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1章
我慢
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「俺は...」
ユモが俺の唇を細い指で塞いだ。
「言わないで。それ以上何か聞いたら、私、我慢できなくなるから」
そして、ユモは、身を翻して行ってしまった。布の少ない村の装束から形のいいお尻が半分露わに見えた。どこかで見たことがあると感じるくらい、愛着を感じる背中。
俺は、ただ立ち尽くし、自分の額に手を当てた。また少し角が大きくなった気がする。もう片手では隠せない。
「はぁ、俺って何なんだろう」
俺は、深いため息をついて、再び海を見上げた。その海は、ユモの去っていく姿と一緒に、どこか寂しげに輝いていた。
ベッドに戻ると、乾いて清潔なシーツに替わっていた。この村の石鹸の匂いなのか、華やかな花の匂いがする。
俺は何度もユモのことを思い出して、自己嫌悪に陥った。
さっき、どうしてユモを引き止めなかったんだろう。腕を掴んで引き留めていたら、どうなっていただろう。
でも、そんな風に思ったことをスピカが知ったら?スピカを傷つけたいなんて、少しも思っていないのに。
今になって、堪えていた涙が流れ出す。最近、泣いてばかりだ。
でも俺は、何もしなかった。ただひたすらに、彼女の去っていく背中を見つめるだけだった。そして、それで良かったんだという事実が、胸にほろ苦く横たわる。
自分以外に自分を慰めることは、できないんだ。今ユモもそうしているだろうか。
俺は、せっかくユモが替えてくれたシーツをまた濡らしてしまった。それから、ひとしきり額をシーツに押し付けて泣いて、角でシーツに穴を開けてしまった。
ユモが俺の唇を細い指で塞いだ。
「言わないで。それ以上何か聞いたら、私、我慢できなくなるから」
そして、ユモは、身を翻して行ってしまった。布の少ない村の装束から形のいいお尻が半分露わに見えた。どこかで見たことがあると感じるくらい、愛着を感じる背中。
俺は、ただ立ち尽くし、自分の額に手を当てた。また少し角が大きくなった気がする。もう片手では隠せない。
「はぁ、俺って何なんだろう」
俺は、深いため息をついて、再び海を見上げた。その海は、ユモの去っていく姿と一緒に、どこか寂しげに輝いていた。
ベッドに戻ると、乾いて清潔なシーツに替わっていた。この村の石鹸の匂いなのか、華やかな花の匂いがする。
俺は何度もユモのことを思い出して、自己嫌悪に陥った。
さっき、どうしてユモを引き止めなかったんだろう。腕を掴んで引き留めていたら、どうなっていただろう。
でも、そんな風に思ったことをスピカが知ったら?スピカを傷つけたいなんて、少しも思っていないのに。
今になって、堪えていた涙が流れ出す。最近、泣いてばかりだ。
でも俺は、何もしなかった。ただひたすらに、彼女の去っていく背中を見つめるだけだった。そして、それで良かったんだという事実が、胸にほろ苦く横たわる。
自分以外に自分を慰めることは、できないんだ。今ユモもそうしているだろうか。
俺は、せっかくユモが替えてくれたシーツをまた濡らしてしまった。それから、ひとしきり額をシーツに押し付けて泣いて、角でシーツに穴を開けてしまった。
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