笑う死体4

真翔

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田辺 勇気の願い〜金持ちになりてぇ

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金持ってる奴は何でも手に入れるんだよなぁ。
俺、輝美の事、マジで中学の時から好きだったんだ。

俺は田辺 勇気。

アイツのインスタ、金持ちの奴ばっか。
スンゲェ高いバックやジュエリー、バスバス買いやがってよぉ…。
いい車乗って、いい飯食って。

何度俺が誘っても、さらりと断れちまう。
うちが貧乏のせいだよ。

オカンはパート。
親父、リストラされてから仕事、転々。

俺には高嶺の花だったよ。

でも、まさか死んじまうなんて。
つるんでた友達もアイツの悪口書き込みやがって。

どっか誘うったって、せいぜいバイト代でカラオケか、居酒屋ってとこ。

情けねぇな。

金さえあれば…。

輝美のインスタのコメントん中に、wishってサイト乗ってたな。

マジ、願い叶うのかな。

俺さ、金持ちになって、いい女はべらかして、天国の輝美に言ってやりたいよ。
惜しい魚逃しただろ⁈って。


その日の晩にサイト開いてみた。

やっぱ開かねー。
都市伝説なんかな。

コンビニのバイトの時間だ。

…………

ツレがクラスの女連れて入って来た。
「おぅ、勇気~!」

賑やかに店ウロついて、
レジしてたら、
「まぁ、せいぜい頑張れな~~、
また誘ってやるよ!
これからカラオケなんだけど、お前ん家貧乏だし、また給料日あたり誘うわ!」

「……。」

女達の前でカッコわりぃ。


でもいい返せねぇ。
世の中は金なんだ…。

……………

中学ん時のツレに、なんか運び屋のバイト紹介して貰ったんだ。

そいつその仕事で荒稼ぎしてるらしい。
弱々しい奴だったけど、なんか、いい服着てた。
「田辺、一緒にやらねぇ?」
って。

2つ返事で承諾したよ。
皆んな見返してやる!

輝美、見てろよ!

…………

しばらくして、コンビニのバイトは辞めた。

俺、誘ってくれた昔のツレ、海老名って言う奴なんだけど、
一緒に逃げたり、俺ん家のボロアパートで次の仕事相談したり、

オカンが
「うるせぇ!」
って叫ぶもんだから、
「黙れ!ババアっ」
って言い返したり、

何だかんだ楽しかった。

しばらくしてから、俺は羽振りが良くなった。
一回の仕事で50万以上あった。
海老名と一緒に暴れ回った。

今まで群れてた奴らがクズみたいだ。

たまに遊びに行くと、皆んなヘイコラして来たし。
リーダー格の大野は気に食わなかったらしいけど。

…………

次の日、登校すると、大野が仲間連れて待ち伏せしてた。

昨日までヘイコラしてた奴もいる。

色んな道具使って、大勢連れて。
俺は殴られながら
(輝美、お前、こんな世界に生きてたのかよ…。)
って思った。

「田辺君!!!!」

俺に覆い被さる様に、
森だ…。

「大勢で寄って集って!!!!」


ちぃせぇ身体盾にして…。

でも、大野は森を襲う様に皆んなに指示した。

「最近コイツ割と可愛くなったしなぁ~~。ヤっちまえ。」

俺は大野から森をかばう様に、逆に覆い被さった。

20人位いたかな。
俺は、めっぽう、女には優しいんだよ…。

耐えていると、後ろから

「お前らのリーダーは、金か?
大野から金貰っただろ。」

と声がした。

血で見えにくかったが、川田だ…。

大野が指示して、皆が川田にかかったけど、アイツ、皆んな投げ飛ばしちまう。

安心して、森を見ると、顔が真っ青だ。


川田が言った、
「森はお前にまかす。
とりあえず、保健室に!」

…………

保健室に連れて行って、すぐに川田んとこ戻ったら、
みんな伸びてた(笑)

輝美があんまりにも川田を気にしてたし、男前なだけに嫉妬もしてた。

「川田、森は大丈夫だよ。
今、寝てる…。」

「そうか、すまない。」

保健室へ向かおうとする川田に、

「金があれば、いい人生、送れると思わねか…?」
と問うと、

「俺もそう思ってたが、妹死なしちまったから。
お前、ヤバイ仕事からは、手引けよ。」

川田は言った。

そういや、アイツ最近妹さん亡くしたんだっけ…。

以外に悪い奴でなさそうだな…。

森は保健室でまだ目を覚まさない。
こんな俺の為にちぃせぇ身体張ってよ…。

「川田、すまねぇ。お前、森の事大切に思ってんだろ?
怖い思いさせちまって、、。」

川田は森の手を握って、
「大切だが、運命共同体ってとこだよ。
コイツはちぃせぇけど、肝は座ってるんだよ。」

「だから、心配なんだが…。」
川田は言った。
俺はよく分からなかった。

しばらくして森が目を覚ました。

「田辺君、、、大丈夫?」  

コイツ、正義のヒーローみたいな奴だな(笑)


「お前さぁ、自分の心配しろよ(笑)
でもな、ありがとう。」

輝美の側で、いつも目立たなかったけど、割と強い奴なんだ…。

川田には、もう一度仕事の事、念押しされた。

家に帰ると、またオカンとオトンは喧嘩。

「働かないもんは飯食うな!」
と、オカン。

「豚の生姜焼きなんか、この、共食い!!!!」
と、オヤジ…。

毎日、毎日、ワーワーギャーギャーうるせぇなぁ…。

呆れていると、オカンが、

 「海老名君来てるよ!
お前飯食ってな!!!!」

やかましい2人の間を通り抜けると、襖を開けたとこに海老名が座って、生姜焼き食ってた。

「おぅ、わりぃな、やかましいだろ⁈うちの親~~(笑)」
俺が言うと、

「俺施設育ちだから、なんか羨ましいよ。」
と海老名が言った。
「お前のお袋さんがさ、生姜焼き、パートのスーパーの残りだからって出してくれたよ(笑)
お前さ、働いた金、お袋さんに渡してやんないの?」

俺は、なんかヤバイ金だと疑われるのが嫌で遊びにばかり使ってた。

ドカーン!!!!

襖が倒れた。

オカンがオヤジを投げ飛ばしたらしい。

「お前ら、マジうっせーんだよ!!!!」

と、怒鳴ると海老名が腹抱えて笑った。
海老名はうちの家族が大好きな様だ。
ホント楽しい両親だな。(笑)
と海老名はまた笑い転げた。

海老名、俺コイツらのせいで苦労して来たんだぜ…。
そんなに笑うなよ~~(笑)

「襖直すわ。ごめんね。」

オカンはペラペラの襖を立てて、髪の毛はボサボサ。

2人でまた笑った。

「何だよ、オカンの頭(笑)」

海老名に至っては声も出ない。(笑)

海老名が言った、
「なぁ、明日埠頭にブツ届けるんだけど、割とデカイ仕事だ。
俺1人で十分だからさ、
今回は少しでいいから、両親に孝行してやれよ。」

「いや、俺も行くよ。」
俺は答えたが、海老名は
「田辺、お前、金欲しいんだろ?
…、俺はさ、お前の家族みたいな人と暮らしたかったよ~~。
さて、ご馳走さん!」

海老名は立ち上がると、電話するわ、の合図をした。

オカンはボサボサのまま、
「あんたさ、何だったら泊まっていきなよ!!!!もう、遅いよ!」
と大声を上げていたが、

海老名がまた笑って、
「オヤジさんも、頭ボサボサですよ(笑)」
と、声が聞こえた。

「この豚足で殴られたんだよ!!!!」
オヤジが叫ぶ。

「腕だよ!!!!この甲斐性なしが!!!!」
オカンが飛びかかった時に、
海老名の笑い声と、バタンと音がしたので、
海老名は帰ったんだと思った…。

翌日、俺は久々に寄り道をした。
輝美がインスタにあげていた店を通ってみようと思ったんだ。

コンビニも辞めたし、海老名と仕事してた方が儲かる。
川田がやってくれたおかげで大野はおとなしくなった。
また、みんなヘイコラし始めた。
ブラブラ歩いてると、

川田と、森だ。
なんか古くさそうな花屋に寄ってる。

「おぃ、よぅ。」

と声をかけると、奥に仙人並みの爺さんが座ってた。
ぼんやり座っていたのに
俺を見ると、
「おぃ、お前!!!!
ハナがのうなるぞ!!!!
まだ、間に合う、間に合う!」
騒ぎ出した。

店の奥から、おばさんが
「お父さん、興奮しないでくださいよ」
と言って爺さんを連れて行った。
爺さんは、フガフガ口を動かしていたが俺たちに何か訴えたそうに、手を伸ばしてた。

森が慌てた様子で
「田辺君、今日何かある⁈
心当たりある⁈
おじいさんが言う、ハナは、大切な誰かの事だよ!!!!」

俺は海老名の言った事を思い出した。

「ヤバイ仕事…。海老名…。」

俺はタクシーを捕まえようと走った。
川田は、
「どこに行く⁈」
と言ったが、アイツは巻き込めない。

タクシー乗り場まで走って走った。


「 森、家に帰れ。
アイツの命が危ない気がする。
俺、追ってみる。」
川田。

「うん。任せる。」
森。


「埠頭まで行ってくれ!!!!」俺は叫んだ。

タクシーの中で、wishを検索すると、開いた!
(金も欲しいが、海老名を助けてくれ。)
と、入力した。

アイツと何か仕事してる時は、楽しかった。アイツとなんかまともな仕事がしてぇ。 
…………

一瞬、意識が飛んだ。

タクシーの隣にやたら綺麗な着物の女が座ってた。
「浮月 鏡子と申します。」

「貴方の望みを叶えましょう。」

と、言って、俺の首にタイガーアイのチョーカーをかけて、消えた。

……………

一瞬の事だった。
慌て過ぎて、白昼夢でも見たのか。
「はっ、!!!!」
意識を取り戻した俺は祈った。

頼む!間に合ってくれ!!!!

埠頭に着いて
「海老名~~~~!!!!」
俺は叫んだ。

「来るな~~~~!!!!
逃げろ~~~~」

コンテナの奥から海老名の声がした。

俺は、コンテナの方へ走って行った。

後ろからバタンと音がした。

「川田…⁈」

川田は「行くぞ!!!!」
と、言った。

2人でコンテナまで走った。

殴られてボロボロの海老名が倒れていた。
袋を抱えている。

「海老名~~!!!!」

俺は叫びながら、向かって行った。
ヤクザらしき男たちが何人もいた。

川田も俺も海老名を囲んで必死にやり合った。

川田がほとんど倒してくれた。
川田が膝を着いた。
限界だな…。

もう立ち上がる敵は居なくなっていた。

「川田!すまん!助かった!」

川田は、倒れ込んだ。

俺は、海老名に駆け寄った。

海老名は大切そうに、バックを抱え、

「お前の両親に…。」

と、言って俺に渡した。

「馬鹿やろう!!!!
無茶しやがって!!!!」

そのあと、

ズキューン、
ズキューン。

二発の銃声が…、
俺の胸を撃ち抜いたんだ。
タイガーアイのチョーカーは、海の方にキラキラ光って飛んで行った。

川田は走って俺を打った奴を殴りつけた。

俺は仰向けになって、空を見上げた。
カバンから飛び出した、金が空を舞っている。
金色の蝶々みたいだ。

おぃ…、輝美、俺金持ちになったぜ。
インスタ映えする男だろ。

鏡子さんが手を差し出してる。
ホントいい女だな(笑)

金も手に入れたし、いい女もいる。
後はアイツが…。

少しかすれた目の前に、海老名が泣いてる顔が見えた。

「海老名、オカンと、オトン…。」
俺の目から涙が溢れたが、もう、声がでない…。

海老名は分かってくれる。

そう思うと、安心して笑顔になった。

鏡子さんの手を握った。

さあ、そろそろ逝くか。

ちくしょう…。
あんなに金、落ちてるのに、な~~んの役にもたたねえな(笑)

……………

川田 和也には見えていた。
離れていく、浮月 鏡子と田辺 勇気が。

…………


俺は川田和也。
肋骨は折ったが無事だ。

海老名 真信は逮捕された。
覚せい剤の運び屋を知らずにしていたらしい。

後で海老名に聞いた話だが、

田辺の両親に殴られて、
おいおい泣かれて、
だが、

「引き受けん時はあたしらが行くから!!!!
勇気の分も、ちゃんと生きるんだ!
でないと、許さんぞ!!!!」

と、お袋さんは泣き崩れ

後日、親父さんが面会に来て、
「あれでオカンはいい家の一人娘なんだ。駆け落ちまでして、俺について来てくれたんだぜ?(笑)」

と話していたらしい。












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