[レディース軍団・鬼女]三軍・高橋純一

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第三章:純一の成長、鬼女の成長

自分を超えることを考えろ

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*** 9月終わりころ ***

三軍の純一はそのとき、紗耶香から感化され、二軍への昇格を画策はじめていた。
さすがに二軍の中学女子なら、簡単に勝てそうなのはいっぱいいる。いつも足蹴にされている女子に対し、うまく喧嘩に持ち込む理由を作りタイマンに持ち込めば、自分も二軍に昇格できるかもしれない。すると、この境遇も改善するかもしれない。
そう思い、ターゲットとして、二軍の中2、彩乃を据えた。彩乃は、(あくまで)鬼女の中では比較的、おとなしい性格であった。
数日にかけ、小さな粗相を繰り返し、ついに彩乃を怒らせることに成功した。
罵り出す彩乃に対し
「なんだぁ、こらぁ、三軍だからって、人をなめるのもいい加減にしろよぉ、おらぁ!」
鬼女の中で、初めて腹から声を出して挑発する。彩乃は階級の差に油断していたらしく、急に男から受ける罵声に、目が若干こわがっていたのが受け取れた。
---よし、これでタイマンに持ち込んで、彩乃をコテンパンに倒せば、二軍への道が拓かれる。
しかし、見ていた直美から、思わぬ言葉をかけられた。
「おい純一、お前、ちょっと待て!」
直美からの言葉は、ドキッとする。
「たいして因縁もない彩乃をふっかけて、ただ勝って昇格したいだけなんだろ?わかってんだよ」
直美はすべてお見通しであった。直美を前に反抗する勇気はなく、黙ってしまう。
「やっぱ、なっさけねぇ男だなぁ、お前はほんとに。」
あきれ顔の直美。言葉をなくす純一。
しかし、また殴られるかと思ったが、直美は意外にも、チャンスをくれたのだった。
「そんなに三軍から逃れたいんだったら、ちょっとやらせてやるよ」
そして、ユイナを呼び出す。
「ユイナ、おまえ、純一の相手をしてやりな!」
ユイナはなにも言わずに立ち上がり、純一の前に来て睨みつけてきた。どうも準備は整えていたようだ。直美から予め、この展開を伝えられていたと思われる。
ユイナと純一が、睨み合う。もしここで、一軍候補と言われているユイナに勝ったら、当然昇格が期待できる。気合いが湧いてきていた。

場所を移動し、ユイナとの闘いがはじまった。
組み合い、中3女子と高3男子の地力の差を利用し、力で追い詰めようとした。入門したころよりも、ユイナは力強さがだいぶ備わっているように感じたが、それでも押しまくって追いつめた。ユイナが、しゃがみ込みはじめた。
---ほら、所詮は年下女、男のパワーには耐えられないもんだ。
勝ちが見えたと思ったが、それは大間違いであった。
しゃがんでいだユイナは、上から攻撃を加えようとした純一に対し、真下から突き上げるように、右ひざで強烈な金的を見舞ったのだった。
激痛が走った純一は、言葉にならない苦しみの声。
「うぐぐぐわぁぁ」
顔は青ざめ、股間を両手で押さえ倒れ込む。足をばたばたさせる。急激に吐き気に襲われる。
---忘れていた...。本気のタイマンでは、反則など、ないのだった。
痛みが強過ぎて、もう動けない。このまま馬乗りにされ、ユイナから無数の拳を浴びせられることを、覚悟した。
しかし、仲間うちの争いでは、そこまでダメージを負わせることはさせず、勝負がついたところでおしまいとされた。
実力差を見せつけたような、当然のような勝ちっぷりのユイナ。順調な成長ぶりに、周囲から拍手を得て、そのまま元の位置に座った。
いまだ倒れて藻掻いている純一の頭の上で、直美がしゃべる。
「純一、わかったろ。いまのお前の実力は、こんなもんなんだよ。」
悔しいが、ユイナにも見事に負けてしまった以上、三軍に留まるしかない。
「だいたいだなぁ」
直美がつづける。
「お前、昇格したいってのはわかるけど、なんで勝てる相手なんか選んでんだよ!」
---...!
「強いやつに挑まなくて、どうすんだよ。ちっとは、自分を超えることを考えろってんだよ、こらぁ!」
未だ転がる純一の背中に、重たい蹴りを一発入れ、そのまま背を向けて去った。

---自分を超えることを考えろ...
その日の活動後、掃除をしながら、直美の言葉が純一の心に痛く染みていた。
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