溺れる天使は悪魔をもつかむ

明樹

文字の大きさ
59 / 116

3

「おいおい、悪魔が人前で泣くなよな。それよりも早くエイルリスの記憶を操作しろよ」
「嫌だ。しない」
「はあ?おまえ、そんなんじゃ、いつか人か天使に殺されるぞ」
「ルリスになら…いい」
「ははっ!だってさ、エイルリス。ここまで悪魔に好かれた人間を初めて見たよ」
「ふーん」

 口を開けて笑うオリスを、エイルリスは冷めた目で見る。
 オリスは正しく悪魔だな。平気で人の命を奪いそうだ。でも、悪魔とはそういうものだ。フォラスだって、そうだった。でも、アレンは違うのか?特別に変わってるのかもしれない。

 「少し考えたい。だから誰もついて来るな」
「ルリス…」

 アレンが涙を拭おうともせずに、鼻をすすって、また泣きそうになる。
 エイルリスは、許してしまいそうになる気持ちを堪えて、アレンに背を向けた。
 すると、いつの間にか目の前にオリスが立っていた。

「ごめんな。俺からバラしといて何だけど、正体を話されると困るから、忘れてくれ」
「は?」

 オリスの手が伸びて、エイルリスの頭に乗る。
 その手を払おうとする前に、頭のてっぺんから背中にかけて冷気が走った。
 エイルリスは、気持ち悪さにオリスを睨む。

「悪魔め」
「俺はオキザリス寮の寮長、オリス。優しい先輩だよ」

 オリスが顔を寄せ、目を赤く光らせて囁く。自信に満ちた笑みを浮かべて、エイルリスの顔に息を吹きかけた。
 エイルリスは、冷静だった。
 オリスは今、記憶操作の術をかけている。だが、背中に気持ち悪い感覚がするだけで、何も変わっていない。
 バカめ、俺は天使だ。力の強い天使だ。おまえ程度の悪魔が俺を操れるわけないだろうが。術などかかるものか。でもまあ、その得意そうな顔が崩れたら可哀想だから、かかった振りをしておいてやる。かからないと知れたら面倒だからな。
 しかし、術をかけ終わる前に、オリスの体が後ろに弾け飛んだ。
 「え?俺は何もやってないぞ」と驚くエイルリスの視界が、アレンの背中で遮られる。

「ルリスに手を出すなっ。次にまたルリスに何かしたら、俺はおまえを許さない!」
「いってぇ…。許さないって、どうするんだよ。ていうか、俺は上級生なんだけど」
「知るか。力は俺の方が上だ」
「嘘を言うな。俺はかなり強いんだ」
「へぇ。おまえこそ嘘を言うな」
「そうだな。アレンの方が強いよな……あ」

 しまった、とエイルリスが口を閉じた。
 無意識に口から出てしまった。
 だって、アレンが悪魔だと全く気づかなかった。悪魔の気配を微塵も感じなかった。だけど、オリスは見た瞬間に悪魔だとわかった。だから、アレンの方が力が強いと知っている。





感想 0

あなたにおすすめの小説

邪神の祭壇へ無垢な筋肉を生贄として捧ぐ

BL
世間に秘された名門男子校・平坂学園体育科 空手の名選手であった高尾雄一は、新任教師として赴任する 高潔な人格と鋼のように鍛えられた肉体 それは、学園にとって最高の生贄の候補に他ならなかった 至高の筋肉を持つ、精神を削られ意志をなくした青年を太古の神に捧げるため、“水”、“風”、“土”の信奉者達が暗躍する 意志をなくし筋肉の操り人形と化した“デク” 消える教師 山奥の男子校で繰り広げられるダークファンタジー

赤の瞳

天気
BL
赤い瞳 読んでくださってありがとうございます。 短い日もありますが、完結に向け書きます。

あなたの隣で初めての恋を知る

彩矢
BL
5歳のときバス事故で両親を失った四季。足に大怪我を負い車椅子での生活を余儀なくされる。しらさぎが丘養護施設で育ち、高校卒業後、施設を出て一人暮らしをはじめる。 その日暮らしの苦しい生活でも決して明るさを失わない四季。 そんなある日、突然の雷雨に身の危険を感じ、雨宿りするためにあるマンションの駐車場に避難する四季。そこで、運命の出会いをすることに。 一回りも年上の彼に一目惚れされ溺愛される四季。 初めての恋に戸惑いつつも四季は、やがて彼を愛するようになる。 表紙絵は絵師のkaworineさんに描いていただきました。

大嫌いなこの世界で

十時(如月皐)
BL
嫌いなもの。豪華な調度品、山のような美食、惜しげなく晒される媚態……そして、縋り甘えるしかできない弱さ。 豊かな国、ディーディアの王宮で働く凪は笑顔を見せることのない冷たい男だと言われていた。 昔は豊かな暮らしをしていて、傅かれる立場から傅く立場になったのが不満なのだろう、とか、 母親が王の寵妃となり、生まれた娘は王女として暮らしているのに、自分は使用人であるのが我慢ならないのだろうと人々は噂する。 そんな中、凪はひとつの事件に巻き込まれて……。 私が制作した著作物、また、私が依頼し描いていただいたイラスト含め、全ての文章・画像はAI学習、無断転載、無断使用を禁止します。

君のことは愛さない  〜死に戻りの伯爵令息は幸せになるため生き直します〜

蒼井梨音
BL
ルーシェ・ディオラントは、先祖返りで、王家の印と言われる薄い水色を帯びた銀髪と浅葱色の瞳をもつ美しいオメガ。しかし、正妻との子どもでないため、伯爵家では虐げられて育てられてきた。 そんなルーシェは、アルファである冷徹無比といわれる騎士団長のサイラス・ヴァルフォードと結婚することになった。  どんなに冷遇されようと、伯爵家での生活よりは、いいはず。 もしかしたら、これから恋に落ちるのかもしれない、と思うと、ルーシェはとても幸福に満ちていた。 しかし、結婚生活は、幸せとはほど遠いものであった。 ーーなんで、サイラス様は、僕の手をとってくれないの? 愛することも愛されることも知らない2人が、すれ違いを経て、やり直した人生でようやく愛を知る・・・ ※基本ルーシェ視点ですが、たまに別な視点が入ります。

【完結】僕の大事な魔王様

綾雅(りょうが)要らない悪役令嬢
BL
母竜と眠っていた幼いドラゴンは、なぜか人間が住む都市へ召喚された。意味が分からず本能のままに隠れたが発見され、引きずり出されて兵士に殺されそうになる。 「お母さん、お父さん、助けて! 魔王様!!」 魔族の守護者であった魔王様がいない世界で、神様に縋る人間のように叫ぶ。必死の嘆願は幼ドラゴンの魔力を得て、遠くまで響いた。そう、隣接する別の世界から魔王を召喚するほどに……。 俺様魔王×いたいけな幼ドラゴン――成長するまで見守ると決めた魔王は、徐々に真剣な想いを抱くようになる。彼の想いは幼過ぎる竜に届くのか。ハッピーエンド確定 【同時掲載】 小説家になろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ 2023/12/11……完結 2023/09/28……カクヨム、週間恋愛 57位 2023/09/23……エブリスタ、トレンドBL 5位 2023/09/23……小説家になろう、日間ファンタジー 39位 2023/09/21……連載開始

孤独な蝶は仮面を被る

緋影 ナヅキ
BL
   とある街の山の中に建っている、小中高一貫である全寮制男子校、華織学園(かしきのがくえん)─通称:“王道学園”。  全学園生徒の憧れの的である生徒会役員は、全員容姿や頭脳が飛び抜けて良く、運動力や芸術力等の他の能力にも優れていた。また、とても個性豊かであったが、役員仲は比較的良好だった。  さて、そんな生徒会役員のうちの1人である、会計の水無月真琴。  彼は己の本質を隠しながらも、他のメンバーと各々仕事をこなし、極々平穏に、楽しく日々を過ごしていた。  あの日、例の不思議な転入生が来るまでは… ーーーーーーーーー  作者は執筆初心者なので、おかしくなったりするかもしれませんが、温かく見守って(?)くれると嬉しいです。  学生のため、ストック残量状況によっては土曜更新が出来ないことがあるかもしれません。ご了承下さい。  所々シリアス&コメディ(?)風味有り *表紙は、我が妹である あくす(Twitter名) に描いてもらった真琴です。かわいい *多少内容を修正しました。2023/07/05 *お気に入り数200突破!!有難う御座います!2023/08/25 *エブリスタでも投稿し始めました。アルファポリス先行です。2023/03/20