と認めている。
その千歳の感知能力が頼りなのだ。
「………………」
千歳はじっとしていて、無言で佇んでいる。
それだけ集中していることで、逆に言うと集中を要することなのだ。
「――いたわ」
「「おぉッ!?」」
千歳の一声に、かなみとみあは揃って驚嘆の声を上げる。
「なんと言っていいか、懐かしい感じがするわね。変わっていないというか、会うのが楽しみになってきたわね」
「え、私は怖いんだけど……」
「余計なこと言わないの。数少ない友達に久しぶりに会うんだから」
「いや、君十分余計なこと言ってるよ」
マニィが指摘する。
「さあ、行きましょう!」
千歳は張り切って山を下っていく。
山道ではなく、山を下っていったのだ。
「「えぇッ!? ちょッ!?」」
かなみとみあはそれを追いかけていかなくてはならないわけだけど、千歳は幽霊なので獣道だろうが坂道だろうが難なく進んでいく。
そのため、追いつこうと思ったら、それなりに頑張らなくてはならないわけで。
「待ってええええええッ!!」
「待ちなさいッ!!」
頑張って叫んで引き留めようとするのだけど、やまびこが虚しく木霊するだけだった。
「「ハァハァハァハァ……」」
かなみとみあは膝をついて息を切らせる。
「二人とも遅いわね」
千歳は振り向いてぼやいてくる。
「ハァハァ、あの幽霊、成仏させる方法はないの?」
みあは、かなみに意見を求める。
「千歳さんが満足したら成仏するんじゃないかしら?」
「あいつって何をしたら満足するの? いつもヘラヘラして幽霊、満喫してるようにみえるけど」
「それはわからないけど……」
千歳が成仏することなんてあるのだろうか。
ふと、かなみはそんなことを疑問に思った。
幽霊なのに、生きている自分たちよりも元気で楽しそうにしていて、もう百年以上は長生きしそうな気がする。
「二人して何の話をしているの?」
「千歳、むかつくって話」
みあはそっけなく答える。
「ひどいわね」
「ひどいと思うんならゆっくりしなさいよ。あたし達はあんたみたいに浮かべないんだから」
「浮かべばいいと思うのだけど、そういう魔法は教えてあげるから」
「浮かんだら幽霊みたいじゃないですか。嫌ですよ」
「リュミィと合体したときに浮いてるじゃない」
みあが指摘する。
そう言われて、かなみの肩にいるリュミィは機嫌よく一回転する。
「あれは、羽のおかげで飛んでるのよ。だから幽霊とは違うの」
「浮いていることにはかわりないのに」
千歳はぼやく。
「どう浮いてるのかが問題なんです」
「そういうものかしらね。さあ、行きましょう」
「あとどのくらいなんですか?」
かなみは不安げに訊く。
「うーん、そろそろなんだけど……」
千歳は浮かび上がって辺りを見回す。
「あいつ、モーロクしちゃったんじゃないの?」
「みあちゃん、それは言いすぎよ」
かなみがみあをたしなめる。
「おかしいわね」
千歳が降りてくる。
「祠があったはずなんだけど……」
「そんなの影も形もないじゃない」
「でも、彼女の気配は感じるのよね……」
「どういうこと? その彼女は近くにいるの?」
「近いような、遠いような……」
「はっきりしなさいよ」
「うーん、うーん」
千歳は困ったように腕組みして考える。
「ひょっとしてだけど……」
マニィが言う。
「このあたりって大雨とかで土石流が起きたとかってないかな?」
「あ、それだわ!」
千歳が指差す。
「十年くらい前にそんなことがあったみたいだよ」
マニィが携帯を見ながら言う。
その携帯、電波は通っているようだ。
「それだけ年月が経つと色々なことがあるものね」
千歳はしみじみ言う。
「でも、どうするのよ? 埋まっちゃってるんじゃ、見つからないじゃない」
「掘り出すしかないわね」
かなみが力強く言う。
「道具は何もないけどね」
「道具は無くても、魔法はあるわよ。そうでしょ、かなみちゃん」
千歳はかなみに向かって言う。
「はい。神殺砲で吹っ飛ばします」
「ちょっとは加減しなさいよ。祠ごと吹っ飛ばしたら埋蔵金ごとパアなんだから」
「わかってるって! マジカル・ワーク!!」
かなみはコインを放り投げる。
宙を舞うコインから降り注ぐ光がカーテンとなって、かなみを包み込む。
「愛と正義と借金の天使、魔法少女カナミ参上!」
黄色の衣装に身を包み、お馴染みの口上で名乗りを上げる。
「リュミィ。お願い!」
『うん!』
リュミィは光の粒子になって、カナミの背中へと集まっていき、羽を形成する。
「フェアリーフェザー!!」
妖精リュミィの力により得た妖精の羽。
羽は生まれたときから自分の身体の一部のように自在に動かせる。
手を振るのと同じ感覚で羽を羽ばたかせて、飛び上がる。
「彼女の気配はこの下から感じるわね。とりあえず壊さないように土砂だけどけるように頑張ってー」
千歳は地上から手を振って教えてくれる。
「よおし! 神殺砲!!」
カナミはステッキを砲台へと変化させて、眼下へ向ける。
「ボーナスキャノン!!」
そのまま砲弾を撃ち込む。
バァァァァァァァン!!
砲弾が地上へ着弾し、土砂が巻き上がる。
「うーん、弱すぎず強すぎず」
「宝ごと吹っ飛ばしてない?」
「大丈夫よ」
千歳はみあへ諭すように言う。
巻き上がった粉塵による爆煙が晴れると、そこには一つの大穴が出来上がっていた。
「結構派手にやったわね」
みあはその大穴を覗き込む。
覗き込んでみたら底が暗闇になっていてみえない。
「結構深いわね」
「財宝への道まで穴ができたようね。ちょっとみてみるか」
千歳は手の平の上に魔法の糸を生成して、糸を絡ませる。
やがて絡まりあった糸はロープになる。
「それ!」
千歳は一声かけて、すぐそばの太い幹の木に通す。
「これで大丈夫なの?」
みあが訊く。
「細いけど硬くて丈夫よ」
千歳はロープをクイクイと引っ張ってみて丈夫さをアピールする。
「それじゃ、私が降りていくわね。ロープを引っ張ったら降りてきてね」
千歳はそう言って、ロップを持って穴に飛び込む。
「あいつ、幽霊なんだからロープ必要ないじゃない。浮いてるんだし」
「私達のためだと思うよ」
カナミがみあに言うと、ロープがクイクイと鳴る。
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