狼領主は俺を抱いて眠りたい

明樹

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 ノラに指示された仕事は、薪を割り火を起こし、ベッドのシーツを交換することだった。
 リオは薪割りなどの軽い力仕事は得意だ。母親と二人で暮らしている時にもよくやっていた。
 中庭に用意されていた薪をサクサクと割り終えノラに報告する。ノラは「早いわねぇ」と笑うと、次は台所の竈に火をつけるよう言って仕事に戻った。
 台所の場所を教えてもらい中に入ると、誰もいない。

「お、ちょうどいいじゃん」

 リオは周りに誰もいないことをよく確認して、魔法で火をつけた。火筒という火を起こす道具が竈の横に置いてあったが、少々時間がかかる。魔法なら一発だ。しかし魔法は、誰もが使えるわけではない。というか、この世界で使える人はいないだろう。国の偉い人も使えない、それこそ王様だって使えない。使えるのは唯一、リオの一族だけだ。そして魔法を使えることは、誰にも知られてはいけない。悪いことに利用されるから。だから母親からは、魔法は使わずに、なるべく普通の人と同じように道具を使いなさいと、厳しく言われていた。だけど人に見られなければいい。
 今しがた、リオが魔法を使ってつけたばかりの赤くゆらめく炎を見ていたら、ふいに声をかけられて驚いた。

「あら?もう火をつけたの?火筒の使い方が上手なのねぇ」

 ノラだった。
 リオは慌てて立ち上がる。

「あっ、はい。次は何をすればいいですか?」
「じゃあシーツの交換をお願い。最上階の部屋がまだなのよ。シーツは廊下のカゴに入ってるから」
「わかりました。俺、部屋の方に行ってきます」
「そんなに気張らなくていいのよ」
「でも泊めてもらうわけだし。あっ、美味い料理、期待してますねっ」
「ふふっ、私は手伝うだけだから、料理長に伝えておくわね」

 ノラが胸を叩いて優しく笑った。すっかりリオを気に入ってくれたみたいだ。
 リオは人懐っこい。誰とでもすぐ仲良くなれる。…いや、自分に好意を持ってるかそうでないかがわかるのだ。故に、好意を持っていない人物には最初から近づかない。例えば…そう、昼間に会ったギデオンとか。身なりのいい騎士だったが、俺を見る目が冷たかった。怖い顔をしてたし。なるべくなら俺に関わりたくはなさそうだったし。俺だって近づきたくなかったけど、馬が可哀想だったから、助けてやっただけだ。困った人がいたら迷わず助けろという母さんの教えもあるしさ。一応礼にと銀貨をくれたし、いいんだけどな。それにもう会うこともないし。
 そう気楽に思っていたのに、運命とは皮肉なものだ。最上階の部屋に行き、広い部屋の中央にある大きなベッドのシーツを替え終え、汚れたシーツを抱えて出ようとしたその時、こちら側に扉が開いて鼻をぶつけた。
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