世界樹の庭で

サコウ

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 ロジェさんの鼓動が耳に心地く良く、離れがたい。逞しく優しい腕に縋りついて眠りについてしまいたい。そんな甘い夢を見せてくれるほどに、彼の愛撫は素晴らしかった。
「ロジェさん」
 整った息。肩を押して、名残惜しいが身を離した。
「どうした」
 僕を見る目は凄く優しい。あァ、良かった。
「悪くなかったでしょう」
 額同士を押し付けあう。唇をなぞる指を甘く噛む。
「ああ」
「良かったら、もうちょっとやってみます?」
 悪戯っぽく笑って見せる。
「何」
 興味深いものを見つけた様にその目が光る。楽し気に目尻を歪ませるロジェさんの表情が拝めて眼福だ。彼の両腕を自分の腰に巻きつけるようにして誘う。その先、僕の尻に手が触れた時、彼は目を見開いた。
「大丈夫なのか」
「香油を使ってもらえるのなら、多分」
「……」
 少し考えてロジェさんが立ち上がる。
 僕の足を寝台に押し上げたかと思えば、彼の着ていたシャツも下穿きも床に落としてしまう。棚の香油を取り上げて、僕の上に跨った。
 見上げる景色。ランプの灯が揺れるたびに、ロジェさんの肌が艶やかに輝いた。汗ばんで高揚する肌。形の良い瞳に吸い込まれそうな深い緑が揺れている。完璧な造形の身体に心が奪われる。もう、どうにでもして。
 栓が抜かれ、瓶が傾く。香油が胸を伝って腹に流れていく。その後を彼の指が追う。
「ふ。ふふ」
 くすぐったい。
 首筋を撫で、鎖骨をなぞる。弾力を愉しんでいるのか胸乳を揉む。自分だってそれなりに鍛えているのだ。掴まれるくらいのものはある。
「くすぐったいです」
 指を掴んで邪魔をしてみる。彼の脹脛に足を絡めてみる。腿裏に指を這わしてみる。
「わがままだな」
 大きな掌で頭を撫でられ、そのまま唇を奪われる。深く深く潜り込んできた舌に翻弄されるがままだ。うねり暴れ回られ、吸いつくされる。口の周りが己の唾液べとべとに汚れる程に、彼のそれは甘かった。
「――ナセル」
 呻くように囁かれて思わず身を震わした。腰に響くもんじゃない。こすりつけ合った下半身が熱かった。彼の物がもうはち切れんばかりに立ち上がっていた。
 このまま擦り合ってもいいかもしれない。でも、ここは彼を愉しませてあげたい。僕は肘をついてうつぶせに転がった。膝を曲げて腰を浮かす。
「この方がいいですよね」
 肩越しに見上げる。視線は僕の顔と背中を行き来した。彼の手を掴んで己の尻を割ってそこに宛がった。
「ここに垂らして、それからお願いします」
 頷くと同時に、首筋に彼の鼻が埋まる。彼の呼気で脳髄に甘い痺れが走った。
 彼の掌は度重なる香油での愛撫でトロトロになっていた。穴の表面を何度も擦られて、感じてしまう。
「あ、もう」
 ビクと身体を跳ねさせ、尻が揺れた。腰に回った手が、僕のそれを握った。硬さを取り戻し始めたそれは手の中でぬるぬると跳ねまわる。
「反則です、ちょっと」
 逃げるように膝を深く折って身体を沈める。気を抜いた瞬間、ぬるりと指が入り込んできた。
「な、あッ」
 穴がきゅっと締まる。さらに指先を感じてしまって、また鼓動が早くなっていく。
 背中で彼を感じる。覆いかぶさる彼の身体を感じる。彼の体重を、熱を、震えを感じる。
 迎い入れるに、力の加減を考える。熱く硬い塊が腰の上で滑って脈を打っていた。手を回して彼が押し入って来れるよう指を添えた。
「来て、ください」
 呼吸と一緒に己の穴が蠢いている自覚があった。既に彼を少しばかり食んでいた。彼もまたぬるぬると僕を濡らし始めていた。押せば入る。押し入ってください早く。
「ナセル」
 ロジェさんが苦しそうに呻いている。肩越しに覗き込む。悩まし気に眉をひそめて、唇を噛んで耐えていた。妙に艶めかしい。こんなの、本当に反則だ。
「ロジェさん。抱きしめてくれませんか」
「ナセル――」
 腰が強く押し付けられて、熱に穿たれる感覚を知る。
「あ、ああッ、うわあ」
 ロジェさんは藻掻く僕を強く強く抱きしめた。足の指がシーツをひっかいて場を荒らす。下腹を優しくなでられて、強い異物感と快感に頭が混乱していた。背中を反らせて身体が跳ねる。僕の下半身は僕の意志とは別に咥えこんだロジェさんを断続的にぎゅうぎゅうと締め付け続けた。
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