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冒険者レイラと魔法剣
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冒険者のレイラは、とある森の奥深くを探索していました。
しかし、突然現れた巨大な魔物に襲われ、危機一髪で逃げ延びました。
「ふぅ、危なかった。でも、この魔物は強すぎるわ。もっと強い武器が必要ね」
そこで、レイラは街の武器屋に向かいました。
「ようこそ、冒険者のお嬢さん。何かお探しですか?」
「森の魔物が倒せなくってね。もっと強い武器が欲しいんだけど……」
「そうですか、ではこちらはいかがです?」
武器屋が部屋の奥から持って来たのは、見るからに豪華で美しい剣でした。
「魔法の力を攻撃に上乗せする魔法剣です。これであれば、森にいる魔物なら何でも一撃で倒せますよ」
「へぇ、すごいわね! でも残念だけど、私は魔法を使えないの……何とかならない?」
武器屋は少し考えた後、レイラに特別な取引を提案しました。
「では、この魔法剣を一時的にお貸ししましょう。もし1週間以内にこれを使えるようになったら、代金はいただかないことにします」
「いいの!? すごくありがたい条件だけど……どうやって魔法を使えるようになるの?」
「それはあなたが自分で見つけ出すことです。冒険者として、自分で解決することもあるはずですよ」
「わかったわ。じゃあこの魔法剣を借りていくわね」
レイラは魔法剣を持って武器屋から出ました。
人気の無い原っぱで試しに振ってみると、剣は軽くとても扱いやすいものでした。ですが弱い魔物と戦ってみた限り、普通の剣と変わりは無さそうです。
レイラは様々な場所へ行って魔法が使えるようになる方法を探しました。冒険者ギルド、魔術師ギルド、街の占い師などなど色々な人に尋ねたり本を読みましたが、何の効果もありませんでした。この世界では魔法が扱える人は限られているのです。
剣を借りてから6日が経ち、明日には武器屋に返さないといけません。
困ったレイラは諦め半分で森の奥へ向かいました。これ以上先に進んだらあの魔物の縄張りです。
「さて、どうしようかな……」
「――何かお困り?」
「うわぁっ!?」
木の陰から突然レイラの前に妖精が飛び出してきました。
「こんにちは、私は魔法の妖精よ。あなた、魔法を使う力が欲しいのならあげましょうか?」
「えっ、本当に!?」
「ええ、でも代わりに、あなたにとって大切なもの……あなたが心から愛するものをひとつ貰うわ」
「私が心から愛するもの……何かしら」
レイラは考え込みました。いくら愛するものといっても、本当に奪われたら困るものは答えられません。
暫く考えて、それから思い付きました。
「私が心から愛するものは、私の愛馬のピーターよ」
「馬? 本当にそれでいいの?」
「ええ、構わないわ」
ピーターはレイラが冒険者になる為に田舎からこの街に出て来る時に乗って来た馬でした。遠方への冒険の際にはいつも乗っていて、魔物に襲われても動じず走ってくれる勇敢で足の速い、レイラの良き相棒でした。
けれど最近は乗る機会が少なく、近くの牧場に預けたままになっていました。その管理費もバカにならないので手放すには丁度いいと思いました。
「わかったわ、じゃああなたに魔法の力をあげる」
妖精が人間には聞き取れない呪文と共にくるくると宙を舞うと、舞い散った光の粉がレイラに降り注ぎ、その手に魔法の力が宿りました。
「……フレイム!」
試しに基礎的な魔法を唱えてみると、魔法の力が発動し、レイラの掌の上に火の玉が現れました。
「やった! これなら魔物も怖くないわ! ありがとう妖精さん!」
「いいえ、こんなのお安い御用です。頑張ってくださいね」
レイラは妖精に満面の笑みを浮かべて頭を下げてから、魔物の棲み処へ向かって行きました。
◆
数日後、森の奥に落ちている美しい剣を武器屋が拾いました。その肩には妖精が留まっています。
「……それで、その馬は高く売れたの?」
「ええ、多少歳は取っていましたが身の付きや脂乗りは良かったですからね。それなりになりましたよ。魔法剣も回収完了っと……はいこれ、あなたへの報酬です」
「やったぁ!」
武器屋は妖精にクッキーがいっぱい入った袋を渡しました。
漏れて来るハチミツの香りだけで妖精は大喜びです。早速袋を開けて1枚食べながら、他に散らばった物品を回収する武器屋を眺めながら言いました。
「無理を通すなら代償が必要なのは当然なのに、何故ヒトはそれを軽んじてしまうのかしらね」
「突然全てを賭ける大博打ができる者は少ないんですよ」
「こうして無謀な敵には挑むのに?」
「一番重要なのは、自分と相手の力量を見極めることかもしれませんね」
2人がそんなことを話していると、茂みの向こうから唸り声が聞こえました。あの強力な魔物のようですが姿は見えません。
「……獣の方がそういう見極めはちゃんとしてますね」
「いいから早く出てけって怒ってるわよ」
「おっとこれは失礼。今後も宜しく頼みますよ」
「はーい」
魔物と妖精に笑いかけてから、武器屋はそそくさとその場を立ち去りました。
こうして次の冒険者が来るまで、森はまた静かになったのでした。
しかし、突然現れた巨大な魔物に襲われ、危機一髪で逃げ延びました。
「ふぅ、危なかった。でも、この魔物は強すぎるわ。もっと強い武器が必要ね」
そこで、レイラは街の武器屋に向かいました。
「ようこそ、冒険者のお嬢さん。何かお探しですか?」
「森の魔物が倒せなくってね。もっと強い武器が欲しいんだけど……」
「そうですか、ではこちらはいかがです?」
武器屋が部屋の奥から持って来たのは、見るからに豪華で美しい剣でした。
「魔法の力を攻撃に上乗せする魔法剣です。これであれば、森にいる魔物なら何でも一撃で倒せますよ」
「へぇ、すごいわね! でも残念だけど、私は魔法を使えないの……何とかならない?」
武器屋は少し考えた後、レイラに特別な取引を提案しました。
「では、この魔法剣を一時的にお貸ししましょう。もし1週間以内にこれを使えるようになったら、代金はいただかないことにします」
「いいの!? すごくありがたい条件だけど……どうやって魔法を使えるようになるの?」
「それはあなたが自分で見つけ出すことです。冒険者として、自分で解決することもあるはずですよ」
「わかったわ。じゃあこの魔法剣を借りていくわね」
レイラは魔法剣を持って武器屋から出ました。
人気の無い原っぱで試しに振ってみると、剣は軽くとても扱いやすいものでした。ですが弱い魔物と戦ってみた限り、普通の剣と変わりは無さそうです。
レイラは様々な場所へ行って魔法が使えるようになる方法を探しました。冒険者ギルド、魔術師ギルド、街の占い師などなど色々な人に尋ねたり本を読みましたが、何の効果もありませんでした。この世界では魔法が扱える人は限られているのです。
剣を借りてから6日が経ち、明日には武器屋に返さないといけません。
困ったレイラは諦め半分で森の奥へ向かいました。これ以上先に進んだらあの魔物の縄張りです。
「さて、どうしようかな……」
「――何かお困り?」
「うわぁっ!?」
木の陰から突然レイラの前に妖精が飛び出してきました。
「こんにちは、私は魔法の妖精よ。あなた、魔法を使う力が欲しいのならあげましょうか?」
「えっ、本当に!?」
「ええ、でも代わりに、あなたにとって大切なもの……あなたが心から愛するものをひとつ貰うわ」
「私が心から愛するもの……何かしら」
レイラは考え込みました。いくら愛するものといっても、本当に奪われたら困るものは答えられません。
暫く考えて、それから思い付きました。
「私が心から愛するものは、私の愛馬のピーターよ」
「馬? 本当にそれでいいの?」
「ええ、構わないわ」
ピーターはレイラが冒険者になる為に田舎からこの街に出て来る時に乗って来た馬でした。遠方への冒険の際にはいつも乗っていて、魔物に襲われても動じず走ってくれる勇敢で足の速い、レイラの良き相棒でした。
けれど最近は乗る機会が少なく、近くの牧場に預けたままになっていました。その管理費もバカにならないので手放すには丁度いいと思いました。
「わかったわ、じゃああなたに魔法の力をあげる」
妖精が人間には聞き取れない呪文と共にくるくると宙を舞うと、舞い散った光の粉がレイラに降り注ぎ、その手に魔法の力が宿りました。
「……フレイム!」
試しに基礎的な魔法を唱えてみると、魔法の力が発動し、レイラの掌の上に火の玉が現れました。
「やった! これなら魔物も怖くないわ! ありがとう妖精さん!」
「いいえ、こんなのお安い御用です。頑張ってくださいね」
レイラは妖精に満面の笑みを浮かべて頭を下げてから、魔物の棲み処へ向かって行きました。
◆
数日後、森の奥に落ちている美しい剣を武器屋が拾いました。その肩には妖精が留まっています。
「……それで、その馬は高く売れたの?」
「ええ、多少歳は取っていましたが身の付きや脂乗りは良かったですからね。それなりになりましたよ。魔法剣も回収完了っと……はいこれ、あなたへの報酬です」
「やったぁ!」
武器屋は妖精にクッキーがいっぱい入った袋を渡しました。
漏れて来るハチミツの香りだけで妖精は大喜びです。早速袋を開けて1枚食べながら、他に散らばった物品を回収する武器屋を眺めながら言いました。
「無理を通すなら代償が必要なのは当然なのに、何故ヒトはそれを軽んじてしまうのかしらね」
「突然全てを賭ける大博打ができる者は少ないんですよ」
「こうして無謀な敵には挑むのに?」
「一番重要なのは、自分と相手の力量を見極めることかもしれませんね」
2人がそんなことを話していると、茂みの向こうから唸り声が聞こえました。あの強力な魔物のようですが姿は見えません。
「……獣の方がそういう見極めはちゃんとしてますね」
「いいから早く出てけって怒ってるわよ」
「おっとこれは失礼。今後も宜しく頼みますよ」
「はーい」
魔物と妖精に笑いかけてから、武器屋はそそくさとその場を立ち去りました。
こうして次の冒険者が来るまで、森はまた静かになったのでした。
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