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②健二先生が咲良先生と園児の間に入ってきた。
「咲良先生、まだ園児の扱いに慣れてないから、私が注意します。」
 咲良先生は、園児と健二先生の間に入った。
「私のクラスです。大丈夫です」
 健二先生は、素直でない咲良先生をほっといて園児に注意をした。
「苺ちゃん、人の物をとったらだめだよ、弘君と太子君、取り返すために部屋を走ったら危ないだろう、ダメ!」
 三人は叱っている健二先生の顔を見ずに下を向いている。咲良先生は健二先生の腕を掴んで教室から出した。
「ちょ、ちょっと、咲良先生、な、何をするんですか!」
 健二先生を教室から出した後、三人の方を振り向くと弘君と太子君が積み木遊びを再開し、苺ちゃんは遠くから見ていた。咲良先生は考えた。弘君も太子君も家庭では自由に使えるから積木は自分のものって考えたのかな,苺ちゃんは,積木がほしいわけではなく,一緒に遊びたかったじゃないかな・・・・。
 咲良先生は苺ちゃんの手をつないで,弘君と太子君の積木遊びの所へ行った。
 咲良先生が太子君に聞いた。

「太子君,積木貸~し~て」

 咲良先生は,太子君が応える前に自分で言ったのだ。

「いいよ」

 苺ちゃんに積木を渡した。

 咲良先生は,今度は弘君に同じように言ってみた。

「つみき貸して」

 弘君は,咲良先生が言う前に口を開いた。

「だめ! 今,使っているから」

 咲良先生はにっこり笑って弘君に答えた。

「じゃあ,弘君,終わったら貸してね」

 咲良先生は苺ちゃんと立って去りました。

「苺ちゃん,積木1個では遊べないかな,じゃあ,先生,見てるから弘君と太子君の所へ行って,だまってとるんじゃなくて,貸してって言おうね」

 咲良先生は,今度は苺ちゃんの後ろについて行った。

「つみき,貸~し~て~」

「いいよ」

 積木を貸してあげたのは,弘君だった。さっきは,だめ!って言っていたけど,今度は,最初に,「いいよ」が言えた。そこで,咲良先生は,弘君に笑顔で言った。

「弘君,やさしいね」

 そばにいた太子君もすぐに苺ちゃんに答えた。

「いいよ」

 苺ちゃんは,にっこりとして両手に積木をもった。

「太子君もやさしいね,二人で遊ぶよりも,苺ちゃんと3人で遊んだ方が楽しいかも」

 咲良先生は,強制的に言わずに,二人に考えさせたのだ。

最初に,答えたのは弘君だった。

「うん,苺ちゃん,一緒に積木やろうよ」

 弘君が言い終わる前に,太子君も賛同した。

「3人の方が楽しいよ,苺ちゃん,ここ,すわって,あそぼー」

 仲良く3人で積木遊びを始めたのを咲良先生は見守っていた。

  園児を見守っている咲良先生を廊下の前の窓から健二先生が成り行きを覗いていた。そして、後ろの窓からは園長先生が笑顔で優しく咲良先生を見守っていた。

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