13 / 89
5
しおりを挟む
俺と青は、ずっと仲が良かった。
喧嘩をしたこともなかった。
それは俺が青を怒れないということもあったし、青も俺を怒らせるようなことをしないからだ。
俺と青は、何をするにも一緒だった。
学校に行く時も帰る時も、ご飯を食べる時もお風呂に入る時も、そして寝る時もどちらかのベッドで一緒に眠る。
だけど常に一緒の俺達はおかしいのかもしれないと、中一の時に気づいた。
中一にもなると、クラスの男子の中には、ちらほらと好きな女の子が出来る子がいた。
話の話題も、誰が可愛いとかの話になる。
教室の窓際の俺の席で、俺と夏樹が、帰りに何か食べて帰ろうと話していると、隣に集まっていた三人の内の一人が、話しかけてきた。
「森野と宮下、おまえらは好きな奴いねぇの?」
「いないよ。昊は?」
「俺もいない」
その男の子は、どこか安心したような顔をした。
「そっかぁ。おまえらイケメンだからさ、彼女がいるのかと思ってた!」
「あはは!ありがとう。でも俺は別にイケメンじゃないけどな。それに今は部活してる方が楽しいし」
「夏樹、サッカー上手いもんな。俺も弟と遊ぶ方が楽しいかな」
「あー、昊は青と仲いいよな」
俺と夏樹の会話を聞いて、男の子は「えっ!」と驚いた顔をした。
「なんだよ。大きい声出して」
「いや…えっ?森野って弟と仲いいの?弟って何歳?」
「二つ下だけど…」
「俺、三個下の妹いるけどさ、喧嘩ばっかだぜ?それか男同士の方が喧嘩しないもん?」
「さあ…。他の家は知らないけど、俺は弟と喧嘩したことないよ」
「へえっ、珍しいなっ」
「青は昊には素直だもんな。俺には突っかかってくるけど…」
俺は青のことが可愛い。たとえ青が我儘を言っても、きっと笑って許してしまう。
他の兄弟がいる人達も、皆そうだと思っていた。俺達兄弟は、他の兄弟よりも少し仲が良いかなとは思っていたけど、皆同じだと思っていた。
でもそうか…。もしかして俺と青みたいに仲が良すぎるのは、珍しいのかもしれない。
黙って考え込んでしまった俺に、夏樹が明るい声を出した。
「昊が優しくて出来た兄ちゃんだから、青も昊には素直なんだよな。おまえさ、妹には優しくしてるのかよ?」
「…してない。だってあいつ、我儘なんだよっ」
「妹の我儘なんて可愛いもんだろ。優しくしてたらさ、可愛い友達を連れて来るかもよ?」
「えー?小学生になんて興味ねぇ」
「まあ確かに…」
話してる途中で授業開始のチャイムが鳴った。話していた子は自分の席に戻り、夏樹も俺の肩を叩いて席に戻る。
俺は、ぼんやりと窓の外を眺めて、青のことを考えた。
喧嘩をしたこともなかった。
それは俺が青を怒れないということもあったし、青も俺を怒らせるようなことをしないからだ。
俺と青は、何をするにも一緒だった。
学校に行く時も帰る時も、ご飯を食べる時もお風呂に入る時も、そして寝る時もどちらかのベッドで一緒に眠る。
だけど常に一緒の俺達はおかしいのかもしれないと、中一の時に気づいた。
中一にもなると、クラスの男子の中には、ちらほらと好きな女の子が出来る子がいた。
話の話題も、誰が可愛いとかの話になる。
教室の窓際の俺の席で、俺と夏樹が、帰りに何か食べて帰ろうと話していると、隣に集まっていた三人の内の一人が、話しかけてきた。
「森野と宮下、おまえらは好きな奴いねぇの?」
「いないよ。昊は?」
「俺もいない」
その男の子は、どこか安心したような顔をした。
「そっかぁ。おまえらイケメンだからさ、彼女がいるのかと思ってた!」
「あはは!ありがとう。でも俺は別にイケメンじゃないけどな。それに今は部活してる方が楽しいし」
「夏樹、サッカー上手いもんな。俺も弟と遊ぶ方が楽しいかな」
「あー、昊は青と仲いいよな」
俺と夏樹の会話を聞いて、男の子は「えっ!」と驚いた顔をした。
「なんだよ。大きい声出して」
「いや…えっ?森野って弟と仲いいの?弟って何歳?」
「二つ下だけど…」
「俺、三個下の妹いるけどさ、喧嘩ばっかだぜ?それか男同士の方が喧嘩しないもん?」
「さあ…。他の家は知らないけど、俺は弟と喧嘩したことないよ」
「へえっ、珍しいなっ」
「青は昊には素直だもんな。俺には突っかかってくるけど…」
俺は青のことが可愛い。たとえ青が我儘を言っても、きっと笑って許してしまう。
他の兄弟がいる人達も、皆そうだと思っていた。俺達兄弟は、他の兄弟よりも少し仲が良いかなとは思っていたけど、皆同じだと思っていた。
でもそうか…。もしかして俺と青みたいに仲が良すぎるのは、珍しいのかもしれない。
黙って考え込んでしまった俺に、夏樹が明るい声を出した。
「昊が優しくて出来た兄ちゃんだから、青も昊には素直なんだよな。おまえさ、妹には優しくしてるのかよ?」
「…してない。だってあいつ、我儘なんだよっ」
「妹の我儘なんて可愛いもんだろ。優しくしてたらさ、可愛い友達を連れて来るかもよ?」
「えー?小学生になんて興味ねぇ」
「まあ確かに…」
話してる途中で授業開始のチャイムが鳴った。話していた子は自分の席に戻り、夏樹も俺の肩を叩いて席に戻る。
俺は、ぼんやりと窓の外を眺めて、青のことを考えた。
6
あなたにおすすめの小説
ヤンデレだらけの短編集
八
BL
ヤンデレだらけの1話(+おまけ)読切短編集です。
【花言葉】
□ホオズキ:寡黙執着年上とノンケ平凡
□ゲッケイジュ:真面目サイコパスとただ可哀想な同級生
□アジサイ:不良の頭と臆病泣き虫
□ラベンダー:希死念慮不良とおバカ
□デルフィニウム:執着傲慢幼馴染と地味ぼっち
ムーンライトノベル様に別名義で投稿しています。
かなり昔に書いたもので芸風(?)が違うのですが、楽しんでいただければ嬉しいです!
【異世界短編】単発ネタ殴り書き随時掲載。
◻︎お付きくんは反社ボスから逃げ出したい!:お馬鹿主人公くんと傲慢ボス
弟が兄離れしようとしないのですがどうすればいいですか?~本編~
荷居人(にいと)
BL
俺の家族は至って普通だと思う。ただ普通じゃないのは弟というべきか。正しくは普通じゃなくなっていったというべきか。小さい頃はそれはそれは可愛くて俺も可愛がった。実際俺は自覚あるブラコンなわけだが、それがいけなかったのだろう。弟までブラコンになってしまった。
これでは弟の将来が暗く閉ざされてしまう!と危機を感じた俺は覚悟を持って……
「龍、そろそろ兄離れの時だ」
「………は?」
その日初めて弟が怖いと思いました。
優しい檻に囚われて ―俺のことを好きすぎる彼らから逃げられません―
無玄々
BL
「俺たちから、逃げられると思う?」
卑屈な少年・織理は、三人の男から同時に告白されてしまう。
一人は必死で熱く重い男、一人は常に包んでくれる優しい先輩、一人は「嫌い」と言いながら離れない奇妙な奴。
選べない織理に押し付けられる彼らの恋情――それは優しくも逃げられない檻のようで。
本作は織理と三人の関係性を描いた短編集です。
愛か、束縛か――その境界線の上で揺れる、執着ハーレムBL。
※この作品は『記憶を失うほどに【https://www.alphapolis.co.jp/novel/364672311/155993505】』のハーレムパロディです。本編未読でも雰囲気は伝わりますが、キャラクターの背景は本編を読むとさらに楽しめます。
※本作は織理受けのハーレム形式です。
※一部描写にてそれ以外のカプとも取れるような関係性・心理描写がありますが、明確なカップリング意図はありません。が、ご注意ください
死神に狙われた少年は悪魔に甘やかされる
ユーリ
BL
魔法省に悪魔が降り立ったーー世話係に任命された花音は憂鬱だった。だって悪魔が胡散臭い。なのになぜか死神に狙われているからと一緒に住むことになり…しかも悪魔に甘やかされる!?
「お前みたいなドジでバカでかわいいやつが好きなんだよ」スパダリ悪魔×死神に狙われるドジっ子「なんか恋人みたい…」ーー死神に狙われた少年は悪魔に甘やかされる??
完璧な計画
しづ未
BL
双子の妹のお見合い相手が女にだらしないと噂だったので兄が代わりにお見合いをして破談させようとする話です。
本編+おまけ後日談の本→https://booth.pm/ja/items/6718689
鎖に繋がれた騎士は、敵国で皇帝の愛に囚われる
結衣可
BL
戦場で捕らえられた若き騎士エリアスは、牢に繋がれながらも誇りを折らず、帝国の皇帝オルフェンの瞳を惹きつける。
冷酷と畏怖で人を遠ざけてきた皇帝は、彼を望み、夜ごと逢瀬を重ねていく。
憎しみと抗いのはずが、いつしか芽生える心の揺らぎ。
誇り高き騎士が囚われたのは、冷徹な皇帝の愛。
鎖に繋がれた誇りと、独占欲に満ちた溺愛の行方は――。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる