狼領主は俺を抱いて眠りたい

明樹

文字の大きさ
243 / 272

243

しおりを挟む
「あー、今のデックは幼子と一緒でさ、人の言葉を真似するんだよね。たぶん俺が言った君の名を復唱しただけだよ」
「なん…だ、それ…」

 リオの手がだらりと落ちる。
 ギデオンがリオの肩を抱き寄せ、先に出ていたローランとビクターの後を追うように部屋を出た。ミラに止められるかと思ったが、出ていく四人を止める者はいなかった。
 自室に戻る間、リオは泣いていた。我慢しようにも涙が勝手に出てきた。だって握ったデックの手は、氷のように冷たかったから。身体の中に血が流れていない、生きていない。デックの形をしてるけど、リオの知るデックじゃない。
 部屋に入ると、アンがすぐさま傍に来て、リオの足に身体を擦り寄せ心配そうに見てきた。
 リオはしゃがんでアンの首に抱きつく。
 アトラスがリオの近くに来てギデオンに聞いた。

「リオはどうしたんですか?儀式の時に何かあったんですか?」
「儀式の後だ。我々全員、とても怒っている」
「え?誰かがリオに失礼なことを…?」

「それ以上だ」とローランが割って入る。

「隣国のオルフェス王子と、この国のフランツ王子、その部下がとてもひどいことをした。絶対に許せない」
「なんと!だからリオは泣いてるんですか?」
「そうだよ。今は詳しくは話せないけど、僕もギデオンもビクターも怒っている」
「気になりすぎる…!いつか詳しく聞かせていただけますか?」
「いつかね」
「ありがとうございます」

 アトラスに頷いたローランが、リオの耳に顔を寄せ、何かを囁いた。
 リオは涙に濡れた顔を上げて「でも」と掠れた声で呟く。
「大丈夫」とローランは笑って、ビクターを呼ぶ。

「ビクター、皆に急ぎ荷物をまとめるよう伝えて。半刻後には出発する」
「かしこまりました。アトラス、ジス、聞いたな。今すぐ荷物をまとめにいくぞ」
「はい」
「承知しました」

 ビクターと二人が素早く部屋を出ていく。三人の背中を見ながら、リオの胸の中に不安が募る。
 あんなことをしたミラや、それを許したオルフェス王子に強力なんて絶対にしたくない。でも、そうすると国に攻め込まれる。それにデックをどう扱うのかも気になる。人形のようなデックは、魔法を使えるのか?でも…ロンもいるから使えるんだろうな。ロンも人形のようになってるのかな。
 リオはアンの目を見て話しかける。

「アン、ロンは今どんな状態?デックと同じ?」
『神獣は元に戻っている。デックと違い、以前の記憶もある』
「そうなんだ。じゃあロンとデックの間で意思の疎通は」
『できないだろうな。デックが生けるしかばねになってるならば』
「そう…」
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

伝説のS級おじさん、俺の「匂い」がないと発狂して国を滅ぼすらしいい

マンスーン
BL
ギルドの事務職員・三上薫は、ある日、ギルドロビーで発作を起こしかけていた英雄ガルド・ベルンシュタインから抱きしめられ、首筋を猛烈に吸引。「見つけた……俺の酸素……!」と叫び、離れなくなってしまう。 最強おじさん(変態)×ギルドの事務職員(平凡) 世界観が現代日本、異世界ごちゃ混ぜ設定になっております。

あの日、北京の街角で

ゆまは なお
BL
5年前、一度だけ体を交わした彼が、通訳として出張に同行するーーー。 元留学生×駐在員。年下攻め。再会もの。 北京に留学していた上野孝弘は駐在員の高橋祐樹と街中で出会い、突然のアクシデントにより、その場で通訳を頼まれる。その後も友人としてつき合いが続くうちに、孝弘は祐樹に惹かれていくが、半年間の研修で来ていた祐樹の帰国予定が近づいてくる。 孝弘の告白は断られ、祐樹は逃げるように連絡を絶ってしまう。 その5年後、祐樹は中国出張に同行するコーディネーターとして孝弘と再会する。 3週間の出張に同行すると聞き、気持ちが波立つ祐樹に、大人になった孝弘が迫ってきて……? 2016年に発表した作品の改訂版。他サイトにも掲載しています。

【完結】義妹(いもうと)を応援してたら、俺が騎士に溺愛されました

未希かずは(Miki)
BL
第13回BL大賞 奨励賞 受賞しました。 皆さまありがとうございます。 「ねえ、私だけを見て」 これは受けを愛しすぎて様子のおかしい攻めのフィンと、攻めが気になる受けエリゼオの恋のお話です。 エリゼオは母の再婚により、義妹(いもうと)ができた。彼には前世の記憶があり、その前世の後悔から、エリゼオは今度こそ義妹を守ると誓う。そこに現れた一人の騎士、フィン。彼は何と、義妹と両想いらしい。まだ付き合えていない義妹とフィンの恋を応援しようとするエリゼオ。けれどフィンの優しさに触れ、気付けば自分がフィンを好きになってしまった。 「この恋、早く諦めなくちゃ……」 本人の思いとはうらはらに、フィンはエリゼオを放っておかない。 この恋、どうなる!? じれキュン転生ファンタジー。ハピエンです。 番外編。 リナルド×ガルディア。王族と近衞騎士の恋。 ――忠誠を誓った相手を、愛してはいけないと思っていた。切ない身分差、年の差の恋。恋の自覚は、相手が成人してからになります。

顔も知らない番のアルファよ、オメガの前に跪け!

小池 月
BL
 男性オメガの「本田ルカ」は中学三年のときにアルファにうなじを噛まれた。性的暴行はされていなかったが、通り魔的犯行により知らない相手と番になってしまった。  それからルカは、孤独な発情期を耐えて過ごすことになる。  ルカは十九歳でオメガモデルにスカウトされる。順調にモデルとして活動する中、仕事で出会った俳優の男性アルファ「神宮寺蓮」がルカの番相手と判明する。  ルカは蓮が許せないがオメガの本能は蓮を欲する。そんな相反する思いに悩むルカ。そのルカの苦しみを理解してくれていた周囲の裏切りが発覚し、ルカは誰を信じていいのか混乱してーー。 ★バース性に苦しみながら前を向くルカと、ルカに惹かれることで変わっていく蓮のオメガバースBL★ 性描写のある話には※印をつけます。第12回BL大賞に参加作品です。読んでいただけたら嬉しいです。応援よろしくお願いします(^^♪ 11月27日完結しました✨✨ ありがとうございました☆

【完結 一気読み推奨】片想いの相手が「そろそろ恋愛したい」と言ったので、用済みの俺はニートになることにしました。

はぴねこ
BL
 高校生の頃、片想いの親友に告白した。  彼はノンケだったから玉砕して友人関係も終わるものだと思っていた。  もしかすると気持ち悪いと軽蔑される覚悟までしていたのに、彼は「今は恋愛をしている時間がないんだ」と自分の夢を語ってくれた。  彼は会社を興した祖父のことをとても尊敬していて、自分も起業したいと熱く語ってくれた。  そして、俺の手を握って「できれば親友のお前には俺の右腕になってほしい」と言われた。  同性愛者の俺のことを気持ち悪いと遠ざけることもせずに、親友のままでいてくれた彼に俺は感謝して、同じ大学に進学して、大学の頃に彼と一緒にゲームを作成する会社を起業した。  あれから二十年間、本当に二人三脚で駆け抜けてきた。  そして、昨年売り出したVRMMOが世界的に大ヒットし、ゲーム大賞を取ったことを祝うパーティーで親友が語った言葉に俺の覚悟も決まった。 「俺もそろそろ恋愛したい」  親友のその言葉に、俺は、長年の片想いを終わらせる覚悟をした。  不憫な拗らせアラフォーが”愛”へと踏み出すお話です。

ざまぁされたチョロ可愛い王子様は、俺が貰ってあげますね

ヒラヲ
BL
「オーレリア・キャクストン侯爵令嬢! この時をもって、そなたとの婚約を破棄する!」 オーレリアに嫌がらせを受けたというエイミーの言葉を真に受けた僕は、王立学園の卒業パーティーで婚約破棄を突き付ける。 しかし、突如現れた隣国の第一王子がオーレリアに婚約を申し込み、嫌がらせはエイミーの自作自演であることが発覚する。 その結果、僕は冤罪による断罪劇の責任を取らされることになってしまった。 「どうして僕がこんな目に遭わなければならないんだ!?」 卒業パーティーから一ヶ月後、王位継承権を剥奪された僕は王都を追放され、オールディス辺境伯領へと送られる。 見習い騎士として一からやり直すことになった僕に、指導係の辺境伯子息アイザックがやたら絡んでくるようになって……? 追放先の辺境伯子息×ざまぁされたナルシスト王子様 悪役令嬢を断罪しようとしてざまぁされた王子の、その後を書いたBL作品です。

的中率100%の占い師ですが、運命の相手を追い返そうとしたら不器用な軍人がやってきました

水凪しおん
BL
煌都の裏路地でひっそりと恋愛相談専門の占い所を営む青年・紫苑。 彼は的中率百パーセントの腕を持つが、実はオメガであり、運命や本能に縛られる人生を深く憎んでいた。 ある日、自らの運命の相手が訪れるという予言を見た紫苑は店を閉めようとするが、間一髪で軍の青年将校・李翔が訪れてしまう。 李翔は幼い頃に出会った「忘れられない人」を探していた。 運命から逃れるために冷たく突き放す紫苑。 だが、李翔の誠実さと不器用な優しさに触れるうち、紫苑の頑なだった心は少しずつ溶かされていく。 過去の記憶が交差する中、紫苑は李翔の命の危機を救うため、自ら忌み嫌っていた運命に立ち向かう決意をする。 東洋の情緒漂う架空の巨大都市を舞台に、運命に抗いながらも惹かれ合う二人を描く中華風オメガバース・ファンタジー。

処理中です...