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第4章:帝国編

第123話 第一の間

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 僕たち全員が『第一の間』に入ると直ぐに、扉が閉じてしまった。もうここからはこの部屋の魔物を倒さない限りこの先に進む扉は開かないのだ。

 そして、しばらくの静寂の後に、部屋の中央に西洋甲冑のような銀色の金属板で全身を覆った将軍然とした魔物が姿を現した。

 一番張り切っていたのがリンゴだった。今までは僕の影に隠れてパタパタと飛んで応援していただけだったのがよほど悔しかったのだろう。

 真っ先に鼻息荒く突っ込んで行くと、魔物に向かって<咆哮ほうこう>を放った。
 その<咆哮>は、一瞬にして魔物を怯ませる。すると、すかさずオッサンの大盾が光を放ち、魔物の突進すら一身で受け止める<ファランクス>を発動させる。

 そうして準備は整った。僕たちの戦闘は開始したのだった。

 リンゴの活躍もあり、最初の物理パートではかなりの打撃を与える事が出来たと思う。

 オッサンとリンゴが前衛で魔物の攻撃を受け止め強烈なカウンターをお見舞いし、僕とガリオンさんがスピードで翻弄させ、アリシアが弓の連射ですさまじい損傷を与えると言った風にだ。

 後ろにはフランソワさんが控えてくれているのだ、これほど頼もしい事はない。僕たちは躊躇ちゅうちょすることなく、バンバン責め立てた。

 その甲斐あって、あっと言う間に物理パートは終わり、今度は魔法パートへ移行する。物理防御の障壁が張られ、ここからは魔法使いアイリの本領発揮の番だ。
 僕がアイリに魔物の弱点属性である火のダメージアップの魔を付加し、リンゴの応援でテンション爆上げをつけた事で、アイリの放つ火魔法は何倍もの威力の業火となり敵へと放たれる事となる……。その強烈な魔法は……。

「へ?」

 魔物将軍にヒョイとかわされてしまった。

 自信を持って放った一撃を避けられてしまったアイリ。しばらく呆然とするも、ハッとして、慌てて次の魔法を放つ。が、やはりヒョイヒョイとかわされてしまう。

 アイリが放つ一撃の魔法威力は絶大ではあるが、洞察力を駆使し、敵の動きを予測しての広い視野を持った攻撃が出来ていないのだ。強い敵と戦う事に対しての戦闘回数が圧倒的に少なく経験値不足であるのは否めない。

 なかなか自分の魔法が当たらない。一人で何とかしないといけない、そんな思いが気負い過ぎて空回りしてしまったアイリ。

「(やばいな……。)」

 僕は戦う前からアイリが緊張からかガチガチの状態だった事を実は気付いてはいたのだ。だが、
『まぁ、大丈夫だろう』
 今までずっと一緒に戦っていたクライドやミーリアがいないのとか、初めて入るパーティーに心細さを感じているだけだろうとか、そこを軽く考えてしまっていた。そのうちに慣れるだろうからと、甘く見ていたのだ。

 アリシアやガリオンさんも魔法は扱えるのだから、一人で意気込まなくても大丈夫。そこで、僕はアイリに声をかける。

「アイリ、落ち着け!大丈夫だから。お前は一人じゃないんだ、仲間を信じろ!」

 そう言う僕の魔法はと言えば、土で作ったかまどに、火でピザが焼ける程度なので、全く役にはたたないけどね。

 だが、アイリは意気込みが強すぎて、僕の声は彼女に届いてはいないようだった。

 いくら強力な魔法だとしても、当たらなければどうと言う事はないと言った風に余裕シャクシャクで、馬鹿にしたようにニヤリと笑う魔物将軍。

 アイリは焦りもあって冷静に魔物の動きを読む事が出来ずスピードについていけない。その上、その焦りが更に冷静さを失くしていき、僕が『魔法攻撃止め!』の指示までも聞き逃してしまったのだ。

 魔法障壁が張られてしまった所に、アイリが放つ強烈な火魔法が飛んで行ってしまった。

「危ない!」

 オッサンが咄嗟にアイリを付き飛ばし、アリシアが急いで結界を展開するも、時すでに遅しで、跳ね返った魔法が炸裂してオッサンは大きなダメージを負ってしまった。その為に、魔物を完全回復させてしまうと言う、非常事態に陥ってしまったのだ。

 自分の失態で仲間に大怪我を負わせてしまった事に気づいたアイリは、戦闘中にも関わらず、戦意喪失の放心状態で、その場にへたり込んでしまった。

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