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1巻
1-2
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容易に想像のつく未来にげっそりするハルとは反対に、ランバートがピクリと肩を揺らした。
「…………そういうことをさらりと言うな」
「へっ?」
ずいぶんと低い声だ。怒っているのだろうか。
はじめは意味がわからずきょとんとしていたハルも、後ろから顔を覗き込むうちにランバートが照れているのだとわかった。
「ふふふ。ランバートさんは格好いいですよ。強くて、逞しくて、それに大人っぽくて」
「だからもういい」
案の定、憮然とした声が返ってくる。
照れ隠しの下手な彼に、悪いと思いながらもハルはとうとう声を立てて笑った。ランバートの思いがけない一面を知ってなんだか得したような気分だ。
「そういえば、ランバートさんっておいくつなんですか?」
「二十八だ」
「じゃあ、ぼくより十歳も年上なんですね。いつから冒険の旅を?」
少し考えるような間があった後で、沈黙を埋めるようにランバートはハルを背負い直した。
「……もう、十年になるな」
「十年! そんなに長い間、魔獣と戦ったりしてたんですね。すごいなぁ」
「ただドロップアイテムがほしかっただけだ。……それでもまだ、本当に必要なものは手に入れていない」
「そうなんですね。ランバートさんの必要なものって……」
最後まで言い終わらないうちにランバートの足が止まる。
「あの」
「シッ。静かに」
彼の纏う空気が一変した。
旅の間、ランバートが獣と戦う場面を何度か見たからわかる。そうやって、近くにいるであろう魔獣の気配を探っているのだ。
「東の方角に三、四頭といったところか。おまえは隠れていろ」
ランバートは近くの茂みにハルを隠し、立ち塞がるようにして剣を抜く。
するとすぐ、森の奥から大型魔獣が現れた。灰色の毛は泥に塗れ、顔も血でべっとり汚れている。どうやら獲物を貪ってきたばかりのようだ。ひどく昂奮しているのか、口から白い煙のようなものを吐いている。
「煙狼だ。あの煙を吸い込むな。俺がいいと言うまで伏せているんだ」
「はい」
ハルが身体を小さくすると同時に戦いがはじまり、煙狼の咆吼に混じって空が切り裂かれる音が響いた。ランバートが〈尖鋭維持〉の剣によって遠くから魔獣を一刀両断したのだろう。
すぐに勝負はついたようで、煙狼の断末魔すらあっという間に掻き消えた。
その間、わずか数分足らず。毎度のことながら見事なものだ。
「終わったぞ」
「お疲れさまでした」
そろそろと茂みから這い出る。
服についた枝や葉を払っていると手を出すよう言われ、手のひらに何かを乗せられた。今落ちたばかりの魔獣の牙だ。
「こういうものも、いつかおまえの役に立つかもしれないな。確か、魔道具の素材になると聞いたことがある」
「そうなんですか」
調べたところ、〈煙狼の牙〉というらしい。煙を吐く狼らしく幻覚効果があるようだ。
ということは、この効果を付与した服を纏えば、周囲の目を誤魔化せるのかも。たとえば人目を避けたい時や、サプライズでびっくりさせたい時、それから悪用は良くないけれど、どこかへ忍び込む時なんかにもうってつけだろう。
「魔道具って、アイディア次第でいろんなものが作れそうですね。すごく楽しそう!」
「ははは。せっかくやる気になったところですまないが、日が落ちる前に先に行こう。この辺りは夜になると獰猛な獣が出やすいんだ」
「おっと。それなら急いで離れましょう」
日没まであといくらもない。
ハルはもらった〈煙狼の牙〉を鞄にしまうと、ランバートを先頭にまた一列になって森を進んだ。生い茂る草木を掻き分け、木の根を跨ぎ、そうしてどれくらい歩いただろうか。
辺りが薄暗くなりはじめた頃、ちょうどいい平地に着いた。近くには小川もあるようだ。
「ここで夜を明かすとするか。俺は辺りに危険がないか確認してくる」
「じゃあ、ぼくは水を汲んできます。それから夕飯用に魚釣りも」
勇んで川に向かおうとしたものの、なぜか「待て」と襟首を掴んで止められた。
「この辺りの川は去年、有毒魔獣に汚染された。毒自体はだいぶ薄まっているとはいえ、飲んだら身体が痺れるからやめておいた方がいい。魚も死んだ。釣り糸を垂れても時間の無駄だ」
「そ、そんな……」
食料どころか水さえ確保できないなんて。
「そう落ち込むな。何とかする。おまえはここにいろ」
ランバートはそう言って茂みの奥に入っていくと、しばらくして一羽の野鳥と大量の枝を抱えて帰ってきた。周辺調査のついでに食料まで確保してきてくれたらしい。
「すごい!」
彼は倒木を切り出し、まな板代わりにすると、慣れた手つきで鳥の羽を毟っていく。
「ランバートさんって何でもできるんですねぇ」
「森で生きていくためだ。おまえだって慣れればできるようになる」
ランバートは手早く風除けのための囲いを作ると、落ち葉と小枝を何層にも重ねて火を熾した。囲いの上には横木を渡し、即席のグリル台にする。
「ここで肉を焼く」
「おおー!」
まさにキャンプだ。これぞアウトドアという感じでテンションが上がる。
けれど、呑気に笑っていられたのもそこまでだった。ランバートが枝に括りつけた野鳥を一羽、そのまま火にかけようとしたからだ。
「わっ、待って待って! それだと外は黒焦げで、中が生焼けになっちゃいません?」
「そういうものだろう」
「へっ?」
「多少のムラはしかたがない。俺はいつもこうしている」
「い、いつも? お腹壊したりしないんですか」
「もう慣れた」
「……」
どうも雲行きが怪しくなってきた。
突如として漂い出した緊張感にハルはごくりと喉を鳴らす。
「それじゃあの、今夜は水が飲めないと思いますけど、どうします?」
「飲まないか、我慢して飲む」
「でもさっき、川には毒があるって……」
「多少は平気だ。おまえは死ぬからやめておけ」
「それ、平気なんじゃなくて、耐性ができるほど毒を摂取してきたってことじゃ……?」
「そうとも言うな」
ランバートがあまりにケロッとしているせいで、訊いている自分の方がおかしいんじゃないかと思えてきた。
―――生焼けを食べても、毒水を飲んでも、平気な身体ってどういうこと!?
「えっと、えっと、じゃあ、寝る時はどうしてます? 魔獣とか危ないでしょう?」
「気配で起きる。襲ってきたら戦うまでだ」
「………………」
ダメだ、これは。
ハルはとうとう片手で顔を覆った。
ランバートがアウトドアに全振りしたタイプだということがよくわかった。長らくひとりきりで冒険していたのだから当然の進化かもしれない。
―――でも、これは真似したら死んでしまう……
ハルは大きく深呼吸をすると、平和的な解決の道を探ることにした。
まずは食事だ。お腹を壊したりしないように、しっかり火を通して食べなければ。
「ランバートさん。すみませんが、ナイフか何かありませんか」
「ナイフ? これでいいか」
ランバートがベルトに差していた小剣を差し出す。
「ありがとうございます。これで鳥を捌きます。血は後できれいにしますから」
たぶん浄化魔法でいけるはずだ。
ハルはナイフを受け取ると、鳥を一口大に切り分けはじめた。
転生前は自炊をしていたので肉を切るのはお手のものだ。さすがに一羽丸ごと捌いた経験はないけれど、可食部とそうでない部分とを大まかに分けるぐらいならできる。
「そんなに小さくしてしまって大丈夫か」
「スープにしようと思います。これぐらいのサイズならしっかり火が通ると思いますし、消化にもいいですから」
「スープ? 煮るのか? だがどうやって……」
ハルは血がついたものを浄化魔法で清めると、ランバートにナイフを返した。
「それじゃ、ぼくは水を汲んできます。ランバートさんはすみませんが、この倍くらい枝を集めておいてください。長時間火を焚くことになるので」
「おい。言っておくが、川の毒は煮沸したぐらいでは消えないぞ」
「ふふふ。秘策があるんです。きっと大丈夫ですから」
訝るランバートをその場に残し、ハルは今度こそ意気揚々と小川に向かう。
「そのまま飲めないなら、浄化すればいいんだよね」
血で汚れた手やナイフをきれいにしたように。
川縁に着いたハルは、『魔道具入門』に書かれていた〈浄化漏斗〉と、食堂で水を出す時に使うピッチャーをひとつにした、オリジナルの〈浄化ポット〉を作ることにした。
「まずはポットから」
鞄からガラス素材を取り出し、成形魔法でポットの形に変形させる。胴体はふっくら丸く、広い注ぎ口と持ち手がついただけのシンプルなデザインだ。
次に、浄化のための〈水の魔石〉を取りつけた。
家電製品が電気で動くように、魔道具は魔力で動く。そのためには魔石の力を伝える魔動回路が必要だ。一見難しく思える設計も技術者であるハルには朝飯前。
ポットの胴体部分に回路を施し、石を嵌め込んだ瞬間、全体がアクアブルーにふわっと光った。〈水の魔石〉の力が回路を通ってポット全体に行き渡り、魔道具になった証拠だ。
これで、この中に入れた水は飲めるようになったはず。
「よーし。さっそく試してみよう」
手が川面に触れないよう注意しつつ、注ぎ口を浸して水を汲む。
それを持って戻ったところ、ランバートは山盛りの枝を集めて待っていた。
「すごい量ですね。ありがとうございます」
「おまえこそ、水に触れて大丈夫だったか」
「肌は濡らさないようにしましたから。おかげでこのとおり」
ポットを掲げるハルに、ランバートは不思議そうに首を傾げる。
「それは?」
「作りました」
「なるほど。そういうことか」
ランバートがニヤリと笑う。彼は黒手袋を外すと、ハルが汲んできた水を素手で受け、そのまま口に運んだ。
「これは驚いたな……毒を感じない。匂いも無臭だ」
「ほんとですか! やったー!」
浮かれて飛び上がった拍子にポットの水がざぶんとあふれる。
そのせいで頭から水浸しになったハルは、驚きのあまり目をまん丸にした。
―――〈煙狼の牙〉の幻覚効果、使うなら今じゃない……?
もういっそ、姿も声も何もかも透明になるものを被りたいくらいだ。
じわじわと羞恥に頬を染めるハルを見て、ランバートがたまらず「ふはっ」と噴き出す。
「そんなに嬉しかったのか。はじめて作った魔道具だもんな」
「へ、へへ……」
恥ずかしいところを見られてしまったけれど、それでも記念すべき魔道具第一号ができたのは誇らしい。ハルは頭からポタポタと雫を垂らしながら愛しいポットを抱き締めた。
「この子がお役に立ちそうで良かったです」
「いいものを作ってもらった。これで安心して食事ができる」
「それじゃ、早速料理していきますね」
まずは鍋が必要だ。
ハルは成形魔法で手頃な寸胴鍋を拵えると、〈浄化ポット〉できれいにした水をたっぷり注いで火にかけた。そこに一口大にした肉や、近くに生えていた香草を軽く洗ってから放り込む。
煮立ってくるにつれて浮いてきた灰汁はレードルを作ってせっせと掬った。
食材に火が通ったのを確かめて、マジックバッグに入っていた塩で味を整える。他にも調味料があればいいのだけれど、いや、もっと言えばコンソメや香味野菜がほしいところだけれど、なにせ突貫アウトドアだ。贅沢は言うまい。
「どれどれ。どんな感じかな」
レードルでスープを一口。
「……んんん~~~?」
マズくはない。決して食べられないわけじゃない。
とはいえ、残念ながら期待した味にはほど遠いものができ上がってしまった。言ってみれば肉を塩水で茹でただけ。多少は出汁が出るとはいえ、圧倒的に旨みが足りない。
どうしたものかと考えたハルは、「ないなら作ろう!」ということで再びマジックバッグに手を突っ込んだ。調味料や野菜を錬成することはできないけれど、自分には魔道具がある。
取り出したるは〈王蛇の舌〉。
好みにうるさく、偏屈な美食家として知られる魔獣の一種だ。そんな蛇の舌を乾燥させ粉末状にしたものが運良く鞄の中に入っていたので、ありがたく使わせてもらうことにした。
洗ったレードルに満遍なく粉をふりかけ、魔力を使って定着させれば旨みを倍増させる匙、その名も〈美食家の匙〉の完成だ。永続的に使えるアイテムではないだろうが、それでも何もないよりマシだろう。
「おいしくなーれ……おいしくなーれ……」
鍋をぐるぐる掻き混ぜていると何かの儀式のようで笑ってしまう。
頃合いを見て再度スープを味見したハルは、今度は「わっ!」と目を輝かせた。
「すごい! 全然違う!」
さすがは王蛇様、頼りになるなんてもんじゃない。
薄ぼんやりしていた味が締まっただけでなく、肉の旨みもよく引き出され、コクもあって奥深い風味になった。まろやかなスープには鳥の脂がほどよく浮かび、きらきらと輝いて食欲を誘う。
これなら腹ペコ冒険者もきっと喜んでくれるだろう。
「あれ? そういえばランバートさん、どこ行ったんだろ……?」
姿が見えない。キョロキョロと辺りを見回していると、果物を手にしたランバートが茂みを掻き分けて現れた。
「おまえばかりに任せるのも申し訳なくてな。食えそうな果物があったから採ってきた」
「わぁ、ありがとうございます。こっちもちょうどでき上がりましたよ」
「そうか。いい香りだ」
ランバートは近づいてくるなり、ひょいと鍋の中を覗き込む。
「あぁ、こいつは旨そうだ。おまえは料理もできるのか」
「ただ煮ただけですよ。それに、裏技も使いましたし」
「裏技?」
ハルが〈美食家の匙〉のことを話して聞かせると、ランバートは目を丸くした。
「驚いた。もうふたつ目の魔道具を作ったのか」
「なんか必要になっちゃって。行き当たりばったりですけど」
「そういうのを臨機応変と言うんだ。冒険には必須のスキルだぞ。大したものだ」
プロの冒険者から手放しに褒められてくすぐったい。「えへへ」と照れ笑いすると、それを見たランバートも頬をゆるめた。
「さぁ、お腹も空きましたし、冷めないうちに食べましょうか」
「あぁ、そうしよう」
手早くスープ皿を作り、でき立てのスープをよそう。ランバートが採ってきてくれた洋梨に似た果物は洗って皮を剥き、一口大に切って平皿に盛りつけた。
焚き火を見ながら並んで座り、ハルは「いただきます」と手を合わせる。
すると、ランバートが不思議そうに声をかけてきた。
「今のは、祈りか何かか」
「『いただきます』ですか? えっと……これはぼくが生まれ育った国の伝統で、食事の前にやる感謝の習慣です。ここにある鳥や果物、それらに対して『大切な命をいただきます』って」
「なるほど。とてもいい考え方だと思う。俺も倣おう」
ランバートが見よう見まねで胸の前で手を合わせる。
「じゃあ、もう一度。いただきます」
「いただきます」
ハルがぺこりと一礼すると、ランバートもそれに倣って頭を下げた。
かくして、楽しい夕食がはじまる。
ランバートはスープを一口啜るなり、「旨い!」と弾かれたように顔を上げた。
「おまえには驚かされ通しだな。即席でこんなに旨いものを作るとは」
「いえいえ。〈美食家の匙〉のおかげです」
「謙遜するな。どんなにいい魔道具があったとしても、何もないところからスープは生まれない。匙は最後の仕上げを助けただけだ。おまえの成果だ。それに、俺が料理をしていたら今頃生焼けの肉を食っていただろうからな」
「うっ」
想像しただけでお腹を壊しそうだ。
途端に顔を顰めたハルを見て、ランバートは明るい声を立てて笑った。
「ランバートさんって、戦うことにはすごく向いてるのになぁ」
「それしかできないとも言うがな」
「ぼくには散々『栄養のあるものを食え』って言ったのに」
「それはおまえが痩せているからだ。見ろ、手首だってこんなに細いじゃないか」
すぐ横から手が伸びてくる。ハルがランバートの手の大きさに驚いている一方で、ランバートもハルの手首を掴んで驚愕したようだ。
「おい、とんでもない細さだな。今すぐ食え。鍋の中身全部だ」
「無理ですって!」
目の前にあるのは寸胴鍋だ。軽く五人分はある。
ハルが噴き出すと、それを見たランバートも一緒になって頬をゆるめた。
「ランバートさんこそ、お口に合うようでしたらたくさん食べてください。ぼくがはじめて拵えた魔道具で作ったスープです。ランバートさんに魔道具師っていうものを教わったおかげで、できたようなものなので」
「努力の成果というわけか。それなら遠慮なくいただこう」
ランバートは頷くなり、猛然とスプーンを動かしはじめた。あっという間に皿の中身を平らげたばかりか、二杯、三杯とおかわりを重ねる。そしてハルがぽかんと見守る前で、彼はとうとう鍋を空っぽにしてみせた。
「ひゃー……気持ちのいい食べっぷり!」
「それぐらい旨かった。おまえは料理もできるし、魔道具も作れる。実に大したものだ」
「もう。褒めすぎです」
笑い合いながらデザートの果物もペロリと平らげ、揃って「ごちそうさま」をする。
その後は、ランバートは寝場所の整地に、ハルは食器の浄化にそれぞれ勤しんだ。
きれいにした寸胴鍋や皿は明日以降も使えるよう、全部マジックバッグにしまう。本当は冷たい水をたっぷり汲んだ〈浄化ポット〉も入れておきたいところだけれど、中でこぼれるかもしれないのでパスだ。
その代わり、明日どこかで時間を見つけて蓋をつけられないかやってみよう。持ち手ももう少し太く、短くすれば、中に水をたくさん入れて重くなった時でも持ちやすくなると思う。
試作品の改良はモノづくりと同じぐらい大好きだ。技術者魂を刺激されるし、何度やってもわくわくと胸が躍る。
ああでもない、こうでもないと考えていると、後ろから「ハル」と呼ばれた。
「整地が終わった。そっちはどうだ」
「ぼくもちょうど終わりました。それじゃ、今度は寝床を作っていきましょう」
鞄から端切れを引っ張り出し、成形魔法で大きくする。次に擬態効果のある〈七色鳥の羽根〉を取り出すと、できたばかりの生地に魔力を付与した。
ハルは布を広げ、あちこちから矯めつ眇めつ出来映えを確かめる。
「うん、いい感じ」
「これをどうするんだ?」
「テントにします。〈七色鳥の羽根〉の効果で、森に同化して見えるはずです」
「なるほど。考えたな」
ランバートに手伝ってもらって支柱を立て、その上に布を被せれば即席テントのでき上がりだ。四隅を地面に杭で打ち込み、中にはふたり分の布を敷いた。これで魔獣の襲来を恐れることなく、朝までぐっすり眠れるだろう。
「まずは今夜試してみて、明日以降どんどん改良していきましょう」
「改良? もう充分じゃないか?」
「何言ってるんです。しっかりつき合ってもらいますよ」
道具はより便利に、より使いやすく磨いてこそ。それは魔道具であっても同じことだ。
ふんふんと鼻息を荒らげるハルに、ランバートは苦笑しながら焚き火を指した。
「まぁ、まずは一段落だな。寝る前に少し座ろう」
「はい」
促されるまま、火に向かって並んで座る。
こちらの世界に来てからというもの、異世界だ、魔獣だ、冒険だと大忙しだったこともあって、ぼんやり焚き火を眺める時間がなんだかとても贅沢なものに思えた。だからもっと味わいたくて、ハルは両足を抱えて膝の上に頭を乗せる。
いつしか夜が森を包んでいた。
闇を押しやるように真っ赤な炎が揺らめいている。燃え殻が爆ぜるパチパチという音を聞いていると心がゆっくり解けていくような、どこか懐かしい気分になった。
「今日は、いろんなことがありましたね」
「あぁ。旅の道連れができるとは思わなかった」
隣でランバートも含み笑う。
そっと視線を向けたハルは、炎に照らされた精悍な横顔に思わず見入った。目が吸い寄せられたきり逸らせない。
ランバートはじっと焚き火を見つめ、何か考えているふうだったが、ややあって意を決したようにこちらを向いた。
「立ち入ったことを聞くが、おまえはどこから来た。どうしてあの時、森にいたんだ」
「あ……」
一瞬、答えに迷う。
転生したと言ったら彼はどう思うだろう。信じられないと戸惑うだろうか。体よく誤魔化されたと訝るだろうか。もし自分が彼の立場だったらとてもすんなりは飲み込めないと思う。
それでも、ランバートに嘘はつきたくない。
ハルは少し迷った上で、日本という国から来たこと、気づいたら森にいたことを打ち明けた。
「ニホン……というのは遠いのか? おまえはそこに帰る必要があるんだろう?」
「いいえ。もう二度と帰れないんです。……でも、しかたありません。これもぼくの運命だと思うから、受け入れますよ」
ランバートは目を瞠った後で、そろそろと息を吐き出す。
「おまえは、強いな」
「まさか。強いのはランバートさんの方ですよ」
「違う。そういう強さじゃない」
間髪を入れず首をふったランバートに、ハルは一拍置いて「ふふ」と笑った。
「わかってます。……ランバートさんみたいな人に褒めてもらえたのが嬉しくて」
正直なところ、自分でもまだ心の整理はついていない。それでも前に進むしかないのだ。
そう自分に言い聞かせていると、隣から大きな手が伸びてきて髪をくしゃりと掻き混ぜられた。慰めとも、励ましとも取れるやさしい手つきに胸の奥がトクンと鳴る。
「どこにいてもおまえはおまえだ。応援する」
「ランバートさん……」
生まれてはじめての感覚に胸を押さえながら、ハルは明るく顔を上げた。
「ねぇ、ランバートさん。よかったら教えてもらえませんか。この国のこと」
「よし。わかった」
ランバートは近くに落ちていた枝を取り上げると、地面に絵を描きながら話しはじめる。
「俺たちがいるのはマインシュタット王国と言って、城塞都市マイネルを中心に繁栄する大国だ。都の東側には恐ろしい森があってな。一度足を踏み入れたが最後、二度と生きて戻ることはないと噂されている」
「えっ。ここより恐ろしい森があるんですか」
思わず声が出た。
「言っておくが、このヴダスの森は都市の周りで一番安全だと言われている」
「これで!?」
魔獣も魔鳥も湧き放題、襲われ放題だったというのに。
旅の道中を思い出してげんなりするハルに苦笑しながら、ランバートは絵を追加した。
「ここがヴダスの森。東の森はこの辺りだ。東の森の魔獣はとにかく気性が荒い。絶対にひとりで行かないように」
「もちろんです。頼まれたって絶対嫌です」
瞬殺される未来しか見えない。
「ここより恐ろしいところもあるんですねぇ。それじゃ、誰も行かない森ってことですよね?」
「普通の人間はな」
「その話しぶりからすると、ランバートさんは行くんですね」
「珍しい魔草や素材の宝庫なんだ。そのため危険を省みずに立ち入っては、命を落とす魔法使いや錬金術師が後を絶たない。だから、代わりに採取を行ったり、魔獣を討伐したりする冒険者稼業が盛んになる。俺もそのひとりだ」
「そうなんですね。でもそれって、常に危険と隣り合わせなんじゃ」
「その分報酬もいいぞ。まぁ正直、金はどうでもいいが」
「じゃあ、どうして……?」
自分だったら考えられない。命を危険に晒した挙げ句、報酬はどうでもいいなんて。
そういえば、彼はドロップアイテムを集めているのだった。それなら東の森にはいいアイテムを落とす魔獣たちが集まっているのだろうか。
あれこれと考えていると、こちらを見たランバートが小さく嘆息した。
「おまえが自分のことを話してくれたのに、俺だけ黙っているのはフェアじゃないよな」
「え?」
彼は一瞬、遠くを見るような目になる。
「おまえは俺を『命の恩人』だと言ったな。……俺にはかつて、助けてやりたかった相手がいた。妹だ。俺は、幻の魔石を妹の墓に供えてやりたくて旅をしている」
揺らめく炎を見つめながらランバートは静かに思い出を繙いた。
「…………そういうことをさらりと言うな」
「へっ?」
ずいぶんと低い声だ。怒っているのだろうか。
はじめは意味がわからずきょとんとしていたハルも、後ろから顔を覗き込むうちにランバートが照れているのだとわかった。
「ふふふ。ランバートさんは格好いいですよ。強くて、逞しくて、それに大人っぽくて」
「だからもういい」
案の定、憮然とした声が返ってくる。
照れ隠しの下手な彼に、悪いと思いながらもハルはとうとう声を立てて笑った。ランバートの思いがけない一面を知ってなんだか得したような気分だ。
「そういえば、ランバートさんっておいくつなんですか?」
「二十八だ」
「じゃあ、ぼくより十歳も年上なんですね。いつから冒険の旅を?」
少し考えるような間があった後で、沈黙を埋めるようにランバートはハルを背負い直した。
「……もう、十年になるな」
「十年! そんなに長い間、魔獣と戦ったりしてたんですね。すごいなぁ」
「ただドロップアイテムがほしかっただけだ。……それでもまだ、本当に必要なものは手に入れていない」
「そうなんですね。ランバートさんの必要なものって……」
最後まで言い終わらないうちにランバートの足が止まる。
「あの」
「シッ。静かに」
彼の纏う空気が一変した。
旅の間、ランバートが獣と戦う場面を何度か見たからわかる。そうやって、近くにいるであろう魔獣の気配を探っているのだ。
「東の方角に三、四頭といったところか。おまえは隠れていろ」
ランバートは近くの茂みにハルを隠し、立ち塞がるようにして剣を抜く。
するとすぐ、森の奥から大型魔獣が現れた。灰色の毛は泥に塗れ、顔も血でべっとり汚れている。どうやら獲物を貪ってきたばかりのようだ。ひどく昂奮しているのか、口から白い煙のようなものを吐いている。
「煙狼だ。あの煙を吸い込むな。俺がいいと言うまで伏せているんだ」
「はい」
ハルが身体を小さくすると同時に戦いがはじまり、煙狼の咆吼に混じって空が切り裂かれる音が響いた。ランバートが〈尖鋭維持〉の剣によって遠くから魔獣を一刀両断したのだろう。
すぐに勝負はついたようで、煙狼の断末魔すらあっという間に掻き消えた。
その間、わずか数分足らず。毎度のことながら見事なものだ。
「終わったぞ」
「お疲れさまでした」
そろそろと茂みから這い出る。
服についた枝や葉を払っていると手を出すよう言われ、手のひらに何かを乗せられた。今落ちたばかりの魔獣の牙だ。
「こういうものも、いつかおまえの役に立つかもしれないな。確か、魔道具の素材になると聞いたことがある」
「そうなんですか」
調べたところ、〈煙狼の牙〉というらしい。煙を吐く狼らしく幻覚効果があるようだ。
ということは、この効果を付与した服を纏えば、周囲の目を誤魔化せるのかも。たとえば人目を避けたい時や、サプライズでびっくりさせたい時、それから悪用は良くないけれど、どこかへ忍び込む時なんかにもうってつけだろう。
「魔道具って、アイディア次第でいろんなものが作れそうですね。すごく楽しそう!」
「ははは。せっかくやる気になったところですまないが、日が落ちる前に先に行こう。この辺りは夜になると獰猛な獣が出やすいんだ」
「おっと。それなら急いで離れましょう」
日没まであといくらもない。
ハルはもらった〈煙狼の牙〉を鞄にしまうと、ランバートを先頭にまた一列になって森を進んだ。生い茂る草木を掻き分け、木の根を跨ぎ、そうしてどれくらい歩いただろうか。
辺りが薄暗くなりはじめた頃、ちょうどいい平地に着いた。近くには小川もあるようだ。
「ここで夜を明かすとするか。俺は辺りに危険がないか確認してくる」
「じゃあ、ぼくは水を汲んできます。それから夕飯用に魚釣りも」
勇んで川に向かおうとしたものの、なぜか「待て」と襟首を掴んで止められた。
「この辺りの川は去年、有毒魔獣に汚染された。毒自体はだいぶ薄まっているとはいえ、飲んだら身体が痺れるからやめておいた方がいい。魚も死んだ。釣り糸を垂れても時間の無駄だ」
「そ、そんな……」
食料どころか水さえ確保できないなんて。
「そう落ち込むな。何とかする。おまえはここにいろ」
ランバートはそう言って茂みの奥に入っていくと、しばらくして一羽の野鳥と大量の枝を抱えて帰ってきた。周辺調査のついでに食料まで確保してきてくれたらしい。
「すごい!」
彼は倒木を切り出し、まな板代わりにすると、慣れた手つきで鳥の羽を毟っていく。
「ランバートさんって何でもできるんですねぇ」
「森で生きていくためだ。おまえだって慣れればできるようになる」
ランバートは手早く風除けのための囲いを作ると、落ち葉と小枝を何層にも重ねて火を熾した。囲いの上には横木を渡し、即席のグリル台にする。
「ここで肉を焼く」
「おおー!」
まさにキャンプだ。これぞアウトドアという感じでテンションが上がる。
けれど、呑気に笑っていられたのもそこまでだった。ランバートが枝に括りつけた野鳥を一羽、そのまま火にかけようとしたからだ。
「わっ、待って待って! それだと外は黒焦げで、中が生焼けになっちゃいません?」
「そういうものだろう」
「へっ?」
「多少のムラはしかたがない。俺はいつもこうしている」
「い、いつも? お腹壊したりしないんですか」
「もう慣れた」
「……」
どうも雲行きが怪しくなってきた。
突如として漂い出した緊張感にハルはごくりと喉を鳴らす。
「それじゃあの、今夜は水が飲めないと思いますけど、どうします?」
「飲まないか、我慢して飲む」
「でもさっき、川には毒があるって……」
「多少は平気だ。おまえは死ぬからやめておけ」
「それ、平気なんじゃなくて、耐性ができるほど毒を摂取してきたってことじゃ……?」
「そうとも言うな」
ランバートがあまりにケロッとしているせいで、訊いている自分の方がおかしいんじゃないかと思えてきた。
―――生焼けを食べても、毒水を飲んでも、平気な身体ってどういうこと!?
「えっと、えっと、じゃあ、寝る時はどうしてます? 魔獣とか危ないでしょう?」
「気配で起きる。襲ってきたら戦うまでだ」
「………………」
ダメだ、これは。
ハルはとうとう片手で顔を覆った。
ランバートがアウトドアに全振りしたタイプだということがよくわかった。長らくひとりきりで冒険していたのだから当然の進化かもしれない。
―――でも、これは真似したら死んでしまう……
ハルは大きく深呼吸をすると、平和的な解決の道を探ることにした。
まずは食事だ。お腹を壊したりしないように、しっかり火を通して食べなければ。
「ランバートさん。すみませんが、ナイフか何かありませんか」
「ナイフ? これでいいか」
ランバートがベルトに差していた小剣を差し出す。
「ありがとうございます。これで鳥を捌きます。血は後できれいにしますから」
たぶん浄化魔法でいけるはずだ。
ハルはナイフを受け取ると、鳥を一口大に切り分けはじめた。
転生前は自炊をしていたので肉を切るのはお手のものだ。さすがに一羽丸ごと捌いた経験はないけれど、可食部とそうでない部分とを大まかに分けるぐらいならできる。
「そんなに小さくしてしまって大丈夫か」
「スープにしようと思います。これぐらいのサイズならしっかり火が通ると思いますし、消化にもいいですから」
「スープ? 煮るのか? だがどうやって……」
ハルは血がついたものを浄化魔法で清めると、ランバートにナイフを返した。
「それじゃ、ぼくは水を汲んできます。ランバートさんはすみませんが、この倍くらい枝を集めておいてください。長時間火を焚くことになるので」
「おい。言っておくが、川の毒は煮沸したぐらいでは消えないぞ」
「ふふふ。秘策があるんです。きっと大丈夫ですから」
訝るランバートをその場に残し、ハルは今度こそ意気揚々と小川に向かう。
「そのまま飲めないなら、浄化すればいいんだよね」
血で汚れた手やナイフをきれいにしたように。
川縁に着いたハルは、『魔道具入門』に書かれていた〈浄化漏斗〉と、食堂で水を出す時に使うピッチャーをひとつにした、オリジナルの〈浄化ポット〉を作ることにした。
「まずはポットから」
鞄からガラス素材を取り出し、成形魔法でポットの形に変形させる。胴体はふっくら丸く、広い注ぎ口と持ち手がついただけのシンプルなデザインだ。
次に、浄化のための〈水の魔石〉を取りつけた。
家電製品が電気で動くように、魔道具は魔力で動く。そのためには魔石の力を伝える魔動回路が必要だ。一見難しく思える設計も技術者であるハルには朝飯前。
ポットの胴体部分に回路を施し、石を嵌め込んだ瞬間、全体がアクアブルーにふわっと光った。〈水の魔石〉の力が回路を通ってポット全体に行き渡り、魔道具になった証拠だ。
これで、この中に入れた水は飲めるようになったはず。
「よーし。さっそく試してみよう」
手が川面に触れないよう注意しつつ、注ぎ口を浸して水を汲む。
それを持って戻ったところ、ランバートは山盛りの枝を集めて待っていた。
「すごい量ですね。ありがとうございます」
「おまえこそ、水に触れて大丈夫だったか」
「肌は濡らさないようにしましたから。おかげでこのとおり」
ポットを掲げるハルに、ランバートは不思議そうに首を傾げる。
「それは?」
「作りました」
「なるほど。そういうことか」
ランバートがニヤリと笑う。彼は黒手袋を外すと、ハルが汲んできた水を素手で受け、そのまま口に運んだ。
「これは驚いたな……毒を感じない。匂いも無臭だ」
「ほんとですか! やったー!」
浮かれて飛び上がった拍子にポットの水がざぶんとあふれる。
そのせいで頭から水浸しになったハルは、驚きのあまり目をまん丸にした。
―――〈煙狼の牙〉の幻覚効果、使うなら今じゃない……?
もういっそ、姿も声も何もかも透明になるものを被りたいくらいだ。
じわじわと羞恥に頬を染めるハルを見て、ランバートがたまらず「ふはっ」と噴き出す。
「そんなに嬉しかったのか。はじめて作った魔道具だもんな」
「へ、へへ……」
恥ずかしいところを見られてしまったけれど、それでも記念すべき魔道具第一号ができたのは誇らしい。ハルは頭からポタポタと雫を垂らしながら愛しいポットを抱き締めた。
「この子がお役に立ちそうで良かったです」
「いいものを作ってもらった。これで安心して食事ができる」
「それじゃ、早速料理していきますね」
まずは鍋が必要だ。
ハルは成形魔法で手頃な寸胴鍋を拵えると、〈浄化ポット〉できれいにした水をたっぷり注いで火にかけた。そこに一口大にした肉や、近くに生えていた香草を軽く洗ってから放り込む。
煮立ってくるにつれて浮いてきた灰汁はレードルを作ってせっせと掬った。
食材に火が通ったのを確かめて、マジックバッグに入っていた塩で味を整える。他にも調味料があればいいのだけれど、いや、もっと言えばコンソメや香味野菜がほしいところだけれど、なにせ突貫アウトドアだ。贅沢は言うまい。
「どれどれ。どんな感じかな」
レードルでスープを一口。
「……んんん~~~?」
マズくはない。決して食べられないわけじゃない。
とはいえ、残念ながら期待した味にはほど遠いものができ上がってしまった。言ってみれば肉を塩水で茹でただけ。多少は出汁が出るとはいえ、圧倒的に旨みが足りない。
どうしたものかと考えたハルは、「ないなら作ろう!」ということで再びマジックバッグに手を突っ込んだ。調味料や野菜を錬成することはできないけれど、自分には魔道具がある。
取り出したるは〈王蛇の舌〉。
好みにうるさく、偏屈な美食家として知られる魔獣の一種だ。そんな蛇の舌を乾燥させ粉末状にしたものが運良く鞄の中に入っていたので、ありがたく使わせてもらうことにした。
洗ったレードルに満遍なく粉をふりかけ、魔力を使って定着させれば旨みを倍増させる匙、その名も〈美食家の匙〉の完成だ。永続的に使えるアイテムではないだろうが、それでも何もないよりマシだろう。
「おいしくなーれ……おいしくなーれ……」
鍋をぐるぐる掻き混ぜていると何かの儀式のようで笑ってしまう。
頃合いを見て再度スープを味見したハルは、今度は「わっ!」と目を輝かせた。
「すごい! 全然違う!」
さすがは王蛇様、頼りになるなんてもんじゃない。
薄ぼんやりしていた味が締まっただけでなく、肉の旨みもよく引き出され、コクもあって奥深い風味になった。まろやかなスープには鳥の脂がほどよく浮かび、きらきらと輝いて食欲を誘う。
これなら腹ペコ冒険者もきっと喜んでくれるだろう。
「あれ? そういえばランバートさん、どこ行ったんだろ……?」
姿が見えない。キョロキョロと辺りを見回していると、果物を手にしたランバートが茂みを掻き分けて現れた。
「おまえばかりに任せるのも申し訳なくてな。食えそうな果物があったから採ってきた」
「わぁ、ありがとうございます。こっちもちょうどでき上がりましたよ」
「そうか。いい香りだ」
ランバートは近づいてくるなり、ひょいと鍋の中を覗き込む。
「あぁ、こいつは旨そうだ。おまえは料理もできるのか」
「ただ煮ただけですよ。それに、裏技も使いましたし」
「裏技?」
ハルが〈美食家の匙〉のことを話して聞かせると、ランバートは目を丸くした。
「驚いた。もうふたつ目の魔道具を作ったのか」
「なんか必要になっちゃって。行き当たりばったりですけど」
「そういうのを臨機応変と言うんだ。冒険には必須のスキルだぞ。大したものだ」
プロの冒険者から手放しに褒められてくすぐったい。「えへへ」と照れ笑いすると、それを見たランバートも頬をゆるめた。
「さぁ、お腹も空きましたし、冷めないうちに食べましょうか」
「あぁ、そうしよう」
手早くスープ皿を作り、でき立てのスープをよそう。ランバートが採ってきてくれた洋梨に似た果物は洗って皮を剥き、一口大に切って平皿に盛りつけた。
焚き火を見ながら並んで座り、ハルは「いただきます」と手を合わせる。
すると、ランバートが不思議そうに声をかけてきた。
「今のは、祈りか何かか」
「『いただきます』ですか? えっと……これはぼくが生まれ育った国の伝統で、食事の前にやる感謝の習慣です。ここにある鳥や果物、それらに対して『大切な命をいただきます』って」
「なるほど。とてもいい考え方だと思う。俺も倣おう」
ランバートが見よう見まねで胸の前で手を合わせる。
「じゃあ、もう一度。いただきます」
「いただきます」
ハルがぺこりと一礼すると、ランバートもそれに倣って頭を下げた。
かくして、楽しい夕食がはじまる。
ランバートはスープを一口啜るなり、「旨い!」と弾かれたように顔を上げた。
「おまえには驚かされ通しだな。即席でこんなに旨いものを作るとは」
「いえいえ。〈美食家の匙〉のおかげです」
「謙遜するな。どんなにいい魔道具があったとしても、何もないところからスープは生まれない。匙は最後の仕上げを助けただけだ。おまえの成果だ。それに、俺が料理をしていたら今頃生焼けの肉を食っていただろうからな」
「うっ」
想像しただけでお腹を壊しそうだ。
途端に顔を顰めたハルを見て、ランバートは明るい声を立てて笑った。
「ランバートさんって、戦うことにはすごく向いてるのになぁ」
「それしかできないとも言うがな」
「ぼくには散々『栄養のあるものを食え』って言ったのに」
「それはおまえが痩せているからだ。見ろ、手首だってこんなに細いじゃないか」
すぐ横から手が伸びてくる。ハルがランバートの手の大きさに驚いている一方で、ランバートもハルの手首を掴んで驚愕したようだ。
「おい、とんでもない細さだな。今すぐ食え。鍋の中身全部だ」
「無理ですって!」
目の前にあるのは寸胴鍋だ。軽く五人分はある。
ハルが噴き出すと、それを見たランバートも一緒になって頬をゆるめた。
「ランバートさんこそ、お口に合うようでしたらたくさん食べてください。ぼくがはじめて拵えた魔道具で作ったスープです。ランバートさんに魔道具師っていうものを教わったおかげで、できたようなものなので」
「努力の成果というわけか。それなら遠慮なくいただこう」
ランバートは頷くなり、猛然とスプーンを動かしはじめた。あっという間に皿の中身を平らげたばかりか、二杯、三杯とおかわりを重ねる。そしてハルがぽかんと見守る前で、彼はとうとう鍋を空っぽにしてみせた。
「ひゃー……気持ちのいい食べっぷり!」
「それぐらい旨かった。おまえは料理もできるし、魔道具も作れる。実に大したものだ」
「もう。褒めすぎです」
笑い合いながらデザートの果物もペロリと平らげ、揃って「ごちそうさま」をする。
その後は、ランバートは寝場所の整地に、ハルは食器の浄化にそれぞれ勤しんだ。
きれいにした寸胴鍋や皿は明日以降も使えるよう、全部マジックバッグにしまう。本当は冷たい水をたっぷり汲んだ〈浄化ポット〉も入れておきたいところだけれど、中でこぼれるかもしれないのでパスだ。
その代わり、明日どこかで時間を見つけて蓋をつけられないかやってみよう。持ち手ももう少し太く、短くすれば、中に水をたくさん入れて重くなった時でも持ちやすくなると思う。
試作品の改良はモノづくりと同じぐらい大好きだ。技術者魂を刺激されるし、何度やってもわくわくと胸が躍る。
ああでもない、こうでもないと考えていると、後ろから「ハル」と呼ばれた。
「整地が終わった。そっちはどうだ」
「ぼくもちょうど終わりました。それじゃ、今度は寝床を作っていきましょう」
鞄から端切れを引っ張り出し、成形魔法で大きくする。次に擬態効果のある〈七色鳥の羽根〉を取り出すと、できたばかりの生地に魔力を付与した。
ハルは布を広げ、あちこちから矯めつ眇めつ出来映えを確かめる。
「うん、いい感じ」
「これをどうするんだ?」
「テントにします。〈七色鳥の羽根〉の効果で、森に同化して見えるはずです」
「なるほど。考えたな」
ランバートに手伝ってもらって支柱を立て、その上に布を被せれば即席テントのでき上がりだ。四隅を地面に杭で打ち込み、中にはふたり分の布を敷いた。これで魔獣の襲来を恐れることなく、朝までぐっすり眠れるだろう。
「まずは今夜試してみて、明日以降どんどん改良していきましょう」
「改良? もう充分じゃないか?」
「何言ってるんです。しっかりつき合ってもらいますよ」
道具はより便利に、より使いやすく磨いてこそ。それは魔道具であっても同じことだ。
ふんふんと鼻息を荒らげるハルに、ランバートは苦笑しながら焚き火を指した。
「まぁ、まずは一段落だな。寝る前に少し座ろう」
「はい」
促されるまま、火に向かって並んで座る。
こちらの世界に来てからというもの、異世界だ、魔獣だ、冒険だと大忙しだったこともあって、ぼんやり焚き火を眺める時間がなんだかとても贅沢なものに思えた。だからもっと味わいたくて、ハルは両足を抱えて膝の上に頭を乗せる。
いつしか夜が森を包んでいた。
闇を押しやるように真っ赤な炎が揺らめいている。燃え殻が爆ぜるパチパチという音を聞いていると心がゆっくり解けていくような、どこか懐かしい気分になった。
「今日は、いろんなことがありましたね」
「あぁ。旅の道連れができるとは思わなかった」
隣でランバートも含み笑う。
そっと視線を向けたハルは、炎に照らされた精悍な横顔に思わず見入った。目が吸い寄せられたきり逸らせない。
ランバートはじっと焚き火を見つめ、何か考えているふうだったが、ややあって意を決したようにこちらを向いた。
「立ち入ったことを聞くが、おまえはどこから来た。どうしてあの時、森にいたんだ」
「あ……」
一瞬、答えに迷う。
転生したと言ったら彼はどう思うだろう。信じられないと戸惑うだろうか。体よく誤魔化されたと訝るだろうか。もし自分が彼の立場だったらとてもすんなりは飲み込めないと思う。
それでも、ランバートに嘘はつきたくない。
ハルは少し迷った上で、日本という国から来たこと、気づいたら森にいたことを打ち明けた。
「ニホン……というのは遠いのか? おまえはそこに帰る必要があるんだろう?」
「いいえ。もう二度と帰れないんです。……でも、しかたありません。これもぼくの運命だと思うから、受け入れますよ」
ランバートは目を瞠った後で、そろそろと息を吐き出す。
「おまえは、強いな」
「まさか。強いのはランバートさんの方ですよ」
「違う。そういう強さじゃない」
間髪を入れず首をふったランバートに、ハルは一拍置いて「ふふ」と笑った。
「わかってます。……ランバートさんみたいな人に褒めてもらえたのが嬉しくて」
正直なところ、自分でもまだ心の整理はついていない。それでも前に進むしかないのだ。
そう自分に言い聞かせていると、隣から大きな手が伸びてきて髪をくしゃりと掻き混ぜられた。慰めとも、励ましとも取れるやさしい手つきに胸の奥がトクンと鳴る。
「どこにいてもおまえはおまえだ。応援する」
「ランバートさん……」
生まれてはじめての感覚に胸を押さえながら、ハルは明るく顔を上げた。
「ねぇ、ランバートさん。よかったら教えてもらえませんか。この国のこと」
「よし。わかった」
ランバートは近くに落ちていた枝を取り上げると、地面に絵を描きながら話しはじめる。
「俺たちがいるのはマインシュタット王国と言って、城塞都市マイネルを中心に繁栄する大国だ。都の東側には恐ろしい森があってな。一度足を踏み入れたが最後、二度と生きて戻ることはないと噂されている」
「えっ。ここより恐ろしい森があるんですか」
思わず声が出た。
「言っておくが、このヴダスの森は都市の周りで一番安全だと言われている」
「これで!?」
魔獣も魔鳥も湧き放題、襲われ放題だったというのに。
旅の道中を思い出してげんなりするハルに苦笑しながら、ランバートは絵を追加した。
「ここがヴダスの森。東の森はこの辺りだ。東の森の魔獣はとにかく気性が荒い。絶対にひとりで行かないように」
「もちろんです。頼まれたって絶対嫌です」
瞬殺される未来しか見えない。
「ここより恐ろしいところもあるんですねぇ。それじゃ、誰も行かない森ってことですよね?」
「普通の人間はな」
「その話しぶりからすると、ランバートさんは行くんですね」
「珍しい魔草や素材の宝庫なんだ。そのため危険を省みずに立ち入っては、命を落とす魔法使いや錬金術師が後を絶たない。だから、代わりに採取を行ったり、魔獣を討伐したりする冒険者稼業が盛んになる。俺もそのひとりだ」
「そうなんですね。でもそれって、常に危険と隣り合わせなんじゃ」
「その分報酬もいいぞ。まぁ正直、金はどうでもいいが」
「じゃあ、どうして……?」
自分だったら考えられない。命を危険に晒した挙げ句、報酬はどうでもいいなんて。
そういえば、彼はドロップアイテムを集めているのだった。それなら東の森にはいいアイテムを落とす魔獣たちが集まっているのだろうか。
あれこれと考えていると、こちらを見たランバートが小さく嘆息した。
「おまえが自分のことを話してくれたのに、俺だけ黙っているのはフェアじゃないよな」
「え?」
彼は一瞬、遠くを見るような目になる。
「おまえは俺を『命の恩人』だと言ったな。……俺にはかつて、助けてやりたかった相手がいた。妹だ。俺は、幻の魔石を妹の墓に供えてやりたくて旅をしている」
揺らめく炎を見つめながらランバートは静かに思い出を繙いた。
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