異世界で次の人生を

ゴンべえ

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014 人間ってやつは……

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シザーウルフの騒動から1ヶ月。
俺はエルフと取引できる商人として人気になっていた。
理由はエルフの作る薬や織物、採取される素材や精製される素材などに希少な代物が多いからだ。
とりわけ薬は希少価値が高く、王族ですら滅多には手に入れられない。
だから利益に目がくらんだ輩の襲撃で危険な目に幾度も遭遇したが、従魔がシザーウルフと知れ渡ると不埒な輩はパッタリと姿を見せなくなった。

「さて、ここでの取引は終了だな」

俺はサッサと店仕舞いすると街の外に向かって歩き出した。
すでに夕焼けが顔を覗かせている。
本来なら街の外ではなく宿屋に泊まるべき時刻なのだが。

「フェイムに晩餐の招待を受けたからなぁ。悪いけどひとっ走り頼むよフーガ」

『お任せあれ。エルフの森まで一時間で駆けましょうぞ』

「ああ、頼む」

馬よりも大きなフーガは荷運びに護衛に大活躍だ。
強靭な筋肉を誇るシザーウルフは馬より速く、馬より長距離を走ることができる。
馬の脚で3日かかる距離も、フーガにかかればわずか一時間だ。
もちろん、騎乗する人間には相応の負荷がかかるため、バケモノステータスでもなければ騎乗すらままならないが。

フーガの予告通り一時間でエルフの集落に到着した。
すでに日が暮れて辺りは暗くなっているが、夜目が効くフーガにはなんら問題ではない。
俺は集落から漏れ光る灯りに導かれて歩を進め、フェイムの家にたどり着いた。

「お、やっと到着したか」

フェイムの出迎えに俺は大きく溜息をついた。

「やっとって……3日かかる距離を一時間で駆けてきたんだぞ」

「それはご苦労だったな。まあ、立ち話もなんだから入れよ。おっと、フーガは外で待っていてくれ。さすがに容量オーバーだ。食事は後で運ばせるから、我慢してくれ」

『問題ない。我はここで待つとしよう』

そう言うとフーガは主人を待つ犬のように腹を着けて座った。
俺はフーガに手を振って別れると。

「それはそうと急な誘いだな。なにか問題でも起こったのか?」

「察しがいいな。実はそうなんだ。まあ、詳しい話は食事を摂りながらしよう」

俺はフェイムに促されて家に入ると用意された食事に舌鼓を打った。
近況報告を交えながら食事を進めていると、ようやく核心の話へと題が移る。

「……というわけだ」

「なるほど。交易を始めた途端に悪い芽が出たか。まあ、予測はしていたが」

フェイムの話では、エルフの交易を一商人に独占させているのは不平等だと複数の商人が貴族に申し立てを行なったのが始まりらしい。
王都の貴族は商人から賄賂を受け取っているものが多く、彼等の収入が減る事になると袖の下も比例して減少するため、これまで様々な便宜を図ってきた。
しかし相手がエルフだけに貴族の力ではどうすることもできず、困った貴族達は連携して国王に進言して軍を動かそうとしたのである。

エルフを支配下に置けば国の財政は豊かになり、ますます繁栄を享受することができると。

しかし国王はエルフの怒りを買う事を嫌って拒否した。
これで一件落着かと思いきや、王妃がエルフ討伐に意欲を見せたのである。
美しいエルフの男性を奴隷として飼い慣らしたい。
そんなゲスな考えから涌現した意欲だった。
王妃を寵愛する国王だけに風向きが怪しく、もしかしたらエルフに攻撃を仕掛けてくるかもしれない。
どうにかならないだろうか、というのが晩餐の招待を受けた理由だった。

「つくづく愚かしいな。そんな事すればエルフの怒りを買って二度と商品なんて手に入らなくなるだろうに」

俺は考えの足りない欲ボケの連中に悪態をついた。
フェイムは同意するように頷き。

「まったくだ。そもそもエルフは人間との交易を拒んでいない。ただ信じるに足る人間がいなかっただけだ。幸いにもホランドが信じるに足る人間だから交易を行ったが、それがこんな事態を招こうとは」

「すまない。もっと慎重に動けばよかった。まさかここまで大きな騒動に発展するなんて」

「ホランドは何も悪くはないさ。ただ、先行きが心配だ。もし攻め込んできたら、神聖な森がどうなってしまうか」

自然と共に生きるエルフにとって森の自然は命と同じくらい大事なものだ。
その価値を人間は理解していない。
だから長年、エルフと取引することができなかったのだろう。
その暴挙が実際に起ころうとしている。
なんとかして止めさせねば、取り返しのつかない事態になる。

「はぁ~……一難去ってまた一難か」

俺は面倒だなと思いつつ、問題解決のためスキル【等価交換】を発動させるのだった。
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