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福永輝美の願い〜私を魅て
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「おはよ~~!」
「おはよ! もう最近髪ヤバっ!朝もめちゃ時間かかってさぁ~~」
「この前輝美がインスタにあげてた美容院紹介してもらえば~~?」
「あ~~なんか輝美髪つるつるなってたもんね!
聞いてみよっ…って、
輝美だ!」
「輝美~~!おはよ~~!あのさ、相談したい事あるんだけどさ~…」
私は福永輝美。
友達は多いし、男にもモテる。
インスタあげる度にみんなマネしたがるんだよね。
「千影、ごめん、ちと相談乗って来るわ!教室先に行ってて!」
「うん。」
森 千影は幼馴染。メガネにくせ毛であんまりパッとしない。
でも、登下校は近所な事もあって、いつも一緒。
ま、あんまり最近は会話も無いけどね。
インスタUPするの忙しいんだもん。
でもさ、あの子が横に居るだけでバエるんだわ…。
昔はよく内緒の相談とかしたもんだけど、私は今や人気者。
相談する事なんか無いよ。
「輝美、それでさぁ~~…。」
「うん、ちょっと待ってね!
あ、美容院は紹介するから!
川田君!おはよう~~!!」
「……。」
川田和也、学校1のイケメンの上、成績優秀。スポーツも万能ときたもんだ。
でも、愛想は悪く、私の事は完全無視!
みんなチヤホヤしてくれるのに…。
はい、さっそく私を無視して席に着席。
「おい、輝美~~、今日俺らとメシでも食いにいかねぇ?」
「ごめん~~、私今日約束あるんだぁ~~、田辺君達、また誘ってね!」
って、愛想笑いする私。
つか、お前らとなんか行かねぇよ!
なんか川田和也をこっち向かせる方法ないかな。
あんなに露骨に避けられたらさぁ。
なんか気になるんだよね…。
授業も終わり西陽が輝いてる。
放課後千影と帰ってる途中も可愛いお店に寄って、インスタUPっと!
もう、いいねとフォロワーの嵐よ!
明日もまた学校行ったら大変だろうな(笑)
なんて考えてたら珍しく千影が話しかけてきた。
「輝美、裏サイトでwishって知ってる?」
「知らないけど~~!
あ、あのショップの前で写真撮りたい!
千影、ちょっとそこ立って。」
すると千影が真剣な顔で
「夜中の2時に、本当に切実に願いを叶えたい人にだけ、wishというサイトは開かれるんだって。
私は昨日試してみたけどダメだった。
やっぱ、噂なのかな…。」
「ふぅん…。」
ある程度いい写真が撮れたので、千影と別れて自宅に着いてから慌てて着替え!
今日は何着て行こうかな~~。
医者の卵に誘われたので高級フレンチなんだよな!!
ちょっと大人っぽい感じで決めようかな(笑)これまたインスタ映えするわ(笑)
しばらくすると、家の前にBMWが止まった。
携帯が鳴る。
「もしもし?今家の前に着いたよ。」
ゆっくりと玄関から出て、最高の笑顔を作る。
車に乗り込んだら、はい写真UPっと。
今日はMIUMIUのバックを買って貰ったのでまた写真UP!
さあ、これからレストランへ!
どんな料理が出るんだろ!
早く写真撮りたいなぁ~~。
落ち着いた隠れ家的なお店に着いて、
席に座る。
窓からは綺麗な夜景が広がってる!
「お待たせしました。」
綺麗に盛られた前菜に、顔がほころんだところで携帯のカメラを構えると、はいカシャっ。
「あ、間違えてインカメラにしちゃった!!!!
私とした事が凡ミス~~!」
気を取り直して、次々に運ばれる素敵な料理をカメラに収め、
上機嫌で自宅まで送って貰った。
自宅に着くとお気に入りの写真をインスタにUPしていく。
「このカバン欲しかったんだよね!」
呟きながら次の写真を見ると、
「⁇」
間違えてインカメラで撮ってしまった写真。私の後ろに写ってるボーイ…。
「川田和也…。」
翌日千影と学校へ登校するなり
「輝美~~!昨日のインスタ、凄かったね~」
「輝美、あのバックって彼氏に買って貰ったの??」
「あのBMとかやばいんだけど!」
「彼の友達紹介してよ~~!」
とか、まぁ、凄い反響。
「あの、レストランなんかお洒落だった~!なかなか予約取れないんでしょ~~!羨ましい!」
「あ、う、うん。」
私は昨日の川田和也を思い出して言葉に詰まった。
(あんなところで働いてるんだ…。
にしても、カッコ良かったな…。)
千影は私が友達に取り囲まれると静かに教室に入る。
その時、
「あ…。」
川田和也だ。何か彼の秘密を知った様でドキドキした。
「川田君、おはよう。」
「……。」
いつもの如く私など目に入らないかの様に席に着いた。
昨日の写真は失敗したけど消さずにおいてある。
この学校で、私のインスタを見ない人は居ないのに、どうして彼は興味を持ってくれないんだろう…。
挨拶すらしてくれない。
ガヤガヤと話しかけてくる生徒の顔がボヤけて、川田和也にしかピントが合わなかった。
すると千影が不意に立ち上がり、川田和也に何か話しかけている。
川田和也は千影と会話を交わし、何かを千影から受け取って微笑んだ。
微笑んだ⁈
私には挨拶すらしない川田和也が、どうして千影と??
嫉妬なのか意地なのか分からない気持ちになった。
「ねぇ、川田君って千影とは仲良いの?」
クラスメートに聞くと
「えっ。千影とは幼馴染なんでしょ?
いまさら?
あの2人はそこそこ話ししてるよ?
川田君ってさ、男前なのに変わってるっていうか、無口っていうかさ。
あんまり人と関わらないんだけど、千影は大人しいし地味だから気が合うんじゃない?」
そうだったんだ…。今まであんまり千影の事見てなかったし、人にいつも囲まれちゃうから知らなかった。
放課後また千影と帰り道、西陽がさす公園の横を歩いた。
いつもなら写真が撮れるところを探したりして、千影の顔など気にした事は無かった。
春の風が吹いて、キッチリくくられた少し茶色のくせ毛がふわふわ揺れていた。
メガネの度がキツイせいで小さく見える瞳は本当は大きくて、メガネの横から長いまつ毛が見える。
そうだ。千影は小さい時は本当に可愛かった。近所の人にも
「千影ちゃんはお人形さんみたいねぇ」
なんて言われてた。
でも大きくなるにつれ、私の手足は長くなり、派手な顔のせいもあって目立つようになっていったのだ。
千影はチビだし、少しぽっちゃりしてる。
なんだか、久し振りにじっくりと千影を見た。
「どうしたの⁈」
千影がビックリしたようにメガネをずり上げた。
「ううん…。」
「いつもみたいに写真、撮らないの?」
「今日は何か疲れちゃってさ…。」
「そう。あれだけ毎日いろんな人に囲まれてたら疲れるよ(笑)」
千影は遠慮ぎみに笑った。
私は、川田和也の微笑みを思い出した。
この2人の関係は知らなかったが、
どこかお似合いで胸が悪くなった。
「ねぇ千影?前に言ってたサイトさぁ、開ける事出来た?」
「ううん。ダメ。
私の思いが切実では無いのかなぁ。
いつか開ける事が出来たらいいんだけど。」
「そのサイトって、望みが叶うの?」
「うん。望みが叶う道具の通販サイトらしいよ。隣街の生徒は長年思い続けた人と付き合えたとか?
ま、都市伝説みたいなものかもね。」
千影はまた遠慮ぎみに笑った。
千影と別れてから、自宅のベッドに倒れこんで考えていた。
川田和也は何故あんな時間まで働いているのか。
しかもあんなに離れた場所で。
どうして彼は言葉さえ、目さえ合わせてくれ無いんだろう。
まるで私など居ないみたいに。
なんで千影には微笑みながら話したりするんだろう。
あんな、冴えないチビに!
だんだんと怒りが込み上げてきた。
あの写真、川田和也がボーイとして働いている写真、明日あれを彼に見せて見よう。何か秘密がわかるかも知れない。
翌朝、千影と登校し、いつものように皆と談笑していた。
千影は静かに席に着く。
川田和也だ。
「川田君、おはよう。」
「……。」
いつものように素通りしようとする川田和也に
「ボーイ、やってるの?」
と小声で囁いた。
「⁈」
一瞬だが、川田和也がこちらを振り向いた。
初めて私の存在に気づいた様な顔だったのがカンに触るのだが…。
そして、また無表情な顔で席に着いた。
友達たちはギャアギャア騒いでいたので何も気づいて無い様だった。
放課後、千影と帰ろうと準備していると川田和也がやって来た。
「お前さぁ、何で俺が働いてる場所知ってるんだよ。」
はい、はい、私のインスタ見てくれてれば私があの店行った事位わかるのに。
「知り合いとあの店に行ったんだ。
たまたま川田君が写真に写っててビックリしたよ~~。」
少し間を置いて、
「あの店、歳誤魔化して雇って貰ってるから、絶対写真載せたりすんなよ…。」
やたら迫力ある声で凄まれた。
「川田君さぁ、インスタとか見ないの?仕事先での写真は載せないではおくね。
是非私のフォロワーになってよ!」
「絶対見ねぇ…。お前のだけは絶対。」
そう言って冷たい背中をみせるとスタスタと千影のところに行き、
「この前はありがとな。」
と言って頭をポンと叩くと微笑んで去って行った。
千影は青白い頬を少しだけ赤く染めた。
私は血が煮えたぎる位の羞恥心に身体が震えるのを覚えた。
どうしてこの冴えないチビは良くて、私はダメなの⁈
どうして私を見てくれ無いの⁈
学校中全員私を見てくれてる。
フォローしてくれる。コメントで賞賛してくれる。
可愛いって!羨ましいって!
何で?何でなの⁈
カバンを乱暴に掴むと教室から出ようとした私に千影が
「輝美、少し話ながら帰ろう。」
と言った。
周りの目も気になったし、一緒に帰る事にしたが、もう怒りで言葉が出て来ない。
西陽に照らされた千影が、何故だか凛として見えた。
「輝美、川田君はね、お父さんは女の人と出て行ってしまったし、お母さん失くしてるんだよ。
中学の頃らしいけど…。
妹さんと親戚の家に居るみたいだけどね。妹さんと出て行きたいって、頑張って働いてるんだって。
きっと親戚の人とそりが合わないんだろうね。」
「そっか…。」
「この事内緒にしてね…。輝美は幼馴染だし、大事な友達だから…。
川田君の事も勘違いされたく無いし。」
千影は俯いたまま
「輝美って…、、、」
「ん?」
「川田君の事、
その、、、好き?」
唐突に何言うのよ。この子。
いや好きってのでも無いよなぁ。
私の事、透明人間位に思ってるイケメンってのがいけ好かないだけ…って感じかな。何だろ…。
「そんなんじゃ無いよ。」
私が答えると、千影が凄い笑顔で
「良かった!私川田君の事が好きなんだ…。」
はい、はい。分かったよ。
ってかオーラ出し過ぎ位だわ。
「ま、応援するから頑張って。
私今日はIT関係の人と合コンあるし、
支度あるからまっすぐ帰るわ」
千影はコクンと小さく頷くとその後は別れ道の交差点まで黙ったまま。
でも嬉しそうにしてた。
私はその夜合コンで飲んでしまった。
昼間の腹いせもあったし。
学生が飲んじゃダメなんだけどね。
今時皆んなやってる。
家にタクシーで送って貰って、玄関のドア開けても両親まだ帰ってないわ。
どちらもどうせ接待だか不倫だか。
部屋に入って今日撮った写真をインスタにあげる。
また、昼間の怒りが湧いて来た。
何だか千影にまで腹が立って来た。
むしゃくしゃしていると、
インスタの投稿にあのサイトの話が載ってる…。
不意に決心した。後少しで深夜2時だ。
試してみようと。
携帯の時間が2時を示した。
さてwish…。
開いた!
なんだよ。千影、開くじゃん!
私は選ばれたんだよ!
何て、酔っ払いがサイトをみていくと、
貴方の望みを書き込んでください。
綺麗な蝶々の画面にカーソルが点滅してる。
川田和也にインスタを見せたい
入力、送信。
すると、何やらアイテムが。
綺麗な石のブレスレット。
これは、恋愛成就のアイテムらしい。
後は可愛いハートのペンダント。
こちらは、全ての注目集めるアイテムだって。
う~~ん。私は川田和也を含めて全ての人の熱い視線を集めたいのだから、
「ハートのペンダント!」
購入!
送信ボタンを押したが、そのまま。
あれ、住所は?料金は?
なんだかわからないけど、眠かったので寝る事にした。
朝眼が覚めると、完全な二日酔いだ。
ダメ、学校行けないわ…。
キッチン、と言っても飾りだけだけど、母親がコーヒーを飲んでいた。
「おはよう。
あんた何?酒臭いわよ!
お母さん今日から数日北海道だから、何かコンビニで買うとか、カード、そこにあるから。
とにかく、今日は学校お休みの連絡入れとくわね。」
「うん。 ねえ、お父さんは?」
「あぁ、愛人の所に連泊らしいわよ(笑)お母さん、学校に連絡したら行くわね!」
電話を済ませ、迎えに来たベンツに乗ってそそくさ出て行った。
コップにミネラルウオーターを注いで飲むと千影からLine。
(昨日のインスタ見たよ。大丈夫?)
大丈夫じゃ無い…。頭割れそう…。
(今日は休む。)と、私。
(了解。)の、千影からの返信を確認して、また少しベッドで休む事にした。
………………………
トイレに行きたくなったので、ベッドから身体を起こすともうお昼だった。
机には小さな箱だ。送り状が貼ってある。
「宅配便か…。最近通販もよく頼むしね…」
父親が代わりに商品を受け取ってくれたのかな?
「お父さん~~、帰ってるの~~?」
返事は無い。また出かけたのかもしれないな。
確認すると、
配達元はwish…。
私は酔っ払って住所を入力したんだろうか。
料金は?
部屋に戻って箱を開けてみた。
[浮月 鏡子 と申します。
お買い上げありがとうございます。
料金は後払いとなっており、効果が現れ次第頂くシステムとなっております。
貴方様の望みが叶います様に。]
綺麗な蝶々の和紙に達筆な文字。
後払いかぁ。じゃ、返品も出来るって事ね!
ピンクの和紙で包まれた中身を見てみると…。
「綺麗! 可愛い!!!!」
ルビーの様な真っ赤なハートに、細いキラキラしたチェーン。
これは、シックな黒に赤い口紅でインスタ映え間違いない!
首にかけてみた。
凄くはえる!
「痛ててっ。」
まだ少し二日酔いの様だ。頭痛が酷い。
もう少し眠る事にしてベッドに入った。
……………………
これは….、夢???
窓辺に、長い黒髪の女性が立っていた。
満月の月の明かりに照らされている。
乱舞する蝶々と、鮮やかな菊の花の雅な着物の彼女が振り返った。
静寂、とでも表現したら良いのか。
息も忘れる位の美しさだった。
しばらく見とれていると、彼女は優しく微笑んで
「見ていて。」と呟き、月の彼方へ飛んだ…。
「あっ!!!!」
私は窓辺に走り、下を除き込んだ。
コンクリートの上にまるでお人形の様に、少し微笑みを浮かべた死体が、蝶々の標本みたいに広がっていた。
(何て綺麗なんだろう…。
インスタ映えしそう…。)
………………
「はっ!!!!」
ピピピッ、ピピピピピッ。
目覚まし時計の音。
私、ほぼ丸一日寝ていた様だ。
しかし不思議な夢だった。
何だったんだろう。
そうだ、ネックレス!
慌てて鏡を見ると、朝だというのに妖しく艶めかしく深い赤のハートが輝いていた。
学校はアクセサリーは禁止。
でもギリギリ隠せる。
制服で隠しドキドキしながら準備をした。千影からLine。
今日は大丈夫!と返信すると、しばらくしてからチャイムが鳴った。
千影と登校すると、目ざといクラスメートが首に光ってる物、何と聞いてきたので、披露してやった。
「綺麗!!!!どこで買ったの⁈」
みんなに質問責めにあう。
千影はいつも通り席に着いた。
その時川田和也が登校して来た。
「…川田君、おはよう。」
「…おはよ。」
!!!!
初めて川田和也は、挨拶してくれた!
私の存在を認めてくれた!!!!
次の日も、次の日も、ある時はあちらから挨拶してくれる時もあった!
効果は出た!
このネックレスは、凄い…。
……………………
放課後、川田和也と千影、私と3人で帰る事が増えていった。
川田和也とは最寄りの駅まで。
駅で別れる際、川田和也が口を開いた。
「お前のインスタ、やっぱりつまんねぇ。じゃあな。」
!!!!
評価はどうあれ、私は川田和也が私のインスタを観てくれている事に興奮した!
いつか、凄いって言わせてやるからな!(笑)
前にも増して、インスタ映えする写真を撮る為に色々考える様になった。
着実にフォロワーが増えている。
でも、どんなに撮っても何かインパクトが足りない…。
…………………
翌日、朝登校すると、いつもならギャアギャア集まって来る生徒達の様子がおかしい。
何か少しヨソヨソしい感じ。
「おはよう~~」と声をかけると、
「あ、お、おはよう…。」
皆んな、教室にはけて行った。
何かコソコソ話しながら…。
一人で立ち尽くしていると、川田和也が登校して来た。
「おぅ、おはよう。」
「川田君、おはよう…。」
千影も川田和也も何か察したのか、行こうって言う様に教室に入って行った。
その日は一日中生徒達の態度が急変した事で、憂鬱な時間を過ごした。
放課後、千影と川田和也に促され帰る準備をしていると
「何か、金にもの言わせてる感はずっとあったよねぇ~~…。」
「おぅ、俺らもずっと思ってたんだよなぁ~~…。」
「昨日の、見た?…。」
所々聞こえにくいが、コチラをチラチラ見ながらクラスメートが噂話をしてる様だ。
「ちょっと、アンタ達…!」
私が立ち上がると川田和也が腕を掴み、首を振った。
「帰るぞ。」
3人で少しだけ初夏を感じる公園の前を歩く。
川田和也が口を開いた。
「…昨日さ、お前、インスタのコメント読んでねぇの?」
「え…?昨日は買ってもらったジュエリーインスタにUPして寝ちゃったから…。
」
「相当、批判コメント入ってたぞ。」
え⁈なんで!凄く綺麗に撮れたのに!
公園を抜けると、昔からあるフラワーショップを通る。とても古くていつもは目にも入らない位、街と同化していて。
私から見たら雑草の様な存在だ。
千影はフラワーショップの花に目を向けると彼岸花の前でしゃがみ込んだ。
そこにクロアゲハが羽ばたいて来た。
千影はじっと彼岸花を眺めていたが、
青白い千影の肌と、毒々しいほどの彼岸花の赤、クロアゲハの漆黒が綺麗で…。
思わず写真を撮った。
その後川田和也とは駅で別れ、
千影とはいつもの交差点で別れた。
家に帰ると、やはり両親は居ない…。
インスタを確認すると、昨日のコメントの中に
(金と自分にしか興味ない女)
(セレブ気取ってる寂しい女)
(恥さらし)
…………………
一人のコメントを口切りに、批判コメントの嵐!
お前らに何が分かるんだよ!
金があっても、いつも居ない両親と、チヤホヤ心もねぇクセに群がってくるハイエナみたいな奴ばかりの中で育って来た私の気持ちが分かんのかよ⁈
…………………
批判コメントは続き、学校では皆んなに無視され始めた。
それでも、千影と川田和也だけはいつも側にいてくれた。
しばらくは2人を有難いと思っていたが元々負けず嫌いの私は、何とか皆んなをあっと言わせる様なインスタをUPしようと考えていた。
ずっと写真を確認していると、自分の満面の笑みを中心に撮った写真の中に、たまたま映り込んだ川田和也の仕事姿。
それから、いつも横で遠慮気味に微笑んでいる千影の姿。
一番目を奪われたのは、彼岸花に目を奪われた千影にクロアゲハが舞っている一枚だ。
カメラには一切目を向けていない自然な表情に、クロアゲハが舞う奇跡のショット。
「これだ…。」
いつもの様に千影と学校に向かう。
しばらく塞ぎこんでいた私の表情が変わった事に、千影は気づいたのか、
「輝美、なんか吹っ切れた感じだね。」
っていつもの千影らしく遠慮気味に笑った。
「うん。究極のインスタ、思いついたんだ!」
少し間を置いて、
「インスタ…なの?」と千影。
登校してからいつも通り遠巻きに陰口を叩く様になった生徒達に
「おはよう~~!!!!」と
挨拶をすると、皆んなびっくりしてた。
川田和也が登校して来て、
「おはよ……。
お前…。なんか吹っ切った顔してるけどな、デカイ爆弾落とすなよ。
教室入ろうぜ。」
………………
3人で学校を後にするまでいつもみたいに過ごした。
見てろよ。アッと言わせてやる。
帰りにまた3人で公園の横を通り過ぎ、古びたフラワーショップの前に差し掛かると、私は彼岸花を二束買った。
千影は驚いていたけど、
「この花、綺麗だね。こっちは千影に!」
そうして千影に渡すと、
「ありがとう!!!!
この花の合言葉はね、
また会いましょう…。なんだ!
毒性が強いけど、とても綺麗だし。
小学生の時に病気で亡くなったお父さんも、お寺に自生してるん彼岸花をよく眺めてたなぁ…。
今日は仏前に供えるよ!」
千影はことの外喜んでくれた。
川田和也はそんな私達を見て、
「女って、ホント花とか宝石とか、好きよなぁ。俺、ワカンねぇ。
じぁあな!」
と言って、手をヒラヒラ振って駅に入って行った。
残された私達は彼岸花の花束を二人で抱えた異様な姿で交差点まで来た。
皆んなの注目を集めている。
交差点で千影が
「また、明日ね。」
と言った。
「また、明日!」
と私は答えた。
家に帰ると、やはり両親は居ない。
インスタの為に準備しておいた、黒のワンピースを着る。
真っ赤なペンダントはやっぱり映える。
インスタに今の姿の写真と、
また会いましょう、のコメントを入力してUPした。
彼岸花は花瓶に挿して、少しベッドに横になった。
…………………
眠りにつくと、また以前の光景だ。
窓辺に着物の女性が立っている。
ゆっくりとこちらを振り向き、
「浮月鏡子です。」
と、息を飲む様な美しさで頭を下げた。
「そろそろ、望みを叶えましょうか。」
と、窓を開けた。
カーテンが揺らめいて、満月が顔を出す。
私は部屋の時計を見た。
深夜2時。
花瓶に挿してあった彼岸花の花束を胸に抱え、窓辺に立つと
鏡子さんが私の髪を整えながら、貝殻に入った真紅の口紅をさしてくれた。
「とても綺麗。
貴方は全世界から魅て貰えるわよ。
逝きましょう。
そして、また会いましょうね。」
私は鏡子さんと手を取り、月に向かって、、、飛んだ。
…………………
翌日世間は大騒ぎだ。
この世で一番美しい死体だと、微笑んだままの私の死に顔は話題になった。
様々なネットワークから全世界に配信されていた。
未明に警察が訪れ、母は泣き崩れて、父は愛人の元から帰り驚愕した様だ。
真紅の彼岸花の中、微笑みながら亡くなっている私の周りにクロアゲハが舞っている。
警察が規制する中、皆カメラで私を撮っていた。
人混みに囲まれ、注文を浴びて、私は初めて本当に満足した。
そう、撮るのでは無い。
撮られるのだ。
思わず撮りたくなってしまうほどの感動を私は世間に作る事に成功したのだ!
両親も今は私をずっと魅ている。
川田和也も千影もきっと魅ている。
ずっと歴史の中にいるから!みんな、また会おうね!!!!
心に思って自らの死体の傍らにたたずんでいると、鏡子さんがどこらかともなくやって来た。
微笑みながら手を出してくれたので、そっと手を握り一緒に歩き始めた。
あぁ~~!!!!ちくしょう…。私も自分の死体、写真に撮りたかったな!!!!(笑)
……………………
午前7時半。まだ人混みは引かない。シャッター音だけがなり響いてる。
そんな人混みの中、手を繋ぎ静かに見つめる川田和也と千影の姿。
川田和也は黙って携帯をポケットから出し 、インスタを開くと…、
いいね、を押した…。
千影の左腕にはピンクの綺麗なブレスレットが、朝日に輝いていた。
「おはよ! もう最近髪ヤバっ!朝もめちゃ時間かかってさぁ~~」
「この前輝美がインスタにあげてた美容院紹介してもらえば~~?」
「あ~~なんか輝美髪つるつるなってたもんね!
聞いてみよっ…って、
輝美だ!」
「輝美~~!おはよ~~!あのさ、相談したい事あるんだけどさ~…」
私は福永輝美。
友達は多いし、男にもモテる。
インスタあげる度にみんなマネしたがるんだよね。
「千影、ごめん、ちと相談乗って来るわ!教室先に行ってて!」
「うん。」
森 千影は幼馴染。メガネにくせ毛であんまりパッとしない。
でも、登下校は近所な事もあって、いつも一緒。
ま、あんまり最近は会話も無いけどね。
インスタUPするの忙しいんだもん。
でもさ、あの子が横に居るだけでバエるんだわ…。
昔はよく内緒の相談とかしたもんだけど、私は今や人気者。
相談する事なんか無いよ。
「輝美、それでさぁ~~…。」
「うん、ちょっと待ってね!
あ、美容院は紹介するから!
川田君!おはよう~~!!」
「……。」
川田和也、学校1のイケメンの上、成績優秀。スポーツも万能ときたもんだ。
でも、愛想は悪く、私の事は完全無視!
みんなチヤホヤしてくれるのに…。
はい、さっそく私を無視して席に着席。
「おい、輝美~~、今日俺らとメシでも食いにいかねぇ?」
「ごめん~~、私今日約束あるんだぁ~~、田辺君達、また誘ってね!」
って、愛想笑いする私。
つか、お前らとなんか行かねぇよ!
なんか川田和也をこっち向かせる方法ないかな。
あんなに露骨に避けられたらさぁ。
なんか気になるんだよね…。
授業も終わり西陽が輝いてる。
放課後千影と帰ってる途中も可愛いお店に寄って、インスタUPっと!
もう、いいねとフォロワーの嵐よ!
明日もまた学校行ったら大変だろうな(笑)
なんて考えてたら珍しく千影が話しかけてきた。
「輝美、裏サイトでwishって知ってる?」
「知らないけど~~!
あ、あのショップの前で写真撮りたい!
千影、ちょっとそこ立って。」
すると千影が真剣な顔で
「夜中の2時に、本当に切実に願いを叶えたい人にだけ、wishというサイトは開かれるんだって。
私は昨日試してみたけどダメだった。
やっぱ、噂なのかな…。」
「ふぅん…。」
ある程度いい写真が撮れたので、千影と別れて自宅に着いてから慌てて着替え!
今日は何着て行こうかな~~。
医者の卵に誘われたので高級フレンチなんだよな!!
ちょっと大人っぽい感じで決めようかな(笑)これまたインスタ映えするわ(笑)
しばらくすると、家の前にBMWが止まった。
携帯が鳴る。
「もしもし?今家の前に着いたよ。」
ゆっくりと玄関から出て、最高の笑顔を作る。
車に乗り込んだら、はい写真UPっと。
今日はMIUMIUのバックを買って貰ったのでまた写真UP!
さあ、これからレストランへ!
どんな料理が出るんだろ!
早く写真撮りたいなぁ~~。
落ち着いた隠れ家的なお店に着いて、
席に座る。
窓からは綺麗な夜景が広がってる!
「お待たせしました。」
綺麗に盛られた前菜に、顔がほころんだところで携帯のカメラを構えると、はいカシャっ。
「あ、間違えてインカメラにしちゃった!!!!
私とした事が凡ミス~~!」
気を取り直して、次々に運ばれる素敵な料理をカメラに収め、
上機嫌で自宅まで送って貰った。
自宅に着くとお気に入りの写真をインスタにUPしていく。
「このカバン欲しかったんだよね!」
呟きながら次の写真を見ると、
「⁇」
間違えてインカメラで撮ってしまった写真。私の後ろに写ってるボーイ…。
「川田和也…。」
翌日千影と学校へ登校するなり
「輝美~~!昨日のインスタ、凄かったね~」
「輝美、あのバックって彼氏に買って貰ったの??」
「あのBMとかやばいんだけど!」
「彼の友達紹介してよ~~!」
とか、まぁ、凄い反響。
「あの、レストランなんかお洒落だった~!なかなか予約取れないんでしょ~~!羨ましい!」
「あ、う、うん。」
私は昨日の川田和也を思い出して言葉に詰まった。
(あんなところで働いてるんだ…。
にしても、カッコ良かったな…。)
千影は私が友達に取り囲まれると静かに教室に入る。
その時、
「あ…。」
川田和也だ。何か彼の秘密を知った様でドキドキした。
「川田君、おはよう。」
「……。」
いつもの如く私など目に入らないかの様に席に着いた。
昨日の写真は失敗したけど消さずにおいてある。
この学校で、私のインスタを見ない人は居ないのに、どうして彼は興味を持ってくれないんだろう…。
挨拶すらしてくれない。
ガヤガヤと話しかけてくる生徒の顔がボヤけて、川田和也にしかピントが合わなかった。
すると千影が不意に立ち上がり、川田和也に何か話しかけている。
川田和也は千影と会話を交わし、何かを千影から受け取って微笑んだ。
微笑んだ⁈
私には挨拶すらしない川田和也が、どうして千影と??
嫉妬なのか意地なのか分からない気持ちになった。
「ねぇ、川田君って千影とは仲良いの?」
クラスメートに聞くと
「えっ。千影とは幼馴染なんでしょ?
いまさら?
あの2人はそこそこ話ししてるよ?
川田君ってさ、男前なのに変わってるっていうか、無口っていうかさ。
あんまり人と関わらないんだけど、千影は大人しいし地味だから気が合うんじゃない?」
そうだったんだ…。今まであんまり千影の事見てなかったし、人にいつも囲まれちゃうから知らなかった。
放課後また千影と帰り道、西陽がさす公園の横を歩いた。
いつもなら写真が撮れるところを探したりして、千影の顔など気にした事は無かった。
春の風が吹いて、キッチリくくられた少し茶色のくせ毛がふわふわ揺れていた。
メガネの度がキツイせいで小さく見える瞳は本当は大きくて、メガネの横から長いまつ毛が見える。
そうだ。千影は小さい時は本当に可愛かった。近所の人にも
「千影ちゃんはお人形さんみたいねぇ」
なんて言われてた。
でも大きくなるにつれ、私の手足は長くなり、派手な顔のせいもあって目立つようになっていったのだ。
千影はチビだし、少しぽっちゃりしてる。
なんだか、久し振りにじっくりと千影を見た。
「どうしたの⁈」
千影がビックリしたようにメガネをずり上げた。
「ううん…。」
「いつもみたいに写真、撮らないの?」
「今日は何か疲れちゃってさ…。」
「そう。あれだけ毎日いろんな人に囲まれてたら疲れるよ(笑)」
千影は遠慮ぎみに笑った。
私は、川田和也の微笑みを思い出した。
この2人の関係は知らなかったが、
どこかお似合いで胸が悪くなった。
「ねぇ千影?前に言ってたサイトさぁ、開ける事出来た?」
「ううん。ダメ。
私の思いが切実では無いのかなぁ。
いつか開ける事が出来たらいいんだけど。」
「そのサイトって、望みが叶うの?」
「うん。望みが叶う道具の通販サイトらしいよ。隣街の生徒は長年思い続けた人と付き合えたとか?
ま、都市伝説みたいなものかもね。」
千影はまた遠慮ぎみに笑った。
千影と別れてから、自宅のベッドに倒れこんで考えていた。
川田和也は何故あんな時間まで働いているのか。
しかもあんなに離れた場所で。
どうして彼は言葉さえ、目さえ合わせてくれ無いんだろう。
まるで私など居ないみたいに。
なんで千影には微笑みながら話したりするんだろう。
あんな、冴えないチビに!
だんだんと怒りが込み上げてきた。
あの写真、川田和也がボーイとして働いている写真、明日あれを彼に見せて見よう。何か秘密がわかるかも知れない。
翌朝、千影と登校し、いつものように皆と談笑していた。
千影は静かに席に着く。
川田和也だ。
「川田君、おはよう。」
「……。」
いつものように素通りしようとする川田和也に
「ボーイ、やってるの?」
と小声で囁いた。
「⁈」
一瞬だが、川田和也がこちらを振り向いた。
初めて私の存在に気づいた様な顔だったのがカンに触るのだが…。
そして、また無表情な顔で席に着いた。
友達たちはギャアギャア騒いでいたので何も気づいて無い様だった。
放課後、千影と帰ろうと準備していると川田和也がやって来た。
「お前さぁ、何で俺が働いてる場所知ってるんだよ。」
はい、はい、私のインスタ見てくれてれば私があの店行った事位わかるのに。
「知り合いとあの店に行ったんだ。
たまたま川田君が写真に写っててビックリしたよ~~。」
少し間を置いて、
「あの店、歳誤魔化して雇って貰ってるから、絶対写真載せたりすんなよ…。」
やたら迫力ある声で凄まれた。
「川田君さぁ、インスタとか見ないの?仕事先での写真は載せないではおくね。
是非私のフォロワーになってよ!」
「絶対見ねぇ…。お前のだけは絶対。」
そう言って冷たい背中をみせるとスタスタと千影のところに行き、
「この前はありがとな。」
と言って頭をポンと叩くと微笑んで去って行った。
千影は青白い頬を少しだけ赤く染めた。
私は血が煮えたぎる位の羞恥心に身体が震えるのを覚えた。
どうしてこの冴えないチビは良くて、私はダメなの⁈
どうして私を見てくれ無いの⁈
学校中全員私を見てくれてる。
フォローしてくれる。コメントで賞賛してくれる。
可愛いって!羨ましいって!
何で?何でなの⁈
カバンを乱暴に掴むと教室から出ようとした私に千影が
「輝美、少し話ながら帰ろう。」
と言った。
周りの目も気になったし、一緒に帰る事にしたが、もう怒りで言葉が出て来ない。
西陽に照らされた千影が、何故だか凛として見えた。
「輝美、川田君はね、お父さんは女の人と出て行ってしまったし、お母さん失くしてるんだよ。
中学の頃らしいけど…。
妹さんと親戚の家に居るみたいだけどね。妹さんと出て行きたいって、頑張って働いてるんだって。
きっと親戚の人とそりが合わないんだろうね。」
「そっか…。」
「この事内緒にしてね…。輝美は幼馴染だし、大事な友達だから…。
川田君の事も勘違いされたく無いし。」
千影は俯いたまま
「輝美って…、、、」
「ん?」
「川田君の事、
その、、、好き?」
唐突に何言うのよ。この子。
いや好きってのでも無いよなぁ。
私の事、透明人間位に思ってるイケメンってのがいけ好かないだけ…って感じかな。何だろ…。
「そんなんじゃ無いよ。」
私が答えると、千影が凄い笑顔で
「良かった!私川田君の事が好きなんだ…。」
はい、はい。分かったよ。
ってかオーラ出し過ぎ位だわ。
「ま、応援するから頑張って。
私今日はIT関係の人と合コンあるし、
支度あるからまっすぐ帰るわ」
千影はコクンと小さく頷くとその後は別れ道の交差点まで黙ったまま。
でも嬉しそうにしてた。
私はその夜合コンで飲んでしまった。
昼間の腹いせもあったし。
学生が飲んじゃダメなんだけどね。
今時皆んなやってる。
家にタクシーで送って貰って、玄関のドア開けても両親まだ帰ってないわ。
どちらもどうせ接待だか不倫だか。
部屋に入って今日撮った写真をインスタにあげる。
また、昼間の怒りが湧いて来た。
何だか千影にまで腹が立って来た。
むしゃくしゃしていると、
インスタの投稿にあのサイトの話が載ってる…。
不意に決心した。後少しで深夜2時だ。
試してみようと。
携帯の時間が2時を示した。
さてwish…。
開いた!
なんだよ。千影、開くじゃん!
私は選ばれたんだよ!
何て、酔っ払いがサイトをみていくと、
貴方の望みを書き込んでください。
綺麗な蝶々の画面にカーソルが点滅してる。
川田和也にインスタを見せたい
入力、送信。
すると、何やらアイテムが。
綺麗な石のブレスレット。
これは、恋愛成就のアイテムらしい。
後は可愛いハートのペンダント。
こちらは、全ての注目集めるアイテムだって。
う~~ん。私は川田和也を含めて全ての人の熱い視線を集めたいのだから、
「ハートのペンダント!」
購入!
送信ボタンを押したが、そのまま。
あれ、住所は?料金は?
なんだかわからないけど、眠かったので寝る事にした。
朝眼が覚めると、完全な二日酔いだ。
ダメ、学校行けないわ…。
キッチン、と言っても飾りだけだけど、母親がコーヒーを飲んでいた。
「おはよう。
あんた何?酒臭いわよ!
お母さん今日から数日北海道だから、何かコンビニで買うとか、カード、そこにあるから。
とにかく、今日は学校お休みの連絡入れとくわね。」
「うん。 ねえ、お父さんは?」
「あぁ、愛人の所に連泊らしいわよ(笑)お母さん、学校に連絡したら行くわね!」
電話を済ませ、迎えに来たベンツに乗ってそそくさ出て行った。
コップにミネラルウオーターを注いで飲むと千影からLine。
(昨日のインスタ見たよ。大丈夫?)
大丈夫じゃ無い…。頭割れそう…。
(今日は休む。)と、私。
(了解。)の、千影からの返信を確認して、また少しベッドで休む事にした。
………………………
トイレに行きたくなったので、ベッドから身体を起こすともうお昼だった。
机には小さな箱だ。送り状が貼ってある。
「宅配便か…。最近通販もよく頼むしね…」
父親が代わりに商品を受け取ってくれたのかな?
「お父さん~~、帰ってるの~~?」
返事は無い。また出かけたのかもしれないな。
確認すると、
配達元はwish…。
私は酔っ払って住所を入力したんだろうか。
料金は?
部屋に戻って箱を開けてみた。
[浮月 鏡子 と申します。
お買い上げありがとうございます。
料金は後払いとなっており、効果が現れ次第頂くシステムとなっております。
貴方様の望みが叶います様に。]
綺麗な蝶々の和紙に達筆な文字。
後払いかぁ。じゃ、返品も出来るって事ね!
ピンクの和紙で包まれた中身を見てみると…。
「綺麗! 可愛い!!!!」
ルビーの様な真っ赤なハートに、細いキラキラしたチェーン。
これは、シックな黒に赤い口紅でインスタ映え間違いない!
首にかけてみた。
凄くはえる!
「痛ててっ。」
まだ少し二日酔いの様だ。頭痛が酷い。
もう少し眠る事にしてベッドに入った。
……………………
これは….、夢???
窓辺に、長い黒髪の女性が立っていた。
満月の月の明かりに照らされている。
乱舞する蝶々と、鮮やかな菊の花の雅な着物の彼女が振り返った。
静寂、とでも表現したら良いのか。
息も忘れる位の美しさだった。
しばらく見とれていると、彼女は優しく微笑んで
「見ていて。」と呟き、月の彼方へ飛んだ…。
「あっ!!!!」
私は窓辺に走り、下を除き込んだ。
コンクリートの上にまるでお人形の様に、少し微笑みを浮かべた死体が、蝶々の標本みたいに広がっていた。
(何て綺麗なんだろう…。
インスタ映えしそう…。)
………………
「はっ!!!!」
ピピピッ、ピピピピピッ。
目覚まし時計の音。
私、ほぼ丸一日寝ていた様だ。
しかし不思議な夢だった。
何だったんだろう。
そうだ、ネックレス!
慌てて鏡を見ると、朝だというのに妖しく艶めかしく深い赤のハートが輝いていた。
学校はアクセサリーは禁止。
でもギリギリ隠せる。
制服で隠しドキドキしながら準備をした。千影からLine。
今日は大丈夫!と返信すると、しばらくしてからチャイムが鳴った。
千影と登校すると、目ざといクラスメートが首に光ってる物、何と聞いてきたので、披露してやった。
「綺麗!!!!どこで買ったの⁈」
みんなに質問責めにあう。
千影はいつも通り席に着いた。
その時川田和也が登校して来た。
「…川田君、おはよう。」
「…おはよ。」
!!!!
初めて川田和也は、挨拶してくれた!
私の存在を認めてくれた!!!!
次の日も、次の日も、ある時はあちらから挨拶してくれる時もあった!
効果は出た!
このネックレスは、凄い…。
……………………
放課後、川田和也と千影、私と3人で帰る事が増えていった。
川田和也とは最寄りの駅まで。
駅で別れる際、川田和也が口を開いた。
「お前のインスタ、やっぱりつまんねぇ。じゃあな。」
!!!!
評価はどうあれ、私は川田和也が私のインスタを観てくれている事に興奮した!
いつか、凄いって言わせてやるからな!(笑)
前にも増して、インスタ映えする写真を撮る為に色々考える様になった。
着実にフォロワーが増えている。
でも、どんなに撮っても何かインパクトが足りない…。
…………………
翌日、朝登校すると、いつもならギャアギャア集まって来る生徒達の様子がおかしい。
何か少しヨソヨソしい感じ。
「おはよう~~」と声をかけると、
「あ、お、おはよう…。」
皆んな、教室にはけて行った。
何かコソコソ話しながら…。
一人で立ち尽くしていると、川田和也が登校して来た。
「おぅ、おはよう。」
「川田君、おはよう…。」
千影も川田和也も何か察したのか、行こうって言う様に教室に入って行った。
その日は一日中生徒達の態度が急変した事で、憂鬱な時間を過ごした。
放課後、千影と川田和也に促され帰る準備をしていると
「何か、金にもの言わせてる感はずっとあったよねぇ~~…。」
「おぅ、俺らもずっと思ってたんだよなぁ~~…。」
「昨日の、見た?…。」
所々聞こえにくいが、コチラをチラチラ見ながらクラスメートが噂話をしてる様だ。
「ちょっと、アンタ達…!」
私が立ち上がると川田和也が腕を掴み、首を振った。
「帰るぞ。」
3人で少しだけ初夏を感じる公園の前を歩く。
川田和也が口を開いた。
「…昨日さ、お前、インスタのコメント読んでねぇの?」
「え…?昨日は買ってもらったジュエリーインスタにUPして寝ちゃったから…。
」
「相当、批判コメント入ってたぞ。」
え⁈なんで!凄く綺麗に撮れたのに!
公園を抜けると、昔からあるフラワーショップを通る。とても古くていつもは目にも入らない位、街と同化していて。
私から見たら雑草の様な存在だ。
千影はフラワーショップの花に目を向けると彼岸花の前でしゃがみ込んだ。
そこにクロアゲハが羽ばたいて来た。
千影はじっと彼岸花を眺めていたが、
青白い千影の肌と、毒々しいほどの彼岸花の赤、クロアゲハの漆黒が綺麗で…。
思わず写真を撮った。
その後川田和也とは駅で別れ、
千影とはいつもの交差点で別れた。
家に帰ると、やはり両親は居ない…。
インスタを確認すると、昨日のコメントの中に
(金と自分にしか興味ない女)
(セレブ気取ってる寂しい女)
(恥さらし)
…………………
一人のコメントを口切りに、批判コメントの嵐!
お前らに何が分かるんだよ!
金があっても、いつも居ない両親と、チヤホヤ心もねぇクセに群がってくるハイエナみたいな奴ばかりの中で育って来た私の気持ちが分かんのかよ⁈
…………………
批判コメントは続き、学校では皆んなに無視され始めた。
それでも、千影と川田和也だけはいつも側にいてくれた。
しばらくは2人を有難いと思っていたが元々負けず嫌いの私は、何とか皆んなをあっと言わせる様なインスタをUPしようと考えていた。
ずっと写真を確認していると、自分の満面の笑みを中心に撮った写真の中に、たまたま映り込んだ川田和也の仕事姿。
それから、いつも横で遠慮気味に微笑んでいる千影の姿。
一番目を奪われたのは、彼岸花に目を奪われた千影にクロアゲハが舞っている一枚だ。
カメラには一切目を向けていない自然な表情に、クロアゲハが舞う奇跡のショット。
「これだ…。」
いつもの様に千影と学校に向かう。
しばらく塞ぎこんでいた私の表情が変わった事に、千影は気づいたのか、
「輝美、なんか吹っ切れた感じだね。」
っていつもの千影らしく遠慮気味に笑った。
「うん。究極のインスタ、思いついたんだ!」
少し間を置いて、
「インスタ…なの?」と千影。
登校してからいつも通り遠巻きに陰口を叩く様になった生徒達に
「おはよう~~!!!!」と
挨拶をすると、皆んなびっくりしてた。
川田和也が登校して来て、
「おはよ……。
お前…。なんか吹っ切った顔してるけどな、デカイ爆弾落とすなよ。
教室入ろうぜ。」
………………
3人で学校を後にするまでいつもみたいに過ごした。
見てろよ。アッと言わせてやる。
帰りにまた3人で公園の横を通り過ぎ、古びたフラワーショップの前に差し掛かると、私は彼岸花を二束買った。
千影は驚いていたけど、
「この花、綺麗だね。こっちは千影に!」
そうして千影に渡すと、
「ありがとう!!!!
この花の合言葉はね、
また会いましょう…。なんだ!
毒性が強いけど、とても綺麗だし。
小学生の時に病気で亡くなったお父さんも、お寺に自生してるん彼岸花をよく眺めてたなぁ…。
今日は仏前に供えるよ!」
千影はことの外喜んでくれた。
川田和也はそんな私達を見て、
「女って、ホント花とか宝石とか、好きよなぁ。俺、ワカンねぇ。
じぁあな!」
と言って、手をヒラヒラ振って駅に入って行った。
残された私達は彼岸花の花束を二人で抱えた異様な姿で交差点まで来た。
皆んなの注目を集めている。
交差点で千影が
「また、明日ね。」
と言った。
「また、明日!」
と私は答えた。
家に帰ると、やはり両親は居ない。
インスタの為に準備しておいた、黒のワンピースを着る。
真っ赤なペンダントはやっぱり映える。
インスタに今の姿の写真と、
また会いましょう、のコメントを入力してUPした。
彼岸花は花瓶に挿して、少しベッドに横になった。
…………………
眠りにつくと、また以前の光景だ。
窓辺に着物の女性が立っている。
ゆっくりとこちらを振り向き、
「浮月鏡子です。」
と、息を飲む様な美しさで頭を下げた。
「そろそろ、望みを叶えましょうか。」
と、窓を開けた。
カーテンが揺らめいて、満月が顔を出す。
私は部屋の時計を見た。
深夜2時。
花瓶に挿してあった彼岸花の花束を胸に抱え、窓辺に立つと
鏡子さんが私の髪を整えながら、貝殻に入った真紅の口紅をさしてくれた。
「とても綺麗。
貴方は全世界から魅て貰えるわよ。
逝きましょう。
そして、また会いましょうね。」
私は鏡子さんと手を取り、月に向かって、、、飛んだ。
…………………
翌日世間は大騒ぎだ。
この世で一番美しい死体だと、微笑んだままの私の死に顔は話題になった。
様々なネットワークから全世界に配信されていた。
未明に警察が訪れ、母は泣き崩れて、父は愛人の元から帰り驚愕した様だ。
真紅の彼岸花の中、微笑みながら亡くなっている私の周りにクロアゲハが舞っている。
警察が規制する中、皆カメラで私を撮っていた。
人混みに囲まれ、注文を浴びて、私は初めて本当に満足した。
そう、撮るのでは無い。
撮られるのだ。
思わず撮りたくなってしまうほどの感動を私は世間に作る事に成功したのだ!
両親も今は私をずっと魅ている。
川田和也も千影もきっと魅ている。
ずっと歴史の中にいるから!みんな、また会おうね!!!!
心に思って自らの死体の傍らにたたずんでいると、鏡子さんがどこらかともなくやって来た。
微笑みながら手を出してくれたので、そっと手を握り一緒に歩き始めた。
あぁ~~!!!!ちくしょう…。私も自分の死体、写真に撮りたかったな!!!!(笑)
……………………
午前7時半。まだ人混みは引かない。シャッター音だけがなり響いてる。
そんな人混みの中、手を繋ぎ静かに見つめる川田和也と千影の姿。
川田和也は黙って携帯をポケットから出し 、インスタを開くと…、
いいね、を押した…。
千影の左腕にはピンクの綺麗なブレスレットが、朝日に輝いていた。
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