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第2章 魔術師との出会い
第7話 灯台下暗し
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「今日のご飯はいつもよりも豪華だな。」
「この家に住んで1ヶ月ですから。これからの安全を祈願して軽いお祝いをするのがこの国の慣習です。」
ハンナさんが淡々と料理を並べた。
一緒に住み始めてから料理はハンナさんに任せっきりである。
自分は働きにいかなくていい時に部屋の掃除をしているくらいだ。
ハンナさんには家事はしなくていいと言われたけど、さすがに一緒に住んでいるのに何もしないのは居心地が悪い。
「もう一か月か。マジでどうしようかな」
「私は何も言えません。」
「王様に泣きつきに行こうかな。」
王様も何もできていない俺の現状を見たらさすがに手を差し伸べてくれないかな。
いや、今住んでいる家とハンナさんを俺から取り上げて放り出される未来が見える。
「あっそうだ。」
「何かいいことでも思いつきましたか?」
「いや明日クーエンスに行ってくるんだった。」
「だいぶ前からその予定決まっていたんですか?明日の食材とか買ってしまいましたよ。」
「すいません……。」
夫婦みたいな会話をかましつつ、ハンナさんにキレられた。
「何を目的に行くんですか?」
「店長が昔に弟子入りしていたお店の挨拶を兼ねた手伝いに行くらしい。それに付いて来いって言われてんの。」
「そうですか……。クーエンスにはウェンライト家……私の実家があります。」
ハンナさんが都市クーエンスのこと、そしてウェンライト家のことを教えてくれた。
都市クーエンス・・・カンナビア王国に統一される前、3つの大公国が戦争をしていが、そのうちの一国「ジェレイン大公国」の最大都市だった場所だ。
ジェレイン大公国は魔術による圧倒的武力で多くの小国を蹂躙し、傘下に加え大公国に成長した強国だった。
ジェレインの軍隊は世界最強と恐れられ、その軍隊を率いていたのが「ウェンライト家」であり、ハンナさんの先祖だ。
だから、カンナビアにジェレインが負けて統一された時、世界に衝撃が走ったらしい。
未だにウェンライト家には畏怖の念を抱くものも多く、カンナビア王国の「四豪家」の1つに名を連ねている。
現在のウェンライト家はクーエンスの領主であり、カンナビア王国の軍隊「自警団」を率いている。
自警団は日本における自衛隊と警察を足した考え方に近く、他国が攻めてきたときにのみ国の防衛のために武力を行使し、普段は国の治安を守っている。
本家とか分家とかあるかもしれないがそんな細かいことは置いといて、ハンナさんがとんでもなくお嬢様ということが分かった。
そんなお嬢様が何故王様の使用人なんかやっていたんだろうか。
「都市自体はすごくいいところですよ。ゆっくりしてきてください。」
「……別に普段からゆっくり生活しているけどね。」
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
出発の朝、店長が手配した荷馬車に乗り込みクーエンスを目指す。
特に持っていくものもないからビデオカメラを持ってきた。
なにか現状を打開することが起こるもしれないから撮れるものはすべて撮る。
職業病みたいなもんだ。
「ほぉ!!ハンナさんの家名がウェンライトだったとは!!あの髪と瞳の色、そしてエルフ。もしかしてと思っていたが・・・。」
「ええ。ウェンライトがそんな名家だとは知りませんでした。」
「この国だと常識だろう!!今の話でさらに君たちの関係性が不思議に思えてきたな!!」
俺の勤め先の店長さんがいつも通り耳が痛くなるほど大きい声で話していた。
シャーマルの町に来てから、ハンナさんと街を歩いていると好奇な目で見られまくっていた。
引っ越してきた男が美人エルフの使用人を連れて歩いている。
しかも、その男は金持ち感はなく小さな食事処で細々働いている。
そりゃ……不思議な人に見られる。
それでも2週間もすれば俺たちはご近所に溶け込むことができた。
それもハンナさんのおかげだ。
ハンナさんは気づけばご近所さんと仲良くなり、自分たちの家から離れたところの人ともなぜか仲良くなっていた。
町の人とはハンナさんに話しかけるついでに俺も話しかけられたから仲良くなることができた。
ハンナさんは俺と話すときは基本真顔だが、ほかの人とは笑顔で話す。
そりゃこんな美人がニコニコ人当たりが良ければ人気が出ますよ。
そんなハンナさんを一度「天性の人たらし」と言ったら、ごみを見る目でにらまれた。
馬車で2時間ほど揺られ、クーエンスについた。
案内所で地図をもらい、店長が弟子入りしていた店を探す。
地図のなかで都市の真ん中に流れる大きな川が目に付いた。
この大きな川でとれた魚を調理して提供しているのが店長が弟子入りしていた店だ。
だから店長の店も川魚がメインの店になっている。
「遠路はるばるよく来たね。」
「おお!!お師匠!!お元気ですか!!」
店長はお師匠と呼ぶ、おじいちゃんの手を握り、肩が外そうなほど振っている。
お師匠さんがニコニコしているところを見ると、昔から店長さんはこんな感じでうるさい人だったんだろうな。
「とりあえずだが、これを箱に詰めてくれないかね。お手伝いさんも頼むね。」
調理場には大量に料理が並べられていた。
それをコツコツと詰めていく。
それにしてもかなりの量があるな。
弁当箱だけで1000個以上ある。
これどうやって売り切るのかな?
いくらクーエンスという都会といえ、こんなにお客が来るのだろうか?
ましてやこんなご時世で……。
「いつものやつを頼むよ。」
「了解です!!お師匠!!氷結保存!!」
「!?」
俺が詰めた弁当が10個ほどまとめて凍り付いた。
この世界に氷魔法はない。
つまり、店長は”魔術”を使ったことになる。
灯台下暗し……こんな身近に魔術を使える人間がいたとは。
それにしてもどうやっているのだろう。
あの4つの魔法から凍らせる魔術にするには何をどう考えたらいいんだ?
モノを凍らせる……でもなんか地味だなぁ。
いや……十分すごいんだけど、せっかくファンタジーな世界に来たのに元の世界の日常レベルから出ないことばかりだ。
そんな驚いている俺に見向きもせず、店長がバンバン凍らしていく。
「よし……じゃあこれを契約者さんたちに配達してくれ。」
「これはどういった商売ですか?」
「こんな世の中じゃ。子供がおる人たちはなかなか店に来れないからの。だから数か月契約をお客さんとして、定期的にまとめてお弁当を届けておるんじゃ。」
「俺のこの氷は火魔法を当てない限り絶対に溶けないからな!!まとめて運んでも問題ない!!さすがお師匠!!」
お師匠さんのお手伝いさんが、まとめて配達しに行く。
この世界でデリバリーサービスが見れるとは。
このお師匠さん……とんでもないやり手じゃないか。
さすがお師匠!!っていているけど、火魔法にさらさない限り絶対溶けない氷を生み出してる店長もすごい。
1000個の弁当を詰め終え、すべての配達を終えた。
お師匠さんの店を後にし、今日宿泊する宿屋に向かう
日帰りでよくね?とも思ったが帰りの馬車の予約が取れなかったらしい。
宿屋に向かう途中で店長に魔術のことを聞いた。
「その魔術はどのようにして覚えたんですか?」
「覚えたのではない!!自分で考えた!!教えてくれる人などいないからな!!」
「1から?」
「おう!!3年かかったがな!!」
3年……。
魔術のみに集中していたわけではないだろうが、凍らせるというシンプルなもの1つで3年。
俺が望むレベルの魔術を使える人は野良でいるのだろうか。
結局、厳しい気がしてきたな。
意外と手伝い自体は早く終わったので、宿屋についた時点でまだお昼ちょっと過ぎたあたりだ。
暇だな……。
でも、外に出るのはやめておこう。
知らない街だからどこに防空壕があるかも分からないからな。
「この家に住んで1ヶ月ですから。これからの安全を祈願して軽いお祝いをするのがこの国の慣習です。」
ハンナさんが淡々と料理を並べた。
一緒に住み始めてから料理はハンナさんに任せっきりである。
自分は働きにいかなくていい時に部屋の掃除をしているくらいだ。
ハンナさんには家事はしなくていいと言われたけど、さすがに一緒に住んでいるのに何もしないのは居心地が悪い。
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「王様に泣きつきに行こうかな。」
王様も何もできていない俺の現状を見たらさすがに手を差し伸べてくれないかな。
いや、今住んでいる家とハンナさんを俺から取り上げて放り出される未来が見える。
「あっそうだ。」
「何かいいことでも思いつきましたか?」
「いや明日クーエンスに行ってくるんだった。」
「だいぶ前からその予定決まっていたんですか?明日の食材とか買ってしまいましたよ。」
「すいません……。」
夫婦みたいな会話をかましつつ、ハンナさんにキレられた。
「何を目的に行くんですか?」
「店長が昔に弟子入りしていたお店の挨拶を兼ねた手伝いに行くらしい。それに付いて来いって言われてんの。」
「そうですか……。クーエンスにはウェンライト家……私の実家があります。」
ハンナさんが都市クーエンスのこと、そしてウェンライト家のことを教えてくれた。
都市クーエンス・・・カンナビア王国に統一される前、3つの大公国が戦争をしていが、そのうちの一国「ジェレイン大公国」の最大都市だった場所だ。
ジェレイン大公国は魔術による圧倒的武力で多くの小国を蹂躙し、傘下に加え大公国に成長した強国だった。
ジェレインの軍隊は世界最強と恐れられ、その軍隊を率いていたのが「ウェンライト家」であり、ハンナさんの先祖だ。
だから、カンナビアにジェレインが負けて統一された時、世界に衝撃が走ったらしい。
未だにウェンライト家には畏怖の念を抱くものも多く、カンナビア王国の「四豪家」の1つに名を連ねている。
現在のウェンライト家はクーエンスの領主であり、カンナビア王国の軍隊「自警団」を率いている。
自警団は日本における自衛隊と警察を足した考え方に近く、他国が攻めてきたときにのみ国の防衛のために武力を行使し、普段は国の治安を守っている。
本家とか分家とかあるかもしれないがそんな細かいことは置いといて、ハンナさんがとんでもなくお嬢様ということが分かった。
そんなお嬢様が何故王様の使用人なんかやっていたんだろうか。
「都市自体はすごくいいところですよ。ゆっくりしてきてください。」
「……別に普段からゆっくり生活しているけどね。」
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
出発の朝、店長が手配した荷馬車に乗り込みクーエンスを目指す。
特に持っていくものもないからビデオカメラを持ってきた。
なにか現状を打開することが起こるもしれないから撮れるものはすべて撮る。
職業病みたいなもんだ。
「ほぉ!!ハンナさんの家名がウェンライトだったとは!!あの髪と瞳の色、そしてエルフ。もしかしてと思っていたが・・・。」
「ええ。ウェンライトがそんな名家だとは知りませんでした。」
「この国だと常識だろう!!今の話でさらに君たちの関係性が不思議に思えてきたな!!」
俺の勤め先の店長さんがいつも通り耳が痛くなるほど大きい声で話していた。
シャーマルの町に来てから、ハンナさんと街を歩いていると好奇な目で見られまくっていた。
引っ越してきた男が美人エルフの使用人を連れて歩いている。
しかも、その男は金持ち感はなく小さな食事処で細々働いている。
そりゃ……不思議な人に見られる。
それでも2週間もすれば俺たちはご近所に溶け込むことができた。
それもハンナさんのおかげだ。
ハンナさんは気づけばご近所さんと仲良くなり、自分たちの家から離れたところの人ともなぜか仲良くなっていた。
町の人とはハンナさんに話しかけるついでに俺も話しかけられたから仲良くなることができた。
ハンナさんは俺と話すときは基本真顔だが、ほかの人とは笑顔で話す。
そりゃこんな美人がニコニコ人当たりが良ければ人気が出ますよ。
そんなハンナさんを一度「天性の人たらし」と言ったら、ごみを見る目でにらまれた。
馬車で2時間ほど揺られ、クーエンスについた。
案内所で地図をもらい、店長が弟子入りしていた店を探す。
地図のなかで都市の真ん中に流れる大きな川が目に付いた。
この大きな川でとれた魚を調理して提供しているのが店長が弟子入りしていた店だ。
だから店長の店も川魚がメインの店になっている。
「遠路はるばるよく来たね。」
「おお!!お師匠!!お元気ですか!!」
店長はお師匠と呼ぶ、おじいちゃんの手を握り、肩が外そうなほど振っている。
お師匠さんがニコニコしているところを見ると、昔から店長さんはこんな感じでうるさい人だったんだろうな。
「とりあえずだが、これを箱に詰めてくれないかね。お手伝いさんも頼むね。」
調理場には大量に料理が並べられていた。
それをコツコツと詰めていく。
それにしてもかなりの量があるな。
弁当箱だけで1000個以上ある。
これどうやって売り切るのかな?
いくらクーエンスという都会といえ、こんなにお客が来るのだろうか?
ましてやこんなご時世で……。
「いつものやつを頼むよ。」
「了解です!!お師匠!!氷結保存!!」
「!?」
俺が詰めた弁当が10個ほどまとめて凍り付いた。
この世界に氷魔法はない。
つまり、店長は”魔術”を使ったことになる。
灯台下暗し……こんな身近に魔術を使える人間がいたとは。
それにしてもどうやっているのだろう。
あの4つの魔法から凍らせる魔術にするには何をどう考えたらいいんだ?
モノを凍らせる……でもなんか地味だなぁ。
いや……十分すごいんだけど、せっかくファンタジーな世界に来たのに元の世界の日常レベルから出ないことばかりだ。
そんな驚いている俺に見向きもせず、店長がバンバン凍らしていく。
「よし……じゃあこれを契約者さんたちに配達してくれ。」
「これはどういった商売ですか?」
「こんな世の中じゃ。子供がおる人たちはなかなか店に来れないからの。だから数か月契約をお客さんとして、定期的にまとめてお弁当を届けておるんじゃ。」
「俺のこの氷は火魔法を当てない限り絶対に溶けないからな!!まとめて運んでも問題ない!!さすがお師匠!!」
お師匠さんのお手伝いさんが、まとめて配達しに行く。
この世界でデリバリーサービスが見れるとは。
このお師匠さん……とんでもないやり手じゃないか。
さすがお師匠!!っていているけど、火魔法にさらさない限り絶対溶けない氷を生み出してる店長もすごい。
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「その魔術はどのようにして覚えたんですか?」
「覚えたのではない!!自分で考えた!!教えてくれる人などいないからな!!」
「1から?」
「おう!!3年かかったがな!!」
3年……。
魔術のみに集中していたわけではないだろうが、凍らせるというシンプルなもの1つで3年。
俺が望むレベルの魔術を使える人は野良でいるのだろうか。
結局、厳しい気がしてきたな。
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