本能のままに

揚羽

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狸狩り

6月2日,3日

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「しかし、謀反を起こしたのが明智光秀であるのが最悪だな。」

「えぇ、殿。そのとおりです。」

この2週間ほど前に徳川家康は安土城で織田信長の宴に招待されていた。そしてその宴を指揮していたのが他でもない明智光秀である。そのため明智光秀には徳川家康のいる場所が丸わかりなのである。
(一説にはこの宴により明智光秀が恥をかかされ謀反を決心したという説もあり、明智光秀には徳川家康を殺す動機もあったのである。) 

「とりあえず今日のところは山城の山口甚介の館、明日は甲賀の多羅尾光俊の館を目指し、明後日伊勢湾を渡り岡崎へ帰りましょう。」

多羅尾光俊(たらおみつとし)とは近江国甲賀(今の滋賀県南部)の豪族である。

「あぁ、そうだな。皆の者!これから3日間は大変な旅になるが頑張ってくれ!」

そして山口甚介の館にたどり着いた家康の下に驚くべき知らせが届いた。

「何!穴山が死んだだと!」

穴山信君、またの名を穴山梅雪と言う。彼はこの数ヶ月前に滅んだ武田家攻めの際に徳川家へと謀反を起こした人物であり、この者の案内で武田攻めがスムーズに行われた。

彼は徳川家康の側で三河へと戻っては一揆軍に殺されてしまうと思い別のルートを通っていたが、逆にそのルートで落ち武者狩りに討ち取られてしまった。

「やはり明智側に動きが知られておるようですね。」

「あぁ、もしかしたら明日我らも落ち武者狩りに出会ってしまうかもしれん。今日よりも慎重に動いたほうがいいだろうな。」

しかし家康の心配とは裏腹に次の日も小規模の一揆軍には出会ったが大きな犠牲を出さずに多羅尾光俊の館へとたどり着いた。

「家康様。ご無事に我が館へとご到着いただきになり安心いたしました。」

「おぉ、多羅尾殿。お出迎えかたじけない。」

「本日はごゆるりとお過ごしください、と言いたいところなのですが少しお耳に入れておきたいことがありまして…」

「ん?いかがしたのだ?」

多羅尾光俊館 家康の部屋

「実はこの周辺の豪族へと明智勢から密書が届いておりまして。」

「明智からだと?どのようなものだ?」

「それが殿やその家臣の首を討ち取ったら褒美を渡すとのことで…」

「なるほどのう。流石明智だな。わしが伊賀越えをすることを当てておる。」

「えぇ、なのでもしかしたら明日何かあるかもしれませぬ。」

「あぁ、そうだな。明日は今日よりも慎重に行軍したほうがいいだろうな。」

そして伊賀越えを始めて2日が過ぎ3日目に入った。

伊賀 とある農村

「なぁ聞いたか?明日ここを家康が通るらしいぞ。」

「そうか。なら落ち武者狩りでもするかな。」


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