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1章

林檎

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 スピカが猛抗議する。

「私たちは、悪魔をどうにかする手がかりを探して旅をしているの!
 何か、この村にアスタロトをどうにかする方法を知る人はいない?」

「ふん、信頼できない相手に教えることはないね。そうだ、明日の朝、祭の最後に、異種格闘技大会がある。
 どうだ、そこで勝てば、知っていることは全部、教えてやろう。それが何か役に立つかもしれんぞ。
 それに大会に挑戦する戦士は、祭りの主役だ。露店でなんでも食べ放題だぞ」

 スピカが慎重につぶやいた。

「アスタロトがかつて祭られていた村に伝わる話があるなら、聞いてみたい...でも、何か引っかかる....」

 ライラがこっそりと俺にメモを渡してきた。そのメモには...
 村長のアーシヤが、どうするか顔を見合わせている俺たちを無視して、大きな声で言った。

「よし!決まりだ!みんな、この男の子は、偉大な戦士だ!女は、喜べ!若いが色男だぞ!なんでも一番うまいものを持ってこい!」

 不安そうなスピカに、俺は、安心させるように力強く言った。

「俺なら大丈夫。俺がスピカを守るから、信じて。サクッと勝ってくるさ。それに行動を起こさないと、何もわからない」

「それは、そうだけど....」

 結局、俺たちは、食欲にも勝てずに、食べることにした。
 どこからともなく広いテーブルと椅子が俺たちの眼前に置かれた。
 俺たちは、村人たちに背中を押されながら、着席した。テーブルには、次から次へのご馳走が置かれていく。俺たちは、ライラに美味しいものを教えてもらいながら、食べまくった。
 羊の丸焼きに、焼き林檎。ミント入りのレモネードは、美味しくてすぐに飲み干してしまった。
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