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4話『不意打ちと仮説』
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『残りは21人となった。戦え』
夜の闇に響く謎の声に俺は、欠伸を咬み殺す。
ナザレアを殺して数日、他のファントムに遭遇することなく過ぎた日々だったが、今日もどこかで戦いは起きているようだ。
「俺含めて21か……まだまだか」
そう呟き、消えた焚き火の消し炭を木の枝でつつく。
別にファントムである以上、焚き火など炊かなくても寒くないし、暗さに怯える必要も無い。
ただそれでも敢えて一度は焚き火を炊いたのは、自分がまだどこかで人間でありたいと考えているかもしれない。
破壊衝動から生まれた第2の自分。今更後戻りどころか戻るところなんて無いとわかっているのに、そのような世迷いごとを考えてしまう自分が哀しい。
「動くな」
!
突然の声、反応するよりも先に俺の体が氷結する。
ファントムである以上、通常魔法能力による氷結などあり得ない。これは、…………同族か!?
何という失態だ。物思いにふけり、同族の接近に気が付かないなど……。いや、待て気が付かないなんてことがあるのか? おかしい。遠方にいる同族は意識集中により察知できるが、周辺にいれば嫌でも感覚が伝わってくるはず……何故だ?
考えている間にどんどん氷結範囲が広がっていく。
まずい。このままではやられてしまう!
「誰……だ!」
苦し紛れにそう叫んだ俺に声の主は姿を現わす。
その姿を見た俺は驚愕に目を見開き、それから苦笑いする。
「おい……。冗談はよせ……」
××××××××××××××××××××××
「死体をいろいろと調べみましたが……これらは人間の所業じゃぁなかったようですよぉ?」
皇帝の前でそう述べた若い男は、ヒラリとコートを翻すとニンマリ笑う。
その言葉に皇帝の間がザワつく。
「あれが人間の所業でないと?」「あんなことができる魔物がいるのか!?」「至急非常事態宣言を出すべきでは?」「討伐隊編成も行わなくては……」
口々に不安を漏らす大臣達。
玉座に座する皇帝は、深く息を吐くと問うた。
「どういうことだ?」
すると、コートの男はハイと答えるとパチンと指を鳴らしクルリとその場でスピンする。
「いやぁ、着目したのは殺害方法じゃなくて時間と残留物ですよぉ」
そういうと男は、コートの下から懐中時計を取り出す。
「仮にUとするソレが犯行に及んだ時間は推定では数分。これは、現在報告のあった34事例全てで言えることですぅ。こんなに大量の人間を数分で有無言わさず殺せるのは何らかの魔的能力の類だと考えます。しかし、現存するあらゆる魔法、魔術、魔物の力、病原体を調べてみましたが、これほど早く大量に殺害が可能なものはありませんでしたぁ。……そこでですよぉ。私は現場死体の全てからいずれも検出されたこの物質について調べてみましたぁ!」
そう言って男は、今度はポケットから銀の砂のようなものを取り出し周囲に振りまいた。
「それは?」
「はいぃ。これはですねイデアニウムという超古代粒子です。これそのものには何の効果もありません。しかし、これはある能力が発動した後に出るカスのようなものですぅ。つまりですねぇ……この仮説はあまりに飛んだものですが、現状でこれ以外の仮説が浮かびません。ですから、ハッキリと申し上げますが…………」
そこで一度言葉を切った男は、黒い帽子を目深にかぶり急に真面目な様子になり続けた。
「……古代の産物にして、史上最強と謳われた魔皇族の力、イデアゼムを使う者が現れたということです」
夜の闇に響く謎の声に俺は、欠伸を咬み殺す。
ナザレアを殺して数日、他のファントムに遭遇することなく過ぎた日々だったが、今日もどこかで戦いは起きているようだ。
「俺含めて21か……まだまだか」
そう呟き、消えた焚き火の消し炭を木の枝でつつく。
別にファントムである以上、焚き火など炊かなくても寒くないし、暗さに怯える必要も無い。
ただそれでも敢えて一度は焚き火を炊いたのは、自分がまだどこかで人間でありたいと考えているかもしれない。
破壊衝動から生まれた第2の自分。今更後戻りどころか戻るところなんて無いとわかっているのに、そのような世迷いごとを考えてしまう自分が哀しい。
「動くな」
!
突然の声、反応するよりも先に俺の体が氷結する。
ファントムである以上、通常魔法能力による氷結などあり得ない。これは、…………同族か!?
何という失態だ。物思いにふけり、同族の接近に気が付かないなど……。いや、待て気が付かないなんてことがあるのか? おかしい。遠方にいる同族は意識集中により察知できるが、周辺にいれば嫌でも感覚が伝わってくるはず……何故だ?
考えている間にどんどん氷結範囲が広がっていく。
まずい。このままではやられてしまう!
「誰……だ!」
苦し紛れにそう叫んだ俺に声の主は姿を現わす。
その姿を見た俺は驚愕に目を見開き、それから苦笑いする。
「おい……。冗談はよせ……」
××××××××××××××××××××××
「死体をいろいろと調べみましたが……これらは人間の所業じゃぁなかったようですよぉ?」
皇帝の前でそう述べた若い男は、ヒラリとコートを翻すとニンマリ笑う。
その言葉に皇帝の間がザワつく。
「あれが人間の所業でないと?」「あんなことができる魔物がいるのか!?」「至急非常事態宣言を出すべきでは?」「討伐隊編成も行わなくては……」
口々に不安を漏らす大臣達。
玉座に座する皇帝は、深く息を吐くと問うた。
「どういうことだ?」
すると、コートの男はハイと答えるとパチンと指を鳴らしクルリとその場でスピンする。
「いやぁ、着目したのは殺害方法じゃなくて時間と残留物ですよぉ」
そういうと男は、コートの下から懐中時計を取り出す。
「仮にUとするソレが犯行に及んだ時間は推定では数分。これは、現在報告のあった34事例全てで言えることですぅ。こんなに大量の人間を数分で有無言わさず殺せるのは何らかの魔的能力の類だと考えます。しかし、現存するあらゆる魔法、魔術、魔物の力、病原体を調べてみましたが、これほど早く大量に殺害が可能なものはありませんでしたぁ。……そこでですよぉ。私は現場死体の全てからいずれも検出されたこの物質について調べてみましたぁ!」
そう言って男は、今度はポケットから銀の砂のようなものを取り出し周囲に振りまいた。
「それは?」
「はいぃ。これはですねイデアニウムという超古代粒子です。これそのものには何の効果もありません。しかし、これはある能力が発動した後に出るカスのようなものですぅ。つまりですねぇ……この仮説はあまりに飛んだものですが、現状でこれ以外の仮説が浮かびません。ですから、ハッキリと申し上げますが…………」
そこで一度言葉を切った男は、黒い帽子を目深にかぶり急に真面目な様子になり続けた。
「……古代の産物にして、史上最強と謳われた魔皇族の力、イデアゼムを使う者が現れたということです」
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