[レディース軍団・鬼女]三軍・高橋純一

kazu106

文字の大きさ
11 / 17
第三章:純一の成長、鬼女の成長

狂乱の天下獲り

しおりを挟む
*** 11月の中ころ ***

このころ、純一が直美の本当の恐ろしさを知った事件が起こった。
そのとき、直美はいつもの集合場所の近くで、チームから少し離れた場所で、電話をかけていた。
話が終わり携帯を切ったとき、急に4人の男から囲まれた。
「よぉ、姉ちゃん、久しぶりじゃん!」
どうも以前、直美が痛めつけた他チーム総長の男が、メンツをつぶされた仕返しのとして、仲間を連れて直美に不意打ちをくらわすためらしい。
睨み合う直美と男たち。直美が正面に気を取られていると見るや、その背後から仲間が木刀で直美を殴る。4人目が隠れていたのだった。
直美の首筋に、激痛が走る。耐えながら、4人を相手に、一人で必死で交戦を始める直美。しかし不意打ちのダメージで、大苦戦を強いられていた。
直美の異変に、買い付け帰りの純一がいち早く気付き、急いで鬼女のメンバーに伝える。それを聞き、木刀を片手に全力走で応戦に向かったのは、沙紀とユイナ。後を追う、鬼女のメンバー。純一も、最後尾から追っていく。
直美をいたぶる男たちは、応援があまりも早く駆けつけてきたのは想定外だったと見え、慌てて4人で、沙紀とユイナの相手をはじめる。
木刀を手にした沙紀とユイナは、半端ない暴れっぷりであった。
「貴様らぁ、汚ねぇぞぉ!ふざけんじゃねぇ!」
直美以外のメンバーは所詮、女だからたいしたことない、とでも思っていたのかもしれない。沙紀とユイナの前に、男たち4人は勢いに押され、明らかに後退ぎみとなる。
たまらず道の反対側から逃げようとしたが、回り道して待ち構えていた紗耶香がいた。紗耶香の木刀も冴えわたり、4人を逃がすことなく、押さえ込んでいる。
その間に、直美が息を整え、立ち上がっていた。見ていた純一は、直美の怒りが頂点に達しているのがわかった。
沙紀たちの前に出てきたが、そのときの、男たちを睨みつける直美の鬼の様な形相。それは後日いつ思い出しても、純一は恐怖を覚えるほどだった。汚い真似をする者は、直美には絶対に許せない。
「おいっ、こらぁぁ!」
怒りに満ちた直美の形相に、4人の男に動揺が見られる。
「沙紀ぃ、ユイナぁ、武器を捨てろ!紗耶香ぁ、お前もだっ!」
鬼女の3人に、先に木刀を捨てさせ、さらに男たちに、じわじわ近づく。
「おめえら、男だったら、武器を捨てて戦え!4人まとめて勝負してやるよ!正々堂々となっ!」
男たちは仕方なさそうに、木刀を捨てた。
「ここじゃ人が来る。こっちに来な!」

ガード下に移動する。純一がさんざん辱めを受けた、あのガード下。
男4人を相手に、直美が1人、ガード下で睨み合っている。
男たちが叫ぶ。
「お前が1人で4人相手にするって言ったんだからな。なにがあっても、覚悟しとけよ!」
直美も叫ぶ。
「勝手にしろぉ!おらぁ、行くぞぉ!」
直美の猛ラッシュ。怒りを込めた拳。一発で目の前の男がぶっ飛んだ。他の男たちもつぎつぎと、直美ひとりで片づけて行く。
ひとりで4人を相手に、圧倒して倒してしまった。
ところが、ここで終わらなかったのが、この日の怒った直美であった。狂ったかの如く、奇声を上げながら、容赦なく、倒れた男4人をかわるがわる無理やり握り起こして、殴り蹴る。怒りが収まるまで殴りつづけるのであろうが、一向に勢いが収まる気配がない。
直美のあまりもの強さに惹かれ、男たちがやられる様を楽しそうに眺めていた鬼女メンバーたちだが、次第に異様な雰囲気を感じはじめる。
さすがに心配はじめた沙紀が、指示を出す。
「やばいぞ。わたしとユイナと紗耶香で、直美を止めよう。純一、お前はすぐに救急車を呼んで来い!あとのみんなは、あの4人を別な場所に運べ。ここに救急車が来られたらまずい。」
全員が副総長の指示通りに動く。沙紀とユイナと紗耶香は、暴れ続ける直美を必死で押さえ付ける。
「お前ら、どけぇ、おらぁ!お前らもこんな目にあわされたいのかよぉ!」
動きを止められながらも、直美の狂乱ぶりは、なかなか止まらない。
他の女子たちは、男4人の身体を持ち上げ、沙紀の指示で、少し離れた川べりに移動させる。血だらけで苦しみ動けなくなった、重たい男の身体を、女子たちが協力して運んだ。特攻服の下の白いさらしが、すっかり赤く染まってしまったものもいた。
直美一人で、4人をここまで痛めつけたことで、改めて直美の強さを実感する。
純一は救急車を呼ぶ。4人が倒れていることだけを伝える。
けがをした理由までは答えない。
男たちも最後のプライドで、女一人に男4人がここまでやられたいきさつを、警察などには伝えないことは、容易に想像できた。
こうしてその日は、なんとか収めることができたのであった。

次の集会、、落ち着いた直美は、冒頭であの日の自分の狂乱ぶりについて、メンバーにきちんと詫びた。
「みんな、あの日はごめんなさい。総長としてあそこまで乱してしまったこと、反省してます。」
深々と頭を下げる直美の姿に、メンバーはそのカリスマ性を改めて感じたのであった。

あの直美への襲撃失敗の事件は、瞬く間に不良たちの噂となった。不意打ちを仕掛けてきた4人の男を、直美が1人で返り討ちにし病院送りにした事実は、とてつもなく大きなインパクトであった。
すでに鬼女の勢力はかなり大きなものとなっていたが、あまりもの直美の強さと恐ろしさに、かなりのものたちが大きな警戒を抱くようになったのだった。
鬼女の活動を阻もうとする者たちも、激減してしまった。内心、直美を恐れ、余計な張り合いとなることを避けてのものと思われる。実質的に、鬼女および高1女子の直美が、この地域のほぼ天下を獲った形となった。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

M性に目覚めた若かりしころの思い出

kazu106
青春
わたし自身が生涯の性癖として持ち合わせるM性について、それをはじめて自覚した中学時代の体験になります。歳を重ねた者の、人生の回顧録のひとつとして、読んでいただけましたら幸いです。 一部、フィクションも交えながら、述べさせていただいてます。フィクション/ノンフィクションの境界は、読んでくださった方の想像におまかせいたします。

M性に目覚めた若かりしころの思い出 その2

kazu106
青春
わたし自身が生涯の性癖として持ち合わせるM性について、終活的に少しづつ綴らせていただいてます。 荒れていた地域での、高校時代の体験になります。このような、古き良き(?)時代があったことを、理解いただけましたらうれしいです。 一部、フィクションも交えながら、述べさせていただいてます。フィクション/ノンフィクションの境界は、読んでくださった方の想像におまかせいたします。

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

一夏の性体験

風のように
恋愛
性に興味を持ち始めた頃に訪れた憧れの年上の女性との一夜の経験

吊るされた少年は惨めな絶頂を繰り返す

五月雨時雨
BL
ブログに掲載した短編です。

夫婦交換

山田森湖
恋愛
好奇心から始まった一週間の“夫婦交換”。そこで出会った新鮮なときめき

処理中です...