狼領主は俺を抱いて眠りたい

明樹

文字の大きさ
20 / 272

20

しおりを挟む
 リオの懐には、宿で働いた代価の銅貨三枚と銀貨一枚がある。働く代償に食事と寝る部屋を提供してもらった上に、更に賃金をくれたのだ。あの宿の主人とノラには感謝してもしきれない。
 しかし本当なら、ギデオンからも礼金がもらえるはずだった。ギデオンが目を覚ます前に逃げてしまったから仕方ないのだけど。

「まあこれだけの金があれば、数日は働かなくても過ごせるか」

 でも無駄遣いはできない。とりあえず安い宿を探し、ついでに働けそうな場所も見つけるかと、アンを鞄に入れ空の紙袋を手に立ち上がる。広場の出口に置いてある屑入れに袋を入れて、人が行き交う大通りに足を向ける。
 しばらく進んで行くと、様々な物を売ってる雑貨屋を見つけた。リオは、一見役に立たないような物を見るのが好きだ。この雑貨屋には、とてもたくさんの品がある。リオは目を輝かせながら、開け放たれた扉をくぐった。

「いらっしゃい!おや…坊や、一人かい?」

 棒の先についた幾重にも裂けた布で棚のホコリを払っていた店主のおじさんが、リオを見て目を丸くする。
 リオは、いつものように少し目を伏せながら、「うん」と頷いた。

「俺、一人で旅してるんだ」
「お父さんとお母さんは?」
「もう死んでいない…だから家もない」
「それは可哀想に。どうやって暮らしてるんだ?」
「行く先々で仕事をもらって、その賃金で旅してるんだ」
「そうかい…」
「ねぇおじさん、店の中見てもいい?俺、こういう品を見るの、好きだから」
「ああ、いいよ。ゆっくり見ておいで」
「ありがとう」

 リオは得意の人懐っこい笑顔を見せると、端の棚から順番に見て回る。薄い青や緑が透けるガラスのコップや鮮やかな彩色で絵が描かれた食器。別の棚には色んな色で作られた色んな大きさの麻の袋。ガラスの扉がついてる棚には、これまた様々な色のきれいな首飾りや指輪や腕輪があり、鞘に細かい装飾が彫られた剣まで置いてある。

「あ、あの紫の首輪、ギデオンの目の色とおな…」

 自然と呟きかけて、慌てて口を閉じる。
 は?なんでまたギデオンのこと思い出してんの?俺は騎士が嫌いなのに。ギデオンなんて、すっごく怖い顔で睨んできて、冷たい人なのに。って…冷たくはないか。確かに態度や話し方は冷たいけど、人との接し方が不器用なだけで、本当は優しい人なんじゃないかって思ってる。もう一度会って、ゆっくり話してみたいな…。え?いや!違う!もう一度会って、礼金をきっちり貰うんだよ!だから会いたいんだっ!
 悶々と考え込んでいると、下から「アン」とかわいらしい声が聞こえた。アンが心配そうに見上げている。
 リオはアンの頭を撫でて「起きたのか?」と笑う。アンに手のひらを舐められて、くすぐったさに首をすくめていると、赤の首輪を見つけた。リオの目の色と同じ赤い色。そして隣には同じ形の紫の首輪がある。リオは振り返り「おじさん」と店主を呼ぶ。
店主はすぐに傍に来て「気に入ったのがあったかい?」と聞く。
 リオは目の前の首輪を指差した。

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

パパ活は塾の帰りに。

茜琉ぴーたん
BL
 塾講師の下滝は、生徒の赤坂少年のことが気になっている。  彼は最近どうも元気が無く、挙動不審で落ち着かない。  悩みでもあるのかと下滝が助け舟を出したら、事態は思わぬ方向へと走り出す。 (58話+番外5話) *性描写あります。

名もなき花は愛されて

朝顔
BL
シリルは伯爵家の次男。 太陽みたいに眩しくて美しい姉を持ち、その影に隠れるようにひっそりと生きてきた。 姉は結婚相手として自分と同じく完璧な男、公爵のアイロスを選んだがあっさりとフラれてしまう。 火がついた姉はアイロスに近づいて女の好みや弱味を探るようにシリルに命令してきた。 断りきれずに引き受けることになり、シリルは公爵のお友達になるべく近づくのだが、バラのような美貌と棘を持つアイロスの魅力にいつしか捕らわれてしまう。 そして、アイロスにはどうやら想う人がいるらしく…… 全三話完結済+番外編 18禁シーンは予告なしで入ります。 ムーンライトノベルズでも同時投稿 1/30 番外編追加

男だって愛されたい!

朝顔
BL
レオンは雑貨店を営みながら、真面目にひっそりと暮らしていた。 仕事と家のことで忙しく、恋とは無縁の日々を送ってきた。 ある日父に呼び出されて、妹に王立学園への入学の誘いが届いたことを知らされる。 自分には関係のないことだと思ったのに、なぜだか、父に関係あると言われてしまう。 それには、ある事情があった。 そしてその事から、レオンが妹の代わりとなって学園に入学して、しかも貴族の男性を落として、婚約にまで持ちこまないといけないはめに。 父の言うとおりの相手を見つけようとするが、全然対象外の人に振り回されて、困りながらもなぜだか気になってしまい…。 苦労人レオンが、愛と幸せを見つけるために奮闘するお話です。

辺境の酒場で育った少年が、美貌の伯爵にとろけるほど愛されるまで

月ノ江リオ
BL
◆ウィリアム邸でのひだまり家族な子育て編 始動。不器用な父と、懐いた子どもと愛される十五歳の青年と……な第二部追加◆断章は残酷描写があるので、ご注意ください◆ 辺境の酒場で育った十三歳の少年ノアは、八歳年上の若き伯爵ユリウスに見初められ肌を重ねる。 けれど、それは一時の戯れに過ぎなかった。 孤独を抱えた伯爵は女性関係において奔放でありながら、幼い息子を育てる父でもあった。 年齢差、身分差、そして心の距離。 不安定だった二人の関係は年月を経て、やがて蜜月へと移り変わり、交差していく想いは複雑な運命の糸をも巻き込んでいく。 ■執筆過程の一部にchatGPT、Claude、Grok BateなどのAIを使用しています。 使用後には、加筆・修正を加えています。 利用規約、出力した文章の著作権に関しては以下のURLをご参照ください。 ■GPT https://openai.com/policies/terms-of-use ■Claude https://www.anthropic.com/legal/archive/18e81a24-b05e-4bb5-98cc-f96bb54e558b ■Grok Bate https://grok-ai.app/jp/%E5%88%A9%E7%94%A8%E8%A6%8F%E7%B4%84/

ハーレムでハブられてるけど、一番愛してる自信ある!

珈琲きの子
BL
数百年に一回生まれる魔王の討伐のため、召喚される勇者。 その勇者様のハーレムをはじめから準備しておくなんてシステムのせいで、落ちこぼれのベルネが選ばれてしまう。けれど、それは雑用係としてだった。 最初は報奨金のために頑張っていたが……――。 ※NL表現あり。 ※モブとの絡みあり。 ※MN、エブリスタでも投稿

ギルド職員は高ランク冒険者の執愛に気づかない

Ayari(橋本彩里)
BL
王都東支部の冒険者ギルド職員として働いているノアは、本部ギルドの嫌がらせに腹を立て飲みすぎ、酔った勢いで見知らぬ男性と夜をともにしてしまう。 かなり戸惑ったが、一夜限りだし相手もそう望んでいるだろうと挨拶もせずその場を後にした。 後日、一夜の相手が有名な高ランク冒険者パーティの一人、美貌の魔剣士ブラムウェルだと知る。 群れることを嫌い他者を寄せ付けないと噂されるブラムウェルだがノアには態度が違って…… 冷淡冒険者(ノア限定で世話焼き甘えた)とマイペースギルド職員、周囲の思惑や過去が交差する。 表紙は友人絵師kouma.作です♪

【完結】最初で最後の恋をしましょう

関鷹親
BL
家族に搾取され続けたフェリチアーノはある日、搾取される事に疲れはて、ついに家族を捨てる決意をする。 そんな中訪れた夜会で、第四王子であるテオドールに出会い意気投合。 恋愛を知らない二人は、利害の一致から期間限定で恋人同士のふりをすることに。 交流をしていく中で、二人は本当の恋に落ちていく。 《ワンコ系王子×幸薄美人》

騎士様、お菓子でなんとか勘弁してください

東院さち
BL
ラズは城で仕える下級使用人の一人だ。竜を追い払った騎士団がもどってきた祝賀会のために少ない魔力を駆使して仕事をしていた。 突然襲ってきた魔力枯渇による具合の悪いところをその英雄の一人が助けてくれた。魔力を分け与えるためにキスされて、お礼にラズの作ったクッキーを欲しがる変わり者の団長と、やはりお菓子に目のない副団長の二人はラズのお菓子を目的に騎士団に勧誘する。 貴族を嫌うラズだったが、恩人二人にせっせとお菓子を作るはめになった。 お菓子が目的だったと思っていたけれど、それだけではないらしい。 やがて二人はラズにとってかけがえのない人になっていく。のかもしれない。

処理中です...