306 / 451
13
しおりを挟む
僕は手を伸ばして、ラズールの頬をさわる。
ラズールの肩がピクリと揺れて、眩しそうに目を細めた。
「なに…」
「ほら、目の下にクマができてる。眠れてないんだろ?ゼノが言ってたように、これからが大変なんだから、寝れる時に寝ようよ」
「しかし」
「おまえは本当に頑固だね。来て」
「フィル様っ」
僕はラズールの腕を掴んで、強く引っ張った。
いきなり引っ張っられて、ラズールが僕の上に倒れる。でも僕を潰さないように、ラズールが腕を突っ張ってくれたから大丈夫だ。
「ここ。ここに来て」
「え…はい」
僕の隣を叩くと、ラズールが素直に横になった。僕は笑って、もう一度天井を見る。
「リアムの叔父上って、どんな方だろうね。緊張しちゃうね」
「どんな方であろうと、フィル様に失礼な態度は取らせません」
「ラズールこそ、怒ったりしないでよ」
「その方のフィル様への接し方によります」
「ホントにおまえは僕のことばかり。…でも、ありがとう」
「あなたは俺の生きる理由ですから」
「…また言ってる。もう眠くなってきたから寝るよ」
「はい。おやすみなさい」
「ん、おやすみ…」
僕は目を閉じた。
本当はまだ眠くない。でもこれ以上ラズールと話していたら、泣きそうだったから寝たフリをした。
僕を生きる理由にしてはダメだよ。そんなの、僕がいなくなったら死ぬってことだろ?ラズールは生きて。僕が消えても生きてほしい。
込み上げてくるものを抑えて、僕は目を固くつむる。
ラズールの視線を感じる。僕を見ている。銀髪を撫でている。僕の髪を撫でるラズールの優しい手は、幼い頃から大好きだ。安心する。だからか、僕はいつの間にか眠ってしまっていた。
ふと胸が苦しくて、目を覚ました。部屋の中が暗い。日が落ちたのか。どれくらい眠っていたのか。ラズールは?と隣を見ると、珍しくラズールが熟睡している。僕を大事そうに抱きしめて。だから胸が苦しかったのかと思わず笑った。
僕に危険が及ばないように、常に周囲に注意を払って、神経を研ぎ澄ませていたラズールが、このように深く眠るのは珍しい。よほど疲れていたのだろう。
僕はそっとラズールの背中に手を回した。そして硬い胸に鼻を押し当てて匂いを嗅ぐ。生まれた時から傍にある、安心する匂いだ。
「いつも守ってくれてありがとう。ラズールがいたから、僕は生きてこれた。これからは、自分のために生きてね」
とても小さく掠れた声で呟く。面と向かって言いたいけど、ラズールは絶対に納得しないから。だから眠ってる間にしか言えないけど。本当に心から感謝してるんだ。
「ラズール、大好きだよ」
そう呟いて再び目を閉じた僕の頭上で、ラズールの息が震えた気がした。
ラズールの肩がピクリと揺れて、眩しそうに目を細めた。
「なに…」
「ほら、目の下にクマができてる。眠れてないんだろ?ゼノが言ってたように、これからが大変なんだから、寝れる時に寝ようよ」
「しかし」
「おまえは本当に頑固だね。来て」
「フィル様っ」
僕はラズールの腕を掴んで、強く引っ張った。
いきなり引っ張っられて、ラズールが僕の上に倒れる。でも僕を潰さないように、ラズールが腕を突っ張ってくれたから大丈夫だ。
「ここ。ここに来て」
「え…はい」
僕の隣を叩くと、ラズールが素直に横になった。僕は笑って、もう一度天井を見る。
「リアムの叔父上って、どんな方だろうね。緊張しちゃうね」
「どんな方であろうと、フィル様に失礼な態度は取らせません」
「ラズールこそ、怒ったりしないでよ」
「その方のフィル様への接し方によります」
「ホントにおまえは僕のことばかり。…でも、ありがとう」
「あなたは俺の生きる理由ですから」
「…また言ってる。もう眠くなってきたから寝るよ」
「はい。おやすみなさい」
「ん、おやすみ…」
僕は目を閉じた。
本当はまだ眠くない。でもこれ以上ラズールと話していたら、泣きそうだったから寝たフリをした。
僕を生きる理由にしてはダメだよ。そんなの、僕がいなくなったら死ぬってことだろ?ラズールは生きて。僕が消えても生きてほしい。
込み上げてくるものを抑えて、僕は目を固くつむる。
ラズールの視線を感じる。僕を見ている。銀髪を撫でている。僕の髪を撫でるラズールの優しい手は、幼い頃から大好きだ。安心する。だからか、僕はいつの間にか眠ってしまっていた。
ふと胸が苦しくて、目を覚ました。部屋の中が暗い。日が落ちたのか。どれくらい眠っていたのか。ラズールは?と隣を見ると、珍しくラズールが熟睡している。僕を大事そうに抱きしめて。だから胸が苦しかったのかと思わず笑った。
僕に危険が及ばないように、常に周囲に注意を払って、神経を研ぎ澄ませていたラズールが、このように深く眠るのは珍しい。よほど疲れていたのだろう。
僕はそっとラズールの背中に手を回した。そして硬い胸に鼻を押し当てて匂いを嗅ぐ。生まれた時から傍にある、安心する匂いだ。
「いつも守ってくれてありがとう。ラズールがいたから、僕は生きてこれた。これからは、自分のために生きてね」
とても小さく掠れた声で呟く。面と向かって言いたいけど、ラズールは絶対に納得しないから。だから眠ってる間にしか言えないけど。本当に心から感謝してるんだ。
「ラズール、大好きだよ」
そう呟いて再び目を閉じた僕の頭上で、ラズールの息が震えた気がした。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
480
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる