ふれたら消える

明樹

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青 13

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 去年の文化祭の夜から、昊が一緒に寝てくれなくなった。それまではどちらかのベッドで交代で寝ていたのに。眠くなるまでゲームをして話をして楽しかったのに。眠ったあとの昊の綺麗きれいな顔を見るのが楽しみだったのに。先に起きた昊が、俺の顔にイタズラをするのが嬉しかったのに。なのにどうして?文化祭の日に何があった?
 理由を教えてほしいと何度聞いても、昊は「中学生にもなって兄弟で寝るのはおかしいだろ」としか言わなかった。
 なんでだよ。今までそんな態度、微塵みじんも見せなかったくせに。急にどうして。
 俺は嫌だとごねたけど、いつもなら最後には折れてくれるのだけど、昊は「だめだ」と言って部屋の扉を閉めたんだ。
 翌日の休み時間に夏樹を見つけて昊に何かあったのかを聞いた。聞いた瞬間、夏樹の目がかすかに泳いだ気がしたけど、いつもの穏やかな表情で「何もないよ」と言う。

「ほんとに?」
「なんでそんなこと聞くんだよ」
「昨日から昊の様子がおかしいから」
「そうなの?昨日も今日もいつもの昊だけど?」
「だってさ…夜、一緒に寝てくれなくなった…」
「ふはっ!青はかわいいなっ」
「なに笑ってんだよ」

 俺は夏樹を睨んだ。
 夏樹は笑いながら手を伸ばして俺の頭を撫でる。

「青は昊のこと大好きだな。俺も青みたいな弟が欲しかったな」
「ちっ…」
「怒るなよ。俺は昊も青も好きなんだ。大切な友達だ。だから仲良くしろよ」
「別に喧嘩はしてない」
「そう?今朝の昊、元気がなかったぞ。青が喋ってくれないって」
「怒ってはいない…拗ねてるだけだ」
「そーゆーとこ」

 夏樹が俺の頭から手を離して「あ」と声を出した。

「そうそう、昊が駅近くにできたカフェのフラペチーノ飲みたいって言ってたよ。サッカー部は今日も部活ないんだろ?一緒に行ってやれよ」
「夏樹は?」
「俺は部活あんの。あとな、昊は照れくさいだけなんだと思うよ、青と寝るのが。それにおまえ身体デカいじゃん。かなり窮屈きゅうくつなんじゃねぇの?」
「でも…俺は寝相ねぞう悪くない」
「青は甘えんぼうだなぁ。別に一緒に寝なくなってもいいじゃん。同じ家に住んでるんだから、寝るまでお互いの部屋で話せるだろ?それに昊は、そろそろ真剣に受験勉強を始める。おまえより遅くまで起きてる。気を使ったんだよ、きっと」

 まあ、知らないけど…と小さくつけ加えて、夏樹が離れて行く。
「気を使うってなんだよ」と呟いて、俺はポケットからスマホを出した。
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