君になんか抱かれるもんか

林檎飴

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スンドメ

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手も足も動かない。視界も奪われている。どうやらさっきの奴らに、椅子に縛り付けられたようだ。

「よぉー。昨日ぶりだな、ゲンちゃん」

ゲンちゃん、というのは彼の芸名で、本名とはかすりもしてない。得意げにそう呼んでいる男に呆れていると、なにやらバイブレーションの音が後ろから聞こえて来た。どうやら男は、彼の後ろにいるらしい。

「なんすか、こんな事して。犯罪ですよ?」

返事は返ってこなかった。怖気付いた?いや、そんな訳がない。耳を澄ましていると、なにやらガサゴソやっているようだった。おまけに小声でなにか話しているが聞こえない。続いて、テープを切る音が聞こえて来たと思えば、後ろから椅子を蹴られた。

「うわっ!」

彼はここで初めて、自分が裸だということに気づいた。つまり彼は今、裸で顔を地面につけ、お尻を突き出している状態。ここは広い部屋なのか、恥ずかしいところが丸見えだとか、笑い声だとかがはっきり聞こえて、彼は恥ずかしくてたまらなかった。そう思ったのもつかの間…

「ひっ!」

おもちゃが彼の中に入っていく。ローションも塗られてないから、痛いはずなのに気持ちいい。そして彼の蕾や、彼の物にはローターが貼られた。テープを切った音とバイブレーションの音の正体はこれだったらしい。

「やめっ…あっ…!んん…はぁあっ…やめろって…うぁっ…」

彼がそう言うと、本当にローターの動きが止まった。行く直前に、止まった。情けない自分の姿に、涙が溢れる。いや、昔の事を思い出して、トラウマが蘇ったのかもしれない。どちらにせよ、いい気持ちではない事は確かだ。それから根本を縄で縛られ、行きそうになるたびにローターを止められ、彼の頭はもう、真っ白になっていた。

「なぁ、行きたいか?」

「う…あ…はひ…」

椅子に彼を縛り付けていた縄は解かれ、目隠しも外される。ニヤッとした顔の男が目の前に映る。もはや抵抗する気力もなく、彼はぐったりとしていたが、頭を掴まれ、無理矢理起こされた。

「行かせてください、ご主人様って言ってみろ」

「…!」

流石にそれはプライドが許せなかったのか、彼は黙った。根本はまだ縛られているため、あそこは立ちっぱなしで、苦しい。でもこんな男に、そんな事を言ってもいいのか?店の仕事でもないのに。だけど…

「……行かせてください…ごしゅじん…さま…」

「ふふふっ…あははっ!」

彼は勝ち誇ったような、狂ったような顔をしてこっちを見ていた。ぞっとする。でもこれで行かせてもらえるんだと思うと、少し嬉しかった。それと同時に、嬉しかった自分が、彼は許せなかった。

「行かせねぇよ。」
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